当記事では、広報の基本的な意味や具体的な役割、成果を出すコツやその運用方法について解説します。
「広報って、そもそもどういう意味?」
「業務範囲がわかりづらい」
「誰でもわかるようにシンプルに解説していほしい」
そういった声はよく聞かれます。そこで、この記事では以下の8つの答えを全部集めて解説しました。すべてのコンテンツは3~5分程度で読めるようまとめてあります。さらに独自取材による現役のテレビディレクターや記者にインタビュー、現役放送作家の経験をふまえたすぐに使える内容となっています。
【3分で完全マスターできること!】
- 広報とは?意味と定義
- デキる広報担当に求められる5つのメディア露出の裏技
- 広報にはどんなミッション(目的)があるの?
- わかりにくい「社内広報」と「社外広報」の違い
- 現役テレビディレクターと新聞記者が教える8つのプロ技
- すぐに上達する広報スキルの入手方法
- 広報が打ち出すべきPRマーケティング戦略の具体的なフレームワーク
- 競合との差別化を一瞬で図る広報戦略7つのステップ
私は20年近くテレビ放送作家として「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「笑っていいとも」など人気番組の企画・構成を数多く手掛けてきました。
そうした現場レベルの視点・観点から、ここでしか話せない業界裏話も交えながら、広報の基本知識や、広報担当者に必要なスキルまで、余すことなく解説しています。
*こちらも人気:元放送作家直伝!テレビに即決されるプレスリリース全技法
広報とは?
広報とは、そもそもどういった意味を持つのでしょうか。
大手企業には広報部あるいはPR担当の部署がありますよね。では、いったい広報の役割とはなんでしょう。広報とは「企業や組織などが公衆と良好な関係を構築していく活動のこと=広報活動」といった説明もあります。しかし、なんだか堅苦しいですよね。
広報とはつまり“企業が社会や人との関係性を良くするために、さまざまな情報を広く報じる”ということ。では、関係性を良好に保つとは、どのようなことなのでしょうか。ここが、広報を知る上での「肝(きも)」になりそうです。
広報と広告・宣伝の違い

広報と広告はこんなに違う
まず、広報と広告では付き合う相手がそもそも違います。
1)広報とメディアはパートナー
広告はマスメディアの広告局や広告代理店の営業マンを相手にします。一方、広報は新聞の報道記者やライター、テレビの場合はディレクターや放送作家などを相手にします。関係性としては、広告はお金を出す企業がお客様です。一方、広報は企業とマスメディアとが対等な関係、つまり互いにWINWINなパートナーとして存在しています。どちらが偉いというわけではなく、双方がよいコンテンツを世の中に届けるために協力し合う体制づくりにつとめています。
1)広報はコミュニケーションで露出する
さらに、露出までのプロセスも大きく異なります。広告はお金を払い、マスメディアの広告枠をペイドパブリシティとして購入します。広告主は発言力があります。ある程度の宣伝文句や表現方法、露出の時期やタイミングもコントロールできます。
一方、広報はプレスリリースを配布したり、リークや記者会見などで情報提供することで取材やメディア誘致を呼び込みます。
*参考:PRと広告の違い知ってる?現役広報者が解説
広報の目的(ミッション)とは?
次に、「広報」と「広告」の目的の違いを整理してみましょう。
1)広報は広告と違い多方面でリターンがある
広告は自社の認知、商品の販促販売です。商品発表から大量の予算を投下して、CMや新聞広告を行えば、日本中に商品やサービスの認知を図ることができます。その点、広報は売上の向上はもちろんですが、ブランド力のアップ、ステークホルダーとの関係性維持、あるいはファンやネット上でのバズを増やす、というところに重点を置いています。
2)広報で権威性を高めた事例
加えて、広報を使うと会社の良い面や悪い面を外部の目線で客観視できるようになります。また、社会的信用度が高まることでパートナー企業が増えたり、採用力が高まったりします。
弊社のクライアント企業が日経新聞に露出した後、東京都から奨励賞などを獲得した、ベンチャーキャピタル数社から問い合わせがあった、億を超える出資を得た、なども実際にあります。一方、広告はお金を払えば誰でも出せると知っているので、信用力や権威性を高めることは難しいでしょう。
ステークホルダーと良好な関係を築くには
また、企業を経営していく上で、経済的な活動は必須です。
どのような会社であっても経済的に成り立つことがなければ存続が絶たれてしまい、企業として活動していくことはできません。企業としてしっかりと活動していくためには、顧客や取引先の金融機関や業者、あるいは社員や従業員といった人との関係がなくてはならないものです。自社商品を購入してくれる一般消費者も人であり、許可をとらなければいけない役所や法律を取り扱う行政機関も人によって成り立っています。
その関係性を良好にすることで、経営は循環しているのです。そのような関係のある人々に、自社の存在や商品あるいはサービスを知ってもらわなければならないのですが、これが企業価値の情報伝達ということになるでしょう。
これは、広報の大きな目的であり、意味でもあります。広報でよく使われる言葉に[PR]がありますが、これはpublic(大衆) relation(つながり・関係)の略。ここからも全てのステークホルダーとの関係性といったものを重視しているのがわかります。
*外部リンク:よくまとまっています!ステークホルダーの意味と使い方((出典元:kuguru)
広報の4つのメリットとデメリット

広報を戦略的に活用してメディアとの関係性を良好に保つことで、今後の企業発展を有利に展開することもできます。実際、会社を大きく成長させた企業の多くは、広報活動を通じてメディアを上手に活用しています。
広報を企業成長に活用する経営者たちの実例
1)孫社長
たとえば、ソフトバンクの孫正義社長は、創業初期から広報を企業成長のエンジンとして重要視してきました。
孫社長は重要なサービスの発表時(ローンチ)は巨大スクリーンの前で、必ずマスメディアの前でプレゼンをします。周到な準備をして、広告を使わずにサービスが世の中に広がるよう工夫しているわけです。
2)楽天の三木谷社長・サイバーエージェントの藤田社長
楽天の三木谷社長やサイバーエージェントの藤田社長も同じです。企業成長の戦略的なターニングポイントではマスメディア向けの広報PR戦略を展開しています。ファーストリスティングの柳井会長は自社をファブリック企業であると同時に、情報発信企業と称しているとセミナーで聞いたことがあります。
ベストなタイミングで、マスメディア向けの広報戦略を戦略的に打ち出す。そのことで、自社のイメージを高めるとともに、商品やサービスを瞬く間に世の中の「関心ごと」や「自分ごと」に変えることができる。経営者や企業のストーリーを深く知ることで、熱狂的なファンになる。と同時に、ローリスクかつ短期間で行え、広告予算も大幅に削減できる。
日本の成長を担ってきた経営者ほど、広報PRのそうしたメリットを熟知していると言えるでしょう。
広報のメリット① 信用力とリーチ力
このように、広報が注目を浴びる理由としては、いくつか理由があります。なにより、大きなメリットが信用力とリーチ力です。
1)信用力とリーチが圧倒的に高い
まず、広告と違い記者やメディアの目線を介して世の中や生活者に伝わるので、第三者目線で広く伝えることができる点が上げられます。
私たち生活者は広告に対してネガティブなの印象があります。テレビCMや交通広告はプッシュ型広告(自ら情報を発信する立場)と言われています。日頃意識をしていなくても、テレビCMが流れている間は無意識に別の作業をしていることが多いでしょう。
基本的にはプル(みずから情報を収集する立場)にあるデジタルメディアの場合も、その傾向はさらに顕著です。誰もが一度は、デジタルメディアのスキップボタンを連打した経験があるはずです(筆者はあります)。
2)もはや誰も広告を見ていない?
