多くの人に認知されて、高い評価を得ているブランドは、それだけで企業にとっては価値があります。
強いブランドがあるだけで、機能や性能、価格、類似商品との差別点などを繰り返し顧客に訴えなくとも、自然と商品の購入に至る可能性が高いからです。つまり、企業の視点からすると、それだけブランドそのものに資産価値があると言うことができます。
このような、ブランドに付随する資産価値のことを「ブランド・エクイティ」と言います。そんなに難しくありません。3分で理解しましょう。
ブランド・エクイティの意味とは?
ブランド・エクイティの意味を一言でいうと「ブランドが持つ資産力」。つまり、ブランドの価値をお金に換えたら、いくらになるか?ということになります。
ブランド力というものは曖昧な概念ですし、比較可能な製品ごとのスペックとは異なり、目に見えないものであることは紛れもない事実です。
だからこそ、いくらブランドに資産価値があると分かっていても、これまではそれを資産として計上することはできませんでした。いっぽうで、現在ではブランドの売買が日常的に行われています。これは正に、ブランドそのものに資産価値としての評価がなされていることを意味します。
しかし、ブランド価値を計上する必要性は理解していても、ブランド・エクイティを正確に計測するのは難しいのが実状です。
ブランド・エクイティの4つの要素
ブランド・エクイティは、概ね次の4つの要素から構成されています。
- ブランド認知(Brand Awareness)
- 知覚品質(Perceived Quality)
- ブランド・ロイヤルティ(Brand Loyalty)
- ブランド連想(Brand Associations)
◎ブランド認知
ブランド認知とは、簡単に言うと「ブランドが認識されている度合い」のことを指します。
しかし、D・A・アーカー氏が初期に提唱していたブランド認知(Brand Awareness)とは異なり、現在ではその概念に大きな変更がなされていて、英語ではBrand Visibilityと呼ばれるようになってきています。
「Visibility」とは、「見通しが効く度合い」「視界のクリア度合い」といったニュアンスの英語ですが、その真意は「単に生活者がブランド名を知っている」だけに留まらず「商品やサービスのカテゴリーが正しく認識されているかどうか」「生活者から見て、自分との関わりが認識されているかどうか」といったニュアンスを含みます。
マクドナルドを例に挙げると、消費者はそのブランド名を知っているだけでなく「ハンバーガーのチェーン店であること」「くつろぎながらハンバーガーを食べられる場所」といったそのブランド名を認知しているだけでなく、「マクドナルド」というブランドを正しく認識しています。
◎知覚品質
知覚品質とは、簡単に言うと「そのブランドに対して、生活者側が認識している品質」のことを指します。
こちらも注意したいのは、D・A・アーカー氏が初期に提唱していた知覚品質(Perceived Quality)とは異なり「Trust & Perceived Quality」として、その概念に大きな変更がなされている点です。知覚品質は、企業側が設定した「事実としての品質」とは異なり「生活者側が認識している品質」のことを指します。そのために、単に製品の機能・性能だけではなく、信頼性やサービス、雰囲気など、その範囲は多岐に渡ります。
知覚品質は事業収益への貢献度が高く、ブランド・エクイティの中でも特に重要な管理要素となります。
◎ブランド・ロイヤルティ
ブランド・ロイヤルティとは、ブランドに対して感じる「愛着の度合い」であり、ブランド・ロイヤルティが向上すると、ブランドの継続購入率は高まります。
D・A・アーカーも、ブランド・ロイヤルティは「ブランド・エクイティ要素の中でも特別なもの」として明確に位置づけており、ブランド・エクイティの中でも特に重要な要素となります。実務的には「とても買ってみたい」「買ってみたい」「どちらでもない」「あまり買いたくない」「買いたくない」という5段階のDMB(Definitely Would Buy)指標やNPS指標で測定することが多いです。
◎ブランド連想
ブランド連想とは、「生活者がブランドについて解釈し、想起する一連の連想」のことを指します。
強いブランドですと、そのブランドを思い浮かべた際に何かしらの連想が頭の中に思い浮かぶことが多いと思います。もし、好ましいブランド連想がひとつも思い浮かばなければ、生活者はそのブランドに価値を感じることはなく、感情移入されることもありません。結果として、指名で購入されることもありません。また、ブランド連想は、その範囲を広げることで「ブランド拡張」や「リブランディング」といった事業機会をもたらすことも特徴のひとつです。
ブランド・エクイティを有効に活用しよう まとめ
ブランド・エクイティは企業と顧客を直接つなぐ資産であり、希少性の高い資産で、長期に渡る資産であり、組織のコア・コンピタンスとなる資産です。
ブランド・エクイティがマーケティングにおいて重要な要素であることがわかっていただけたかと思います。