大企業リコーがトヨタを見本にして編み出した「何がの後になぜが来る」
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2021.01.05

大企業リコーがトヨタを見本にして編み出した「何がの後になぜが来る」

「なぜを5回問え」という言葉を聞いたことのある方は多いことでしょう。

多くの書籍でも紹介されている「トヨタ流問題解決」の基本思想のひとつでもありますが、孫伍夫、大野耐一氏によって定式化されたものです。

私たちビジネスコンサルタントは、現場で必ず口にします。また、このサイトのコンセプトでもあるマーケティング責任者や広報担当者が覚えるべき必須スキルともいえるでしょう。

 

「何が」の後に「なぜ」が来る

「なぜを5回問え」という言葉の本質は、5回という回数そのものにあるのではなくて、問題を引き起こしている「真因」を徹底的につきとめることにあるのです。

真因を徹底的に掘り下げていくからこそ、自ずと取るべきアクションが見えてくるといったメリットもあります。

ただし、実際に「なぜを5回」を実践しようとしても難しいものがあります。問題解決の世界には、典型的なプロセスとして、「何が問題なのか?(What/Issue)」→「どこに問題があるのか?(Where)」→「なぜそうなったのか?(Why)」→「対策は?(How)」といった、定番の流れがあります。

実は、「なぜを5回」はこの3つ目のプロセスに関するものであるので、本来はいきなり飛びつくべきものではないということを念頭に置いておきましょう。

 

大企業リコーが真似できなかったトヨタの「なぜ5回」

実際に、トヨタ流問題解決でもまず「あるべき姿」を描き、そのギャップを特定するのですが、「なぜを5回」の言葉が有名になりすぎた結果として、そもそも何が問題なのか(あるいはクリアすべき課題なのか)を問うことなく、いきなり「なぜ」に走ってしまい、見当違いの結論に至る企業や人が多いのです。

そこで、かつて大企業であるリコーでは、違う発想をすることにしたそうです。

彼らはまず、トヨタで「なぜを5回」が比較的早い段階から使える理由として、トヨタでは「見える化」が進んでいるからと考えました。多くの会社では、見える化に取り組んでいるものの、まだまだトヨタほど進んでいるという企業は稀なのです。

そこで、まずはしっかりと問題が何かを見きわめようということで、見出しにもした「何がの後になぜが来る」(TTY:whaT Then whY)を強調したのです。

 

有名ゆえ本質を見誤り筋違いな結論に至ってしまう

多くの企業はどうしても、他社で効果を上げている有名なベストプラクティスをいち早く取り入れたくなるものです。しかしながら、その本質を理解しないままで、耳あたりの良い言葉だけを受け売りで取り入れても効果が出ることはありません。

「何がの後になぜが来る」は、一歩引いて視点を変えて、そうした落とし穴を避けた例としても注目されているものです。

「なぜを5回問え」というトヨタ流問題解決の言葉は有名ですが、有名であるがゆえにその本質を見誤り、見当違いの結論に至ってしまう企業や人が多いということを学びました。

リコーでは、その点、トヨタでは「見える化」が進んでいるから「なぜを5回問え」という段階に進めるのであり、そこまで進んでいない企業が多い中では、「何がの後になぜが来る」(TTY)を使用したほうが良いということを知りました。ぜひ、皆さんも活用していきましょう。


執筆者・監修者
上岡正明
テレビコメンテーター・経済記者
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者25万人のYoutuber
上岡正明

MBA(多摩大学院経営情報学修了)
テレビコメンテーター
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者24万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

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