すでに10代・20代にかけてはデジタル広告に日常的に慣れすぎて、ほとんど目や頭を使わず、一瞬で広告と記事とを識別して読み飛ばしている、そんな研究結果さえあります。
一方、広報PRで露出した場合、ターゲット属性が明確であればあるほど、しっかり読まれます。とうぜん、興味がある内容であれば、クチコミやSNS上でのシェアも生まれやすくなります。そのため、外資系の大手ナショナルブランドでは広報PRでの露出結果を、広告と比較して10倍の費用対効果を換算する場合もあると言われています。
広報のメリット② ローリスク・ローコスト
また、広報は基本的にローリスク・ローコストだと言われています。
1)広報はスモールスタートが可能
CMを打てば数千万規模の予算が必要なります。あとから軌道修正もできません。かたや広報PRが軌道に乗れば、広告に比べてわずかなコストで、場合によってはそれ以上の宣伝効果やマーケティング活動をおこなうことができます。ただし、これはあくまでPR広報活動が成功した場合のケースです。
私がお薦めしているは、初動では予算が少なくすむ広報を初動で行い、スモールスタートで市場に対するプロモーションを打ち出しながら、じょじょに広告や大型の販促で攻勢に転じる方法です。
2)PRファーストで市場を席巻せよ
これをマーケティングファーストに対して、PRファーストと呼んでいます。
もちろん、全てに対して完全にメリットばかり、とはいきません。しかし、「従来の方法だけで世の中や生活者を動かすことが難しい」「競合の牙城を崩すことができない」、そのような場合は広報PRに思わぬ突破口があるかもしれません。
広報のメリット③ 広報は先にやったもの勝ち
正直言うと、広報というのは「先にやった者勝ち」です。早くやった者勝ち。これは逆のパターンにも当てはまります。競合他社が先に戦略的なPRをはじめてしまうと、自社がマーケットの中で存在感を失い、無力化していくことが往々にして起こります。
1)行列ができるラーメン屋が美味しいとは限らない
たとえば、地元で人気のラーメン屋を例にしてみましょう。地元の住民からすればA店のほうが美味しく、値段も安い。しかし、B店がテレビや雑誌に取り上げられるようになってから、そちらばかりにお客が集まって行列になる。ついには、ネット上のクチコミも逆転してしまい、逆にA店に閑古鳥が鳴き始まる。
2)広報はエリア戦略に決定的な優勢性をもたらす
地元民からすれば美味しいと評判のA店がいつでも空いているのは嬉しいことかもしれません。しかし、店のオーナーからすれば深刻な問題です。同じ商圏内、しかもご近所でお客を奪い合うわけですから、売上の減少は避けられません。従業員の離反、サービスの低下、銀行との交渉難航など、目に見えないダメージも考えられます。1年先は良くても、数年先になると影響は避けられないかもしれません。
もし本当に美味しいA店が広報PRを戦略的に活用していたらどうなっていたでしょうか。こうしたことからも他社や市場に先駆けて、広報PRはなるべく早く実施していくのが良いのです。
広報のメリット④ 広告はBuy me、広報PRはLove me
ここまでで分かるとおり、広報活動では「会社の視点」よりも「社会の視点」、「商品の特徴・スペック」よりも「生活者の興味・関心の視点」が重要視されます。
1)広報はターゲットを選ばない
これはBtoB企業であっても、BtoC企業であっても同じです。そのため、広告はBuy me、広報PRはLove meと表現をすることもあります。
自社やサービスを知ってもらい、ファンになってもらう。自分たちの誠実さや存在意義を知ってもらう。そのための活動となるので、やらせや嘘もご法度です。先日も、大手映画会社が広報PRの一環で、自社の映画を人気があるようにSNSに流したことがありました。結果、それはやらせであることが発覚し、生活者の反感を買い、大炎上してしまいました。
*外部リンク:相次ぐやらせ問題への問題定義(出典元:イザ)
2)やらせや嘘は御法度
このように、消費者をだますような広報をしたり、デジタル数値上の費用対効果や効率だけを追い求めて炎上するような手法をしてしまうと、社会から信頼されなくなってしまう、というリスクやデメリットが広報にはあることは肝に銘じておいてください。
*参考リンク:4つのリスク対策を徹底解説
広報の効果を最大化する5つのコツ

社会がどういうことに関心を持っているのか、どういう興味があるのか、ということを知る力を持つことは広報マンとしては非常に大切です。情報は「発信するところ」に集まってきます。情報発信力が求心力になる、というように考えることが広報担当者にとっては非常に大事です。
これからは、情報発信スキルのない企業は、生き残るが難しい時代になってくるだろうと私は考えるからです。
私が広報PR担当者に最初に伝える3つの言葉
こうした視点から、私が現場の広報PR担当者にいつも伝える3つの言葉があります。
- 1)経営者の焦りを理解せよ
- 2)営業の苦労を共感せよ
- 3)広報の理想を体現せよ
広報というものを使うことによって、早期に信頼関係を醸成したり、「ああ、知ってる」「聞いたことある」というシーンを作り出すことができます。これが経営者や現場の営業部門にとってどれだけ援護射撃になるか。
このように「共に戦っている」という視点を常に持ちましょう。これこそが、これからの時代の広報PRの優れた素質になると思います。
そもそも、なぜ情報を発信する必要があるのか?
情報は「発信」するから周囲や社会に知ってもらうことができます。
たとえば、マーケティングというのは実際に運用してみるとコストも掛かるし、工数も必要となります。
もちろん、マーケティングそのものは企業成長にとって必要です。ただどこよりも早く、低コストで知ってもらう方法というのを、もっとフラットな目線で考える必要があると思います。その基本となるのが、自社が情報を発信して興味を持ってもらうことだと思います。PR広報とはその考えが根幹にあるわけです。
少ない予算と少ない人数で広報を運用することで、広く知ってもらうっていうことができれば、中朝ベンチャー企業にとっても非常に効果がある手法なのではないでしょうか。 とくに個人店舗のオーナーであったり、これから事業を採算化させるスタートアップの経営層にとっては広報は大きな武器となります。
また、地方の企業が大手ガリバー企業に勝っていくためにも、広報を「武器」に変えることで十分に戦っていけるのではないかと考えています。
「信頼」というものはお金では買えない
特に中小企業やスタートアップ企業に必要なよい評判(Reputation)というのは、広告のようにお金で買うことはできません。そのためには企業が持つコミュニケーション能力、つまりパブリック・リレーションや広報の力が非常に大事になります。
戦後の礎を築き上げたパナソニックの松下幸之助氏も、広報についてこのように語っています。
『よい評判というのは、広告のスペースを買ったり、テレビCMを打つようにして、お金では買うことができないということ。会社の評判をよくしようと思えば広報をするべきだ』引用:松下幸之助
松下幸之助氏は広報活動を非常に重要視していたと言われてます。後年力を入れた出版活動も、松下幸之助氏の考えや理念を体言化したものだといえるでしょう。
また繰り返しになりますが、ソフトバンクの孫社長やユニクロの柳井会長も、やはり広報というものをとても重要視しています。そういった意味では、広報というのはお客さまをファン化して、信頼を相互に育みながら、ニーズを顕在化していく、そういった経営の根幹に位置する活動になってきています。
広報を行う目的と効果を上げる6つの方法

広報を営業活動に活かせ
さらに、メディアによって紹介されると営業活動にも活用することができます。
企業の信用を高めることができるので、著作権の問題をクリアにする必要はありますが、営業活動で「こういうふうに出ましたよ」と口頭で説明したり、2次利用の権利を得てプレゼンテーションで活用したり、あるいはホームページ上やSNS上でテレビ取材の風景を紹介したり(風景撮影は許可がおりやすいです)。
そうしたかたちで、「うちは信頼がある」「メディアにも取材される企業である」ということをPRした結果、実際に売上を継続的に上げている会社は私たちの支援先でも非常に多いわけです。
広報の露出成果は5年、10年と使え
これは、一般店舗でも同じです。東京駅では「○○のテレビで紹介されました!」とのぼりがあるお土産店を、ついつい選んでしまいませんか。しかし、冷静に考えてください。いつ、どのぐらいの尺でテレビに紹介されたのでしょうか?
しかし、それを疑問に持つ人はあまりいません。そして、その店舗が仮に全国に100店舗あるとします。すると全国店舗で5年近くも営業強化の施策として使うことができます。100店舗の営業が、こののぼり一本で数倍にあがるわけです。あらゆるマーケティング施策よりも強力だと思いませんか(著作権には十分注意が必要ですが)。
このようにデキる経営者やマーケッターほど、広報活動を戦略的資産に変えて営業やマーケティング活動に転換しています。ブランディング資産は経営資産という視点を持つことはとても大切です。
広報資産をブランド資産にせよ
売上が止まれば、どのような高度な戦略も理念もストップをせざるえません。そうした意味では、広報PRで手に入れた武器は、資産としてどんどん使っていくという視点も非常に大事になります。
とくに信頼のない会社の営業の現場は大変です。私も20年近く実業家として会社を経営してきました。それを、嫌と言うほど味わってきました。
ベンチャー企業や発売間もない新商品などは「門前払いされたり」「なんだか知らない会社だな」と警戒されて、なかなか最初の1歩を踏み込んでもらえません。お客さまに信頼してもらうことが、いかに難しいことか。そうした会社を支える最前線の社員の気持ちを理解しないで、広報PRの担当者が理想論ばかりを語ってしまっては、これからの会社経営ではやっていけません。そっぽを向かれるばかりか、最悪の場合は社内協力を得られにくくなります。
メディアに詳しくなるには?
