最も古い消費者行動モデルはせ898年にアメリカの広告研究家だった、セント・エルモ・ルイス氏が提唱した、「Attension:注意」→「Interest:関心」→「Desire:欲求」の3段階からなる「AID」モデルです。
それに、1900年に自ら「Action:行動」を付け加えて、「AIDA(アイダ)」としました。AIDAモデルは、アメリカのE・K・ストロング氏が、1925年に発表した「Theories of Selling」という論文の中で、セールスにおける顧客心理の段階を「AIDA」を使って説明したことで注目を浴びることとなりました。
それぞれの説明は以下です。
●Attension(注意):消費者が注目して認知する
●Interest(興味) :消費者が興味・関心を持つ
●Desire(欲求) :消費者が商品を欲しくなる
●Action(購買行動):消費者が購入をする
これらの頭文字を取ってAIDA(アイダ)となります。その意味と戦略的な活用方法について、累計55万部のビジネス作家でもある、MBAホルダーで脳科学者の上岡正明氏に詳しく解説してもらいました。(※詳しいプロフィールはこちら)
マスメディア広告型のAIDA
インターネットが普及するまでは、消費者が商品を知るきっかけとなるものは、主に新聞・雑誌・チラシ・ラジオCM・テレビCM・ダイレクトメール・FAX-DMなどの広告でした。これらの広告物から、消費者が購買に至るまでの心理プロセスを表した概念が、マスメディア広告型のAIDAモデルです。
■AIDAの法則について
現在ある消費者行動モデルのほとんどのものは、このAIDAが基盤となっています。現在でもアメリカのマーケティング業界では最も有名なモデルとして知られています。
AIDAは対面でのセールスや、チラシを見かけた際の心理的プロセスをよく表しています。その為、セールスコピーライティングの文章モデル「AIDAの法則」としても有名です。
■AIDAの特徴
AIDAの消費者行動モデルは、主にテレビ・ラジオ・新聞・雑誌といったマスメディア広告を使った時の心理的プロセスです。消費者はいずれも、売り手が発信する情報に触れることで、初めて商品を認知するという特徴があります。
その為、消費者の注意を引くためには、記憶に残るようなインパクトのある言葉やビジュアルが必要だという考えがありました。
■消費者行動モデルの役割
消費者行動モデルは、セールスの流れの確認や、問題点を発見することに役立ちます。
例えば、あなたがこれまで買ってきた、食品、雑誌、洋服、時計、テレビ、車など、全ての商品・サービスを購入した時には、これまで紹介したAIDAのような心の流れを辿ったのではないでしょうか。
1.「おや?この商品は初めて見るぞ?」
2.「欲しいな、良さげだけどどうしよう」
3.「よし、買ってみよう」
4.「買って良かった、この商品はいいね」
といった具合です。
消費者行動モデルのどこに問題があるかを発見する
1.「おや?この商品は初めて見るぞ?」という人の数が少なければ、商品が売れる数は少なくなります。
2.「欲しいな、良さげだけどどうしよう」と悩ませてしまっては、商品が売れる数は少なくなります。
3.「よし、買ってみよう」と決断させる決定的なものがなければ、商品が売れる数は少なくなります。
4.「買って良かった、この商品はいいね」と感じてもらえなければ、リピート購入や評判による認知は広がりません。
このように、購買に至るまでの心の流れを段階的に分割することで、商品購入の妨げになっている要素をあぶり出すことができるのです。
AIDAの10の発展系(全部網羅しちゃいました!)
