広報担当者が考えるべき炎上対策と炎上後の対策
PR戦略とは
3分で分かる「PRの基本」
2022.07.21

広報担当者が考えるべき炎上対策と炎上後の対策

大企業など「大それた広報はしなくても、自然と注目してもらえる」という場合を除き、基本的には「攻めの姿勢」で広報活動をすべきです。
こういう表現するのもなんですが「謝って済むことであれば、試しても良い」とさえ言えます。

ですが、インターネット上のいわゆる「炎上」については慎重になることをおすすめします。

  • 謝るべき対象がハッキリしない事が多い
  • 謝っても憤っている全員が納得する事はない
  • 間違っている情報であろうが容赦なく拡散される

などといった性質があるからです。

*こちらも人気:PR・広告・宣伝の違いって?現役記者が解説

*記事を書いた人:「めざましテレビ」「王様のブランチ」元放送作家

 

炎上対策とは?実際に起こった炎上事例を7つ紹介

炎上する店舗イメージ

○1:某バラエティー番組

同性愛者をからかうようなキャラクターを出したところ炎上。
これは今の時代だからこそ発生する炎上だと思います。一昔前であれば笑って見過ごされていたかもしれません。

このキャラクターの是非を問うことはここではしませんが、「人々の感覚は変わってきている」という事を意識してください。「昔は許されたのに」などという言い訳は通用しません。

○2:某ビール会社

ドキュメンタリー番組で、上司が部下を叱責する場面を流したところ「ブラックだ」と言われ炎上しました。

「どこからをブラックと考えるか」は人それぞれです。また、「前後の会話を切り取られてブラックと言われても困る」という主張もあるかもしれませんが、それも通用しません。
テレビ番組の場合は「放送したもの」が全てです。

○3:某石鹸

テレビコマーシャルです。
夫が仕事で帰宅→子供との約束を破っている→妻に怒られる→「石鹸で疲れを流そう」というセリフ……という流れのCMです。
これに対して「約束を破った事を流せなんて!」と炎上しました。

○4:某ビール

某ビールのWEB限定コマーシャルです。

居酒屋を訪れた男性がビールを飲む→同席した女性が飲みっぷりなどを褒める
という内容なのですが「多少性的な印象がある」ことと「女性を道具にように扱っている印象を受ける」という理由から炎上しました。

○5:某観光PR動画

某女性タレントが出演する観光PR動画。
微妙に性的な内容となったため炎上しました。

近年、「性的である」という理由で炎上することが多くなっています。芸術分野の会社などで、「これはどうしても外せない」という性的表現以外は、基本的に避けるべきでしょう。

○6:某紙おむつ

シングルマザーが一人で乳幼児の育児をする動画であり、動画内の女性はかなり苦労している様子です。しかし、ラストは「この時間がいつか大事な思い出になる」と言って〆ています。

本記事をここまでお読みになっている方であればお察しだと思いますが、「辛いと感じ得ることを安易に肯定するな」「自分の苦しい経験を思い出した」などと言われて炎上しました。

○7:某子供向け特撮番組

毎回のエンディングで登場人物たちがダンスをするのですが、「振り付けの一部から性的な印象を受ける」として少し炎上し、振り付けの内容が変わることとなりました。

*関連リンク(一番重要):これだけは必ず知るべき広報部門の5つの役割と必須スキル

 

企業の炎上を防ぐためにも必ず女性からの意見を聞きましょう

近年は、「女性軽視である」と言われて炎上する事例が多くなってきています。
ですから、何らかのコンテンツを作成した場合は、公開する前に必ず女性からの感想を聞いてください。職場の女性でも構いませんし、家族、友人、知人などでもOKです。

また、「表現上どうしても必要」という事がない場合は、あえて「性別」を感じさせるような表現は盛り込まないことをおすすめします。

ちなみに、先ほど紹介した某特撮番組は長寿シリーズなのですが、一昔前までは「肌の露出が多い悪役女性キャラ」がよく出ていました。
しかし、近年ではそういったキャラは登場しなくなりました(それが炎上対策なのかは定かではありませんが)。

そして、言いにくいことではありますが、「男性をからかう表現」は女性を対象とした場合に比べると比較的炎上しにくい傾向にあります。
ただ、それで「男性だから~」などの表現は避けたほうが良いでしょう。

*参考リンク:PR会社の4つのリスク対策を知ろう

 

炎上後に取るべき広報担当者の対応は?

