世の中の大きな変化であるマクロ環境はもちろんのこと、ちょっとした変化の兆しの背後にあるものを洞察できると、問題解決の効率は上がります。
上記の言葉は、日本電産の創業者、永守重信氏の言葉でもあります。
ここでは、マーケティング広報やコンサルティングの現場でも使える問題の早期発見方法について学びましょう!
重要なのは、背景で起きている変化を感じ取ること
たとえば、営業担当者が取引先の担当者から、「最近、若手が早々に辞めていってしまって、困っているんですよね」「最近、経理が細かい金額まで気にするようになってきてチェックが厳しいんですよ」といった話を聞いたらどう思うでしょうか。
こう聞くと、「相手の会社は最近経営がうまくいっていないのではないか」「大きな経営方針の転機を迎えているのかも知れない」といった仮説が導けそうですね。
■あらゆる小さな出来事にアンテナを張る
それが、世の中全体のトレンドであれば、さほど気にすることはありませんが、「若手が早々に辞めている」などは、この会社だけの出来事であるのだとしたら、アンテナを張るべきです。
違和感があったら、その裏でどのような事案が生じているのかを考えてみましょう。「過去に似たようなことがあったから大丈夫だという考え」は危険です。
また、たかが1つの小さな違和感だけで軽率な行動に走るのは問題ですが、些細な違和感が2つ、3つ以上あったなら、その裏で好ましくない事態が起きている可能性は高くなります。
たとえるならば、「新入社員A君は最近遅刻が増えている」だけで何かを言い切るのは難しいのですが、「仕事のパフォーマンスが微妙に低下している」「ごく稀に、以前では考えられなかったようなトラブルを起こすようになった」という事柄が重なるのであれば、問題がある可能性は高いといえるでしょう。
■違和感を大切にしよう
であれば、(できる範囲で)プライベートな問題はないか、仕事にやりがいを感じていられているのかなどということをランチの機会などに聞いて、その仮説を確かめることが大切です。1つの事柄からのSo What?(だから何?)では弱い場合でも、複数の事柄が重なれば確かであると言い切れる可能性は上がります。
また、1人の人間から感じた違和感では根拠として弱いものも、複数の人間が「何か変だ」と感じていれば、それは何かが起こっていると考えることもできます。
「ちょっとした違和感にこそヒントが隠れている」を実践して、何が実態として起こっているのかをしっかりと見定めることが重要なのです。そのためにも、他者とのコミュニケーションの頻度、密度を上げて、問題意識について議論できるような場を用意したいものです。
事件は現場で起きている
「踊る大捜査線」という人気ドラマでも有名になったこの言葉ですが、企業にとって、問題の多くは普通、現場(例:工事の現場、店舗の現場など)で起きているものです。
そして、現場で働いているのは通常は若手です。管理職の方がいる場合もありますが、通常は課長以下の比較的若い管理職が多いはずです。
したがって、ピラミッド型の組織の場合では、現場の若手からの情報(顧客の生の声など)がボトムアップでよどみなく上へ流れていくような仕組みがあること、そして、現場重視の姿勢が、問題解決をする上では大切になってきます。
しかしながら、多くの組織では会議室で問題を解決しようとしがちです。会議室で議論することが絶対的に悪いといったわけではないのですが、現場の情報がうまく入ってこない状況下で議論を行っても、問題解決は効果的には進んでいきません。
ITを活用して相手の声を拾い続ける
これを避ける知恵としては、ITの活用という手があります。
昨今ではメールだけでなく、チャットツール(Slackなど)も発達してきました。そこに顧客や現場の従業員の声が流れるようになれば、現場の声が非常に目に入りやすくなるのです。
忙しい人間がすべての生データを見ることが難しくても、アクセスできる状態にあることは重要なことです。また、企業によっては、重大な情報をピックアップする係の人間を配置することもあります。ここにIoT(モノのインターネット)などで集まってきた情報が追加されてくると、さらに現場に対する感度は上がってきます。
つけ加えると、現場を重要視しつつも、現場の「犯人探し」を主目的にしないことをとても大切なこと。その点、トヨタ流問題解決の「現地現物」などは、現場主義が徹底していることに加え、「犯人探し」をしないという点でも非常に参考になる方法です。
まとめ
重要なのは、背景で起きている変化を感じ取ることとあるように、ちょっとした違和感が2つ、3つと重なったならば変化を感じ取り、そこにどんな問題があるかを感じ取ることが重要であるということを学びました。
また、「事件は現場で起きている」というように、問題解決には現地現物を参考にして解決を図ることが大切であることを学びました。