今回は、広報担当者の必殺技とも言うべき「リーク」の意味や具体的な方法について解説します。
広報担当者である以上は「新聞掲載」や「テレビ局」へのアプローチも視野に入れて積極的に動きたいところです。
ですが、中小・ベンチャー企業が、大手の新聞社に取り上げてもらうのは非常に難しいもの。
特に中央5紙(読売、朝日、毎日、東京、産経の各新聞メディア)については、「倍率が高すぎるので、本気で取り組まないのであれば、最初から何もしないほうがいい」とさえ感じます。しかし、それでも「中央5紙や影響力が大きいテレビ局に放映されたい!」という方のために、ここでは広報担当者が使える「必殺技」を一つ紹介していきます。
その名もリーク。「リーク」の意味は、簡単に言うと「公式発表の前に、親しい記者などに情報を伝えること」です。
記者は「まだ表に出てない情報」が大好きです。ですから、記事として取り扱ってもらえる可能性がアップします。
もちろん、他の新聞やテレビへの掲載を狙うときにも活用を検討すべき手段です。その具体的な方法やタイミングまで詳しく紹介していきます。では、どうぞ!
リークという必殺技を打つための4つの方法と手順
1:記名記事を読み漁る
必殺技を使うためには「交流のある記者」を一人以上作る必要があります。
そのためにも、まずは各新聞の「記名記事」を読み漁りましょう。
すると、何人か「この記者の記事は質が高いし、取り扱っている分野的にも我が社に合っている」という人が見つかるはずです。
そういった記者たちをリストアップしておきましょう。
2:アプローチしてみる
目ぼしい記者一人一人にアプローチしていきます。
ですが、新聞社に直接電話をして「○○記者はいますか?」と言っても取り次いでもらえない可能性が高いです。
ですから、個人的に連絡を取ることを考えましょう。
記者によってはSNSのアカウントを持っていたり、ブログを運営していたりするので、そういったところからメッセージを送ります。
そして、コンタクトが取れましたら次の手を打ちます。
もちろん、こっぴどく叱られたり、無視されることもあるでしょう。そうした壁にぶち当たっても、めげないメンタルも必要です。
(※弊社のコンサルタントは日に100件程度、メディアに電話していますよ!)
3:記事を書いてもらえるように頼む(結果的に書いてもらえなくても構いません)
その記者に「○○という情報があるので記事を作ってくれませんか」と頼みます。
この際、「本命の情報ではないが、記事として取り上げてもらいたい情報」を伝えるのがポイントです(理由は後述)。
そのまま記事にしてもらえるのであれば万々歳ですが、そうならなくても構いません(実際には、記事にしてもらえる確率は低いと考えてください)。
もちろん前置きなしで「弊社のことを記事にしてください!」と言っても受け入れてもらえるはずがありません。
ですから、「○○さんの記事を読み、~~な部分に共感し、私も自分を見直すことができました」ですとか「○○さんの記事の内容は、弊社の社訓にどことなく通じる部分があるのです」など、その記者の記事をできる限り具体的に褒めてください。
そうすれば、多少なりとも「記事にしてほしい」という頼みを承諾してもらいやすくなります。
ただ、とにかくまずは記事にしてもらえなくても大丈夫です。
ここでは「記者とある程度親しくなること」を目標としてください。
4:いざリーク!
ここまで来ましたらいよいよリークをします。
「3」をスキップして、いきなり目ぼしい記者にリークをするという手法もありますが、やはり見知った記者を相手にしたほうが成功しやすいです。
先程のステップで親しくなった記者さんに、後日、リークというかたちでコンタクトを取ります。
リークする場合は「まだ、どこにも出していない情報ですが~」などと切り出しましょう。ケースによっては「社内でも私しか知りません」などと言うのも良いでしょう。
*参考リンク:そもそもそのリリースで大丈夫?元「めざましテレビ」放送作家が教えるプレスリリースの書き方は
リークはなぜ有効?理由は主に2つあります
※弊社フロンティアコンサルティングの情報開発戦略シート
リークが効果的である理由は2つあります。
1:記者の心理に合うから
記者には「誰も知らない情報を、一番早く世の中に発信したい」という情熱があります(特に新聞記者)。
だからこそ、リークはありがたいのです(もちろんリークの質や、リーク元の信用性にもよりますが)。
2:表彰に繋がる場合があるから
リークなどを元にして「最新の情報」を発信する記事を書くことができると、担当した記者が表彰されるケースがあるようです。
広報担当者として知っておきたいリークの4つの心構え
広報担当というのは非常に特殊なポジションです。
直接、何かを開発したりサービスを提案したりするのではなく、「とにかく広報宣伝する」のが仕事です。
そのために「このままで良いのだろうか……」「意味がある仕事なのだろうか……」などと思い悩むこともあると思います。
ときには会社を辞めたくなることもあるかもしれません。
そこで、ここからは「広報担当者としてリークのさいの相応しい心構え!」を紹介していきます。
もちろんここでお伝えしていくのは、あくまで筆者の考えでしかありません。
