広報・広告・宣伝の意味の違いを知っていますか?活用方法・使い方まで徹底解説
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2022.10.22

広報・広告・宣伝の意味の違いを知っていますか?活用方法・使い方まで徹底解説

広告とはそもそもどういう意味か?PRとの違いは?

PRのイメージ画像

30年前、食堂業を営んでいる主人がある光景を見にします。まだ小学生ぐらいの少年が薬と栄養ドリンクを盗んで逃げたのですが、見つかって捕まってしまいました。どうやら母親に上げるために盗んだようです。
しかし、彼にはお金がありません・・・。

「おかあさんが病気なのか?」と主人は少年に聞きます。
少年はコクリとうなずくと主人はそれから何も言わず、薬屋の夫人に代金を代わりに支払い、自分の娘にお店で作っている野菜スープを持ってこさせて少年に渡します。

少年はその包みを受け取ると逃げてしまいました・・・。それから30年後、主人は事業に失敗。年をとって体は弱っていました。しかし、浮浪者がお店にくれば、無償で食べ物を分け与えるなど優しさは健在でした。それを見て娘はあきれています。

そんなとき、突然主人は倒れ頭の打ちどころが悪く入院してしまいます。入院代金は250万円。看護師から渡された治療費の内訳にはそう書いてありました。

「こんな大金払えない・・」。娘は泣き崩れますが、お父さんのために家を売るなどして必死に金策に走ります。
その疲れのせいか、病院にいるお父さんのベッドでつい寝てしまいまったのでした。

「・・・」。ふと娘が起きてみると、紙が置かれていることに気づきます。

「治療明細書・・?」怪訝に思いながら下まで読んでみると、金額が0円に修正されているではないですか。

「どういうこと・・」娘は混乱します。

「これは?」その時娘は、治療明細書と共にもう一枚の紙があることに気づくのです。
「全ての費用は30年前に支払い済み。鎮痛剤3包と野菜スープ3パックとして 医師 プラジャック・アルトン」

そうです。30年前に父親が助けた泥棒少年こそが、今回の手術の執刀医だったのです。
「与えることは最良のコミュニケーションである」このメッセージが流れ、スポンサーは携帯会社だと分かります。

■タイのCM広告を用いたパブリック・コミュニケーション

これはタイの携帯会社のCMです。「人に良いことをすれば必ず自分に返ってくる」という思想がベースにあるタイ人にとって反響が大きかったCMだとされています。

かなり有名なお話ですので、ご存知の方も多いとは思います。知らない方は見てみるといいでしょう。涙なしでは見ることができないと世界中で話題になりました。

CMの内容は携帯とはほぼ関係がありません。最後のコミュニケーションぐらいしか接点がありません。しかし、この広告を公開されてからも世界中で拡散されているところからみるとPR施策としては大成功しているといえます。

 

PRとはパブリックリレーションズの略です

パブリックリレーションのイラスト

先程の例からわかる通り、今では広告もPRも統合型マーケティングという考え方のなか、ひとつの大戦略としてまとまっています。

ちなみに、今回とりあげている「PR」というキーワード。「自己PR」や「会社PR」など販売促進である「プロモーション」の略だと勘違いしているに人も多いかもしれませんが、実際は「パブリックリレーションズ」の略としてPRが使われています。

1)PR(パブリックリレーションズ)の発祥は?

パブリックリレーションズとは、20世紀初頭にアメリカで発展した概念で、組織とその組織を取り巻く人間との間に良好な関係を作り出すための考え方・行動のありかたのことです。

日本には戦後である1940年代後半にアメリカから導入。行政では「広報」と訳され使われたのに対し、民間企業は「PR」という略語を使うことになりました。この時点では、「PR」と「広報」は呼び方が違うだけで同じ内容でしたが、その後「PR」を「宣伝」と同じ意味で用いられることが多くなり、本来の意味から外れてしまうこととなっています。

2)PRと広報の違い

そのため「PR」という言葉を使わず、職務としては「広報」という言葉が使われるようになりました。

ですが、「広報」という言葉も生活者との良い関係を作るというよりも、組織側からの一方的な情報の発信という体裁で考えられている節があります。本来パブリックリレーションズが持っていた良好な関係を作るという点が忘れ去られているのが現状なのです。

