PR会社と広告代理店の仕事や特徴の違いを現役記者が解説
PR戦略とは
3分で分かる「PRの基本」
2023.04.05

PR会社と広告代理店の仕事や特徴の違いを現役記者が解説

PR会社と広告代理店の違いを1分で説明できる人は意外と少ないもの。

PR会社というと「PRする会社」だから広告代理店と同じだと考えている人もいるかもしれません。しかしながら、PR会社は広報を専門とする会社であり、広告代理店は広告が放送や出版、掲載されるまでの手続きを行う会社。そこには、明確な違いがあります。

この記事では、そんなPR会社と広告代理店の明確な違いや上手な活用方法について、最新情報を交えながらポイントを詳しく解説します。

なお、筆者は業界歴33年。「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「ワールドビジネスサテライト」「王様のブランチ」の放送作家や日本テレビ「ストーリーランド」の脚本家などを手掛けてきました。

当記事では、そうした経験やノウハウを踏まえつつ、元オフィストゥーワン所属の現役記者へのインタビュー内容をもとに、大手広告代理店のメリットデメリットから広告業界やテレビ業界の裏話まで、最新版としてここでしか読めない独自の内容に仕上げています。

 

PR(Public Relations)とは?

PR会社とは

和製英語の「PR」という言葉は、宣伝するというニュアンスが日本語にはあります。

そのため、勘違いしやすいのですがPRは「Public Relations」の略であり、自己宣伝という意味はありません。Public Relationは、社会の人々から理解してもらい、信頼関係を築きあげ、最終的にはファンになってもらうために行う行為です。そのため、日本語に訳すと「宣伝」よりも「広報」に近い意味になります。

*こちらも人気:テレビ新聞をドンドン呼び込むプレスリリース7つの書き方

 

PR会社と広告代理店の特徴や仕事内容の違い

PR会社と広告代理店の違い

PRと広告の違いは支払うコスト、つまりお金が発生するかどうか

PRも広告も、企業や組織・団体の商品・サービスを知ってもらうための活動であり、そのためにマスメディアを中心に活用します。マスメディアを利用する場合、PRと広告の大きな違いは、メディアに掲載してもらうためにメディアに対してお金が発生するかどうかです。PRの場合、メディアに価値がある情報だと認識してもらうことに力を注ぎます。一方、広告は掲載元にお金を払うことで掲載してもらいます。

PR会社はクライアント企業の「広報・ブランディング」を担当

PR会社は、クライアント企業の宣伝というよりも広報を担当しているといっていいでしょう。PR会社はクライアント企業に対しメディアに取り上げてもらえる効果的な方法をアドバイスしたり、メディアに対してクライアント企業が取り上げてもらえるような働きかけをしたりします。メディアに対して影響力を出せるプレスリリース能力や、ノウハウを持っているかがPR会社の強みになります。

広告代理店はクライアント企業の「広告・代理人」を担当

広告代理店は、クライアント企業の広告を制作、そして実際に放送、出版、掲載されるまでのプロセスを代行するのが仕事です。広告を利用した宣伝活動は、テレビのコマーシャルや新聞・雑誌紙面、インターネット上にある広告のバナーなどの広告枠を購入することで行います。購入するにあたって仲介を果たすのが広告代理店の仕事です。

*関連リンク:より戦略の上位にある「広報戦略」を3分で理解しよう!