どうすればメディアに詳しくなりますか、そうよく聞かれます。
その答えとしては、やはりメディアに頻繁に触れることです。企業内の広報担当者であれば、少なくとも主要新聞や、自社が出したいテレビ番組ぐらいはチェックしてほしいと思います。
例えば、新聞であれば5大紙、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞、毎日新聞の5媒体をすべて取る。日本経済新聞であれば、日経本紙だけでなく日経産業新聞、日経MJにも一通り目を通す。資金的にムリであれば月に数回、図書館に行くでもいいと思います。
ネットニュースであれば、Yahoo!ニュースはもちろん、SmartNewsやNews Picksなど自分の決めたプラットフォームメディアのアプリをダウンロードして移動時間にチェックするのがよいと思います。
今やリアルとデジタルは互いに融合しています。ネットメディアを眺めるだけで、地上波テレビや新聞がどのようなニュースを発信しているのか、ある程度把握できるからです。ちなみに、私お薦めのニュースアプリは次の5です。
私のお薦めニュースアプリ
- SmartNews
- News Picks
- グノシー
- アンテナ
- Yahoo!ニュース
ちょっとした休憩時間や移動時間でかまいません。これらメディアに定期的に目を通しましょう。あとは新聞局やテレビ局、あるいは雑誌の編集部を実際に回って、自分の目と足でメディアと接触してヒアリングすることをお勧めします。
「メディアが何を望んでいるのか」「今後、どういったトレンドを取材しようとしているのか」「季節ごとのテーマや変化をどう捉えているのか」など、現場のリアルな声を感じることは大切です。*外部リンク:ニュースアプリ比較サイト(出典元:アプリ部)
プレスリリースをチェックして情報を掴め
あとは、プレスリリースの配信スタンドを定期的にチェックするのも良いでしょう。他社がどのようなトレンドや社会性を捉えて、どのように情報を配信しているのかを客観的な視点で目に触れることができます。しかも、ネットが繋がっていれば全部無料で、すぐに情報が手に入ります。
広報担当者に必要な5つの基本スキル

ここまでお読みいただけるとおわかりの通り、広報担当にとって大切なのは、「技術」「共感」「情熱」です。どんなに時間をかけて作った情報やプレスリリースでも、相手が良いと思わなければメディに出ることはありません。
世の中や消費者の気持ちを理解して、常に対話しながら寄り添う共感力がなければ効果的な文脈や情報クリエイティブができません。さらに、長く取材誘致ができないと、自信を失ったり気持ちが落ち込んでしまうこともあります。
そんなとき、行動やモチベーションを支えてくれるのはあなたの情熱だけです。この商品やサービスを、世に出すことで人々の役に立つ。そう信じて取り組むことが、非常に大きな力となります。同時にそうした情熱がメディアに伝わり、世の中を動かす原動力にもなるのです。その他、具体的な4つの必須スキルについて下記でご紹介します。
1)広報に求められる統合型戦略PRマーケティング思考
とくにこれからの時代は、広報におけるフリーパブリシティも統合型戦略が必要とされる時代です。
統合型とは広報PRの戦略シナリオプランニングに、従来のマーケティングやデジタルマーケティングの領域の融合を指します。
あなたも経験がないでしょうか。テレビで紹介された美味しいカレーのお店をネットで検索して、そのままご家族や友人にSNSでシェアしたことが。
このように、いまやテレビや新聞に取り上げられた瞬間にネットやSNSで情報は拡散されていきます。それはテレビを見ながら生活者がスマホで情報を検索したり、Twitterなどでコメントを発信しているためです。以前は、広告やパブリシティと生活者はダイレクトにつながっていました。そのため、テレビに出れば翌日には店前に行列ができる、という現象が起こりました。
*関連リンク:統合型戦略PRマーケティングを参照する
2)リアルとデジタルの融合に抵抗する力
しかし、今はどうでしょうか。テレビに出ると、まずはスマホやパソコンでその情報を検索します。企業サイトを訪れて社長のプロフィールを確認することもあります。場合によっては、YouTubeなどの動画コンテンツを視聴して、内容を吟味するケースも増えています。
それから、商品名や店名を検索して、クチコミなどの情報を収集しはじめます。こうしてデジタル領域を情報源に知識と理解を得て、はじめて問い合わせをしたり来店したりといった【行動変化】を起こすわけです。
つまり、ネットやSNSを一度介して商品を購入したり評価したりすることが当たり前になってきているわけです。
私たちはこうした新しい広報の流れやトレンドを理解して、広報PRの戦略シナリオプランニングをする必要があります。でなければ、露出を繰り返しても、いっこうも問い合わせも来店すら増えない、といった結果になってしまいます。これからの広報担当者やPRプランナーであると同時にマーケティングアドバイザーとして常に統合型戦略、あるいは統合型マーケティングと呼ばれる領域にチャレンジしていかなければならないと私は感じています。こうしたトレンドをしっかりと組み込んで、今のメディアの情報連鎖の特性を理解し、有効に活用していくことが重要です。
*関連リンク:PRデジタル・マーケティングソリューションを参照する
3)これからの広報PRの未来を予測する力
特に今の若い人たちはモバイルアプリを使って24時間、情報にコンタクトをしています。10代になってくると、さらにYouTubeが加わります。テレビ視聴よりもYouTubeを見ている時間が長くなってきているからです。
これはBtoBサービスを提供する企業や、若者をターゲットにしていない企業にとっても関係がないとは言い切れません。
理由は以下の2つです。
- 製品やサービスの提供先が変化に直面している可能性がある
- 今の若者が5年後には購入者や決裁者になっている可能性がある
私たちはこういったターゲットの行動変化や社会的背景を十分に理解して、広報を行っていくことは大切です。
今の若者が社会に出て30代、40代になると、もはやモバイルメディアで情報を収集したり、音声認識で好みのサービスを探したり、動画で商品比較することが当たり前の世の中になっているでしょう。そういう層が増えると、今の40代、50代の人たちも、少なからず影響を受けるはずです。じょじょにメディア側も情報の出し方を変えてくると思います。
数年前、日本経済新聞がこれからは紙ではなく電子版に力を入れてく、と発表して話題となりました。CMの内容からも日経新聞が電子版にいかに注力しているからがわかります。広報担当としては、そのときに追いつけない、ということがないように今から準備をする必要があります。いつの間にか「紙のメディアを見なくなったよ」という50代が増えていてもおかしくない時代が、すぐそこまで来ているのですから。そういった意識をするだけでも、広報に必要なアンテナは他の誰よりも高くなっていくはずです。
4)PRファーストの世界観(LOVE ME)を信じる心
広報PRという言葉はよく耳にする一方、使われ方や意味は結構あいまいに扱われてきました。そこで、本書では一度しっかりとその意味を定義したいと思います。
広報PRはまず「考え方」と「やり方」の2つのカテゴリーに分かれます。
「PR思考」というのはPRファーストとも呼ばれています。自社ブランドがどのように世の中に良い反応を起こしていくか、どう消費者や生活者とコミュニケーションを図っていくか、という戦略をシナリオプランニングしてマーケティングと融合しながら考えることです。
広告はBuy meだと言われています。プラカードを持って、「私を買ってください」と叫んでいますよね。こうすることによって「あなたはより魅力的になりますよ」「今の仕事がよりラクになりますよ」と伝えているわけです。
一方、広報PRはどうでしょう。こちらはLove meです。「私に興味を持ってください」と微笑んでいるわけです。「みんなが私とつながって魅力的になっています」「私とつながることで仕事がラクとなると国から表彰されました」と伝えているわけです。
5)戦略展開能力は2つの視点軸が必要
いかがでしょうか。このようにイラストで比較すると、わかりづらかった広告とPRの違いも一目瞭然ではありませんか。
そのため、広報を恋愛と同じにたとえる人もいます。相手からどう思われたいか。どうメディアに感じて欲しいか。こうした感覚が広報PRのシナリオプランニングやコミュニケーションのための文章(文脈)づくりでとても大事になります。その接点づくりをするのが「広報PR戦略」だと思ってください。
さらに、PR戦略の展開においてはさらに2つの視点軸が必要です。それを今からご紹介して参りましょう。

王道PRとイノベーティブPRの2つの視点軸
今度は広報スキルを戦略展開の応用レベルまで広げていきましょう。
広報には大きく分けるとオフェンシブ(攻撃型)の広報とディフェンシブ(防衛型)の広報の2つがあります。ここでいう2つは、よくいう社内広報と社外広報の違いをいっているわけではありません。
