情報開発って何ですか?
最近よく聞かれるワードです。そこでこの道33年の広報のプロが、PR活動に不可欠な「情報開発」について解説してきます。
*記事を書いた人:「めざましテレビ」「王様のブランチ」元放送作家
情報開発とは?
世の中の関心を集めたバズるPRを仕掛けたとき、私が何をしたか。
結論から言えば、ごくシンプルなことしかしていません。
クライアントにヒアリングをして、どんなPRを仕掛けるかを考えて、実行に移す。
たった、これだけです。もう少し具体的に言えば、私たちの会社では、通常3つの手順を踏んでクライアントのPRを実行します。それをまとめたのが、以下の枠内になります。
【1】 現在の企業環境や、ミッション、ビジョン、事業課題の分析<ヒアリング>
↓
【2】 PRしたい商品やサービスのPR戦略を練る<8×3の策定>
↓
【3】 競合と差別化して→実行<唯一性と優位性でポジショニング>
上流からのコンサルティングを強みとするPR会社としては、初対面のクライアントさまの依頼を引き受けるときには、とくに【1】ヒヤリングが大切になります。企業の理念やビジョン、経営状況、事業に置ける中長期的な目標や課題などをヒアリングして、クライアントの状況を正確に把握しければならないからです。
ただし、当コラムを読んでいる人のなかには、PR会社を通さず、自社で独自に商品やサービスのPRを考えている方もいると思います。
その場合、先に【2】<8×3の策定>から着手することをおススメします。
外部のパワーを使わず、時間をかけて自社分析をするのは、言うほど簡単なことではありません。
とちゅうで、投げ出してしまっては、広報活動の成果にもつながりません。
であれば、情報の開発からはじめても、おのずと自社の理念やビジョンについて改めて立ち返ったり、商品やサービスの課題や問題点を洗い出すことで、自社を考えることにもつながっていきます。自社でPR戦略を考えるさい、いまさら分析するまでもないと考えがちですが、情報の整理や棚卸しの作業をしていると、意外と気づくことが多いのです。
- 自分の会社がどこに向かっているのか、どうしたいのか。
- なにが障害であり、課題としているのか。
これらをあらためて考えてみることで、自社の強みや弱みも見えてきます。PR戦略をより強化することにつながります。
そして、そこからPR戦略を考えるときは、基本的には、次のことだけを念頭に置いてください。
*わたちたちPR会社のことも知ってください。【赤裸々告白編】PR会社を活用する4つのデメリットって?。
情報開発でメディアやSNSに情報を流す場合の注意点
PR会社に依頼するにせよ、自社SNSで情報を拡散するにせよ、あるいはネットメディア、新聞社、テレビ局などの各メディアにリリースを流すにせよ、「情報をクリエイティブ」することは基本であり、かつ、必須のことです。
口コミを広めるのであれば、情報そのものに心がときめいたり、誰かに話したいと思わせる、強く動機づけられるようなインパクトが必要です。
メディアであっても、それは同じで、それぞれの媒体ごとに特徴や専門性がありますが、共通している点が一つだけあります。それは読者(人)なり、社会なりに情報を届けることを役目としている、ということです。このコンテンツの最後に具体的に紹介しますが、仮にプレスリリースという手法をもちいるのであれば、リリース内容の情報をどう演出するか、という最初の一歩で、メディア側の採用の可否が決まっているのです。
*こちらも人気:PRと広告の最大の違い知ってる?現役記者が解説
情報開発ではプレスリリースの作成も演出家の目線でおこなえ
つまり、同じ情報なのに、その切り取り方次第で「よくある情報」になったり、「おもしろい情報、広めたい情報」になったりするわけです。
とはいえ、どこを強調すれば「おもしろい情報、広めたい情報」になるのかは、つくり手側にいると掴めないことが少なくありません。
企業側は「すごくおもしろい」「画期的だ」と思っていても、実際にはメディアや消費者に刺さらないことは珍しいことではないからです。
また、企業側が意図していない角度から、あるいは企業側はとくに意識していなかったことについて、消費者側が魅力やおもしろみを感じて支持され、広まっていくというのはよくある話です。
*あわせて読みたい⇒「報道ステーション」元ディレクターが教えるバズるプレスリリースの作り方
「写ルンです」の復活劇には情報開発の神髄が隠されていた?!
