広報による誹謗中傷・ネガティブキャンペーンの対処方法とは?
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2020.06.22

広報による誹謗中傷・ネガティブキャンペーンの対処方法とは?

インターネットの普及により「誰でも匿名でどこにでも書き込める状況」が生まれました。

広報担当者は、こういった環境で発生する誹謗中傷・ネガキャン(ネガティブキャンペーン)についてどのように対処すべきなのでしょうか。

今日は、正しい誹謗中傷やネガティブキャンペーンへの対処法について5分程度にまとめてみました。

*一番人気の記事:広報戦略をすべて理解するにはこちらのコラムがおすすめです。

広報担当が行う誹謗中傷・ネガティブキャンペーン対策|最悪なのは「ストレートな対応」です

引用画像_広報動画のイメージ画像

企業がそれなりに成長してくると、インターネット上に企業に対する誹謗中傷やネガティブキャンペーンが増えてくる可能性があります。

それらを無視していると営業力・採用力・信頼性などに悪影響が及ぶ恐れがあります。

◎営業力
→「ネット上の声を間に受けた人」に営業しにくくなる。

◎採用力
→ネット上での評判が悪い企業に就職したくない。

◎信頼性
→「火のない所に煙は立たぬ」という考え方をされて信頼性が下がる。

これに関しては、広報担当者が対応する企業もあるようです。

誹謗中傷に対応する方法として、最も「ストレート」なのは、「その書き込みを載せている媒体への削除要請」でしょう。それによって恐らく書き込みを消させることができるはずです。

しかし、「消す」という行動が火種になる場合が多いです。

*関連リンク:採用広報のやり方とポイントを徹底解説

 

誹謗中傷を「削除要請をする」という行為が招くこととは?

「書き込みの削除要請をする」という行為が招くことは主に2つあります。
どちらもポジティブなものではありません。

○1:かえって書き込みの内容が目立つ

書き込みの削除が完了すると、

・一般人A「え、どんな書き込みが消えたの?」
・一般人B「なんか『商品がすぐに壊れる』ってやつ」
・一般人C「ええ、でも俺もあの会社の商品すぐに壊れたけどなあ」
・一般人D「消すってどんだけ必死なんだよwww」

などという流れで、「書き込みの内容」がかえって広がる恐れがあります。
また、「『残っていると困る事実』だから消したんだ」と決めつける人が少なくありません。

それに、どんな商品にも「初期不良」、どんなサービスにも「稀な不手際」があるものですから、一般人Cさんの言っていることもウソではないのかもしれません。

◎無視すれば→「本当だから何も言えないんだ」と言われる
◎否定すれば→「否定するってことは本当は事実なんだな」と言われる

理不尽ですが、こういう反応が出るのは仕方がありません。たまに「ネットの反応=1つの人格」かのように勘違いする人がいます。
そういった人は「あのときは褒められたのに、今度は貶してくる!」などと怒りの感情を持ってしまいます。しかし本当は、ネットユーザー一人一人が別々に意思を持って書き込んでいるということを改めて意識する必要があります。

広報担当は、まずは、
「誹謗中傷・ネガキャン自体と、その悪影響を100パーセント消すことは不可能」
「ネット上には様々な意見・感想があって当たり前」
ということを理解しましょう。

○2:マイナスイメージがつく

「1」と繋がることですが、単純にマイナスイメージがつきます。

「それくらいで削除要請とか、どんだけ余裕がないんだよ」
「どれだけ大人げないんだよ」
「思いあがっているな」

などと思われてしまいます。

これも理不尽なことですし、例えば芸能人などの一個人であれば「誹謗中傷には真っ向から対応する」という事も必要かもしれません。

しかし、広報担当が守るべきは「企業イメージ」ですから、内心どれだけ苦しい気持ちになっていたとしても、「ストレートな対応」をするべきではありません。

 

広報担当は「好評で悪評を吹き飛ばす」ことを考えましょう

では、企業や広報担当者は、誹謗中傷やネガキャンを無視すべきなのでしょうか。
いいえ。完全に無視するのではなく「好評で悪評を吹き飛ばす」と考えて、広報活動を頑張りましょう。

シンプルに「ポジティブな内容でのメディア露出を増やす」という考え方でOKです。そのためにも、売上に直結する情報だけでなく、

・自社スタッフの働き方インタビュー
・社長のインタビュー
・商品に対するレビュー

などの掲載も積極的に狙っていきます。
また、掲載先メディアはマイナーなものであっても構いません。
(ベンチャー・中小企業の場合は、むしろ最初はマイナーなものを狙うべきかもしれません)

「会社名」や「商品名」でネット検索して引っ掛かるレベルのメディアであれば何でもOKです。つまりはネットメディアの事なのですが、特有のメリットがあります。

 

誹謗中傷対策におけるネットメディアのメリットは「残存性」と「コスパ」

誹謗中傷・ネガキャン対策においては、インターネットメディアの活用が有効です。
その大きな理由は2つ。「残存性」と「コスパ」です。

○残存性について

私はこの記事を2020年に書いていますが、インターネット上を探せば2000年以前のネット記事もたくさん見つかります。
それだけネットメディアの「残存性(残る力)」は高いのです。掲載先のネットメディアが消滅しない限りは、「ネット上にポジティブな情報が残り続ける」ことになります。