1)広報の2つのタイプ
企業の基本的な広報活動や、イメージダウンをくい止めるリスク対応や風評被害対策というのはディフェンシブな広報です。定期的なニュースレターの配布、プレスツアーやリリス配信はこちらになります。一方、競合とのシェアの奪い合いや企業のイメージアップを図るために、積極的に情報をクリエイティブして、認知や問い合せを増やして顧客を獲得するのが攻撃型の広報になります。つまり、私たち広報の
プロはこの「王道PR」と「イノベーティブPR」の2つ軸を最初から広報戦略の中で使い分けて実施しているわけです。
2)広報の王道PR
王道PRというのは一般的に上場大手企業がやっているような、スタンダードなPR項目を着実に実施していく業務になります。
広報に魔法はありません。一時的に大きくメディアに取り上げられたり、ひとつのコンテンツが驚くほど拡散(バズ)ったりすることはあるにはあります。
しかし、基本的にはそれらも地道で、網羅的な広報活動のうえに成り立っていることがほとんどです。日頃から地道な広報活動をしているからこそ、大きな波及効果が期待できるのです。
王道PRには代表的なものが決まっています。わかりやすく項目にまとめてみました。自社の実施状況とぜひ比較してみてください。なお、本書をこのまま読み進めれば、これらの施策のプランニングやアクションの仕方はすべてわかるようになっていますのでご安心ください。
3)広報のイノベーティブPR
イノベーティブPRというのは世の中に新しいトレンドや気づきを与える、もしくは、競合がまだやってないような強い文脈を打ち出していくPR手法です。
王道PRが安定的な右肩上がりの成長曲線を生み出すシナリオプランニングなのに対して、イノベーティブPRはイメージ的には波状的に広報の大波(ウェーブ)を作り出していきます。サービス業や飲食業であれば、繁忙期直前や季節性(シーズナリティ)に合わせて仕掛けていくのも良いでしょう。
広報は常に挑戦的(チャレンジング)じゃないと駄目か、という質問を受けることがあります。基本的にはそれで正解ですが、すべてにおいて正しいとは言えません。やはり、基本的な広報の地道な活動があって、はじめて挑戦的でイノベーティブな情報発信が世間を動かすとおもいます。
過去にも、たった1つの情報コンテンツが巨大なトレンドを作り出して、世の中を動かしたことがありました。しかし、今もそのブームが続いているかというと疑問です。当時の一過性のブームに頼りすぎたばかりに、廃業したり業態をすっかり変えてしまった企業も見受けられます。広報の基本部分がおろそかになったままでは、一発屋で終わってしまう可能性も高まります。
4)イノベーティブPRの仕掛け方
イノベーティブPRとは勝負をかけるコンテンツや、世の中をあっと驚かすような情報戦を指します。そのため、失敗する確率も決して低いわけではありません。
しかしながら、「本当の失敗とは、失敗を恐れて何もしないことだ」ということを理解しなければいけません。
なお、イノベーティブな広報PRを行うにあたって、自社が世の中にどう思われたいのか、ということをまず自分たち自身に問いかけし、それを徹底的に落とし込む必要があります。でなければ、イノベーティブPRもただ目立つことだけを目的にした、自社のターゲットやイメージを見失った方向性になってしまうことがあります。
5)どちらも正解!王道かイノベーティブか優先順位を決めて動こう
同時に、シナリオプランニングの結果に対して20対80の法則で打つべき情報を絞り込んでいくという作業も行っていきます。
これはビジネスの結果は、全体の20%の成果で生まれている、という考え方によるものです。たとえば会社組織では上位20%の営業マンが全体の8割の売上をあげている、などと考えます。もちろん、全てに同じルールが適用されるわけではありません。ここで紹介した理由は、実施すべき戦略や打ち手にプライオリティー、優先順位をつける大切さを伝えるためです。
時間もお金も資金も無限増にあるわけではありません。とくに中小企業の経営では「人、物、金、時間」の4つに「チャンス・タイミング」を足して、この5つをどう優先順位づけるかで結果や成長スピードが大きく変わってきます。
本当に集中すべきタイミングで、成果を出すべき情報にリソースを集中させることが大切なわけです。その優先順位を決めるのは経営者であり、データ収集やトレンドを研究している広報担当者になります。
すべての情報を同じコストや作業時間をかけて、リリース配信やメディアキャラバンをするのではなく、目的や目標に準じて集中すべき情報やイベントを、メデイアが求めるタイミングに応じて注力していく。そうした戦略的な視点を常に意識することが広報戦略の意思決定者には求められます。
広報活動の具体的な戦略策定プロセス

※弊社でコンサルティング運用時に活用している広報の上流戦略設計フレーム
広報活動の第一歩は目的の明確化にあります。目的を定める。望ましいブランドイメージを策定する。獲得したい顧客やファンを明確にしていく。それらに合わせてメディアの傾向やニーズを把握して、それに合う情報コンテンツを開発(本書は情報クリエイティブと呼びます)を創っていきます。
それをプレスリリースやファクトブックに落とし込んで、実行改善を行いながらメディア発信を繰り返していきます。
また、取材が決まったら迅速に対応しなければなりません。事前対応と事後対応でメディアとの信頼関係を醸成します。そして、関係性を築いたら記者には、新しく開発した情報をまた届けていきます。それをSNSやデジタルマーケティングなどにも転用して、日本中や世界中に広げていく、もしくはバズ(拡散)させていく、というのがスケール感のある広報PRの戦略活動になります。
以下は、実際に現場で活用している戦略策定のプロセスです。ぜひ参考にしてみてください。
広報とペルソナ分析
マーケティング部門ではないので、広報PRにおいてターゲットの細分化(クラスター)はあまり必要ではありません。
1つのやり方としては、攻めるべきメディアを絞り込むことで、設計するべきコミュニケーションワードが変わってくることがあります。
1)広報にとってペルソナとは何か?
育成したいと、知ってもらいたい、では消費者や生活者に対するメッセージも変わってきます。これを、さらに個のアイデンティティ(生活や性格)にまで詳細に絞り込んだのがいわゆる【ペルソナ】となります。
誰か特定の1人を喜ばせたい、幸せにしたいという考え方を持つと、情報クリエイティブがより鮮明にシャープになっていきます。
2)ペルソナのメリットデメリット
一方、個に絞りすぎると利用者やファンが減ってしまうんではないか、という考えも一部にはあります。しかし、実際にはむしろ逆のケースが多いはずです。1人の人間とそのまわりの家族も幸せにできない商品やサービスでは、他の多くの人にも喜んでもらえません。そう考えることが、これからの広報PRでは特に大切になるでしょう。
3)今後ますます情報過多の時代です。
1人が受け取る情報の量は処理できるスペックをすでに超えています。当然、誰のものでもある広域に対するPRコンテンツや情報では、右から左にスルーされてしまうでしょう。
一人の人間をより幸せにするようなメッセージのほうが、メディアやSNS上での伝わり方も早く、共感を持って広がりやすくなります。
広報活動でのマーケティング展開4原則
このように、広報PRをする上ではメディアを理解する以上に、あなたの会社のターゲットを深く研究することが大事です。
あなたに生活者に対する理解がないと、やはり広報活動に具体性が欠けてしまいます。アイデアを導き出すにしても、メディア起点から考える視点と、生活者を起点にして考える視点が必要です。これに社会全体を巻き込むために考えるソーシャルの視点が加わり、広報PRの3視点と呼ばれています。
1)広報PRで購入層にどうアプローチするか
ターゲットにどうアプローチするか。それを考える前に、まずターゲットを4つに区分してください。基本は次の4つです。BtoBでも、BtoCでも基本は同じです。それでは見ていきましょう。
- 無関心層
- 関心未購入層
- 関心検討層
- 顧客・ファン層
2)無関心層
そもそも、あなたの会社や製品・サービスさえ知らない無関心な層です。無関心ですので、関心を持ってもらうためにはかなりのエネルギーが必要です。通常の手法ではスルーされてしまうでしょう。反面、あなたの会社の現在のシェア率にもよりますが、無関心層のボリュームを丸ごと関心ごと変えることで業界勢力図が一変するほどのインパクトを生み出します。
シェア率はもちろん、業界でのポジショニングも売上も加速度的に伸びていくことでしょう。
顧客を創造したり、売上やシェア・拡大を目指すサービスの場合、この層に対してどのような施策を打ち出すのか、ということをまず考えると良いでしょう。
3)関心未購入層
知っているが買う理由や動機がなかなか見つからないのが関心未購入層です。
知っているのに買わない理由はどこにあるのか。
□以下はその一例になります。
・機能面(スペック)に魅力が無い
