「上手に話すことができない」「分かりやすく相手に伝えることができない」と悩んでいる広報担当者は少なくないと思います。
広報となると記者などに説明する場面も増えますから、口下手なままではとてもこなせないと不安を抱いている方もいるはずです。
しかし、口下手だからといって広報の仕事ができないわけではありません。ぎゃくにいくら「喋り」が達者でも、相手の興味を引くことができずに、仕事が下手な広報はいます。
相手は一般人ではなくプロです
一般人を相手にする「商品PR」や「会社紹介」などの場合は、口下手だとさすがにつとまらないかもしれません。
営業でも、プレゼン上手や話し上手が有利です。一般の方には「ちゃんと話を聞く義務」「理解しようとする義務」もない。なので、よくわからないな……と思われれば、すぐにそっぽを向かれてしまいます。
いっぽうで、広報担当者は基本的に記者やメディア関係者などのプロフェッショナルを相手にします。
そのプロフェッショナルは「広報を相手にして、お金を稼いでいる」部分があるわけですから、商売として成り立てば、ちゃんと話を聞いて、理解しながら仕事として成立させてれます。
ですから、「口下手だから」というくらいで、話を聞いてもらえなくなるはずがありません。
ただ、「相手をしてもらえる広報」と「相手を(あまり)してもらえない広報」がいるのも事実です。何がその差を生み出すのでしょうか?
「良い広報」と「悪い広報」の差は情熱が作っている!
結論から言いますと、「良い広報」と「悪い広報」の差を生み出しているのは「情熱」です。
もちろん、情熱だけで全てが決まるわけではありませんし、スキルや広報の戦略開発の部分も重要です。しかし、担当者の想いが非常に重要な要素であることは確かです。
ここで「感情論か……」「根性論か……」と感じた広報担当者は、むしろ要注意。
なぜなら、広報は100%人間を相手にする仕事だからです。
・人間に伝えたり
・人間とコミュニケーションをとったり
・人間と関わったり
・あるいは、人間を介して世の中を動かしたり
する仕事なのです。これは、本当に大切な考えです。
メディア関係者も、その向こうも消費者も、ロボットではないのです。
広報活動のための資料集めやレポート作成などの「作業」に対しては、いくら「面倒だなあ……」と思っていても構いません。結果的にちゃんと仕事をこなせていればOKです。
しかし、「人と関わるのが面倒」「誰かと話すのが面倒」など、「コミュニケーション」の部分で億劫だと感じるのであれば、厳しい言い方かもしれませんが、広報の仕事は辞めたほうが良いかもしれません。あとで必ず、あなたの感情がマイナスに働くことでしょう。
●広報担当者のための説明のコツ5選
ただ、「情熱があって話すのが下手な広報」よりも「情熱があって話すのが上手い広報」のほうが好かれるのは確かです。
そこで、ここからは明日からきっと使える、説明・PRのコツをいくつか紹介していきます。ぜひ参考にしてくださいね。
1:結論を早めに言う
説明・PRをする際にどうしても、
・○○があります。△△でもあります
→だから□□なのです(結論)
という構成にしたくなる人は多いはずです。恐らく小中学校などの作文の授業では、このような構成にするように教えられたのではないでしょうか。しかし、説明・PRの場合はその逆。
・□□です(結論)
→それは○○だからです(理由、根拠など)
と結論ファーストにするのがセオリーです。
そうすることで、記者にとっても、「ああ、これについて話すのか」と分かりやすくなります。それに、話している本人としても先に重要なことを言っておいた方が、あとで混乱することがなくなります。ちなみに、「結論」と言いましたが、もっと大きく
・ポイントを話す→細かい部分を話す
・全体のテーマが何なのか伝える→一つの話題についてポイントを話す→細かい部分を話す
などという順序にすることも有益です。このように、相手が聞きたい結論を先、詳細はあと、を心がけましょう。
つまりは、
・大→中→小
・広→狭
という感じですね。
2:専門用語は極力使わない
どこまでを専門用語とするかは難しいところですが、できるだけ簡単な言葉で話すようにしましょう。
広報の分野に限らず、「専門用語を使ったほうが相手に一目置かれる」と考える人がいますが、それは大間違いです。
「専門用語を誰でもわかる簡単な言葉に言い換えられる」ほうが、世の中では高く評価されます。
3:数字を盛り込む
たとえば、単に「従来品より改良できました」と言うよりも、
「従来品よりも10%改良できました」と伝えたほうが説得力があります。
4:ゆっくり大きな声で話す
「情熱」という話をしましたから、「大きな声で」という部分はきっと大丈夫ですよね。