AIDAには10個の発展系の考え方が存在します。それを以下に記していきます。
◎AIDMA
「AIDA」に「Memory(記憶)」の段階が加わったものが「AIDMA(アイドマ)モデル」です。継続的なコミュニケーションにおいて、その瞬間は購買に至らないとしても、いかに記憶の中に残り続けるかまでを考えることが重要となります。
◎AIDCA
「AIDCA(アイドカ)」は、「Conviction(確信)」という段階が加わっていて、商品の購入やサービスの利用によって充実感が得られるということを「確信」する段階が必要だとする考え方です。
◎AMTUL
「AMTUL(アムツール)」とは、購買行動モデルにおけるゴールを「単発的な商品の購入」とするのではなく「継続利用」として考えるモデルです。いかにファンになってもらうか、LTV(ライフタイムバリュー)を高めるにはどうすべきかを考えることが重要です。
◎AISAS
スマートフォンの普及、SNSの台頭によって生み出されたのが「AISAS(アイサス)」です。電通によって提唱されたモデルで、顧客は店頭で商品に関する情報を自分で検索して入手する点を考慮するようになりました。上述したAIDMAに比べて、より長期的で相互的な設計を考えます。
◎AISCEAS
AISASの検索から購買の間をより細かく考えたものが「AISCEAS(アイシーズ)」です。検索の後、比較、検討の段階を考えます。様々な情報を比較して商品を購入するか判断することは勿論、顧客が周辺の人物と購入に関して相談するということも視野に入れて考えるものです。
◎AIDEES
AISASモデル同様に商品サービスを利用した顧客自身による情報発信が、次の認知に繋がるという「循環」のイメージを持ちつつ、情報の拡散において、「熱中・心酔」をひとつの段階として考えるのが「AIDEES(アイデス)」です。
◎VISAS
ソーシャルメディア時代の「顧客自身による情報の発信」に焦点をあてて、購買行動モデルを考えたのが「VISAS(ヴィサス)」です。顧客の発信した情報が口コミとなり、その口コミ情報に影響されて購買に至るというモデルです。
◎SIPS
行動の起点としてまず「共感」を重視するのが「SIPSモデル」です。日々大量の情報に触れる中で、どうすれば顧客の心に寄り添い、深く突き刺さるのかを考える必要があります。SIPSでは、顧客が一方的に情報を受け取るだけでなく、キャンペーンやアンケート、アプリ上などでのゲームなどを通じてコミュニケーションに「参加」するための施策の設計を重要とします。
◎DECAX
顧客による商品サービス、または関連コンテンツの「発見」から始まる購買行動モデルとして知っておきたいのが「DECAX(デキャックス)」です。日々の生活の中でいかに「発見」してもらうか、発見してもらった後、どのようにして「関係」を深めていくかに焦点が当たっている点がポイントです。
◎Dual AISAS
「Dual AISAS(デュアル・アイサス)」は従来の「AISAS」モデルにおける「Attention」部分に新たに「Active」を当てはめた情報拡散モデルを加えた発展系のモデルです。従来のAISASモデルを「買いたい」のAISAS、新たに加えた部分を「広めたい」のAISASとして認知についてより深く掘り下げて考えます。
まとめ AIDA(アイダ)を活用して消費者の脳を巻き込もう
消費者行動モデルを知ることで、消費者が商品を認知してから、購買に至るまでの問題点を発見することができる点がメリットです。AIDAの消費者行動モデルは、主にマスメディア広告を使った時の心理的プロセスを表していることがわかりました。
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◎この記事を書いた人:上岡正明
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MBA(多摩大学院経営情報工学修了)
一般社団法人日本脳科学認知協会 理事、一般社団法人小児発達心理学学会 理事
株式会社フロンティアコンサルティング代表取締役
27歳でPR戦略、新事業開発のコンサルティング会社を設立。現在まで約20年間、実業家として3社のグループ会社を経営。
これまで、三井物産、SONY、三菱鉛筆など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。また、大学院にてMBA(情報工学)修了。海外大学外部機関にて認知脳科学と神経心理学を研究、東京都公社や全国の大学で講演。それらは常に人気を博し、2ヶ月先まで予約が取れないこともある。
また、日本を代表するテレビ放送作家、脚本家としても活躍。「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「ワールドビジネスサテライト」「タモリのスーパーボキャブラ天国」など人気番組、脚本家として日本テレビ系列のドラマ「ストーリーランド」を手掛ける。ビジネス作家としてはダイヤモンド社、朝日新聞出版社、総合法令出版、アスコムなどから8冊の著書を上梓。中国、台湾で翻訳本が出版され、シリーズ累計55万部。所属学会として日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、一般社団法人日本脳科学認知学会、一般社団法人小児発達心理学学会などがある。
【この記事を執筆した上岡正明の主なメディア露出実績(外部リンク)】
・上岡正明が特集された東洋経済オンラインの記事
・6000万人にクチコミを広げた事例を紹介する朝日新聞メディアの記事
・戦略PRについて語る戦略経営者の特集記事
・上岡正明の週刊ダイヤモンドの記事一覧
・多摩大学院公式サイトでベストセラー作家のMBA卒業生として紹介されました