・競合が強い
・ポジショニングが曖昧
・ブランドやイメージ訴求が弱い
・メディア露出による信用醸成が低い
・権威性が少ない
・課題解決のポイントが明確でない
・文脈(メッセージ)がわかりくい
・導入イメージがわかない
競合が強い場合は、しっかりとコンペティターをリサーチしてくだい。ただ、良くあるのが価格や機能(スペック)だけを調べて、満足してしまうパターンです。しかし、広報PR戦略のシナリオプランニングを行う場合は、それだけでは足りません。機能比較のほかに、プレスリリースで使われているキーワードやキラーメッセージ、それらが掲載されたホームページでの問い合わせへの誘導方法、カタログやパンフレットの比較、SNSの活用事例、クチコミやTwitterでのコメント比較も重要になります。
これらを調査して、どういったPR広報のコミュニケーションアプローチを取るかの戦略策定が決まっていきます。なお、実際にコンサルティングの設計で活用している競合調査の比較表を本書では無料でダウンロードできるようにします。末巻のダウンロードの手引きを参考に、ぜひ入手してみて下さい。
4)関心検討層
知っていて購入を検討しているが、まだ利用していない。そうした関心検討層もあります。関心検討層は最後の一押しがあれば、次のステップの顧客・ファン層になります。そのための施策として広報PRで何ができるのか考えていきましょう。
5)顧客・ファン層
そ最後の1つが購入している既存顧客やファン、あるいは休眠顧客へのアプローチとなります。
図にすると左記のようになります。広報PRを戦略的に活用して、どこを、どのタイミングで切り取るのか、誰に向けてメッセージ開発をおこなうのか。これらの戦略戦術を考える上で役に立つはずです。参考にしてみてください。
広報とデジタルマーケティング
上場している企業、もしくはこれから上場する企業でも、デジタル分野やモバイルに投資をしている企業と、投資をしていない企業では4倍ほどの時価総額の開きがあると言われています。広報戦略にもそうした視点が不可欠です。
1)広報に求められるスキルも高まっている
そういった意味では、多種多様なデジタルメディア、もしくはオールドメディアが広がっているなかでファンやブランド認知を獲得することの難易度はかえって上がっていると考えられます。
同時に担当者個人のスキル、知見というものへ求められるレベルも上がっています。ただ一方で、やはり王道である広報PRの大切さや必要性も変わってはいないんですね。よい情報を作って、よいプロダクトに合わせて、コミュニケーションデザインを明確に消費者に届けるために、メディアやSNSの力を最大化していく。このポイントは絶対にずらしてはいけないと思うわけです。
2)広報はストーリーテラーであれ
そのため大切になるのは、やはりストーリーです。テレビに出続ける、もしくはメディアに出続ける企業というのは、やはりストーリーが秀逸でしっかりと作り込まれています。
広報担当者はそれを理解して、ストーリーテラーであることを強く意識してください。特にこの本を読者の中には中小企業の社長、あるいは底に所属するマーケティング担当や広告プランナーであることも多いと思います。
3)広報は信頼と知名度をもたらす働きがある
こうした中小企業に足りないのは知名度と信頼度です。この知名度というものは、今はデジタルメディアを介して向上していくことができます。信頼度というのも多くのメディアに露出することで、消費者や生活者とのあいだで培っていくことができます。この2つを同時にできるのが広報だと思ってください。
いくら優れた情報や製品やサービスでも、その業界の人じゃないと絶対理解できない、興味がそそられない、では利用者を多く広げていくことはできません。逆にニッチな産業であっても、ストーリーの組み立て方次第ではメディアの関心を広く獲得することができます。
4)テレビ向けの広報では専門知識はひけらかすな
とくにテレビのディレクターなどは業界の専門家ではありません。いくら「これは世の中にとって革命的な製品なんです」と力説してもわからない。わかなくて理解できないから興味もそそられないのです。それをあなたが翻訳してわかりやすく、そして伝わりやすくしていく。それこそが広報担当者の腕の見せ所です。そのためのストーリーの作成になりますが、そんなに難しく考える必要はありません。
広報は生活者や消費者との接点づくり
私が思うに、顧客を把握せずに広報することは難しい、ということです。顧客が生活の中で何を考え、何を経験し、何を求めて、何を感じているか。これらを知ることは広報PR担当者の基本中の基本です。
無数のデジタル上の情報に触れたところで、リアルな生活者目線がないと、やはり本当の意味での「刺さる広報」はできないと思います。
メディアというのは、とうぜん消費者や生活者のほうを見ているからです。決して、企業サイドの都合だけを鑑みることはありません。
そのためにも、まずあなた自身が顧客や生活者が何を求めているのか、それを徹底にリサーチすることが大切なのです。
広報に求められる組織体制

ここでは、広報部門の具体的な組織づくりについて解説していきます。
活動の特性から、できれば企業の社長か、社長に準じる責任者が広報の重要性を理解していることが大切です。できれば、そのまま広報の統括責任者となることが望ましいでしょう。そのほうが広報PRというものがスムーズに確立しやすくなります。
また、企業内の広報PR担当者はそのようなかたちで社長を誘導、もしくは協業パートナーとしてプロジェクトに取り組んでいくことも大切です。
【超重要】フロー情報とストック情報
また、広報にはフロー情報とストック情報っていうのがあります。どちらも戦略策定に大切な知識なので理解してしまいましょう。
1)フロー情報とは?
フローというのは目の前を流れていく情報です。例えば、テレビというのはよくPR業界内では「打ち上げ花火」などと表現されます。
これは、芸能人を使った大規模な記者会見イベントなども同じです。こうしたイベントや記者会見は一見華やかですが、フロー情報の要素が強いと言えるでしょう。そのときはすごく盛り上がりスポーツ紙やネットニュースなどに瞬く間に情報拡散します。テレビも複数の局のカメラがやってきて、露出回数も多くなります。ですが、翌月になるとすっかり忘れられてしまう、ということが起こります。パッと打ち上がって、大きく広がるものの、一瞬で消えてしまう。これが打ち上げ花火の印象と重なって、そう呼ばれているわけです。
1)ストック情報とは?
一方、ストック情報というのはどういうタイプを言うのでしょう。
これは、ネット上に蓄積されていくメディア露出の情報のことです。ネット上に蓄積されていくと検索に引っかかったり、SNSでタグ付けされるなどして、そこから御社サイトや店舗にスムーズにアクセスされる導線が生まれます。さらに、ネットメディアにアーカイブが残ることで、長いときには10年以上も顧客誘導の装置として働いてくれます。
3)行列が止まらない表参道のパンケーキの事例
例えば、私たちがご支援していたある人気パンケーキ・ショップがありました。表参道や渋谷を代表するパンケーキブームの火付け役となったお店です。テレビをはじめ、メディアにも数多く取り上げられました。
味も美味しく、サービスも一流。まさにブームの火付け役にふさわしい店舗でした。それでもオープン3年目になると、メディアの取材はじょじょに減っていきます。オープン時期に比べれば、メディアの引き合いは1/10以下です。
ところが、ついこないだお店の前を通ってみると、今でもお店の開店前から行列ができているではありませんか。「どうしてこんなに長く愛されているのだろう」。仕事柄、どうしても興味が出て、店のオーナーさんに話を聞いてみました。すると、このような答えが返ってきたのです。
『メディア露出はたしかに減りました。それは、予想していたことです。しかし、ネットニュースやブログ上には過去に取材されたコンテンツが今でも掲載記事として残っています。それらの記事は、東京の美味しいスィーツ10選であったり、東京で食べたいこだわりのお店、だったりします。昔からのファンはもちろん、東京に上京したさいにこうした記事を検索して、たくさんのお客さんが今でも来てくださっているんです』
ストック情報がお店にお客さんを連れてくる
こうして、地方から東京に観光や出張に来たなら、絶対食べたいスィーツ、そう聞かれたら思わず朝から行ってしまいますよね。
そう、もうおわかりですね。当時はフロー情報としてテレビ、新聞に出たいたものがグルメサイトやトレンドメディアにアーカイブされていきました。テレビや新聞と違い、ネット上のコンテンツはGoogleへのSEO対策もあり、長期間たっても消えることはありません。むしろ、人気コンテンツほど長い間アーカイブされていく傾向があります。
さらにネット記事がInstagramやブログに転載されたりすることで、検索される機会がどんどん増えていくわけです。