1)PRは生活者との関係をより良くするためのもの

前項でも述べていますが「PR」は生活者とより良い関係を築くためのあらゆる施策であり、宣伝や広報よりももっと範囲が広い意味の考え方です。言い換えれば、戦略的コミュニケーションのプロセスがパブリックリレーションズともいえます。

広報は一方通行のコミュニケーションとして行っており、PRは双方向のコミュニケーションと捉える人もいますが、SNSの発達によって双方向というよりも、「マルチディメンショナル」になった現代ではより複雑化した情報の流通が行われており、より生活者の声を取り入れながら必要に応じて計画も都度修正していきながらPDCAを回していくことになります。

2)情報を届けることが以前よりも難しい

つまり、現代のように情報過多の時代において、マスコミやメディアに取り上げてもらったり、お金を払って広告という宣伝をしてもらったりするだけでは、自社の製品やサービスを届けることが以前よりも難しくなってきています。

生活者も情報を沢山取り込んだことで、自分にとって余計な情報は迷惑と考えるようになり、情報の取捨選択が厳しくなっているからです。しかし、企業と生活者との間に良い関係が出来ているのであれば話は別。生活者も喜んで話を聞いてくれます。

このような良好な関係を築く上で重要なのがPRというが概念なのです。

例えばタイのPR動画をみて、携帯会社である「繋がる」と善行が結び付き共感してもらえることで、携帯会社を選ぶときに、「じゃあこの会社で」となっていくというわけです。

■現代のPR施策のキーは共感がベース

共感を狙うPR手法はテレビCMでもよく登場します。商品自体のメリットを説明するわけではなく、笑いや感動、涙があるストーリーの後に商品や会社の名前がでてくることがあります。このような共感をベースとしたコンセプトで、お客様との関係を生み出すために必要な施策になります。

商品・サービスを生活者に買ってもらいたい場合、買う理由を明確に認識してもらうためにはアピールだけでは難しくなっています。思考だけでなく、感情を揺さぶりこれは「自分の事だ」と認識してもらって初めて人は動くのです。

*関連リンク:広報とはどういう意味か?7つのポイントをまとめてみたよ

広告を統合する戦略PRの役割とは?事例をもとに具体的に解説

引用画像_広報の取材風景

企業や団体にはそれぞれ課題や機会があります。その課題や機会に対して正確に、客観的に把握し、組織内外に対しても良好な関係を築きながら、目指すべき成果を実現するお手伝いをすることがPRの仕事です。手順としては以下のようなものになります。

・状況分析
・目標設定
・戦略立案
・戦術
・成果の分析

それでは順に説明していきます。

1)状況分析

最初にやることは状況分析です。どのようなPR活動においても、状況がわからないまま闇雲に商品やサービスの情報発信したところで、効果は期待できません。PR活動を始める前に、まずは以下の内容を把握する必要があります。

  • 課題・機会の分析
  • 誰に向けてコミュニケーションをとっていくのか
  • ターゲットはどのような背景を持っている人なのか

これらが分かったうえで次のステップに進みます。

2)目標設定

次に行うのは目標設定です。目標がなければどこに進んで良いのかわかりません。そのため、どこに向かうのか、そして何をもって目標を達成したとみなすのかをいうことが分かるように測定可能な目標にします。

3)戦略立案

課題や機会を明確にし、ターゲットの分析および設定を行った後は目標を達成するために行う戦略を策定します。対象とするターゲットにどのようなメッセージを、どのチャネルを利用して届けるのかを考えていきます。

4)戦術

具体的な戦略が決まったのなら、実行に落とすためのプランを策定します。

  • ターゲットとしている層を逃さない
  • 確実にメッセージやストーリーを送る
  • ターゲットには発信に関心を持ってもらう
  • ターゲットから理解や同意を得られる
  • ターゲットと感情の共有がなされる
  • ターゲットに意識の変化を起こすことができる

具体的にはこのような項目に対応する戦術を作成します

5)成果の分析

PRのプロジェクトをやっただけでは次に活かすことができません。成果としてまとめ、分析し、次の活動としてつなげていくことが重要となります。そのためにはPR活動の効果の計測を行い、PDCAを回していく必要があります。

ここでいう成果とは、ビジネスとしての成果です。具体的にはターゲットの意識の変化や態度が変化した。売上や寄付金などの金額面での上昇、投票率のアップなどというもの。その一方、パブリシティを出した本数や発行部数や視聴者の総数や広告換算などは対象にするべきではありません。