もちろん、テレビなら録画、新聞・雑誌なら保管、ラジオなら録音……という形で残存させることができますが、一般の方がわざわざコレをやってくれる可能性は非常に低いです。

だからこそ「自社で保存して広報活動に利用する」べきなのですが、「ネットユーザーが勝手に検索して、勝手に目を通してくれるネットメディア」とは違って、「悪評を吹き飛ばす」ことには使いにくいです。

○コスパ

すでにかなり触れている部分ですが、「一度掲載されるだけで、半永久的に『誰でも簡単に閲覧できる状態』で残る」という「効果」は非常に大きいです。また、マイナーなネットメディアであれば掲載のための「費用」はかかりません。(もし費用がかかるのであれば、それは「広報PR」ではなく「広告」になってしまうので、基本的に広報担当者が行うべき事ではなくなります)

費用対効果に優れている。つまり、コストパフォーマンスがいいということですね。

 

誹謗中傷・ネガキャン対策に他の方法があるかというと……

結局のところ、誹謗中傷やネガキャン自体を防ぐことはできません。これに関しては、企業がどう広報担当者がどうと言うよりも、「日本のインターネット環境」そのものが変わっていかなければどうにもならないでしょう。

だからこそ、広報担当者は「必ず発生する誹謗中傷・ネガキャンをどうするか」を考えなければなりません。

そして「直接どうにかすることはできない」ので、「広報活動でポジティブなイメージを広めて、ネガティブな誹謗中傷・ネガキャンを『相対的に』払拭していく」のです。

「好感度の高い芸能人」は、ネット上にネガティブな書き込みがないから好感度が高いのではありません。「ネガティブな書き込みを誰も気にしないくらいにポジティブなイメージがある」からこそ、好感度が高いのです。

※注意
「たび重なる殺害予告」など、危険性が極めて高いものについては、弁護士を利用するなど厳格な対応を取りましょう。

 

「ネガティブな噂を元にする問い合わせ」にどう対応すべきか?

一般層を相手にする場合と、メディア関係者などを相手にする場合とでは、するべき対応が少し異なります。

○一般層の問い合わせに対しては?

「本当に商品が壊れやすいのでしょうか?」など、言ってみれば「ネットの書き込みを鵜呑みにしているような短絡的な問い合わせ」が少なくありません。

それに対しては、「そういった事実はございません。インターネット上の匿名の噂と、メディアに多数掲載されていると情報のどちらの信憑性が高いのか、ご検討いただけると幸いです」などと、多少強気で出て構いません。

これにより「本当に疑問に思っていただけの人」は、「あ、そうか。確かにその通りだよね」と引き下がります。「クレーマー気質の人」は食い下がるかもしれませんが、そうなってしまったら「信じていただくしかないですね」の一点張りでOKです。

それでも食い下がってきて、暴言や失礼な発言をしてくるようになったら、「そこまでおっしゃるのでしたら弊社の商品はご利用なさらないでください。あなた様の今後の対応によっては、弊社も然るべき対応を取らせていただきます」と言えば大丈夫です。

クレーマーに対しては弱気になると、もっと調子に乗ってくるだけです。
広報担当者がここまで対応する機会はあまりないかもしれませんが、覚えておきましょう。

○メディア関係者からの問い合わせに対しては?

一方、ほとんどのメディア関係者は、
「~~という噂がありますが、何か影響では出ていますでしょうか?」
「~~というネガキャン・誹謗中傷に対する取り組みは何かしていますか?」
などの聞き方をしてくる場合が多いです(もちろん何も聞いてこないケースが大半ですが)。

「噂自体」よりも「それによる影響」を気にするわけですね。これに対しては、「何か数的な実害は出ておりません。
私どもは、気にせずに普段どおりの仕事、広報活動をするだけでございます」などの答え方で大丈夫です。

仮に「実害」が出ていたとしても、それが誹謗中傷・ネガキャンによるものであるという裏付けはないはずなので、「誹謗中傷による実害はありません」で押し通してしまいましょう。

メディア側に「全く問題ないですが?何か?」という態度を見せるのが一番です。

○まとめ

誹謗中傷・ネガキャン。大企業なら、それらについて「厳格に対応する」こともできるかもしれません。しかし、「ブランド作り」「好感度獲得」などが重要なベンチャー・中小企業の場合は、「これまで以上に広報活動を頑張る」「特にネットメディア掲載を狙う」ことでしか対策することができません。

ただ、誹謗中傷・ネガキャン対策だからといって、特別な広報活動をする必要はありません。
「今、すでにメディア露出を増やすために尽力している」というのであれば、それをそのまま継続すれば何も問題ありません。


執筆者・監修者
上岡正明
経済記者・経済コメンテーター
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者25万人のYoutuber
上岡正明

MBA(多摩大学院経営情報学修了)
テレビコメンテーター
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者24万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

日経ヴェリタス・東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン・プレジデントの4大経済メディアで専門家として記事連載もおこなっております。お読みになりたい方はこちらからご覧下さい。

①:東洋経済オンラインでの連載記事
②:ダイヤモンドオンラインでの連載記事
③:プレジデントでの連載記事
④:日本経済新聞での連載記事