広報におけるコミュニケーションデザインは「コンテンツ」と「生活者」をマッチさせろ!パンケーキブームの4つの成功要因
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2022.07.21

広報におけるコミュニケーションデザインは「コンテンツ」と「生活者」をマッチさせろ!パンケーキブームの4つの成功要因

「ヒット商品」を作りたい企業は多いもの。

実はヒットの裏側には裏方の存在があります。「ハリウッドセレブが愛した朝食」というフレーズで有名になったクリントン・ストリート・ベーキングカンパニー。ハリウッド映画に出てくるような「世界一の朝食」と称しことによって、全米のメディアに飛び火し、拡がったのが始まりと言われています。

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*記事を書いた人:「めざましテレビ」「王様のブランチ」元放送作家

 

コミュニケーションデザインによるPR広報戦略

日本にもその話題が伝わることとなり表参道に1号店選ばれました。現在でも人気が衰えていないクリントン・ストリート・ベーキングカンパニーですが、朝食が売りになっているため、通常のお店よりも早くオープン時間にしていました。本当にお客さんが来るのかという不安もありましたが、蓋をあけてみるとオープン前から長い行列ができていたと言います。

クリントン・ストリート・ベーキングカンパニーが日本に上陸したその年に、ホテルの朝食特集やパワーランチなど朝活ブームも始まりました。どちらが先なのかははっきりしませんが、タイミングは良かったとはいえると思います。

その点を考慮したとしてもクリントン・ストリート・ベーキングカンパニーのようにオープン以来人気を保ちつづけているお店がある一方、お客の入りが悪く閉店してしまう飲食店は少なくありません。

そんな時、ブームを作るPR会社はどのようなことをしているのでしょうか? 今回はその内容をお伝えしていきます。

 

パンケーキブームの火付け役となった4つの成功要因

■1.時流に乗った食材を利用する

食材にも流行りがあります。例えば、健康というトレンドに乗った酢、トマト、塩麴などのメディアでも話題になりやすい素材を使うことで、利用している飲食店も話題になることがあります。

話題の食材の特集などがメディアで行われる際に、一緒に飲食店も取り上げてもらえたりするためです。

また話題の商品を利用することは既存のお客様にも、良い反応を起こします。味覚は保守的なので、人はそれほど新しい味には挑戦しようとはしません。しかし、話題の食材となれば試してみたいと思うか、少なくてもそのお店に深い印象を持たせることができます。流行の素材を利用するということは非常に合理的な選択だといえます。

■2.お店の看板メニューを作成する

脳の仕組みとして複雑なものはすぐ忘れてしまいます。
シンプルで強い情報は記憶に深く刷り込まれます。飲食店の場合は看板メニューがこれに該当します。覚えてもらいやすいですし、人にも紹介しやすくなるのです。

脳の性質を使う意味でも、看板メニューの作成は検討するに値します。「このお店の看板メニューはこれ」というお店の代名詞的なものを作ることは重要な作業なのです。思い切って看板メニューの専門店に振り切る選択も考える必要があるかもしれません。

しかし、看板メニューは勝手に決まるものではありません。お店側がこれを看板メニューにしたいと思ってもお客さんに受け入れてもらう必要があります。そのためには、味や料理のベースとして比較的なじみのある料理を選択します。

その上ですこしひねる工夫を凝らすのが一般的です。ネーミングや食材、調理方法、見せ方などから切り口を見つけていきます。現代は数多くの飲食店があります。その他大勢に埋没しない特徴が必要なのです。

■3.口コミを最大限に活用する

現代は情報化社会のため良い情報や悪い情報といった口コミは、あっという間に知れ渡ります。
「食べログ」といった飲食店の口コミサイトは、数多くの人たちのお店選びの際に参考にされています。

味の評価はもちろんのこと、お店の雰囲気、接客態度、コストパフォーマンスなども評価の対象になります。飲食店に来店する目的は用途によってさまざまです。例えば平日会社近くのランチ利用のサラリーマンと、休日住宅地近郊のランチ利用の家族では評価の対象が違います。より多くの人から来店してもらうためにも、それぞれの評価でマイナスにならないようにすることが重要なのです。