後者を重視するということは、手段が目的化してしまっている可能性があります。

■広告とPRの違い

PRの本来の意味としては「社会の人々に理解してもらい、信頼関係を構築し、最終的にファンになってもらい、行動してもらうためのコミュニケーション」という意味ですが、日本でPRというと「何かを宣伝する・アピールする」という意味合いで使われることが多く、広告と混同されがちです。

PRも広告も企業・団体の商品・サービスを知ってもらいたいという点では共通していますが、実は決定的に違います。それはメディアなどの媒体にお金を払うかどうかです。広告の場合は、メディアに料金を払ってスペースを買うに対して、PRは価値ある情報をメディアに取り上げてもらうことを目的とした活動です。

これだけ聞くと、PRのほうが断然お得に見えるかもしれませんが、実際はそう簡単ではありません。広告は購入するだけですのでそれほど問題はありませんが、PRの場合は掲載するかどうかの基準はメディア側にあります。

情報を確実に発信できる広告に対して、PRはコントロールができずに掲載してもらえるとは限りません。掲載されたとしてもどのようなカタチで掲載されるのかも、実際やってみないとわからないのです。そのようなデメリットはありますが、メディアの目にさえ留まれば費用をかけずに大がかりなプロモーションをすることも可能です。

■生活者からみた広告とPRの違い

生活者からみた広告とPRの違いも明確です。広告は、企業が世間に対して企業自らが発信をしている体裁ですので、表現は主観よりになりがちです。一方、PRはメディア側が自身の特性を活かして、独自の切り口で発信することとなり、客観的な視点で情報を発信されることになります。
生活者の立場から見た場合、第三者目線での切り口のほうが発信者目線での切り口よりも信頼に値し、魅力的に見えます。

■PRと広報との違い

企業において広報部がPRも兼ねているために、同じ意味で使われていることが多いのですが、実は違いがあります。広報の役割は、企業の情報を広く知らせることにあります。どちらかというと一方的に配信する活動です。

一方、PRは情報を伝えるだけでなく生活者との良好な関係を築くためのコミュニケーションを図るといった活動です。そして、良好な関係を生活者同士が伝達して繋がっていく仕組みづくりを狙います。広報よりもPRの方が、単発の集合体というより施策がずっと続けて行われていきます。

■PR会社の職種

大きく分けて2種類の職種がPRの仕事にはあります。

・PRコンサルタント
・メディアプロモーター

1)PRコンサルタント

クライアントの目的を達成するために、PRの戦略を立てる仕事をするのがPRコンサルタントです。クライアントの課題の抽出をし、新商品・サービスのPRプランを企画提案していきます。

2)メディアプロモーター

メディアプロモーターの仕事としては、クライアントの情報がTV、新聞、雑誌、WEBなどのメディアに取り上げてもらえるようにアプローチをする仕事です。クライアントの広報・マーケティング担当者がたくさんのメディアにアプローチをすることはかなり大変です。メディアもどんどん新しいものも作られていきますので、情報をどんどんアップデートする必要があります。

商品・サービスをメディアに取り上げてもらえるように決まったら、盛り込みたい情報をメディアに伝えたり、細かい部分の原稿をチェックしたり、インタビューの日程の調整や、質問事項のチェック、当日の進行などあらゆる部分で進めていきます。

プロモーターの仕事は、クライアントである企業とメディアの間に入り、クライアントの希望をメディアになるべく通せるようにするという事も含まれています。

■PR業界の大手企業は?

日本にあるPR企業は合わせると300社前後あるといわれています。その中でも大手と言われる5社を紹介します

1)ベクトル

戦略PRを強みとする総合PR会社がベクトルです。PRだけにとどまらず、ニュースメディア・SNS・インフルエンサーなどのWEB領域や広告テクノロジー・動画コンテンツを使ったコミュニケーションの戦略をワンストップで行うことができるのが強みです。

2)サニーサイドアップ

企業広報やスポーツマーケティングが得意。そのほかにもライター・エッセイスト・メンタルトレーナーなどのマネジメントもてがけています。

電通パブリックリレーションズ
電通グループのPR会社。

3)プラッブジャパン

国内グループ4社、アジア地域の現地法人4社を含めたグループ会社。企業・団体の広報のコンサルティングおよび、メディアリレーションを中核にして多岐に渡って活動をしている。

