【現役記者が解説】ファクトブックとは?作り方や活用方法の事例とコツを解説
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2024.02.06

【現役記者が解説】ファクトブックとは?作り方や活用方法の事例とコツを解説

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この記事では、広報で使う「ファクトブック」について紹介します。

広報担当者やPR会社に入社して、プレスリリースの次に作る資料にファクトブックがあります。

ファクトブックというと、上場企業が公(おおおや)に発表するIR資料を連想する人も多いでしょう。しかし、広報を強化したい企業にとって、ファクトブックは非常に有効です。

  • 自社のことをもっと詳しく知って欲しい
  • 知名度を上げたい
  • 特定の人物や商品をテレビに取り上げて欲しい

と感じている場合には、「メディア向けのファクトブック」は必ず作って欲しいツールです。

そこでこの記事では、メディア向けの「ファクトブックを作ってみよう」というタイトルでご紹介したいと思います。

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ファクトブックとは

ファクトブック作成のイメージ

ファクトブックとは企業や大学などの団体が、メディア向けに自社の業績や歴史、自社製品やサービスを理解してもらうため事実をまとめた「報道向け資料」のことです。

企業の沿革や業績、トップの経歴、場合によっては開発者や利用者の声などのデータや写真を集めて構成します。

会社の経営内容や財務状況、業界におけるポジショニングなどの事実関係(ファクト)も図表などを使って客観的に記載していくと良いでしょう。

ポイント

  • ファクトブックと会社案内・サービス資料の違い
  • ファクトブックとプレスキットの違い

ファクトブックと会社案内・サービス資料の違い

ファクトブックは事実やデータに関する情報を網羅的にまとめ、一般公開することで広く利用されることを目的としています。客観的な事実や統計データを中心に、信頼性の高い情報を提供することで、情報の公開性と一般への普及を重視しています。

一方で会社案内・サービス資料は、自社の事業内容やサービス、製品などを紹介し、顧客や関係者に対して情報を提供することを目的としています。企業理念やサービスの特徴を中心に、会社のイメージやブランド価値を伝えることに重視しています。

ファクトブックとプレスキットの違い

ファクトブックは、一般的な情報公開や広報目的で使用されることが主な目的です。幅広い情報を網羅し、一般の人々やメディアなど広範な読者に対して企業の概要や業績を伝えるための情報が提供されます。

一方で、プレスキットはメディアや報道関係者に対して、企業や製品・サービスに関する情報を提供することが主な目的です。メディア関係者が企業のニュースを報道する際に利用するため、メディア対応に特化した情報や素材が提供されます。

ファクトブックを作成する目的・活用方法

ファクトブックの資料を作成する女性

ファクトブックを作成する目的は大きく分けて3つあります。

まず、企業や団体の情報を一般に公開することで、透明性と信頼性を高めること。次に、その魅力や特徴を広く伝え、ブランドイメージの構築や認知度向上を図ること。そして、投資家向けへの情報提供をすることで、投資判断の材料としてもらうことを目的としています。

ファクトブックを作成することで、ウェブサイト・社内ポータルでステークホルダーが必要な情報にアクセスできるようになるほか、メディアの取材や報道活動の際に、企業の基本情報や業績データを提供することも可能になります。

また、株主や投資家に対しては投資判断の材料としても活用されますので、正確な情報の提供と使いやすさに配慮し、読者が必要な情報を迅速かつ簡潔に把握できるようにすることが重要になります。

ファクトブックの作り方【掲載する情報内容】

ファクトブックの作り方

企業や団体が効果的なファクトブックを作成するためには、適切な情報を的確に整理し、読みやすく伝えることが重要です。

ここからは、ファクトブックの作り方について見ていきましょう。

ポイント

  • 1. 商品・サービスで解決する対象課題
  • 2. 市場のニーズやトレンド
  • 3. 自社の商品・サービス情報(概要やポジショニング、USPなど)
  • 4. 販売実績や売上高、評価やシェアに関する情報
  • 5. 未来の予想
  • 6. 理念やミッション
  • 7. 代表者の経歴や創業経緯
  • 8. 従業員数の推移や年齢・男女比などの構成データ
  • 9. 問い合わせ先

