広報担当者は、とにもかくにもメディア関係者の人事異動情報を抑えましょう。
メディア関係者も3~4月には人事異動します。特にマスコミ業界は人事異動が激しいです。
油断していると最悪の場合、「いつも通り知り合いの記者に電話をかける→別の人に『異動でいなくなりました』と言われる」という状態になってしまいます。
ですから、メディア関係者の人事異動情報をできる限り事前にキャッチしましょう。
そのためのポイントを4つ紹介します。
メディア関係者の人事異動情報をキャッチするための4つのポイント
○1:「普段深く関わっておくこと」が一番大事です
そのメディア関係者との信頼関係があり、日頃から良いネタやプレリリースを提供していれば、メディア関係者のほうから「人事異動します。後任者は○○です」などと言ってくれます。また、異動先での連絡先も教えてくれることでしょう。
ただ、メディア関係者も忙しいですから、この流れで全ての異動情報が掴めるとは考えないほうがいいです。
「外部の広報担当にまで連絡している暇はない」という事もあれば、「連絡するつもりが忘れていた」という事も普通にあり得ます。
○2:3月、9月頃にできる限り直接聞いてしまう
単刀直入に3月、9月(10月にも人事異動が多く行われます)頃に、人事異動があるかどうか聞いてしまって構いません。
大丈夫です。そこまでの段階でメディア関係者との信頼関係をきちんと構築できていれば煙たがられるような事はありません。
○3:在籍2年以上のメディア関係者は異動の可能性が高くなる
一例としてテレビ局や新聞社に関しては、「2年を超えて異動をしていない人(同一部署に留まっている人)」は異動しやすくなります。
在籍期間に関係なく「2」で解説したように異動情報を聞くのが理想ですが、どうしても忙しくて手が回らないのであれば、在籍期間が長い人から連絡を入れて状況を聞くようにしましょう。
○4:記者との初対面時に情報を掴んでおく
メディア関係者との初対面か、2~3回目の面談や電話の際に、
・以前いた部署
・今の部署での在籍期間
・キャリアパスは?(何年くらいかけてどのように出世していくのか)
などの情報を聞いておきましょう。
これらの情報を抑えておけば、「このメディア関係者はそろそろ人事異動するかもしれない」などの予想がつきやすくなります。
マスコミ関係者側は引継ぎでなにをする?
マスコミ関係者側も引継ぎの際には、「各社の広報担当への挨拶」をします。ただ、広報担当のほうは率直に言って「どんなメディア関係者でも切ることはできない」という人がほとんどだと思います。
しかし、マスコミ関係者のほうはそんな事はありません。やはり、「黙っていてもどんどん広報から寄ってくる」という人が多いです。
そのため、「この会社の広報と、関係を続けても意味がないから。連絡してきてもテキトーに無視していいよ。プレリリースも読まなくていいから」などという会話が当然のように交わされています。
また、
「あの会社、広報担当者変わったらしいけど、もう無視でいいからね。前の広報担当者がロクなヤツじゃなかったから、今度のヤツもだめに決まってる」などの事もあり得ます。
厳しいようですが
「一度関わり方を間違えたら、そのメディアとは二度と信頼関係を構築できなくてもおかしくない」と考えておきましょう。
「異動していくメディア関係者」をどう扱うべき?3つのポイント
「自社の広報とはほぼ関わりがなさそうな部署に異動する広報担当者」も少なくありません。
そういったメディア関係者とはどのように接するべきなのでしょうか。
○1:何が取材に繋がるかは分からない
まず、そのメディア関係者を切ってはいけません。メディア業界は広いようで狭く、何が取材に繋がるかは予想できないからです。また、あなたの会社が「これまでとは違う方向性の事業」に進出して、違う方向性の広報が必要になるかもしれません。
ですから、よほど「役に立たないメディア関係者」を除き、異動していくマスコミとの関係性も意地でもキープしましょう。
○2:そもそも出世する可能性がある
「1」のようなドラマチックな展開ではなくても、そのメディア関係者が数年後に出世して権力を持つ可能性があります。
「出世したときに思い出したかのように擦り寄る」のでは嫌われますが、きちんと関係性を保っていれば、取材などに関して何かと融通を効かせてくれるかもしれません。
○3:時間があれば送別会をする
時間があれば、広報担当者主催で移動していくメディア関係者の送別会を開いてください。
ここまでできれば、「異動後の関係性」がかなり強固なものになります。また、「メディア関係者側の新任」と「広報担当側の新任(いれば)」など、できる限り関係者もあわせて挨拶を交わしておきましょう。
新任メディア関係者抱き込み術|ポイントは3つ
○1:全国紙記者の人事異動事情を知りましょう
特に全国紙の場合、これまでとは全く異なる分野に異動することが少なくなく、「マスコミとして長く仕事しているのに、感覚としてはほぼ新人……」という状態になってしまう事があります。
言い方は悪いですが、「全国紙で仕事をしてきた」というプライドが、それによって大きく傷つけられることがあるようです。
○2:だからこそ広報担当者にとってはチャンスです
「1」のような形で異動したマスコミ関係者は、取材先の手掛かりもない状態になりますから、精神的・物理的に困ります。
だからこそ広報担当者にとってはチャンスです。他企業の広報担当よりも早くアプローチして、関係性の構築を図りましょう。
○3:情報を惜しみなく提供しましょう
引継ぎの挨拶などを通じて、新任メディア関係者と会うことができたら、
・業界の歴史
・業界で今活躍している人物
・業界の最新情報
・良さそうな取材先
を惜しみなく提供します。
場合によっては、自社とは全く関係のない分野の情報もレクチャーしてあげてください。
特に「取材先」を大量に教えると、相手のほうから「なんて親切な広報だ!絶対に関係を保ち続けなければ!」と思ってもらうことができます。
大手企業の広報担当の驚愕エピソード
某有名大手ビジネス誌の記者が、人事異動でこれまでとは全く違う分野の部署に配属されたときのことです。
異動初日に、数回電話がかかってきました。電話の内容は、いずれも「○○(超大手企業)の広報担当の○○と申します。△△様が、新たに◇◇担当になったとお聞きし、お電話いたしました。今度ご挨拶させていただきたいのですが、ご都合の良い日をお教えいただけませんか」
というものだったそうです。
その記者は「率直に言って怖かった」そうです。「人事異動情報」は本来外部に漏れるものではありませんから、怖くなるのも無理はありません。色々なルートから調べあげたのでしょう。
そして実際に会ってみると、先ほど挙げたような「記者にとって役立つ情報」をこれでもかと、「その広報担当が所属する会社と関係なさそうな情報」も含めて提供してくれたそうです。
「超大手企業」は、何もしなくてもメディアから取材依頼が入るものです。それにも関わらず、ここまでアグレッシブに記者との信頼関係を作ろうとしているのです。
中小・ベンチャー企業の広報担当は、大手企業以上に頑張る必要があると言えます。