4)共同ピーアール

老舗の日本独立系最大級のPR会社。他社にくらべて大手の固定顧客比率が高いことが特徴。「消費者金融」といった言葉を定着させたのもこの会社であり、社会を巻き込んだPRを得意としている。

■PR会社に業務を依頼するメリット

自社に広報担当者が不在というだけでなく、担当者がいてリソースが揃っていたとしてもPR会社に業務を依頼する企業は少なくありません。PR会社に依頼するメリットは以下の4つに集約されます。

・自社にはない豊富なケーススタディの提供
・第三者目線の獲得
・すぐにアプローチできるメディア人脈の獲得
・自社の広報ノウハウを蓄積できる

1)自社にはないリソースの提供

PR会社はPRの事例の宝庫です。企業が一から着手しようとすると、膨大な時間がかかるため、PRの専門であるPR会社をパートナーにすることですぐに解決することも多いものです。「規模が小さいから実績が少ないだろう」と思われるようなPR会社だとしても、PR会社にとってBtoBからBtoCまでありとあらゆる企業の実績を持っています。

商品の開発やサービス開始時の事例だけでなく、社名の知名度アップや、名物社員をPRすることで採用につなげたい、予算内でできることをやりたいなど、自社ではやったことがないことでも、PR会社からすれば実例をもっていたりすることもあるものです。

PR会社はいままでのケーススタディを元に、クライアントに適しているPRプランを選択、施策を提案してくれます。守秘義務の関係で詳細までは教えてくれないかもしれませんが、ヒットした商品の舞台裏などの話もある程度は聞くことができます。

2)第三者目線の獲得

企画を提案するのがPR会社の仕事ですので、意外だと思われがちですが第三者目線である客観性も持ち合わせています。なぜなら広告とは違い、PRは客観的な視点が必要になるからです。そのため、PR会社は企画に対しても非常にシビアに見極め、どのメディアや切り口を使えば掲載に繋げることができるのかを考え出します。

PR会社では調査して気づいた、自社では当たり前すぎて気づかないエピソードがメディアに気に入られ、オンエアに結びつくということも多々あります。

一方、自社でPR活動を行った当初では気づかずに思わずやってしまってメディアに嫌われる行為や、非効率的な行動などをしてしまうことがあります。これらのことはPR会社に依頼をしていれば未然に防ぐことができ、社内にノウハウが蓄積されていきます。

3)すぐにアプローチできるメディア人脈の獲得

PR会社が得意とするものがメディア人脈です。メディア人脈は長期にわたって信頼関係ができているからこそ作れる
もので、自社だけではなかなかできるものではありません。信頼関係があるからこそ、初見の会社であれば相手にしてもらえない影響力のある記者に、すぐさま電話でネタの掲載の可能性があるかどうかを聞きだすことなどもできます。

4)自社の広報ノウハウを蓄積できる

自社の広報の担当の人数が少ない場合に起きやすいことですが、社内異動によって担当者が代わるという事が起きた時、過去の施策や成果などを上手く引き継げないということも多々おこります。このような企業の場合、信頼に足るPR会社とパートナーを組むことによって、社内の引継ぎが上手くいかない場合でもPR会社が情報を把握しているため解決できます。

■自社に適切なPR会社の選び方

もしPR会社に委託しようと考えた場合、どのような視点で考えればよいのでしょうか。ここでは以下の3点で説明していきます。

・PR会社とは何かということを理解する
・PR会社を「メディア露出屋」と捉えない
・自社の課題にベストな戦略を立案してくれるPR会社を選ぶ

■PR会社とは何かということを理解する

PR会社といっても大きく分けて2つのタイプがあります。それは「総合PR会社」と「専門PR会社」です。総合PR会社は、あらゆる業種のどんな手法のPRにも対応が可能です。戦略設計というPRの上流から、戦略パートの実行である実務まで担うことができます。総合PR会社とはいえ、各社によって得意なメディアやPR手法も異なってきます。

当然のことながら所属している社員の雰囲気も違いますので、PR会社を選定する際は複数社に声をかけてみて、具体的な提案をもらってみましょう。得意分野やそれぞれの会社のイメージがつかみやすくなります。