結果、私たち旅行するときに地元の美味しいお店をネットで検索するのと同じように、上京する感度の高い女性たちが、「東京 おいしいもの」「東京 スィーツ」などのワードで検索します。すると、そのパンケーキ屋さんの記事が大量に上位表示されている。生クリームがふんだんにトッピングされたふんわりホットケーキの記事や、店舗情報が掲載されたホームページにたどり着き、「ああ、おいしそう。食べてみよう」となり、朝から行列することになるわけです。
フロー情報×ストック情報=マスクチPR
このフロー情報とストック情報の掛け合わせを私たちは「マスクチPR」と呼んでいます。
1)広報の成果はアーカイブを目指せ
どちらか一方が良い悪いではありません。マスメディアとクチコミの力で大きな情報連鎖の波を作り出して、ネット上にアーカイブされることで長期間にわたり影響力を保つ手法です。
このように、広報を単に一過性の手法として考えるのでなく、統合型PR戦略という視点から、企業ブランディング、事業マーケティングを絡めながらファン化、ストック化そのものを目指していくのが良いでしょう。
2)デジタル面での強化も大切な広報の仕事
そうした意味では、広報担当の仕事としてはWEB上のコンテンツ整備や改善、場合によっては問合わせ増に向けたリニューアルを行うことも大切です。中小企業であれば、経営者が広報の陣頭指揮を取っていたり、直轄部門で指示を直接している可能性があります。その場合は当然、経営者と広報担当者が監修責任をおこなってください。
ちなみに、私の会社では経営者である私みずからが忙しい合間を縫ってウェブデザインお監修からコピーライティングのチェックまでおこなっています。それぐらい、自社ホームページというのは広報にとって大切になるからです。その理由は主に次の3つです。

広報担当が自社ホームページに積極的に関わった方がいい3つの理由
このように、広報は企業としての価値を広く「知らせる・報じる」という役割があり、その目的は円滑な経済活動を行っていく、というところにあるのです。
そうした意味では、先程お話ししたとおり、以下の理由からホームページの表現方法やリニューアルも、広報が管理するべきだと私は考えます。
1)すべての問い合せの「顔」である
2)事前取材で必ずチェックされる
3)選ばれる企業のホームページには広報目線が不可欠
1)すべての問い合せの「顔」である
ホームページは会社やサービスの玄関であり、すべての顔になります。弊社のホームページをご覧いただくと分かる通り、全てのサービスを課題別にわかりやすく解説しています。弊社の場合ですと、年に4回は改善のためのプリリニューアルを重ねています。
また、プレスリリースやネット上の記事を読んだ後、次に見るのもホームページです。そこに必要な情報があれば、そのあとの問い合わせや商談までのプロセスがスムーズになります。
新聞社や出版社から著作権を得たうえで露出実績をアーカイブしておくのも非常に有効です。それが難しいようなら、以下のように文章で掲載情報を告知しましょう。
・20XX年5月号の週刊ダイヤモンド「将来有望のITクラウドサービス50」で、弊社クラウドサービスが紹介されました
・20XX年6月号の朝日新聞「社長の経歴書」で弊社代表の松浦が紹介されました
こうすることで、次に取材を考えるメディアの安心感を醸成できるうえ、サイトを訪れたユーザーのリード獲得にもつながります。
2)事前取材で必ずチェックされる
実際、記者もテレビディレクターも事前取材をおこないます。御社のプレスリリースやネット上の記事を読んだ後、次に見るのがホームページです。そこに必要な情報があれば、そのあとの取材までのプロセスがスムーズになるからです。
そのとき信用に値しないサイトであったり、サイトそのもののデザインが古すぎたりすると、少し敬遠してしまうかもしれまません。そうしたことを避けるために、ウェブ上でしっかりと自社の会社概要が最新のサービス情報をアップしておきましょう。
3)選ばれる企業のホームページには広報目線が不可欠
逆に、一番やってはいけないのはデザイン会社に丸投げすること。そもそも、WEB制作会社はデザインのプロであって、広報やマーケティングのプロではありません。そこを見誤ってしまうから、スタイリッシュなデザインだがユーザーの知りたい順番にコンテンツが並んでいなく、結局どのターゲットになにを伝えたいホームページなのかわからない、という結果になってしまいます。
とくに、(1)会社が伝えたい情熱・パッションや、(2)サービスの差別化要素、(3)製品のセールスポイントは経営者や広報担当が一番よく知っている部分です。
ホームページは会社の顔であり、しっかりと想いを込めれば売上を伸ばす最大のツールとなります。それをデザイン会社に丸投げすれば、営業数字を上げたいといいながら営業資料を一切作らないのと同じです。
広報を活用してマスコミに情報伝達する8つの方法!現役プロ直伝

広報では基本的にマスコミを通して一般社会に情報を提供していくことが多いです。広報の役割が宣伝や広告に依存していた時の名残でもあり、やはり一番効果的でもあるからです。
最近では、インターネットによるダイレクトな大衆への情報伝達も盛んに行われています。が、やはり一般社会のマスコミメディアは大きな存在です。テレビや新聞・雑誌・ラジオといった媒体へのアプローチが、広報部の大事な役割とも言えるのではないでしょうか。
*参考リンク:テレビPRの全技法をマスターしよう
1)テレビディレクターの1日
たとえば、広報にとって一番露出したいメディアがテレビです。
そんなテレビのディレクターというのは、結構新聞や雑誌を見ています。Yahoo!ニュースなどのネットメディアは、ほぼずっとチェックしていると考えて良いでしょう。
私が放送作家時代には、山田邦子さんがMCをつとめるあるお昼の番組の企画会議に参加させてもらっていました。テーブルにはその週の主要新聞や女性誌がズラリと並んでいたのを覚えています。
それらを、私たち番組の演出に関わるスタッフがおもむろに手に取り、ページをめくりながらディレクターとの雑談形式で番組のコーナーを決めていくこともありました。
今は、当時とはだいぶ風景もかわって主役となるのはノートパソコンやモバイルアプリです。それらのツールでトレンドやニュースを閲覧しながら企画を考えていきます。面白いニュースは、そのままリンクをたどって該当するホームページやYouTube動画まで閲覧できるので便利です。それで、事前取材の半分は終えることができます。
そうしてテレビのディレクターや演出をサポートする放送作家というのは、常に情報を収集しています。
2)テレビディレクターの情報収集方法
特に帯番組(月曜美から金曜日までの平日に放送される番組)とか経済番組の担当ディレクターといていうのは常に忙しいので、冒頭でお伝えしたとおり結構ネットニュースを見ています。
その他、私の知人のテレビ関係者がチェックしているのが日経MJです。日経トレンディ、@DIME、SPA!などもチェックしています。
それから、ビジネス系テレビの関係者だと日経産業新聞をチェックしている人も多いで。本紙と違いニッチな情報が埋もれていたり、記者がしっかりと情報を収集して取材しているためです。ベンチャー企業や町工場の社長などが特集されているため、ディレクターも取材していて楽しい、という理由もあります。
3)テレビディレクターは中小企業の広報担当者を重宝している
実は大手企業は取材しようにも、番組企画書を提出しなければならなかったり、社長のスケジュールをおさえるだけで1ヶ月以上掛かったりと結構面倒なことが多いのです。反面、中小企業は社長がOKと言えばすぐ決まるなど、テレビのネタにしやすいのです。
あとは、在京キー局であれば東京新聞は確認します。ローカルネタはそのエリアの視聴者のためには必須です。
ネットニュースは好みが分かれるところですが、今はアプリを入れていればニュースもトレンドもスクロールだけ確認できます。ディレクターは情報収集として右から左にタイトルだけを見ている、ということが多いと思います。
4)メディアの事前取材を突破しよう
取材の前に、必ず事前取材というのがメディアの場合は行われます。
私の経験から言えば、この事前取材で実2割ぐらいのクライアントは取材がNGになってしまうことがあります。
①事前取材を突破する方法
事前取材をクリアする方法を3つご紹介しましょう。まずは、「事前取材が必ずされる」ということを事前に広報担当が理解しておくことです。そして、事前取材がされたとき、きちんと内容や魅力を伝えられるようファクトブックやヒヤリングシートをまとめておくなど、あらかじめ用意しておくことが大切です。
②ヒヤリングシートを用意しておこう
なお、ヒヤリングシートとはQ&Aシートとも言われ、事前にメディアから聞かれることを想定して、質問とその模範回答をワード文書などにまとめておくことです。これを目の前に置いておけば、聞かれたことに一語一句慌てることなく答えることができます。自分だけでなく経営者などに渡すこともでき、事前取材で商品やサービスの魅力を伝え忘れる、ということもなくなります。なにより「自信」を持って記者やディレクターの質問に答えられます。
③ヒヤリングシート作成のポイント3つ
