PR戦略でストーリー発信する5つのメリットと企業広報上の注意点
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2025.08.08

PR戦略でストーリー発信する5つのメリットと企業広報上の注意点

➡記事を書いた人:Youtube登録者30万人【MBA保有のPRプランナー】上岡正明プロフィール

この記事では広報・PR担当者の皆さんに向けて、ストーリーを発信することのメリットなどについてお伝えしていきます。

特に「積極的に発信をしているものの良い反応がない」とお悩みの広報・PR担当者や、「ストーリーが大切であることはなんとなく知っているものの具体的な作り方がわからない」という方におすすめの内容となっています。

本記事では、広報・PRにおける「ストーリー」の概要、ストーリーを発信することのメリット、そしてストーリー作りのポイントなどに関して解説しますので、ぜひ参考にしてください。

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広報・PRにおける「ストーリー」とは?

広報・PRにおける「ストーリー」とは基本的に、商品・サービスの開発理由、開発時の苦労と乗り越えたエピソード、商品・サービスのターゲットを決めた理由、今後の展望など、「それにまつわる物語性や気持ち」のことを指します。

一方、商品・サービスのスペック、価格、購入方法などの単純情報はストーリーではありません。また、広報・PRで言うところの「ストーリー」はあくまで実話に基づくものなので、創作物におけるストーリーとは別物であることも理解してください。

広報・PRでストーリーを発信することのメリット5選

それでは広報・PRにおいてストーリーを発信することの主なメリットを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。近年、プレスリリースやSNSなどでの発信においてストーリーを扱う企業が多くなっていますが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

メリット①:他企業や他商品・他サービスとの差別化になる|差別化が難しい時代です

ストーリーを発信することで、他企業や他商品・他サービスとの差別化がしやすくなります。ストーリーには企業の想い、考え、信念などが乗るため、唯一無二のものになると言っても過言ではありません。

✅商品やサービスそのものでの差別化が難しい時代

「商品やサービスの内容とは直接関係のないストーリーを発信しても意味がないのでは?」と感じるかもしれません。

しかし近年、全体的な技術力の向上や情報網の進化により、「斬新なモノ・サービス」を生み出しにくくなっています。また、生み出すことができてもすぐに追従される傾向にあります。乱暴に言えば「何を買っても大きな差がない時代」なのです。

もちろん「商品・サービス自体には全く意味がない」というわけではありませんが、特に広報・PR目的での発信では、「特徴が出やすいストーリー」を強調するべきと言えます。

メリット②:ストーリーは共感を呼び、顧客やファンを増やす

企業そのものや商品・サービスに関するストーリーを発信することで、人々はそれに対して共感します。そして「商品・サービスに関わっている人たち」の様子を意識的・無意識的に想像させて、自然と「だったら買ってみよう」「(買わないまでも)拡散しよう」と思ってもらいやすくなります。

また、最初は特別な理由もなく商品・サービスを選んでいた人も、「こういう想いがあったのか」と知れば、愛着が強まってリピーターになってくれる可能性があります。

メリット③:ストーリーは記憶に残してもらいやすい

商品・サービスそのものに関しては、興味がない限りはそのうち忘れてしまうものです。しかしストーリーについては比較的記憶に残してもらいやすいです。

もちろん完全に覚えてもらうことはまず不可能ですし、「なんとなくの引っ掛かり」くらいにしか記憶してもらえないかもしれません。ただ、それでも例えば商品の場合、「選択肢」には入れてもらえる可能性がありますし、「なんとなく覚えているこれにしよう」と実際に選んでもらえることもありますよね。

メリット④:商品・サービスに全く興味がない人にも見てもらえる場合も|拡散が期待できる

ここまで解説してきた内容と少し関連しますが、商品・サービスに全く興味がない人にも「ストーリー」だけでは見てもらえる可能性があります。

例えば「1日1000個、○○の製造を支えるのは世界で10人しかいない○○の技術を持つ職人だった」などのタイトルが目に入れば、「ちょっと見てみようかな」と考える人もいるはず。それでも興味のないジャンルの商品・サービスであれば購入・登録・ファン化などにはつながらないでしょうが、拡散は期待できます。

この拡散は小さな積み重ねかもしれません。しかし特にベンチャー~中小企業や有名でない商品・サービスの場合、まずは知ってもらうことも大事ですよね。

メリット⑤:プレスリリースの質を高める

プレスリリースをメディア関係者に送ることで、報道・掲載などのメディア露出を狙うことができます。そしてメディア・メディア関係者としても「ストーリーは読者・視聴者からのウケが良い」と考えますので、ストーリーを重視したプレスリリースは採用されやすい傾向にあります。

また、PR TIMESなどのオンライン上のプラットフォームや自社サイトなどでプレスリリースを公開する場合も、ストーリーが含まれていると閲覧した人の満足度が高くなります。