その点、「専門PR会社」は医療や化粧品などの特定の業種や、テレビのプロモーションなどの特定の手法に特化したPR会社をさします。限定された商材のPRの場合、専門PR会社にも提案をもらうと、自社にとって専門PR会社と総合PR会社のどちらが合っているのかも分かりやすくなります。

■PR会社を「メディア露出屋」と捉えない

PR会社と契約したあと、彼らを信頼できるパートナーであるか、自社の期待以上の成果が上がるかどうかは、広報担当の方がPR会社に対してどのように考えているのかによって変わるといっても間違いではありません。

最も勘違いされるケースが、PR会社をメディアに取り上げてくれる会社だと思っている企業です。PR活動をするうえで、メディアの露出をするためにもパブリシティ活動は重要です。しかし、後先考えず出せば良いというものでもありません。あくまでも目的のためのPRであり、メディア露出です。目的が不明瞭な露出は混乱を招くだけであり、クライアント会社とPR会社の両方にとって不幸になってしまいます。

■自社の課題にベストな戦略を立案してくれるPR会社を選ぶには

自社にとって最適なPR会社を選定することができれば、
・生活者、取引先、株主からの信頼を上げたい
・ブランディングをしていきたい
・認知をあげていきたい

などの企業の目的に対して最善な戦略を策定して行動してくれます。かえって、戦略をもたず「いろいろな媒体に出しましょう」という会社に対して、長期的に考えた場合適切なパートナーとはいえません。

ただし、PR会社のサービスにも2つあります。それは「リテーナー」と「スポット」です。前者は、長期的なパートナーとして関わるものであり、後者は短期間だけパートナーとして関わるというものです。「スポット」であれば、短期の間・1回のイベントのみで多くのメディアに掲載してもらうというケースも考えられ、その場合はいかに媒体に掲載することができるかということが提案に入ってくることはあります。この場合は、いかにして媒体に掲載してもらうかという戦略も考慮にいれたPR会社のほうが良いこともあります。

■タレントも政治家もPR会社を利用している

PRを企業や組織が行う場合、広報の担当者はインハウスPRと呼ばれ内部の人間が行います。彼らは情報の調査や整理、部署間での調整、公表する内容の承認作業、プレゼン者に対する支援などの社内での調整に多くの時間と労力を割きます。その上で、プレスリリース・取材・記者会見・SNSなどを通して、メディアや報道機関にたいしてコンテンツを発表します。

現在ではPR活動を行うのは、企業・組織だけでなくタレントや政治家など多岐にわたっています。デジタルメディアが一般化した現在、広報と広告の境界線が見えなくなりやすくなっているからこそ、ますますPRの活躍の幅が広がっています。

■PRを行う広報の予算は広告の100分の1ですむ

PRを語る上では、PRに関わる広報と広告との違いを明確にする必要があります。広報や広告はどちらもマーケティングとしてプロモーションの一貫として行われます。ですが、予算としては10〜100倍の差があります。なぜなら広告と広報では仕組みが全く違うためにです。

広報はメディアに掲載してもらうことを意識して行う行動であり、媒体に支払う費用はかかりません。その一方広告の場合、TVCMなど媒体を購入する必要があります、その上タレントの起用や、コンテンツ制作代金などもかかることとなり、膨大な時間と予算が必要になります。

しかし、現在のPRは従来の広報の領域だけでなく広告を組み合わせたメディアミックスで行っています。有償・無償問わず、総合的なコミュニケーションで、訴求対象者に対して適切な印象や行動の促進を図ります。その時は、PR会社だけでなく広告代理店、イベント会社、芸能事務所、デジタルマーケティング会社など、様々な会社が分担して行うことも多いのです。

■企業の情報を担うインハウス広報・PR

広報・PRの仕事は利害関係者との信頼関係を作り上げ、継続していくことです。日常的な市場の状況を冷静に把握して、自社の経営の変革内容を伝える上での助言を行い、社内外への利害関係者に対して伝達を行う仕事が広報・PRの役割です。企業の経営資源としての情報を担います。

パブリシティから企業の社会的責任までを、一連の流れとしてみるために中長期的な戦略と、一貫性が求められます。企業の持続的成長において広報・PRは、重要な位置を占めています。広報・PRは大きくわけると以下の5つに分類することができます。