しかし、「ゆっくり話す」ことができている広報担当はあまりいません。他人に伝えるとなると緊張します。「特に意識しなければ、絶対に徐々に早口になる」と考えてください。
では、どうすればいいのでしょうか。
答えは簡単です。不慣れのうちは、「こんなにゆっくりでいいの?」と少し不安になるくらいの速度で話し始めてください。
そして、話題が変わったり一呼吸置いたりするときには、さらに微妙にテンポを下げます。
だんだん話すテンポが上がっていくので、ここで戻すわけです。
これくらい徹底すると、ようやく「聴き取りやすいテンポ」になります。
5:身振り手振りを交える
これに関してはセオリーがあるわけではありません。微妙に手を広げるような動作をしても良いですし、例えば「1割アップしました」と言いつつ指を1本立てても構いません。
余談ですが、「紙切り」という伝統芸能をご存じでしょうか。
これは、ハサミを使って藁半紙などを「果物」「動物」などの形に切る大道芸です。
「バルーンアートの紙版」というと分かりやすいでしょうか。
この芸をするだけなら身体を動かす必要は全くありません。しかし、熟練の方ほど身体を揺らしながらチョキチョキと切ります。
なぜでしょうか。それは、そうでないと雰囲気が暗すぎるからです。人は話す内容より、全体から情報を捉えます。ですので、この紙切り芸人の話から学べる部分もあるのではないでしょうか。
広報担当者がPR・説明をする際のメンタルケア3選
ここまでは、主に技術的な部分について解説しました。
ここからは、「メンタルケア」に重点を置いてPR・説明のコツを紹介していきますね。
○1:最初は誰か一人に話すつもりで!
「話し始め」で、全員が身を乗り出して聞いてくれることはなかなかありません。
そういった「集団」を相手にするつもりで話していると緊張してしまいかねません。ですから、誰でも良いのではまずは「この人!」と決めた人に話しかけるつもりで、PR・説明をしましょう。
私がプレゼンしているときでも、あくびをしたり、携帯を眺めている人はたまにいます。
そうしないと、私でも気がめいってしまいますから。
好きな色の服を着ている人、メガネをかけている人、見覚えがある気がする人……などなど「最初の一人」の選び方はなんでも構いません。10~20秒ほど話して慣れてきたら、全体に向けて話すようにシフトするといいですよ。
○2:全体に話すための基本は「Z」
いっぽう「全体に向けて~」話す必要がある場合は、具体的にはどうすればいいのでしょうか。
一番よくないのは「視界に全員を入れようとすること」です。実際に試してみると分かりますが、これだと「相手の顔」が見えなくなります。そして、ちゃんと聞いてもらえているのか分からなくなって、気が動転してしまう恐れがあります。
最悪の場合、そのまま動悸がはげしくなり、気が遠くなってしまうこともあります。
そうでなくて、「1」で選んだ最初の一人を起点として、視線で大きく「Z」の文字を描くつもりで、全体を順番に見回していきましょう。
終点に来たら「↖」方向に視線を動かし、一周したら再び「Z」で視線を動かします。
もちろん、これは喋ることに慣れるまでの話です。ある程度経験を積めば、「Z」を意識しなくても何となくバランスよく視線を動かせるようになります。あなたが話しやすいのなら、「O」でも「∞」でも構いません。
○3:緊張してもOK
そして、最後に大切なアドバイスを。大事なのは「緊張したって構わない」という気持ちでいることです。
これにはきちんとした根拠があります。
まず、何の準備もせずにいきなり話し始める場合は、さすがに緊張すると「結果」が悪くなるかもしれません。
ですが、広報担当者が行うPR・説明に関しては全く違いますよね。入念に資料を作って、話す内容をしっかり決めてから臨むはず。
したがって、話すときに緊張しようがしまいが、「結果」に与える影響は微々たるものなのです。だいたい、全体の1パーセントくらいでしょうか。
正直、本当に情熱と想いがあれば、緊張してガチガチのほうがかえって好印象の場合もあります。ですから「緊張してもOK」なんです。
ちなみに、筆者としては「緊張しようが緊張しまいが、【自分の情熱が100%伝わればどーでもいい】」というのが、PR・説明の場面に限らず「人間の気の持ち方」としてベストだと思っています。また、広報の仕事に限ったことではありませんが、「失敗の原因を緊張のせいにする」のはやめましょう。
●最後に
ここまで、広報担当者としての心構えや、話し方のコツ、メンタルケアの方法などについてお伝えしました。
繰り返しになりますが、小手先の技術よりも大事なのは「情熱」です。他の細かなことはとりあえず気にしなくても良いのです。
確かな熱意を本番に持ち込み、後は「笑顔」で話すようにしましょうね!