1. 商品・サービスで解決する対象課題

まずは、ターゲットとなる顧客の課題やニーズを明確に把握しましょう。どのような問題があり、それに対してどのような価値を提供するのかを具体的に示すことが重要です。

その課題に、自社の商品やサービスがどのような特徴や優位性を持っているのかをファクトブックに明示しましょう。特許技術や独自の製品設計など、競合他社との差別化ポイントを強調することで関心を引くことができます。

また、実際の顧客事例を通じて、商品やサービスがどのように問題解決に貢献したのかを具体的に示しましょう。事例を通じてイメージを持ってもらうことで、信頼性や効果をアピールすることができます。

2. 市場のニーズやトレンド

ターゲットとなる市場のニーズを正確に把握しましょう。顧客が抱える問題や要望、トレンドに対して、自社の商品やサービスがどのように対応しているのかを具体的に示すことが重要です。

市場のトレンドは常に変化しています。自社の商品やサービスが最新のトレンドにどのように対応しているのかをファクトブックに明示しましょう。新しい技術やデザイン、環境への取り組みなど、トレンドへの対応策をアピールします。

また、業界や市場に関する専門的な情報を取り入れ、市場の動向や予測、調査データなど、価値を感じる情報を掲載することで、自社の専門性と知識をアピールすることができます。

3. 自社の商品・サービス情報(概要やポジショニング、USPなど)

自社の商品やサービスの概要を、まずは簡潔にまとめましょう。どのようなニーズや課題を解決するために提供されているのか、主な特徴や機能を説明します。

自社の商品やサービスのポジショニングを明確に示し、競合他社との差別化や独自性をアピールするために、自社の商品やサービスがどのような位置づけや役割を果たしているのか、そして何が他社と異なるのか、どのような付加価値や利点を提供しているのかをファクトブックで明確に示し、自社の独自性を伝えることが重要です。

実際の利用者からのフィードバックや成功事例のほか、魅力的な製品写真やデモ映像の掲載なども、ユニークなセールスポイントを強調するための材料として活用するとよいでしょう。

4. 販売実績や売上高、評価やシェアに関する情報

年度ごとの販売数量や成長率、地域別の販売動向など、具体的な数字を掲載することで、市場での存在感を示すことができます。

自社の売上高の推移や業績をグラフや表でわかりやすくまとめ、経済的な安定性をアピールしましょう。また、自社の優位性や競争力を訴求も欠かせません。製品やサービスが受けた賞や認定、業界ランキングでの評価なども掲載しましょう。

製品やサービスのマーケットシェアなど、競合他社との比較や市場における自社のポジショニングを明確にすることで、市場での地位を示すことが重要です。

5. 未来の予想

顧客のニーズや市場のトレンドに基づいて、自社の製品やサービスがどのような価値を提供し、どのような問題を解決するのかを具体的に伝えていきましょう。人の暮らしや社会全体に与える影響はどれほどのものなのか。たとえば、環境に配慮した製品であれば、地球環境の保護に貢献する具体的な効果を示すことが重要です。

また、新しい技術やアプローチによって、業界や市場がどのように変わっていくのかなど、そのビジョンを明確にします。そこでは実際の顧客の声や成功事例を通じて、どのように彼らの生活を変え、課題を解決しているのかアピールしていきましょう。顧客のストーリーは、未来の予想を裏付ける確かな証拠となります。

6. 理念やミッション

なぜ自社が存在するのか、どのような社会的使命を果たそうとしているのか。企業理念やミッションというのは、企業の方向性やビジョンを示す重要な要素です。

そこでは顧客の視点に立ち、ニーズや課題を理解し、それに応えるために自社が取り組んでいることを示します。顧客志向の表現は、企業の信頼性や共感を促す効果があるからです。

7. 代表者の経歴や創業経緯

代表者のバックグラウンドや経歴は、企業のリーダーシップや専門知識の信頼性を示すことができます。

さらに、なぜ企業が創業されたのか、どのような思いやビジョンを持っていたのかなど、創業経緯は独自性を表す重要な部分であり、代表者がどのような理念や目標を持ち、企業をどの方向に導こうとしているのかを有効にアピールできます。