・社外から社内のための情報収集
・社外情報を社内へ発信
・社内情報の収集
・社内情報の社内への発信
・社内情報の社外への発信

1)社外から社内のための情報収集

現在はインターネットやSNSの普及とグローバル化の進展が進み、一層の企業の社会的責任が求められています。生活者、取引先、株主などが企業に求める役割は以前とくらべて厳しくなっています。その変化を見抜き、情報収集することが広報・PRの仕事の第一歩です。

2)社外情報を社内へ発信

広報部門は、社外である社会で発信されている内容を整理整頓して社内に伝え、それと同時に社内で起きていることも社会に発信というコミュニケーションという情報の戦略を統括するポジションにいることが求められます。

3)社内情報の収集

トップのビジョンや自社の理念、業績・研究開発での推移、自社で何が起きているかなど総合的に把握しておくことで瞬時に情報発信をすることができるようになります。

4)社内情報の社内への発信

会社内でも部門が違えば、お互いに何をやっているか分からないことも多いもの。トップのビジョンや各部門で行われていることを広報が情報共有することで社内での忠誠心や求心力が生まれていきます。単に社内の情報を発信するという視点ではなく、社内でのコミュニケーションを図る、インターナル・コミュニケーションという立場から発信する必要があります。

5)社内情報の社外への発信

テレビ・新聞・ラジオ・雑誌・WEBメディアなどのメディアを通して、生活者・株主・取引先などの利害関係者に対してどのように発信をするのか考えます。現在では自社のウェブサイトや、公式FACEBOOK、公式Twitterなどのソーシャルメディアやオウンドメディアなど、あらゆる媒体を駆使して各利害関係者に対してのコミュニケーションも重要です。

6)危機管理としての広報PR

企業が活動していく上で、さまざまな危機が訪れます。金融危機、経営者の不祥事、台風・地震・津波などによる自然災害、火災などの事故、製品の不具合、労務問題などの過労死・ハラスメント問題など。このような危機が訪れた時に窓口になるのは広報の仕事になります。

事態を正確に把握、情報の収集をまず行い、危機の状態に応じて被害の全貌や自社の責任の程度、原因を究明しながら再発の防止を進めていく必要があります。危機管理としては危機が発生した後の対応の「クライシスマネジメント」と危機が発生する前の対応である「リスクマネジメント」があります。実際に危機が起きたあとの謝罪会見の「まずさ」からバッシングを浴びることが多々あるため、現在では危機になったことを想定して、トレーニングとして模擬の記者会見を行う企業も増えています。

東日本大震災やコロナウィルス騒動など深刻な危機が発生した場合、事業計画をベースにして被害の状況や復旧見通しなどを定期的に情報を発信することで、利害関係者に理解を得ることができます。これらのことは経営と一体化した広報が不可欠です。

 

まとめ 近年の広告やPRの課題をしっかり把握しよう

PRとマスメディアの関係性

近年になり、企業経営においてますますコミュニケーションを重視する状況が強まってきています。投資家との関係において、財務的な情報開示および説明責任が以前よりも強く義務づけられることとなりました。企業の不祥事が企業の存続に強く関わるようになり、コンプライアンスと企業倫理も求められています。従来のように本音と建前を使い分けて乗り越えることも難しくなり、誠実な等身大の発言が必要とされてきています。

またインターネットの普及により、情報の伝達スピードが早くなり範囲が飛躍的に伸びることとなりました。従来の媒体と比べて情報量の制限がなく、文章・画像・動画を限りなく無限に使用することができるため、今後の広報活動においては企業理念・財務情報・製品PR・ニュースリリースなどあらゆるところで使われています。その上、自社媒体やSNSを駆使することで生活者とのコミュニケーションを双方向で行うことが可能になってきています。ネットを通じた発信はコアなファンになってくれる顧客づくりにもつながり、その顧客が情報を拡散してくれるケースも多発しています。

世界のグローバル化が進めば進むほど世界にも拠点化が進み、資本の拡大化に伴い多数の業態をもつことも珍しくなくなりました。
その時、全世界の会社の従業員をまとめる際にも、情報が果たす役割は大きくますます広報が発信するコミュニケーションの比重は大きくなっているのが現状です。

■戦略PRとは

約10年前である、2009年に2冊の本が出版されました。このことがきっかけで、「戦略PR」という言葉が広告・広報業界において一気に注目されることとなりました。

その2冊とは、以下です。

  1. 「戦略PR 空気をつくる 世論で売る。」本田哲也著
  2. 「脱広告・超PRー広告を信じなくなった消費者を動かす」山田まさる著

 