○1:謝罪するなら言い訳はしない

炎上が発生して「謝罪する」と決めたのであれば、全力で謝罪してください。
内心色々言いたいこともあるのかもしれませんが、

・本当はこういう意味のCMであり~
・このような捉え方をされるのは意外でしたが~

などという言い訳をしてはなりません。世間からの印象がガタ落ちするからです。
また、謝罪するにしても「なぜ炎上したのか」をきちんと分析しないと、謝罪内容が的外れなものになる恐れがあるので気を付けてください。※例:「ブラックっぽさ」が原因で炎上したのに、「商品・サービス内容」について謝罪してしまうなど

○2:「対応するが、謝罪はしない」という手もある

先ほど紹介した「某特撮番組のダンスの振り付け」ですが、「もっとみんなが踊りやすくするために、振り付けを変える」という発表があって、変更されました。
一切謝罪していませんし、「性的だから~」という言及も全くありませんでした。

・謝罪すると落ち度を認めることになる
・小規模な炎上だったので「大々的に謝罪して、話が拡散するリスク」のほうが大きい

などの判断があったのではないかと思います。
なんでもかんでも謝罪すれば良いわけではないという事も覚えておきましょう。

○3:開き直る

基本的に全くおすすめしません。

ただ近年、「炎上してはいるものの、『炎上を起こした側』のほうが大多数に批判されている」という事例もたまにありますよね。
そういった場合に限り、炎上を「マーケティングのチャンス」と捉えても良いかもしれません。

実例ですが、数年前に某漫画雑誌が「性的な表現がある漫画を載せた」ということで炎上しました。しかし、その漫画雑誌を発行する出版社は、炎上後にむしろその漫画の宣伝活動に力を入れました。これにより、「さすが○○社(出版社名)!」という声が多数出る事となったのです。

ただ、この件に関しては、

  1. 炎上を起こした側のほうが世間的には圧倒的に強く批判されている
  2. そもそも売れている雑誌なので失敗しても痛手がない
  3. 「劇的にクリーンなイメージ」が売りの雑誌ではないのでダメージにならない
  4. 犯罪を助長するような表現ではなかった

 

という条件が全て噛み合ったからこそ成功したのだと思われます。
また、たとえ炎上を逆手に取ったマーケティングが上手くいったとしても、その裏では企業・商品・サービスに対して不信感を抱いて離れていった人もいるはずです。

その辺りのことを考慮して、「これなら絶対に成功する」そして、「万が一失敗してもデメリットにはならない」と確信できるときだけ、「炎上を活かしたマーケティング」に手を出しても良いかもしれません。

○4:法的措置に出る

「名誉毀損罪などに該当し得る、SNS上の投稿」などの影響で炎上した場合は、法的措置に出ることも検討してください。
ただ、現実的には「このくらいで訴えるなんて、心の狭い企業だ」「事実だからこそ、訴えるんだ」と思われる可能性もあるので、メリット・デメリットを踏まえて行動を決めてください。

*関連リンク:こちらも人気!プレスリリースの戦略策定ポイントを全紹介


執筆者・監修者
上岡正明
経済記者・経済コメンテーター
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者25万人のYoutuber
上岡正明

MBA(多摩大学院経営情報学修了)
テレビコメンテーター
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者24万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

日経ヴェリタス・東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン・プレジデントの4大経済メディアで専門家として記事連載もおこなっております。お読みになりたい方はこちらからご覧下さい。

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