最近、イベントやセミナーを自社で開催する企業が増えています。インターネットが普及することで、企業と消費者は接点を持つことが従来に比べて容易になりました。その一方、個別により深いコミュニケーションをとるコストが高くなりつつあります。
そのため、見込み客となりえる人と接点を持つために、イベントやセミナーを開催するようになりました。しかし、担当者の多くは専任ではないため、いままで体系的に学んだことがなく、経験や勘などの今後にも継承できないスタイルでおこなっている会社がほとんどなのが実情です。また、担当者が新たに学ぶ時間を取る必要があり、会社、担当者共に負担を強いることになります。
セミナーやイベントの運営でいうと、目的に合わせて手法を選ぶことで、受講者の満足度があがります。担当者がイベント・セミナーを運営することに負担を感じる理由も、やり方を知らないために、その場しのぎになってしまうからということはあまり知られていません。
そこで今回は、PR会社目線でみたイベント・セミナー運営を成功させる方法をお伝えしていきます。
*記事を書いた人:「めざましテレビ」「王様のブランチ」元放送作家
イベントやセミナーの目的はあくまでもコミュニケーションを生むこと
多くのイベント・セミナーは、集客人数だけに目が行きがちですが、実際は集めて終わりではありません。実施後、商談につながったか、ファンになってもらえたかなどが重要で、計測すべきは来場者の満足度です。
企画に関心を持ってもらえて、わざわざ足を運んでくれたお客様に対して、満足度が低いセミナーをしてしまうと、せっかく企画・集客の準備をしたのに、成果がでないどころか、ブランドを棄損する可能性があります。
イベント・セミナーを行う場合は、企画・集客だけでなく運営にも目を向けることが必要です。
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① イベント・セミナーの内容・場所をしっかりと吟味する
イベント・セミナーをやろうと思ったときに、企画をしっかりとたてる必要があります。
チェックをする内容は以下のようなものがあります。
・イベントの内容を明らかにする(ターゲット設定)
・イベントの場所や日時を吟味する
・イベントのタイトルを考える
・何か一つでもオンリーワンの要素を盛り込む
・必要な整備があるのかチェックする
・イベントの告知媒体を考える
■イベントの内容を明らかにする(ターゲット設定)
どれほど内容が良いものだったとしても、ターゲットの設定が間違っていたら、誰に告知や宣伝をしたらいいのか分からず、集客がうまくいきません。あくまでも「誰に対して」という部分が一番重要です。ターゲットである来場者の業種や年齢を含めたペルソナを設定することが必要になります。以前、今回のターゲットを相手にしたことがあるのであれば、過去のデータを使うのもありですし、顧客にターゲットに似ている人がいるのであれば、ヒアリングをしてみるのも効果的です。
■イベントの場所や日時を吟味する
企画の内容と同じぐらい重要なのが、イベントをする場所と日時です。ターゲットが来場しやすい場所・日時にする必要があります。
年配者向けであれば、階段が少ない場所や、わかりやすい場所にしたほうが親切でしょう。ファミリー向けであればビジネス街でのセミナーは敷居が高いと感じてしまうかもしれません。逆にサラリーマンが住宅地の場所でやるのは難しいといえるでしょう。
時間帯も同じです。飲食店主向けに行う場合、昼時は難しいかもしれません。居酒屋やバーの店主であれば、夜のほうが難しくなるでしょう。このように、少しでも参加する障害を取り除ける場所・時間に設定することが重要なのです。
■イベントのタイトルを考える
ターゲットにとってイベントのタイトルは、参加をするかしないかを決める時に重要な役割を果たすものです。だれもが無駄ななことはしたくないと思うもの。これは自分にとって必要だと考えられないタイトルであれば、参加は見込めなくなります。
また、初心者にとって専門用語を多用しているタイトルは敬遠されますし、専門家に対して、専門用語を使わないタイトルもかえって、避けられるかもしれません。
タイトルはイベントの趣旨を如実に表現するものです。タイトルで雰囲気を伝え、ターゲットは参加したいと思わせるような内容を記述する必要があります。
あくまでも自分が書きたいものではなく、ターゲットが好む内容を盛り込みます。
■何か一つでもオンリーワンの要素を盛り込む
イベントやセミナーの内容に、今までにはなかった要素があれば、イベント・セミナーに参加する人がわざわざ足を運んでくれる要因になります。できるだけ、この点を意識すると周りが取り上げてもらいやすくなり、宣伝効果があがります。このあたりは、PR会社に相談してみるのも一つの方法です。
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など、ターゲットだけでなくメディアも喜びそうなポイントがあるといいでしょう。
■必要な整備があるのかチェックする
忘れがちなのですが、会場にイベント・セミナーで使いたい設備があるかどうかをチェックしましょう。そのためにも、セミナー・イベントを企画した段階で、何の設備が必要かを