その一方、良い評価も拡がります。提供方法が特殊、感動する接客、今までに味わったことがない食感といったものも、どんどん情報が拡散していきます。1.2であげた看板メニューも口コミサイトやSNSによってPRすることができます。

■4 お知らせ型から提案型へ

従来、お店を宣伝するときは広告を出稿して露出し、認知してもらって購入するというモデルが普通でした。

しかし、現在では人々を巻き込むことによって購入してもらうというモデルが登場してきています。従来の広告は伝えることを目的とした「お知らせ型」、一方、最近登場したのはムーブメントを作ることを目的とした「提案型」ということもできます。

膨大な情報のなかで、生活者は企業からのメッセージを簡単に信用しなくなっています。現在問われているのは、広告やPRといった枠組みに囚われないフラットな姿勢と、生活者が納得するような説得力のある情報伝達であり、それが今回紹介した「提案型」ということになります。

提案型は「一方的な情報伝達ではなく、双方向でのコミュニケーションと情報の連鎖的な伝達によって生活者を動かす手法」ともいえます。広告の枠から外れているという意味ではPRよりですが、従来のPRとも一線を画しています。

 

コミュニケーションデザインは従来の広報戦略と一線を画す

「もうすぐ山頂です「売店」飲み物・トイレあります」「もうすぐ山頂です「売店」山頂には飲み物・トイレはありません」この2つの看板を見比べてみてください。

前者は「山頂前に売店がある」というお知らせです。後者は「山頂には飲み物・トイレがありません。ここが最後の売店になりますよ」という提案です。

一言の違いではありますが、後者には動機付けが含まれていることがお分かりになると思います。目指すものが違えば表現方法も当然変わります。「お知らせ」で重視されるのが「インパクト」「わかりやすさ」「印象の良さ」です。

その一方、「提案」では「納得感」「きっかけ」がポイントになります。

発売から50年以上もたっている森永のホットケーキミックス。親子でホットケーキ料理を楽しむことによって子供の情操教育にも良い影響を及ぼすという実験結果をベースにし、マスコミを通してホットケーキと生活者との間に新しい関係を提案しました。

その結果、半世紀も経過している定番商品、材料費の値上げによる商品価格の上昇にも関わらず、売りあげを昨年対比で上回る効果をあげています。

 

広報のコミュニケーションはコンテンツと生活者をマッチさせろ

今までの生活者の行動はAIDMA(注意・関心・欲求・記憶・行動)やAISAS(注意・関心・検索・行動・情報共有)などと語られてきました。しかし、現代は生活者のA(注意)の前に、I(興味)ないと生活者は動いてはくれなくなっています。

企業として行うことは面白い、インパクトがあるという切り口だけではなく、自分ごととして捉えてもらえるかどうかポイントになります。そのため、グループインタビューやデプスインタビューになどで調査を行います。

もちろん、メディア側に対してもこの話題やストーリーを取り上げたいかどうかということを事前に聞き、もしダメであればどんな情報であればよいのかを協議します。そして人がまきこめる要素があるかどうかもチェックします。

今までであればどんなものでもクライアント・スポンサーの意思が反映されており、少しでもその企業のことをよく書くことが良いとされていました。

現在、スポンサーの意図を感じるやり方では生活者が離れてしまうことも少なくありません。今重要なことは、スポンサーと生活者をマッチさせることではなく、コンテンツと生活者をマッチさせることです。

そのため、どんな人で、どんなことに関心を持つ生活者に向けたコンテンツなのかを意識することが必要となります。


執筆者・監修者
上岡正明
テレビコメンテーター・経済記者
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者25万人のYoutuber
上岡正明

MBA(多摩大学院経営情報学修了)
テレビコメンテーター
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者24万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

日経ヴェリタス・東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン・プレジデントの4大経済メディアで専門家として記事連載もおこなっております。お読みになりたい方はこちらからご覧下さい。

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