たとえば、富士フイルムが1986年に発売したレンズつきフィルム「写ルンです」。
デジタルカメラに押されて、販売数は下がる一方でしたが、ここ数年人気を取り戻しています。
発売した当初、軽くて持ち運びしやすく、カメラを忘れても出先で1000円程度で購入できる。
操作が簡単だし、通常のカメラより慎重に扱う必要もない。
企業側がこの商品の魅力として考えていたのは、そんなところではないでしょうか。
でも、今人気が再燃しているのは、別の理由からでした。
国立科学博物館の「未来技術遺産」に選ばれ、これをメディアが次々報道したのです。
そのことで、写ルンですを知らない若者の世代にも、商品が認知されるようになりました。
さらに、若者の間では、Instagramなど写真共有サービスを使うさい、しばしば撮影した写真に加工を施します。
セピア色やモノクロなどがありますが、その一つとして、フィルムで撮影して印画紙に焼いたような風合いの加工があり、とても人気が出ました。
こうして、フィルムカメラを知らない世代が、実際のカメラで撮った写真に関心を抱くようになったのです。
新しい消費者ニーズにのって、写ルンですの売り上げは半年で5倍に増え、若者の間で新しいブームとなっているわけです。
もちろん、売り上げが落ち込んでいた当初、こんなことになるとは、富士フイルムも予測だにしていなかったのではないでしょう。
デジタルに慣れ親しんだ若者が、デジタルの画像処理から、ルーツであるフィルムに興味を覚える。企業側からは予想がつかないおもしろさを、消費者は見つけることになったのです。
では自社の商品・サービスを、どうすれば客観的、俯瞰的に見て、なおかつおもしろい情報、広めたい情報に落とし込むことができるのでしょうか?
その情報をつくるためのツール(考え方)が、「8×3の法則」です。
自社の商品やサービスについて具体的、かつ、客観的に掘り下げていくことができるので、何をプッシュしていけば、より効果が上がるのかも見えてきます。
「8×3」の情報開発でバズるチャンスを高める!
さて、ここからは「8×3」の法則とは何かについて、詳しくお伝えしていきます。
「8×3」は、バズる効果を最大限に高める法則です。24通りの情報を誰でも作ることができます。
では、「8」と「3」とは何か。実際に下記の図を見てください。
自社の商品やサービスの強みを探る(8)
×
消費者に受け入られるか検証する(3)
※弊社活用のコンサルティングシートの一例(代表著書「共感PR」より)
24通りの情報開発クリエイティブで日本中にPRしよう
この「8×3」のうちの「8」とは、「新規性」から「地域性」までの8つの性質を示しています。
自分たちがPRしたい商品やサービスの強みが、この8つのうちの、どれに該当するかを考えていきます。
要は、ここで自社の商品やサービスの強みを探り、どこが他社より優れているのか、消費者の興味を引くところは何かを、明確にしていくわけです。
PRの現場において、一般的に大切な順に1から8の番号をつけています。
「新規性」は不動であるものの、2~8については組み合わせて効果を高めたりもできます。
新規性には、2~8の性質がすべて包含されているということもありますね。
情報開発では社会性を意識して客観性を求める
さて、情報の開発はこれで終わりではありません。
そのあと、洗い出した強みが、果たして消費者に本当に求められているのかどうかを考えていきます。
それが、「8×3」の「3」の部分にあたります。
この「3」とは、社会、人(ターゲット)、メディアのの3つです。
●社会が求めている情報か?
●ターゲットとなる消費者に本当にアピールできる情報か?
●メディアが取り上げたくなるような情報か?
を、3つの視点で考えるのです。
「8」で自社視点で強みを洗い出し、「3」で消費者視点で「8」の性質を客観視して確認する。
情報開発を武器に変えよう
いったん「8」の切り口で洗い出した情報を、「3」の視点で揉む。料理で言うところの、ひと手間加える感覚ですね。ただ、この「3」のひと手間が、企業側のひとりよがりを防ぎ、結果としてバズりやすくしているのです。
そして、具体的に「8×3=24通りの法則」をもとに、自社の商品やサービスを整理しながら、戦略オプションの材料に、あるいはプレスリリースやファクトブック(メディア向け説明資料)などの「武器」を整えていくことになります。