従来、日本でPRといえばメディアパブリシティの獲得と同義で捉えられていました。具体的にいうと、企業・団体が新情報や新製品を発表するために、ニュースリリースの配信や記者会見を行うことによって、情報をメディアに提供することによって記事化、および茶番化を図るという手法でした。

そこに戦略PRという概念が入ってきました。ただの紹介で終わるだけでなくマーケティングに成果をとっていこうという考え方です。

以前はココアや納豆、寒天などが健康効果やダイエット効果があるという情報がテレビに流れると、翌日のスーパーに消費者が殺到し、品切れになるということが頻発していました。つまり食品業界とPRがマッチしていました。
PRは従来の広告にくらべて、具体的な企業名や商品名、サービス名を出すことなく客観的な事実ベースでの商品説明やトレンドとして話されることが多いため信用できるというスタンスだったのです。

これらは2008年のリーマンショックが起き、広告費用が捻出できなくなった企業がPRに向かい始めたということも影響しています。

しかし、2011年の東日本大震災をきっかけとして、日本でもSNSが普及したことによって状況が変わります。それまでの発信者は企業・団体・メディアが主でしたが、この時を境に生活者自信が発信をするようになってきました。自分で調べる習慣を持つ人も出始め、企業・団体が作り出そうとしているムーブメントに厳しいジャッジがつくようになってきたのです。

■今後の戦略PRとは

今後はますます情報の洪水化がすすみ、意図した情報を受け取ってもらいづらくなり、広告的コンテンツを避ける傾向が増えます。そのため、生活者にとって有益な情報でなければうけとってもらえなくなります。
また、生活者はSNSを通してリアルタイムに情報発信をすることで、消費の主導権はますます生活者へ移行することとなります。そのため、生活者が情報発信するときに使ってもらえる材料を提供できるかどうかの資質が問われます。

最後にSNSの発達により同じ価値観同志はより強く固まりますが、違う価値観の人とは交わらなくなり多層構造の社会ができあがっています。幅広い層にアプローチすることが難しくなっていくため、今まで以上緻密なコミュニケーションが必要になっていくのです。

このように、従来のテレビCMや折り込みチラシなどの方法だけではSNSに慣れている生活者に情報を浸透させていくことが困難になっています。その一方、ユーザーからの書き込みによる「この商品はここが良いよ。」「この商品は今が買い時だよ。」などの情報の信用度があがっています。企業としては戦略PRとして生活者達から好感度をもってもらえるような空気をつくり、SNSで拡散してもらう体制をつくることが成功のポイントになっています。

■戦略PRで行う次の手法はストーリーテリング

空気感を作っていくのがSNS最盛の時代の手法ではありますが、空気感をつくるだけでは、類似商品が登場すると競合してしまいます。そのため、差別化の要因としてストーリーテリングが注目されています。
PRの役割は社会とのコミュニケーションを行うことでより良い関係を作っていくことが目的です。自社の商品・サービスが良いと生活者に広めてもらうためには、信頼性を構築していく必要があります。

・どんな会社なのか
・どんな商品があるのか
・どんなサービスがあるのか

などを知ってもらうために、その背景にあるストーリーを伝えていくというのがストーリーテリングです。人気番組「カンブリア宮殿」や「プロフェッショナル」など、その会社が生まれた背景、商品が生まれた背景を知ると人は説明をしたくなり、手に取ってみようと考える人は多いのです。

・社長がビジネスを始めた理由と想い
・新商品開発にあたっての障害と克服した出来事

情報の発信のしかたも従来の広告に近いカタチでは生活者に興味を持ってもらいづらいかもしれません。その時は漫画やドラマ調にしたメディアを作成することで最終的に伝えたいメッセージを送るなどの工夫も必要になります。


執筆者・監修者
上岡正明
テレビコメンテーター・経済記者
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者25万人のYoutuber
上岡正明

MBA(多摩大学院経営情報学修了)
テレビコメンテーター
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者24万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

日経ヴェリタス・東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン・プレジデントの4大経済メディアで専門家として記事連載もおこなっております。お読みになりたい方はこちらからご覧下さい。

①:東洋経済オンラインでの連載記事
②:ダイヤモンドオンラインでの連載記事
③:プレジデントでの連載記事
④:日本経済新聞での連載記事