 

PR会社と広告代理店のメリットデメリット

PR会社のメリット

だいぶ浸透してきたPR会社と広告代理店の違いですが、まだまだ誤解も多いもの。まず、
取り扱っているフィールドが違います。広告代理店の主な仕事内容としてはこのようなものがあります。

  1. プロモーション戦略の企画立案
  2. 新聞広告の作成と出稿
  3. ネット広告の作成と出稿
  4. テレビCMの作成と出稿
  5. ラジオCMの作成と出稿
  6. 屋外広告の作成と出稿
  7. 雑誌広告の作成と出稿
  8. コンビニでの店頭キャンペーン
  9. 量販店での店頭キャンペーン

 

一方、PR会社には「大手PR会社」と海外イベントやコスメビューティー、スポーツなど得意分野を活かした「専門PR会社」の大きく2つの種類があります。ただ、どちらも主な仕事は以下のようなものです。

  1. 広報戦略の企画立案
  2. ニュースリリース発表
  3. PRイベントの実施
  4. 商品発売の報道発表
  5. 新聞記者への取材依頼
  6. TVの報道・情報バラエティー番組への取材依頼
  7. 雑誌・WEB・ラジオ番組への企画提案
  8. コラムニストへのサンプリング
  9. 生活ジャーナリストへのサンプリング
  10. 各記事の論調分析
  11. 報道からの取材対応窓口

 

このように、自社の商品・サービスを広めていく上で、「広報PR」と「広告」はまったく別物のであるという認識が必要です。

PR会社の得意分野は段階的な情報発信。一方、広告代理店の得意分野は瞬間風速を上げる情報発信です。PR会社は時間をかけ、段階的にニュース発信をして話題を作っていくことが可能です、広告代理店は、短期間に認知をあげるなどのインパクトのある広告展開が得意です。

また、各PR会社、各広告代理店によっても強みは違います。インターネット広告に強みをもっている会社、ある媒体で話題を作るのが得意なPR会社などがあります。ですので、できるだけ多くの会社から自分にあったPR会社、広告代理店を選択するとよいでしょう。

PRを活用した広報活動は余計なコストがかからない

PR会社を活用することのメリットは明確です。

メディアに対してコストがかからない
客観的な評価がされやすい

以上はPR会社を活用をすることで、おそらくもっとも大きな恩恵であり、メリットとして享受することができます。メディア側から、記事にしたい、取り上げて欲しいという依頼がくることでメディアに費用を払うことなく掲載してもらえます。PR会社に依頼することにより、外部からみた自社の魅力を明確にして、効果をあげることが可能です。

一方、デメリットもあります。

メディアに露出する時期を指定できない
メディアに掲載してもらえるかの保証がない

つまり、露出の費用は基本的にかかりませんが、メディア露出のコントロールができません。

広告を利用すれば確実に露出できる

逆に広告を利用した活動は、以下のようなメリットがあります。

企業が露出したいタイミングで行うことができる。

一方、デメリットは、

広告枠を購入するためコストがかかる。
企業と広告代理店で認識のズレが発生することがある

があります。自社のタイミングで行うためには、それなりの費用が発生します。また、広告の内容を広告代理店が作る場合、自社で考えていたイメージと違う広告ができてしまうということも考えられます。そのためには、綿密に連絡を取る必要があります。

*参考:広報活動のメリットデメリットについて(出典:戦略経営者)

 

PR会社を選ぶ際の3つのポイント

PR会社を選ぶ理由

では、あえてPR会社に依頼する理由はなんでしょうか。そこに戦略的な視点や効果がなければ、広告代理店ではなくPR会社を選定する理由がありませんよね。

PR会社は コミュニケーションのプロとして、社会に役立つ情報の開発や発信、タイミングに関するアイデアを提供する役割を担っています。マスコミに対して様々な繋がりを持っていますから、企業にとって最適な方法を提案することができるのです。

経験と知識があり、信頼できるスタッフによって、どのようにPR・広報活動を行うことが最良なのか提案をします。
そして、専門スタッフによる企画の立案も行います。
ただ一方的に情報を発信することが役割ではありません。世相がどのようになっているかを調査し、分析していく能力も必要とされます。そして、マスコミがどのような企画を持っているのか、ということについても情報収集します。それをまた分析し、適切なPRマーケティング戦略を作り上げていきます。

