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この記事では広報・PR担当者の皆さんに向けて、IR施策に広報・PR担当者が関わるべき理由や、実際に関わるべき業務と注意点などについてお伝えしていきます。
「さすがにIRは広報・PR業務とは無関係では?」と感じるかもしれませんが、ノウハウを活用できる場面は意外と多いです。
そこで本記事では広報・PR担当者の方々に向けて、IR業務に関わるべき理由、特に関わるべき業務や、関わるにあたっての注意点などに関して解説しますので、ぜひ参考にしてください。
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IRとは?|広報・PR部署が関わるべき理由は?
IR(インベスター・リレーションズ)とは、自社の経営状況・財務状況などを、主に株主や投資家に向けて発信する活動のことです。そして株主や投資家は投資の判断材料として、IRで得られた情報を活用します。
具体的には決算説明会や企業説明会などで自社の経営や財務状況、経営理念・方針などを説明するのもIR施策に分類されます。
また、特に大手企業の場合は企業公式ウェブサイトなどで、「IR資料(投資家向け資料)」などとして専門的な資料をダウンロードできるようにしているケースがありますが、これもIR施策です。
IRに広報・PR部署が関わるべき理由は?
IRと広報・PR活動は一見無関係に思えるかもしれませんが、基本的に「情報発信」をするので、それが最も上手い部署である広報・PR部署が関わるべきです。また、投資家などの「問い合わせ」に対応するのも広報・PR部署の得意分野であるはずです。
IRで広報・PR担当者が関わるべき業務5つ
それではIRにおいて広報・PR担当者が関わるべき業務をいくつか紹介していきます。企業によって方針が大きく異なる部分ではありますが、参考にしていただければ幸いです。
業務①:IR関連の問い合わせ対応やその準備|特にIR情報発表後
特にIR情報の発表後には様々な種類の問い合わせがくるものなので、事前に回答などの受付体制を整えておくことが大事です。情報の開示方法や、各種発表への問い合わせ対応には、普段の広報・PR活動のノウハウが役立つはずなのでぜひIR担当者をサポートしてください。
また、すべて広報・PR担当者が対応するのではなく、「IR担当者に引き継ぐ内容」と「広報・PR担当者が対応する(対応してもいい)内容」の線引きを明確にしておくことも大事です。
業務②:IR担当者と相談して「開示可否」について話を詰めておく|特に任意開示
特に上場企業などがIR情報を発表する行為を指す「開示」には主に以下の3タイプがあります。
- 法廷開示:四半期決算や有価証券報告書などで自社の財務状況を報告する
- 適時開示:投資判断に大きく影響する事柄をすぐに発表する
- 任意開示:投資判断に影響する事柄を提供する
法廷開示は「金融商品取引法」、適宜開示は金融商品取引所の規則に沿うものであり、IRにおいて非常に重要です。そして任意開示は、「法律や規則による開示義務はないものの、投資判断に影響する自社の情報を提供すること」を指します。
✅広報・PRの観点で特に重要なのは任意開示
広報・PRの観点で特に重要なのは任意開示。「株主や投資家に対してどのような情報を発信するか」を広報・PRのノウハウも活用しながら決めましょう。
任意開示の方針としては主に以下の種類があります。
- 「広く公開しているプレスリリース」と同じ内容を開示する
- 業務提携や設備投資など「投資判断に直接影響するプレスリリース」を任意開示として出す
- キャンペーンやイベントなどの「対一般消費者」向けの情報はあえて伏せる
IR担当者と相談しつつ、「情報が注目されるかどうか」という広報・PR担当者の観点と、IR担当者の専門的な観点とをすり合わせて方針を決めましょう。
業務③:決算発表資料を広報・PRの観点で読み解く
広報・PRの観点で「決算発表資料」を読み解くことも大事です。専門的な部分は基本的にIR担当者に任せつつ、広報・PR担当者は主に以下を重視して決算発表資料をチェックしましょう。
- すでに公開しているプレスリリースなどの内容とズレがないか(あれば直す。以下同様)
- 数的データなどが最新のものであるか
- 国語的な観点で「悪印象を与えかねない表現」が含まれていないか
- 発表のタイミングを調整する
広報・PR部署は、自社のあらゆる「発表」について細かく確認する立場であると考えてください。この分野に限らず、「専門的な部分についてはその部署がチェックする。」「『発表』にまつわる部分に関しては広報・PR担当者がチェックする」という方針を取ることをおすすめします。
業務④:決算発表会の準備
決算発表会における具体的な発表内容の調整はIR担当者に任せつつ、広報・PR担当者としては「会自体をより良いものにする」という、やや俯瞰した立場で準備をしましょう。