まずはとにかく「自分の頭で考えて」、「そうだ!」と思う部分は実践していただき、「いや、違うな」と感じるところについては反面教師にしていただければ幸いです。
では、具体的な解説をしてきます。
○心構え1:嫌われることを恐れない
最初にリークについての解説を聞いて、どのように感じたでしょうか。
筆者は初めてリークという手法を知ったとき、「そんなことをして、嫌われないのだろうか」と思いました。
率直に言うと「嫌われる」かもしれません。
「まだ表に出ていない情報」をメディアを厳選して明かしてしまうわけですから、その情報に触れることができなかった親しいメディアさんに嫌われてもおかしくありません。
しかし、ここで考えるべきなのは「嫌われることを恐れていては、主要媒体に優先露出ができない」ということです。
リークとは、つまり露出の優先順位です。
最も大きなデメリットは、恐らく「今後、取材がしにくくなる」ということですよね。
ですが、相手も大人です。
もしもリークによって明確に迷惑をかけてしまっていた場合は、「その節は大変申し訳ございませんでした」と誠心誠意謝罪をすればいいだけです。
どうしても嫌われるのが辛いのであれば、「リークに成功したからこそ嫌われるんだ」と自分に言い聞かせましょう。
○心構え2:嘘つきになってはならない
どういうことなのか解説していきますね。
「リークは一人の記者に対してだけ行う」のが基本です。
しかし、その記者の反応が芳しくないのであれば、あなたの知り合いの別の記者にリークしてみても構いません。
ただ、その場合、先に伝えた記者に一言ことわりを入れるのが社会常識です。
おそらく記事化がまだ決まっていなければ、「残念ですが仕方ありません」「構いません」と言うでしょう。
二人以上の記者にリークしてはいけない、というルールは実は存在していません。
しかし、ことわりもなく、勝手に複数にリークすると、それは業界でのあなたの信頼を失うことになるでしょう。記者さんは「ネタさえもらえれば良い」と考えている人が多い、というのは誤解です。
人間は「ミスをする人間」のことは許せるものですが、「ウソをつく人間」のことはなかなか許容できないものだと言われています。
では、二人以上の記者にリークする場合はどのように行動すれば良いのでしょうか。
答えはシンプルです。
1:一人目の記者にリークする
2:二人目の記者に伝える前に、一人目の記者にその旨を伝える
3:二人目の記者に「○○さんにも伝えましたが」と報告しておく
という流れでOKです。
あとは、ケースバイケースで構わないと私は思います。
ただ、ウソをつくことだけは絶対にやめましょう。
○心構え3:「人づきあい」は宝です
先ほどは「二人を相手にリークする場合」について解説しましたが、リーク先は何人いても構いません。
「○○記者に先に伝えて、次に○○記者と○○記者にも伝えています」と正直に話せばいいわけです。
つまりは、記者の知り合いは多ければ多いほどいいということですね。
とくに新聞社の場合は異動が少なくありませんから、「繋がっている記者が一人しかいない」という状態は危険です。
その人がどこかにいってしまえば、その新聞社自体との関わりが消滅してしまう恐れがあります。
ですから、一人でも多く記者を開拓していきましょう。
そうすれば、単純に「リークして記事にしてもらえる確率」も上がります。
「人づきあい」は広報担当にとって宝です。
これは、何も記者を相手にする場合に限ったことはではありません。
「人脈」などという大げさなものではありません。メディアとトレンドに敏感な外部の人を含めて、ありとあらゆる「人づきあい」を大事にしていきましょう。
○心構え4:それでも好かれるように頑張りましょう
ここまでの解説でおわかりのように、「嫌われるのが広報担当者の仕事なんだ!」と感じたかもしれません。しかし、それはちょっと違います。
「場合によっては、嫌われることを恐れない」というくらいの気持ちでいてください、という意味です。
そうでないと、あなた自身のメンタルが潰れてしまうかもしれませんから。
まとめ リークにトラブルはつきもの?でもチャレンジすべし!
ここまでお話ししたとおり、リークは言うまでもなくある程度のリスクがつきまとう行為です。
「情報Aに関する自社からの正式発表」の前に、情報Aのことをリークしてしまうと、「正式発表の前に記事が公開されてしまい、正式発表の価値が薄れる」場合があります。
また、私の経験では「リークのせいで記者会見が中止になった」という実例もあります。
そうでなくても、リークをするとある程度の制約が生まれるため、他の部署から白い目で見られてしまう事もあるでしょう。
ですが、中小企業やベンチャー企業の場合は、リスクを背負ってでも大手メディアに取り上げてもらうことを考えるべきです。
そうでないと新商品や新サービス、そして企業自体が注目されることがありません。
「そのせいで業績が伸びない」などという事になってしまっては、何のために広報担当が存在しているのかも分かりません。
・このリークによって会社が潰れる可能性がある
・このリークによって新商品や新サービスのリリースが中止になるかもしれない
など、あまりにも致命的なリスクを抱えることになる場合以外では、
「迷ったらリーク!」という方針を持っておくことをおすすめします。
以上、今回は「リーク」の戦略戦術についてまとめてみました。お役に立てればさいわいです。