そうしたPR会社と広告代理手の違いを、マーケッターやメディア業界内にいても明確に答えられる人は多くありません。そこで、明日部下や取引先に聞かれても大丈夫なのように、PR会社と広告代理店の3つの具体的な違いについて、事例やポイントをまとめてみました。

ポイント①クライアントとマスコミと良好な関係性を築く

PR・広報活動はマスコミとの関係性が大切ですから、その折衝業務も担当します。人間関係において相互理解が必要であるように、企業にとってもそれは必要です。たとえば消費者に自社について、商品について理解してもらい、信頼を得ることは、PR・広報活動において非常に重要な役割です。

広報活動であるPRは、 一方的なものではなく、求める相手との間に双方向的な関係性を築くことが目的です。PRコンサルティング会社はそのための サポートを行い、戦略を作るプロフェッショナルです。

ポイント②広告代理店とは違う!広報ファーストのプロフェッショナル

PR会社は専門知識やノウハウなどを商品としていますが、広告代理店と同じようなものであるとも捉えられがちです。

メディアを使った広報活動として第一に考えられるものは広告です。

広告代理店は文字通り、広告主とメディアを結ぶ役割を担っています。広告枠の取引の仲立ちだけでなく、制作会社への指示も行います。大手総合広告代理店は制作部門も持っており、一貫して依頼作業を行う場合もあります。広告における広告代理店の役割は非常に大きいものです。

ですが、広告は企業の主観的な情報を一方的に発信するにすぎません。PR・広報活動では、相手方がどう理解して評価しているかを知ることも大事です。

ポイント③ブランディングとマーケティングの双方の架け橋となるのもPR会社の役目

一方的な広報にならないよう、PR会社のサポート、フォローがあれば、広告もより効果的になるでしょう。広告代理店は広告のプロフェッショナルであり、広報のプロフェッショナルではありません。

一般大衆、消費者、従業員、個人投資家や株主といった個人や取引先、各関連団体、世論、そして「社会」まで、企業を取り巻く環境は広範囲に及びます。

昨今はSNS炎上やステマなどの事例も多く取りざたされるようになりました。当然それぞれとの関係性を好ましいものにするための方法も様々です。広告はあくまで広報・PR活動のひとつの手段にすぎません。より効果的で的確な広報活動を行うためにPR会社の、いわば一級建築士としてのコンサルタント能力や、広報のプロとしての問題解決力が役立つと言えるでしょう。

*参考:6000万人にクチコミを広げて信頼を獲得した事例(出典:AERA dot.)

 

まとめ PR会社は信頼を獲得することに重点に置いている

PR会社

PRは前述していますが、社会の人々から理解してもらい、信頼関係を築きあげ、最終的にはファンになってもらうために行う行為です。

信頼されるためにも、誤解を与えるようなことはできません。PR会社が行う、プレスリリースは事実のみしか書くことができません。また、信頼を得るためには適切な対応が必要です。例えば事故や不祥事が起きた時です。そのような場合、どのように対応していくかで企業の存続が変わっていく場合もありますが、このような仕事もPR会社の役割です。

一方、広告はインパクトを出すために、ある特徴部分を強調した宣伝をすることもあります。もちろん、決められた範囲内での表現方法だとは思いますが、広告とPRのアプローチは違うのです。

*参考:弊社代表が卒院生として紹介されました(出典:多摩大学院)


執筆者・監修者
上岡正明
PR戦略プランナー・ヒットの仕掛け人
登録者23万人のYoutuber
上岡正明

MBA(多摩大学院経営情報学修了)
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者22万人のビジネス系YouTube

企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。

戦略PR、広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内PR、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行して大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)修了。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計20冊75万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

日経ヴェリタス・東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン・プレジデントの4大経済メディアで有識者や専門家記者として寄稿連載もおこなっております。お読みになりたい方はこちらからご覧下さい。

①:東洋経済オンラインでの連載記事
②:ダイヤモンドオンラインでの連載記事
③:プレジデントでの連載記事
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