戦いに勝つためには確実に勝てる場所をまず探す!森岡毅氏「確率思考の戦略論」を読み解こう
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2020.11.18

戦いに勝つためには確実に勝てる場所をまず探す!森岡毅氏「確率思考の戦略論」を読み解こう

「私は勝てる戦を探しているだけ」。

これは元USJチーフマーケティング・オフィサーの森岡毅氏が共著書「確率思考の戦略論」(KADOKAWA)の中で使っているフレーズです。

 

私は勝てる戦を探しているだけ

私は勝てる戦を探しているだけだ。

そのような言葉を残した彼は過去の経験から、消費者市場の本質は似たようなものであって、

*Preference(好意度)
*Awareness(認知度)
*Distribution(配荷)

以上の3つのポイント(その伸び代)に集約されると結論付けました。

そして、その観点から成功を収めやすいようなプロジェクトに絞って実践した結果、98%の成功を収められたということでした。

 

消費の必勝法とは?勝てる場所を探して勝つ

ここまですっぱりと割り切った洞察を行うのはすこし難しいかも知れませんし、多くの方は経営者や役員とは異なり、解決すべき問題の設定や施策に自由度があることは稀と言っていいでしょう。

しかし、それでも「勝てる戦を探す」という発想は示唆に富みます。

事例を挙げて考えてみましょう。多くのビジネスパーソンはチームで問題解決をすることが多いはずです。ある問題を深堀りしていった結果、たとえば役割分担が適切ではないという問題と、上司がマイクロマネジメント(細かいことにまで口出ししたりする)したがるという本質に突き当たったとします。

ここで、もしも、自分が上司との折り合いがあまり良くなく、かつ人を説得するのが苦手だとすれば、上司にマイクロマネジメントを控えるように進言することは悪手といえます。

だとすれば、自分は前者の問題にフォーカスし、後者はそれを得意であるとする他者に任せるという方法論が見えてきます。

ビジネスキャリアの早い段階で自分の得手不得手を固定しすぎるのは、スキル向上の観点から必ずしも好ましいことではありません。しかし、ある程度は「自分が勝ちやすい戦、フィールド」でしっかりと結果を残す方が、長い目で見るとリターンが大きいことが多いです。

 

「サービスが先、利益が後」小倉昌男氏の経営理論

この見出しの言葉は、宅急便(ヤマト運輸における商標は「宅急便」)の発案者、小倉昌男氏のものです。

1970年代中盤、彼はそれまでのトラック運送から宅急便ビジネスに事業を大きく転換させる中で、いくつかのフレーズを唱えました。見出しの、「サービスが先、利益が後」はその代表と言えるでしょう。

これは単純に優先順位を示したというだけにとどまらず、新しいソリューション(新規事業)の本質を踏まえた優先順位を洞察したという意味で使用されます。

通常は、サービス業では、大手製造業なら当たり前の巨大な先行投資に慣れていないことが多いものです。「地道に利益を出す→少し投資する→利益が増える→それをまた少し投資する…」といった感じになります。

これはこれで、手堅いのですが、インフラが必要なビジネスでは、一気にライバルとの差をつけることはできません。

小倉氏は「顧客満足のためのインフラに先行投資する→大きな利益が生まれる→さらに大きな投資をする…」といった発想に転換し、それを実現したのです。今でこそサービスマネジメントの教科書に出てくるような話ですが、当時としては炯眼(けいがん)だったと言えるでしょう。徹底的に新しいビジネスについて考えて考え抜いたからこそ、この逆転の発想が生まれたといえます。

問題解決のソリューションの本質を見極め、要素間の優先順位を正しくつけるのは簡単ではありません。しかしながら、徹底的に考え抜いた優先順位付けは、人々の思考にも影響を与えるのです。またそれが「理外の理」であるほど、競合他社の追随を遅らせる効果もある点は理解しておくと良いでしょう。

まとめ

「勝てる戦を探す」という発想に基づいて、自分の勝ちやすい戦、フィールドで勝負をしていくほうが長い目で見ると良いということを学びました。

また、「サービスが先、利益が後」というフレーズに代表されるように、考え抜いた優先順位には人々の思考にも影響を与えるほどの価値が加わるということを学びました。


執筆者・監修者
上岡正明
経済記者・経済コメンテーター
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者25万人のYoutuber
上岡正明

MBA(多摩大学院経営情報学修了)
テレビコメンテーター
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者24万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

日経ヴェリタス・東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン・プレジデントの4大経済メディアで専門家として記事連載もおこなっております。お読みになりたい方はこちらからご覧下さい。

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