8. 従業員数の推移や年齢・男女比などの構成データ

従業員数の推移や、年齢別の割合・男女比の比率などのデータは、企業の成長や人員管理の取り組みだけでなく、企業の人材構成やダイバーシティへの取り組みを示すことができます。

構成データを通じて、企業の多様性への取り組みや人材のバランスについても言及しましょう。たとえば、女性の割合の増加や異文化間の推進など、多様性を重視した人材戦略を示すことができます。

9. 問い合わせ先

問い合わせ先を掲載することで、読者が疑問や質問を持った際に、スムーズなコミュニケーションを図ることができます。

一般的な連絡先としては、電話番号、メールアドレス、ウェブサイトの問い合わせフォームなどです。さらに問い合わせ先情報には、「お問い合わせいただいた内容については、2営業日以内にご返答いたします」といったメッセージを記載することで、迅速な対応をアピールすることができます。

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ファクトブックの作成で抑えたいポイント

ファクトブック作成のポイント

ファクトブックの作成には、さまざまなデータを取り入れていく必要がありますが、そこではいくつか抑えておきたいポイントがあります。

ここからは、ファクトブック作成で抑えたいポイントについて詳しく見ていきましょう。

ポイント

  • 掲載するファクト・データの信頼性を担保する
  • 商品・サービスのアピールではなく、業界・市場の情報にフォーカスする
  • ストーリー性を意識する

掲載するファクト・データの信頼性を担保する

ファクトブックに掲載する情報が古くなっていたり、誤った情報が掲載されていると信頼性が失われてしまいます。情報の収集や確認作業には時間と労力をかけ、信頼性の高い情報を掲載するようにしましょう。たとえば、公式な報告書や統計データ、公開された情報などの情報であれば、信頼感を与えることができます。

また、掲載するファクトやデータの出所を明示することも大切です。ソースのクリアな表示は透明性のアピールにもつながります。

商品・サービスのアピールではなく、業界・市場の情報にフォーカスする

ファクトブックでは、商品・サービスのアピールに偏らず、自社が位置する業界の最新の動向やトレンドについて情報を提供することが重要です。市場の成長性や競合状況、技術の進歩などを明示し、業界全体の情報を伝えることで、自社の立ち位置やビジネス戦略を理解してもらえるからです。

自社の活動が展開される市場の規模や特徴など、市場の成長率や消費者のニーズ、競合他社の存在などを示すことで、市場環境が明確になります。

また、市場の動向や消費者の行動パターン、トレンドに関するデータを示すことで、自社の業績や戦略の根拠を裏付けることもできるのです。

ストーリー性を意識する

当然ですが、読み手の立場になって情報を整理していくことがポイントになってきますよね。そのとき、読み手がどのような興味や関心を持つのか、どのような課題を抱えているのかを考え、それに対する解決策や付加価値を提供するストーリーを構築することで、記憶に深い印象を残すことができます。

情報を単なる事実の羅列ではなく、物語のように展開させることで、興味を持たせることができます。キャラクターやエピソードを活用し、情報を鮮やかに描写することで、ストーリー性を高めましょう。

ファクトブックを公開している企業の事例

ファクトブックを公開している企業の事例

実際にファクトブックを公開している企業はたくさんあります。

ここからは、ファクトブックを公開している企業の事例を見ながら、その特徴や参考になるポイントを見ていきましょう。

ポイント

  • ファクトブック事例1. 株式会社メルカリ
  • ファクトブック事例2. mederi株式会社
  • ファクトブック事例3. M&Aキャピタルパートナーズ株式会社

ファクトブック事例1. 株式会社メルカリ

株式会社メルカリ

株式会社メルカリは、日本を代表するフリマアプリを提供する企業です。

メルカリのファクトブックでは、ビジョンである「新しい価値を創造する」やミッションである「メルカリを愛される存在にする」を明確に伝え、事業の特徴や強みについても詳細に説明されています。

フリマアプリとしての優位性や、成長を支える取り組み、ユーザー数や取引実績、プラットフォームの成長率などが示されており、メルカリの事業の実績や規模を示す重要な要素となっています。