確認し、会場にあるのかどうかを問い合わせしてみることも必要になるかもしれません。
■イベントの告知媒体を考える
セミナー・イベントを開催しようとした場合、告知する方法を考える必要があります。
・Facebookによる集客
・Facebook広告による集客
・Twitterによる集客
・個別にメールをする
・メールマガジンにて配信する
・FAXDMを送る
・チラシを作製し、設置する
・セミナーのポータルサイトを利用する
・Line@を使う
このような告知方法があります。説明してきます。
■Facebookによる集客
Facebookのイベントページの作成は簡単ですので、内容をしっかりと吟味することに注意を置きます。
・セミナー・イベントの目的をしっかりとする
・来場者が得られると予想されるベネフィット(効用)をはっきりさせる
などが該当します。
この2つは、どの告知方法でも同じでしっかりと吟味します。
その上で、Facebookのイベントページの詳細部分が、11~12行周辺でぱっと見、消えてしまうので注意します。対策として、11行以内に内容をまとめると良いでしょう。
■Facebook広告による集客
Facebookは広告を出すことができます。先ほどと同じようにイベントページをつくるところまでは一緒です。そこから、広告を出稿します。Facebook広告は、予算を細かいところまで設定することができ、限られた予算の中での運用ができます。Facebookはターゲットを細かいところまで設定することができますので、対象者に合わせて広告を運用することができます。
ただし、細かく設定しすぎると、一人当たりの獲得単価が上がる傾向になりますので、この辺りに対して、詳しくなければ専門家をつけた方が良さそうです。
■Twitterによる集客
TwitterはFacebookとおなじSNSですが、性質が異なります。Facebookはある程度、広告や宣伝が認められている土壌があるのですが、Twitterはそれを「良し」としない雰囲気があります。したがって、セミナーだけを単体で呟いたとしても効果は薄いかもしれません。Twitterの場合、重要なのは「誰」が呟いたかです。御社にTwitterのフォロワー数が少ないようであれば、強力な力をもつインフルエンサーの力を借りるという方法があることも頭に入れておきましょう。とはいえ、今後のことも考えると、自社でTwitterアカウントを育てておくことも考えるといいでしょう。
■個別にメールをする
自分の知り合いや、過去の取引のあったお客様に対して、個別に連絡を取る方法もあります。ある程度の関係性があるのであれば、個別にメールを送る方法もあります。メールの出し方としては、本文中に長く書くのではなく、興味があれば詳細がわかるようにする方が親切と考える人もいます。あくまでもビジネスのメールですので、相手にとって負担に思われないような配慮をする必要があります。
■メールマガジンにて配信する
御社のメールマガジンに登録している読者に向けて、書いた文章の中でイベント・セミナーを告知する方法です。相手が自分の意志で登録してくれているため、告知することに関しても抵抗が少なくお勧めの方法のひとつといえます。
告知する際、「申込みはメールで返信、電話で対応してください」とお願いすると申込みの心理的ハードルが高くなってしまいます。その解決案の一つとして、セミナー申し込みフォームをつくり、そのURLをメールの本文中に記載します。
また、登録があった際はすぐに返信できるように自動返信メールか、申し込み完了画面を表示させます。そして、開催前にもリマインドメールを送ります。申し込みをした側からすると、ちゃんと登録できているか不安になるもの。その不安を和らげるためにも自動返信メールを行います。
また、参加者は申し込みをしたとしても忘れることも多く、イベント・セミナーに顔を見せないということも多々あります。そのようなことがないようにも、忘れていないようにリマインドメールを送っておくとよいでしょう。
■FAXDMを送る
ターゲットの属性が電話番号で判断できるようなものの場合、FAXDMを送ることも可能性としては考えられます。飲食店や病院、整骨院などは、FAXDMで、相手に直接送ることができます。しかし、あくまでもDMですので、反応率が低いことが問題です。FAXDMの場合は、イベント・セミナーよりも前のステップである、問い合わせをしてもらうということを目標にした方が良いのかもしれません。
■チラシを作成し、設置する
チラシを作成して、ターゲットに見てもらう方法です。チラシを作る場合は、ぱっと見て何を言いたいのかがわかるようにしておきましょう。作成する時間や、印刷する時間も含めてある程度のスケジュールに余裕を持たせる必要があります。
■LINE@を使う
LINEは個人間でよく使われている、コミュニケーションアプリ。一方、LINE@は情報を発信するためのアプリで、少し使い方が違います。会社で使うところは現在あまりないのですが、お店などの一般顧客向けの商品を販売しているところでは急速に利用されている方法です。
■LINEの普及率からくる、誰にでも繋がれる