まとめると、ヒヤリングシートのメリットは次の3つです。
ヒヤリングシートのメリット3つ
・慌てることなく説明できる
・魅力を端的に伝えられる
・自信を持って答えられる
また、明確に伝えられるようヒヤリングシートは短文で落とし込まれているほうが良いでしょう。これは現場で培ったテクニックですが、長文だと必要な箇所が見つかりにくく、受け答えに時間がかかってしまいます。それぞれの要素を箇条書きにまとめておくことをお薦めします。
④その他の事前取材のポイント
さらに事前取材では「取材対象となる人や場所」を事前に用意しておくことも大切です。とくにテレビ取材の場合は非常に大事になります。繰り返しになりますが、テレビが求めるのは「動きのある画(え)」です。撮れ高という業界用語があるほど、どれだけ素材として映像が取れたかを求めます。取材が同じ場所で終わってしまうと撮れ高が足りなくお蔵入り、ということも起きます。
⑤実際にあった事前取材の対応シーン
たとえば、弊社のクライアントであったあるクラウドサービス企業の場合、働き方改革や外国人採用に合わせてフジテレビの報道番組の取材が入りました。その際、番組が求めたのがクラウドサービスの導入先への取材でした。クラウドサービスのようなITサービスの場合、パソコン画面のショットだけで1分以上の番組コーナーは持ちません。視聴者が飽きてしまいますし、そもそもそんな映像を誰もテレビに求めていません。動きがなく、撮れ高も少なくなります。これでは最悪、撮影してもお蔵入りです。
テレビのディレクターというのは「撮れ高に乏しいためのお蔵入り」を、もっとも嫌います。番組クルーとして撮影するのはディレクターだけではありません。カメラマン、音声、場合によっては照明やアシスタントデジレクター、ロケバスなども動きます。ひとつのコーナーを企画から撮影、さらには編集するのに300万以上の予算が動くわけです。それをすっかりドブに捨てるわけです。自身の評価にもダイレクトに関わります。
こうした理由から、テレビのディレクターはプレスリリースの内容を100%信じることはせず、事前取材を必ず行うわけです。また、執拗など場所や人の取材ができるかにこだわります。それには、こうした理由がきちんとあったわけです。
⑤事前取材で大切なのは「場所」「人」「時間」の情報提供
なお、先程のIT企業様の場合は、結果的に弊社のPRコンサルタントが前日夜遅くまで交渉を続けて、ようやく外国人就労者を雇っているビル清掃会社の社長の快諾をえて、導入企業として取材できるようにアテンドができました。これがなければ、テレビ取材はされることはなかったでしょう。
それを避けるためにも、事前取材の段階で、広報担当として絵が取れる「取材場所」を提供したり「取材できる人」を用意しておくことは必要です。
5)なぜ、今なのか?を大切にする
広報PRの戦略シナリオプランニングの場合、「何故、今なのか」も絶対に明確にしなければなりません。シーズナリティもそうですが、「今、取材すべき」というタイミングを外してはいけないということです。
①ホットなーキーワード+ナゼイマ
記者やディレクターに、「今だからこそ取材すべきですね」と共感を持ってもらえたら一流のPR戦略プランナーでしょう。「何故、今なのか」を明確に伝えなければ、「じゃあ、来年に撮りましょう」となってしまうからです。たとえばこれから未来のタイミングであれば、「働き方改革」「AI」「キャッシュレス」「音声認識」「自動運転」「ロボット」「5G」などのキーワードが大切です。また、海外からのインバウドにからめて、まだまだ「民泊」「自動翻訳」「シェアリングサービス」「自動マップ案内」、さらにはまったく新しい「日本の観光名所光」なども注目をあつめるはずです。
出産率の低下に注目するのであれば、「家事代行」や「男性の家事参加」であったり、医療、残業の問題などにもフォーカスが及ぶ可能性があります。大切なのは、こうした感度を磨きながら、しっかりとメディアニーズに重ね合わせて「今、取材しなければならない」タイミングを私たちから伝えていくことが大事なのです。
②4つの視点で情報提供しよう
これを、私たちは第三の目性をより強調するために「メディアの視点」「社会の視点」「ターゲットの視点」「自社の視点」の4軸マトリクス・プランニングと呼んでいます。
メディアの視点は先程お話ししたタイミングを中心とした「何故、今なのか」をきちんと用意すること。社会の目線とは、その情報がはたして世の中の役に立つのか。そうした社会性がきちんと備わっているかを判断する視点です。ターゲットの視点とは、あなたが狙うべきターゲットが興味を示す、伝わる情報なのかを精査する視点。自社の視点とはきちんとゴール設定をして、その目的を果たせる情報かを検討する視点です。
これら4つの軸を縦横で結びながら情報は開発しなければなりません。工数と時間が掛かる作業かもしれませんが、メディアやターゲットがぴくりとも動かなかったでは本末転倒です。あなたに対する社内での評価も厳しいものになってしまいます。
*外部リンク:代表上岡が「第三の視点を元にメディア露出する8つの戦略」というテーマで取材されました(出典元:PLANB)

【プロ直伝!】PRストーリーを作る8つの大切な要素
広報管轄でマスコミに情報をスピーディーに伝達するために、PRストーリーを作るときには、8つの大切な要素があります。
1)なぜ今か
まず、なぜ今なのか。「ナゼイマ」とよく私たちは情報コンテンツを創作するときに口にします。このナゼイマをしっかりと説明できないと、「せっかくの面白いネタなので、タイミングが来るまでストックしておこう」となり、「じゃあ、今度取材しますね」と言われてしまいます。
しかし、情報は常に生まれては消えています。結局今度が来ることは永遠にない、ということになりがちです。
そのため情報とセットで「なぜ今か」という理由を明確に打ち出すことが必要なのです。
2)なぜ弊社でないといけないのか
同じ意味で、「なぜ弊社でないといけないのか」も意外と見落としがちな視点です。
情報だけ切り取られて別の会社で取材する、ということも実際のPRコンサルティングの現場では起こっています。そのため、この点もしっかり説明できるようにしましょう。
3)市場での優位性はなにか
他社にも同じようなサービスがあるのであれば、自社と違う視点やどう生活者や導入企業にとってメリットがあるのか、ということを取材シーンを想定して明文化しておくことが大切です。
他社の追随を許さないオンリーワンやナンバーワンであれば、それを証明するエビデンスも用意しておきましょう。
4)どのような取材ができるのか
誰に取材できるのか、誰に話を聞けるのか、も事前に準備しておきたい点です。
社長だけじゃなく、開発者であったり利用者の声、場合によっては導入先にインタビュー可能かどうかもしっかりと確認をとっておき、情報提供時やリリースにその点を文章や写真で説明しておきます。これだけで、通常のリリースやコンテンツとは差別化が図れる可能性があります。
5)どのような取材ができるのか
今後どうなっていくのか、という将来の展望や広がりを伝えることも大切です。
例えば、すべてが音声認識されたらどうなるのか、キャッシュレス時代が到来したらどうなのか。この先の未来やスケール感をしっかりと用意しておくと、多角的な情報が増えて良い情報になっていきます。
このように、PRストーリーをつくるときは5つの要素をまず満たしていくように考えていきます。
その上で、「意外性」や「ギャップ」というものを盛り込んでいくと良いでしょう。
6)ストーリーPR初級編 意外性とギャップ
テレビ露出がプレスリリースで決まる割合は全体の3割です。残りの7割はディレクターがみずから見つけてきます。情報は先程紹介した新聞や雑誌であることがほとんどですが、人づてにネタが持ち込まれることもあります。
たまに番組の構成会議でプロデューサーからじかに指名されたり、スポンサーサイドから依頼されて作ります。PR会社や制作会社からの企画の持ち込みもあります。番組企画が取ればディレクターが取材する可能性は高まります。例えば、私たちはテレビ局を回って番組企画書を持ち込んでいきます。
これを業界用語でメディアツアー、あるいはメディアキャラバンと呼びます。
7)ストーリーPR中級編 必要な3つの考え方は次を意識しましょう。
①インパクト
インパクトという言葉は抽象的ではありますが、ストーリー作りではとても大切です。このことを私はよく「登場感」と表現します。話を聞いたり目の前に出たときに、「ドンッ」と音が響いて聞こえるようなインパクト。そうした登場感を演出することが大切です。具体例を挙げるなら、以下が挙げられます。
・別府温泉の温泉遊園地
・うんちドリル
・焼肉採用
・ハウステンボスのロボットホテル
②エンターテイメント性
情報やストーリーは興味喚起されなければ、途中で飽きてしまい話を最後まで聞くことができません。そのためには、ストーリーの「冒頭の設定」や起承転結の「転」に工夫を加えましょう。
たとえば、最初は引きこもりだったが、親父の会社を引き継ぎ、引きこもりだった頃の危険を活かして見事V字回復させる、などのストーリーは最初から最後まで思わず引き込まれてしまいます。