参考:株式会社メルカリ ファクトブック

ファクトブック事例2. mederi株式会社

mederi株式会社

mederi株式会社は、日本の医療機器メーカーとして知られています。ファクトブックでは、企業概要や沿革、経営理念はもちろん、研究開発に関する取り組みや技術的な特長が紹介されており、製品の高品質性や先進性についての情報が提供されています。

また、製品の特徴や用途、採用されている技術なども詳細に解説されており、医療関係者や顧客にとって重要な情報が提供されているほか、製品の販売実績やクライアントの声、研究成果などのアピールも示されており、これらが信頼性や実績に対する証拠として、重要な要素となっています。

参考:mederi株式会社 ファクトブック

ファクトブック事例3. M&Aキャピタルパートナーズ株式会社

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社は、日本のM&Aアドバイザリー会社として知られています。

ファクトブックには企業概要やビジョンだけでなく、経営陣なども詳細に記載されています。また、M&Aの基礎知識や手法、成功事例などが解説されており、投資家や関係者にとって有益な情報が提供されています。

そのほかにも、M&Aキャピタルパートナーズ株式会社の実績やクライアントの声や、業界のトレンドや市場の変化に関する洞察が提供されており、投資家や関係者にとって貴重な情報源となっています。

参考:M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 ファクトブック

【Q&A】ファクトブックについて多い質問

ファクトブックについて多い質問

以下では、ファクトブックについて多い質問・疑問に回答します。

Q&A

  • ファクトブックとは簡単にいうと何?
  • ファクトブック作成で得られる効果・メリットは?
  • ファクトブックとIR資料の違いは?

Q. ファクトブックとは簡単にいうと何?

ファクトブックとは、企業や組織が自社の情報や事業内容、実績、ビジョンなどをまとめた資料や冊子のことを指します。

企業のプレゼンテーションや広報活動に活用され、外部のステークホルダーに対して企業の魅力や価値を伝えるためのツールとなります。

企業概要、ビジョン、経営陣のプロフィール、製品やサービスの説明、財務情報などが含まれ、企業の信頼性や魅力を訴求する役割を果たします。

Q. ファクトブック作成で得られる効果・メリットは?

ファクトブックを作成することで、企業の情報やデータを整理し一つの資料にまとめることができます。これにより、情報の一元化と効率的な管理が可能となります。また、資料にまとめられた情報を企業のプレゼンテーション資料として活用することで、企業の魅力や特徴を明確に伝えることができます。

そのほかにも、ステークホルダーとのコミュニケーション支援や、ブランドイメージを向上させるためのツールとなり、企業の成長や発展に寄与することが期待されます。

Q. ファクトブックとIR資料の違いは?

ファクトブックは企業の概要、製品・サービスの特徴、ビジョン・戦略、社会的貢献活動など、広範な情報を網羅的に掲載しており、これらを一般の人々や潜在的な顧客、パートナーなど、広い範囲に向けて提供することを目的としています。

一方で、IR資料は主に財務諸表、業績予想、キャッシュフロー、企業の財務情報や業績情報など、株主向けの情報を中心に掲載しており、これらを投資家や株主などの金融市場関係者に向けて提供することを目的としています。

ファクトブックを作成し、自社や業界に関する理解・認知を高めよう

ファクトブックは、企業の持つ価値観や社会への取り組み、また自社の製品やサービスの魅力や強み、ビジョン・戦略に関する情報をわかりやすく伝えることで、関係者の理解や認知度を高め、好意的なイメージを構築することができます。

ファクトブックの作成には時間と労力がかかりますが、その努力は企業の成長と発展に寄与します。積極的にファクトブックを作成し、自社や業界に関する理解・認知を高めていきましょう。

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執筆者・監修者
上岡正明
経済記者・経済コメンテーター
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者25万人のYoutuber
上岡正明

MBA(多摩大学院経営情報学修了)
テレビコメンテーター
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者24万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

日経ヴェリタス・東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン・プレジデントの4大経済メディアで専門家として記事連載もおこなっております。お読みになりたい方はこちらからご覧下さい。

①:東洋経済オンラインでの連載記事
②:ダイヤモンドオンラインでの連載記事
③:プレジデントでの連載記事
④:日本経済新聞での連載記事