✅逆にストーリーのないプレスリリースは反応が悪くなりやすい

逆にストーリーのないプレスリリースは反応が悪くなる傾向にあるので覚えておきましょう。あなた自身としても、「ストーリーがなく、淡々と価格、特徴、発売日だけを書いているプレスリリース」には魅力を感じないはずです。

高い広報・PR効果が期待できるストーリーを作るためのポイント○選

それでは高い広報・PR効果が期待できるストーリーを作るためのポイントをいくつか紹介していきます。感情のおもむくままに書けばいいと思えるかもしれませんが、実際にはストーリーもロジカルに作成することが大事です。

ポイント①:「理由」を深堀りする

広報・PR上のストーリーに限らず、人は「なぜ(理由)」に興味を持つものです。ドラマの登場人物がなぜこのような行動を取るのか、なぜこの企業は成功したのか、なぜこのような失敗をしたのか、など世の中には「なぜ」とそれに関心を抱く人であふれています。

そして広報・PR上のストーリーに入れるべき「なぜ」の説明は主に以下の通りです。

  • なぜその商品・サービスを作ろうと思ったのか
  • 商品・開発の途中で行き詰まりかけた理由
  • その困難を突破することができた理由
  • なぜ商品のターゲットをそのように設定したのか
  • 今後の展望はどうなっていて、なぜそのように思うのか

例えば「○○で悩む人を助けたくてこの商品を作った」なら、さらに「なぜ○○で悩む人を助けたいのか」→「開発者自身も同じ悩みを抱えていたから」をどんどん深掘りしていくべきです。

そうすることでストーリーへの興味と共感が強まりますし、「嘘っぽさ」「取り繕っているっぽさ」がなくなり信頼性も上がります。

ポイント②:経験者・当事者の生々しい情報・言葉を入れる

ストーリーには経験者・当事者の生々しい情報・言葉を入れましょう。それをせずに、例えばインターネット記事の情報や、「なんとなくの常識」を根拠にした情報などでストーリーを構成してしまうと、途端に信頼性が低くなります。

そのため、まずは開発担当者などの経験者・当事者からきちんとヒアリングをするべきです。そして、些細に思えること、自分では恥ずかしいと感じること、常識から外れているようなことでも、そのまま汲み取ります。

その上で、「第三者が読んで理解できるストーリー」を構築して、プレスリリースなどで発信しましょう。

ポイント③:「それっぽい常識」や「建前」に流されない

上で少し触れていますが、「それっぽい常識」や「建前」に流されると、それだけでストーリーはつまらないものになります。言い換えると「どこかから借りてきたような言葉であり、人の心を動かすことができない」のです。

一例として、「○○へのコンプレックスから発明した商品です」よりも、「○○で悩む人を助けるために考え抜いた上で発明した商品です」の方がイメージは良いのかもしれません。

ただ、人はそれほど「美しい話」を聞きたいわけではありません。あまりに過激である場合は「人に読ませて良い内容」に調整するべきですが、それ以外では極力ヒアリングした内容を歪めないようにしましょう。

ポイント④:「自慢話」にせず、世のため人のためになるストーリーにする

ストーリーを作成するにあたって多い失敗として、「自慢話」になってしまい、読む人にとってほとんど意味がないというものがあります。ストーリーは基本的に主観的なものであるべきですが、それでも「すごいでしょう!」というトーンでは誰の心にも響きません。

そうならないためにも常に「誰に読ませたいストーリーなのか」、つまりターゲットの存在を念頭に置き、その人のためになるストーリーにすることを徹底しましょう。

✅「読ませたい誰か一人」のためにストーリーを作るのもおすすめ|ペルソナ設定

「世のため人のためのストーリー」を作りにくい場合は、「読ませたい誰か一人」を設定してその人のためにストーリーを作成するのもおすすめです(このような手法をペルソナ設定と言います。詳しくは調べてみてください)。

「それでは特定の人にしか刺さらないのでは?」と感じるかもしれませんが、その特定の一人に近い属性を持つ人には刺さりやすいので問題はありません。

逆に「とにかく広い層に刺さるように……」と安易に考えていると、抽象的で誰の心にも響きにくいストーリーになりやすいので気を付けてください。

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執筆者・監修者
上岡正明
経済記者・経済コメンテーター
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者30万人のYoutuber
上岡正明

MBA(経営学博士前期課程修了)
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者30万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

日経ヴェリタス・東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン・プレジデントの4大経済メディアで専門家として記事連載もおこなっております。お読みになりたい方はこちらからご覧下さい。

①:東洋経済オンラインでの連載記事
②:ダイヤモンドオンラインでの連載記事
③:プレジデントでの連載記事
④:日本経済新聞での連載記事