③社会性
社会にどのように役に立つのか。将来の日本経済や世界にとって、どのような影響を与えるのか。そうした「社会性」は広報PRにとってとても大切な要素です。あなたの情報やストーリーにク割ることができないか常に意識しましょう。ストーリーというのは「インパクト」「エンターテイメント性」「社会性」の3つが大事になります。また、これら3つを満たしたストーリーというのは、人から人への伝搬して情報連鎖を生み出しやすいと言われています。ぜひこの3つのポイントを理解して活用していきましょう。
8)ストーリーPR上級編 旧態依然の体勢と戦うストーリーは受けやすい
最後は上級編です。難しい説明は抜きにして、具体的に1つ、やりやすい方法をご紹介しましょう。
子供から大人まで楽しめるテレビが好むのは、わかりやすさです。
自分たちは変化を起こそうとする側で、旧態依然の体勢や時代と戦っているんんだ、というストーリーはそのため非常に好まれます。
たとえば、次のようなストーリーは評価対象になりやすいでしょう。
- 旧体制と戦いながら、赤字会社をV字回復して黒字化
- 旧態依然の業界の中で奮闘して、日本中の注目の的に
- 古い常識にとらわれた人々が多い中、誰もが知る画期的な商品を開発
①事例紹介_旭川動物園はなぜ注目を浴びたのか
旧体制と戦うというストーリーで注目を浴びたのが、北海道の人気観光スポット「旭山動物園」です。1967年に設立された旭川市旭山動物園は日本中に知られるようになりました。それは動物の本来の習性に着目して、野生のままにダイナミックな動きを鑑賞できるからでした。
今でも旭山動物園ツアーは常時満席だそうで、予約がなければ入れない日もあるといいます。しかし、そんな旭山動物園も数十年前までは万年赤字の動物園で、来場者は30万人程度。閉鎖も検討され、社員への給与支払いも困るほどでした。
このとき、改革に名乗りを上げたのが、当時の旭山動物園の改革責任者であった坂東元さんでした。その後、NHKの人気番組プロジェクトXなど多くのメディアで紹介され、1997年以降は入園者数が増加、北海道を代表する観光地として定着していきました。日本国内だけではなく海外からも数多くの観光客が訪れて、一時期は恩上野動物園を抜いて日本一の月間入園者数を記録したほどです。今でも入園者数は300万人を超えているといいます。

※日本中から観光客が訪れる旭川市旭山動物園の行動展示風景
今でこそスタッフで協力して動物園を盛り上げていますが、当時は誰もが戸惑い、反対も多かったといいます。そうした旧体勢と戦い、理想を追求して奮闘する板東さんの姿が感動を呼び、多くのメディアを引きつけたわけです。
このように、「旧体制と闘ってるんだよ」ということを、しっかりとストーリーと文章で表現するやり方は、実はどの業界でも非常にわかりやすいです。
②事例紹介_成功事例ケーススタディ
なお、弊社の事例でいえば、以下などのケーススタディもあります。
- 主婦を救え!古い業界と戦う「AIを活用したまったく新しい家事代行」
- インバウンドの活性化を!旧態依然のあつれきと戦う「キャッシュレスサービス」
- 日本の古い常識を戦え!「誰もが求める画期的なシェアリングサービス」
- 飲食業界の古い体質を変えろ!果敢な挑戦を続ける「新発想レストラン」
- 常識に囚われるな!子供たちの未来のために戦う「小学校教育界の革命児」
いかがでしょうか。どれもタイトルを聞いただけで、続きのストーリーを聞きたくなりませんか。実際ここに挙げたいくつかは「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」「カンブリア宮殿」といった経済番組に特集をされています。もちろん、新聞や経済誌にも引っ張りだこです。
スターウォーズや下町ロケットを思い出してください。変化を起こそうとして逆境と戦っていく姿というのは、映画もそうですが、主人公としてスポットライトを当てやすくストーリーの組み立てもしやすいわけですね。
③ストーリー開発のフレームワーク
こうしたストーリーを生むためのフレームワークには。どのような順番があるでしょうか。それがあれば、誰でも比較的スムーズにアイデアを生み出すことができるはずです。
まずは、どのように世の中を変えたいのか、というメッセージです。業界や世の中を変えたい、という行動はそのまま、変化へのチャレンジや葛藤に直結します。またスケールの大きな物語には人々は興味関心を引かれます。スターウォーズなどもそうです。もし、あの物語が1つの小さな島の話なら、誰もここまで心を動かされなかったでしょう。
④ワールドビジネスサテライト、ガイアの夜明け、カンブリア宮殿をどう動かすか
変化が訪れたあとは明るい未来、たとえば一般消費者や生活者にどのようなメリットが及ぶのか、日本経済に未来にどのように寄与できるのか、をしっかりとメッセージとして工夫して明文化することです。
エジソンには「世界中の夜を明るくしたい」という気球規模の人々の幸せに対する夢がありました。
日本の民間企業経営の基礎を築いた松下幸之助氏には「水道哲学」という日本中の人々の生活を良くするための哲学がありました。
こうした、未来への責任を明文化することは、メディア誘致にとって最後の一手になります。これがないと、「ただ情報が奇抜なだけ」あるいは「変わったリーダーの迷走」になってしまう恐れがあります。
⑤ポイントは社会の革新者というストーリー
そうならないために、「社会全体に責任を持つ革新者」としてのイメージを訴求するため、3点を意識して考えていくと良いと思います。
1つは先程紹介した変化後の未来は何か、です。
もう1つは、将来どのようなかたちで業界、もしくは日本を変えていきたいのか、といったヴィジョンを明確にすること。
そして最後の3つ目が、どのぐらいの事業規模のインパクトがあるのか、ということを数値として具体的に描くことです。
とくに経済番組系テレビをはじめ、週刊ダイヤモンド、週刊東洋経済、日経ビジネスといった三大ビジネス誌もこの3つがあることで、非常にモチベーションが喚起されて動きやすくなります。これを、私たちは「文脈を作る」と表現することがあります。
文脈形成についてのまとめ
まとめますと、文脈形成とは以下の3つです。
1)未来へのメリットは何か
2)将来どのようなかたちで業界もしくは日本を変えていくのか
3)どのぐらいの事業規模やインパクトがあるのか(売上規模、利用者、業界変化)
また、それら3つを支える3本の柱として、次の3つのことを考えてみてください。
まずは、その旗手としてあなたやあなたの会社が名乗りを上げる理由はなにか。取材の中で必ず聞かれる要素です。「ただ、なんとなく……」では取材するほうもガッカリしてしまいます。事前に用意しておくのが良いでしょう。
広報部門の役割と7つの仕事内容

まとめとして、最後に広報の主な仕事内容をもう一度おさらいします。
1)広報活動
●商品・サービス・企業の広報活動
●地域社会・地域団体などに向けた地域広報活動
●海外向け(グローバル)広報活動
2)マスコミ・報道対応
●記者発表やニュース・リリースなどによるマスコミへの情報提供
●メディアからの取材申し込みに対する対応と、取材・撮影への立ちあい
3)PRイベント
●企画・実施やセミナーやシンポジウムの開催 ・工場見学会(オープンオフィス)
4)出版物や社内報などの制作
●広報誌・社内報・会社案内など各種印刷物の企画制作 ・ビデオや映画などの企画制作
5)IR
●プレスリリースの作成や、企業トップの講演・スピーチ原稿の準備など
●投資家や株主、アナリストに向けた広報活動
●社会貢献、文化支援・寄付や協賛などの活動
6)広報運用後の効果測定
PRの効果測定は、「露出の質と量」「行動変化」「意識変化」の3軸で考える必要があります。
広報活動でどれだけメディアにリーチして、その後の消費者の「行動」や「意識」が変化したかを3つの軸で測定すること必要です。
- (1)露出の質と量
- (2)行動変化
- (3)意識変化
7)戦略策定と経営善循環
広報担当者がトップ、いわゆる経営者の創業時の理念や将来への展望を共有して、社内に浸透させていくというのも大切な仕事です。そのため、経営者とは常に緊密に連携して、パートナーとしての情報交換を最低月に1回は行ったほうがいいと思います。こういうかたちであなたが目立てば、全社から情報も自然と集まりはじめます。
□結論 広報は大企業だけでなく、特に中小企業の企業成長を左右することもある
広報部の仕事は、商品・サービスの広報活動からマスコミ対応、IR関連、PRイベントなど多岐にわたる重要な業務を行います。
企業における様々な活動の重要な役割を担っているため、場合によってアウトソースするだけではなく、自社で体制を構築することも長期的に見れば重要なポイントになるでしょう。
なお、私たちフロンティアコンサルティングでは、広報を外部からサポートするだけでなく、人材育成や新規部署立ち上げ支援も行っております。興味がある方は私たちのサービス内容もぜひご覧下さい。