主なポイントは以下の通り(決算発表資料に関するポイントと似ています)。
- 発表する情報に「公開済み情報」とのズレがないか
- 数的データなどが最新のものであるか
- 悪印象を与えかねない表現が含まれていないか
- IR担当者などの身だしなみチェック(広報・PR担当者は完璧であるのが前提です)
- 出席人数などに応じた会場の手配、備品などの手配、各種当日(もしくは前日)確認
業務⑤:自社社員への情報共有、情報管理
自社社員への情報共有と全体的な情報管理も広報・PR担当者の役目です。
大半の情報は共有して構いませんが「開示に関係する内容の共有」に関しては安易に共有せず、IR担当者とも相談した上で、最小限の人物にのみ共有しましょう(基本的には役職者にとどまるはず)。
その上で「○月○日□時まで一切の他言無用です」などと具体的な指示を必ず出します。特に自社社員が株主である場合、インサイダー取引につながる可能性さえあるので細心の注意を払ってください。
IRに広報・PR担当者が関わるにあたっての4つの注意点
それではIR施策に広報・PR担当者が関わるにあたっての注意点をいくつか紹介していきますのでぜひチェックしてください。
普段の広報・PR活動ではうまくいかなくても「活動の効果があまり出ない」くらいに留まる場合が大半ですが、IR施策については失敗すると大きなトラブルにつながるケースもあるので注意が必要です。
注意点①:IR担当者と広報・PR担当者の担当範囲を明確にする|引き渡し基準も決める
上で少し触れていますが、IR担当者と広報・PR担当者で業務の担当範囲を明確にしましょう。そうでないと広報・PR担当者側で問題のある対応・回答・発信をしてしまったり、IR担当者側で効果的でない発信をしたりする恐れがあります。
どのような状況でIR担当者に引き渡すか、逆に広報・PR担当者にバトンタッチするかも可能な限り具体的に決めておくことをおすすめします。
注意点②:IR関連の知識も可能な範囲で身に付ける
先ほどもお伝えした通り、IRに直接関わる部分は基本的にIR担当者に任せるべきですが、広報・PR担当者側も可能な範囲でノウハウを身に付けていくことをおすすめします。
やはり最低限の知識があるからこそ万全の対応ができますし、なんらかの拍子に「この企業の広報・PR担当者はIR関連のことをあまり知らない」と外部にバレてしまうのも好ましくないはずです。
注意点③:定期的にIR担当者との情報共有を行う
定期的にIR担当者と情報共有をするからこそ担当範囲を明確にできますし、どうしても徐々に生じてきてしまう「様々な認識のズレ」も正すことが叶います。そのため少なくとも1カ月に1回以上、できれば2週間に1回以上は情報共有の場を設けましょう。
また、情報共有の際には、例えば「こういう数値が出ました」だけでなく「なぜこのような数値になったのか」の背景も伝える。さらに「こういう対応をしてください」と広報・PR担当者側から指示を出す場合も、「なぜそうするべきなのか」も教えましょう。
「背景」や「理由」まで含めると大変になってしまうと感じるかもしれませんが、実際には「なぜそうなるのかわからない単純情報」を覚える方が苦労します。
注意点④:各種日程に関して厳格な注意を払う
普段の広報・PR活動以上に、各種日程に関して厳格な注意を払ってください。先ほどもお伝えした通り、場合によってはインサイダー取引のリスクもあります。また、詳細は省きますが、特に上場企業については、誤ったタイミングで重大情報を発信すると、株式の「売買停止処分」が下ることさえあります。
そうならないためにもあらゆる日程・日時についてテキストベースで記録を残し、最低でもダブルチェック、できればトリプルチェック以上の体制を取りましょう。
特に多いミスの一つが、例えば「12月1日から○日後」と口頭で確認するにあたって、「1日」も初日としてカウントするか、「2日」からを初日として数えるかで、ズレが起きてしまうパターン。こういったすれ違いを防ぐためにも、一例として「12月6日」など誤解しようのない口頭説明、表記をすることが大事です。
また、「締結日」についても、「締結式を行う日」と「実際の締結日」とで認識がズレるケースがあるので注意してください。この場合は、例えば「締結日(○月○日)」などと明確に表記するべきでしょう。
まとめ
IRの専門知識・スキルが必要な部分についてはIR担当者が、それ以外の「発信」「確認」「対応」などの一歩引いた部分に関しては広報・PR担当者が担当する。これによって両者の長所が際立って、質の高いIR業務を継続できるはずです。
ただ、広報・PR担当者にもIR関連のノウハウがあるに越したことはないので、業務に支障をきたさない範囲で学んでいくことをおすすめします。また、IR担当者にも「発信」「確認」「対応」などのノウハウを学んでもらうといいでしょう。
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