メールよりも到達率が良いという点です。
特徴はなんといってもこの2つ。送信相手先が増えると費用がかさむという点はありますが、今後注目されてくるやり方だと言って間違いないでしょう。
② 準備できることはすべて「見える化」にしておく
スケジューリング、会場準備、アフターフォロー、司会、受け付けなど担当者が押さえておくべきポイントを網羅しておく必要があります。当日運営をするためにも、必要なのは準備です。
小規模なセミナーですら、一人で準備できると思わず、チームで行うとよいでしょう。しかし、運営するノウハウは、どうしても属人的になりやすく、全体を指揮する人にしかわからないという状況がうまれてしまいます。そのようになると、他のメンバーは指示待ちになりやすく、指示も場当たり的に感じてしまうと、どうしても「やらされている」感が強くなり、メンバーのやる気が下がってしまいます。
イベントやセミナーは臨機応変な対応が必要だからこそ、それぞれが自走できるような組織をつくるために、今何が必要かということがわかるフローチャートなどを作っておくとよいでしょう。
・処理手順の明確化
・相互理解の促進
・業務改善の推進
フローチャートにはこの3つの特徴を兼ね備えています。フローチャートは手書きでもいいですし、ツールを使ってもいいでしょう。今後のことを考えればオンラインですべて完結できるもののほうが、おすすめです。
③ PR会社直伝!イベントやセミナー来場者の満足度を上げる施策を考える
来場者の満足度が下がる原因として挙げられるのが、セミナー自体が主催者の一方的な発信になってしまうことがあります。リアルな会場でやることだからこそ、来場者と会話が自然に生まれるようにしたいところです。しかし、運営の担当者だけの技量だけでできるものではありません、進行の設計自体を一度見直し、工夫を加えることで、より来場者に喜んでもらえるイベントにすることが重要です。
イベントの目的に合うように、適切な方法を学び、組み合わせることで、イベント・セミナーの効果を最大限に発揮できるように設計することができます。
また、イベント設計の考え方と手法を学ぶことで、より良い体験を提供することができます。
■イベントモジュール
イベントは、一連の流れを大きく分けると、受け付け、登壇者の紹介、プレゼンテーション、演習、グループディスカッション、質疑応答、懇親会などに分解できます。
その分解できたひと塊をフェーズとよび、それぞれの体験をよりよくするための方法をモジュールと呼びます。
例えば、質疑応答のモジュールだとした場合、参加者一人一人の満足度を高める、場に対して貢献する方法として、MVQがあります。MVQとはMost Valuable Question(最も価値ある質問)のこと。
イベントの主催者や講師・登壇者などお話し手側が、聞き手側よりも立場が「上」だと思って話をしていることがあります。
このような事態がセミナーではたびたび起こっています。
話し手が上だという感覚でセミナー、プレゼン、講演会が長引くと、時間のつじつまも合わせるために、質問タイムが削られてしまいます。
ただでさえ削られる質疑応答の時間ですが、対応もあまりうまくいっていない場合が多いのが実情です。
ちょっと番外編:「質問のある方はいらっしゃいますでしょうか?」と全体に向かって聞く
よく見られる光景ですが、このやり方にはいくつかの問題があります。
・質問が出てこないと、終わりになってしまう。
・挙手の早いものが勝ってしまう
・一人の人が大量の時間をつかってしまう
・司会者やファシリテーターに目が付きやすい人を採用しがち
このような問題をはらんでいます。質疑応答が終わるとイベント・セミナーが終わってしまうことも多く、この場面でしっかり施策を行っておかないと、来場者の満足度が下がってしまうと考えられます。
この時の出番が前述したMVQです。
・複数人でグループを作る
・1人が1質問を出して、その中でグループの中から1つの質問を選出する
・グループの質問を場にだして回答する
このような流れにすることで、来場者同士が話す機会が増え、質問も一定数集めることができ、全員で質問したという意識が生まれるので全体としての満足度が高くなります。
④ イベントが終了したら、レポートコンテンツを見込み客に送る
見込み客の中には、イベントに行きたくても急遽予定が入ってしまい、参加できなくなった人が存在します。その人達からしてみれば、レポートコンテンツが入手できることが非常にありがたい存在です。
内容が良ければ、見込み客先の企業でシェアされることもあるでしょう。
文章よりも視聴する方が楽な人も多いので、記事よりも動画のほうが良い可能性があります。
■常に改良をし続ける工夫を
また今回作成したコンテンツは、別の機会で使うことができます。同じように、計画手順、フローチャート、モジュールなども、次回に使えますし言語化しておくことで、改良もやりやすくなります。
このようにして、御社の中でのイベント・セミナーノウハウを蓄積していきます。ノウハウが蓄積していけばいくほど担当者の負担も減ります。
改善を常に繰り返すことを意識しながら運営をしていくことをおすすめします。
*集客にはプレスリリースも役に立ちます⇒プレスリリースの書き方の全技法