EVAとは、G・ベネット・スチュアート3世が考案した収益性指標でEconomic Value Addedの略語です。
経済付加価値とも呼ばれます。毎年のオペレーションから入るリターンから投下資本に対して発生している資本コストを差し引いた経済的価値を示します。これがプラスの場合、企業は投資家の期待を上回る経済的価値を生み出していると言えます。
EVAは元々、スチュアート3世がコカ・コーラ系列のボトラーを評価する際の指標として考案したものです。
その後、彼はフリーキャッシュフローの概念の生みの親でもあるジョエル・スターンと共同でスターン・スチュアート社を創立しました。EVAは同社の商標登録となっています。アメリカでは、80年代から企業への導入が始まり、日本でも90年代に花王やオリックスなどの著名大手企業が導入したことで注目されるようになりました。
EVAの算出方法を知ろう
EVAの計算式は以下の通りとなります。
『EVA=NOPAT - CE × WACC』
・NOPAT:税引き後営業利益
・CE:有利子負債+株式資本
=ネット資産に投下されたキャッシュ総額
=正味運転資本+有形固定資産+その他資産
・WACC:加重平均資本コスト
■EVAはまた、以下の式で表すこともできます。
・EVA=NOPAT - ΣI × WACC
I:ネット投資=(投資 - 減価償却費) + Δ運転資本
(尚、この表記を使うと、フリーキャッシュフローはFCF=NOPAT - Iで表すことができます)
EVAを活用しよう!メリットとデメリットを詳しく解説
と、こんな計算式を覚えるのは大変。意味だけ理解して、プロに任せるのが一番です。
メリットとしては、まず、キャッシュフローや資産コストといったファイナンスの考え方に基づいているため、ROAやROEといった会計ベースの指標に比べて恣意性が入りにくく、客観性が高いことが挙げられます。
次に、ファイナンスの指標であるNPVと比較すると、数字を単年度ベースで算出することができるため、企業のマネジメントサイクルに合わせやすいことが挙げられます(NPVは多年度に渡るキャッシュフローを割り引いたものの総和なので、単年度ベースでの数字は算出できません)。投資の意思決定にはNPVが向いていて、毎期のオペレーションの管理にはEVAが向いているとも言えるのです。
また、FCFと比較すると、FCFは巨額の投資を行うとすぐにマイナスの値になってしまうため、単年度のFCFを見るだけでは事業がうまく行っているかどうかを判断することができない一方で、EVAは良い投資プロジェクトであればその収益性を反映して単年度の数字も良くなりうるので、感覚的にも収益性の指標として扱いやすいといった特徴があります。
なお、EVAの厳密な計算にあたっては、広告費や研究開発費を資産計上する、M&Aで生じた「のれん」を償却せずに投下資本に計上するなど、通常の会計処理とは異なる調整が必要とされます。
EVAを高めるには?
EVAを高める方法としてはどのようなものがあるのでしょうか。基本的には以下の方法が考えられます。
○1. NOPATを上げる
NOPATは税引き後の営業利益を指します。従って、NOPATを高めるためには「本業で稼ぐこと」に注力する必要があります。つまりそれは、魅力的な製品やサービスを作り続けるということです。そして、会社の収益性は、あくまでも本業での収益で判断しましょうということになります。
○2. WACCを下げる
WACCを下げるということは、「会社が抱えている支払金利」を下げるということです。
方法としては、例えば負債が多い場合はできるだけ負債を減らして安全性を高め、その上で負債の支払利息を下げるべく債権者と交渉することなどが考えられます。
しかし、負債の減少は総資本が変わらなければ株主資本の割合が高まることになり、一般的には「株主資本コスト>負債コスト」となるため、WACC全体を考えると逆に上昇してしまう可能性があります。そうなると、今度はコストが高い株主資本の割合を減らして負債割合を高めるという手段も生まれてきます。ですが、その場合には負債比率の増加によって財務状況が悪化するために支払利息が高まるという状態になります。
従って、WACCを下げるということは、一般的には非常に難しく、まずは会社の信頼度を高めて金利自体を下げることが必要であると言えます。
○3. 資本自体を減らす
WACCを下げることが難しい場合に、次に考えられることは資本自体(有利子負債+株主資本)を減らすということです。資本自体が減少すれば、WACCが下げられなくても、金額で見た資本コストは減少します。
資本自体を減らすためには、例えば遊休資産がないかどうかを見直したり、あるいは収益性の低い事業から撤退して、その事業に費やしている資産を無くすことなどが考えられます。100%完全に効率的な会社は無いと考えられるため、比較的現実的な方法であると言えます。
EVAはプロが使う指数で現実的ではない? まとめ
とはいっても、EVAという指標は、他の指標に比べるとメジャーとは言い切れませんが、会社の収益性や効率性、安全性がバランス良く考慮された指標であると言えます。
以上、EVAについての解説でした。
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