広報の効果測定の方法とは?戦略策定と目標管理の4ステップを全部解説
PR戦略とは
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2023.02.27

広報の効果測定の方法とは?戦略策定と目標管理の4ステップを全部解説

広報担当者の仕事の大筋のテーマは「広報の効果測定をおこない、目標を達成すること」です。
あれもこれも……と業務に追われていると自分や周りのチームスタッフが見えなくなることもあるかもしれません。しかし、そういうときほど一度冷静になって「広報目標はなんだっけ?」と振り返ってみましょう。

□広報の効果測定と目標を達成するためのキーワードは3・3・3!

広報目標を思い出すことができたら、それを達成するための効果測定方法と計画を具体的に立てていきます。
そのためのキーワードとなるのが、これからご紹介する「3・3・3作戦」です。

 

広報の効果測定「3・3・3作戦」とは?|すべきことを具体化しましょう

会議する女性のイメージ

3・3・3作戦というのは、

1:再度「大筋の目標」を確認する
2:その大目標を達成するための目標を3つ決める
3:3つの中目標を達成するための戦略(目標)を3つ決める
4:それらの小目標を達成するための戦略を3つ行う

というものです。
完全にこの3×3×3に従うのであれば、具体的な戦略を27個進めていくことになります。

ちなみになぜ3×3×3かというと、「広報」という分野の場合は、そのくらいの数が最も扱いやすい傾向にあるからです。
絶対に3×3×3でなくてはならないというわけではありません。
場合によっては、例えば3×4×2や4×5×2などでも構いません。

とにかく「目標→そのための目標→そのための戦略(目標)→そのための戦略」という順番で計画を練ればOKです。

「それを達成するためには何が必要か」という意識を常に持っておくと、漠然と行動するということがなくなります。

 

効果測定の3・3・3作戦の一例|まずは4ステップ

広報戦略の選択

それでは、広報担当者が3・3・3作戦を進めていく場合の一例を紹介していきます。
ここでは、「食べライフ」という実在しない会社を使って解説していきますね。
もちろん、それらに付随する目標・戦略も実在ものであり、「計画の実現性がどれくらいあるか」ということは考慮していません。

ステップ1:大筋の目標を再チェックする

ここで言う「大筋の目標」とは、すなわち「世間に抱いてもらいたいと社長が思っている会社・商品・サービスに対する印象」のことです。
この部分が不明瞭なのであれば、社長ときちんと相談してください。

ステップ2:そのための目標を3つ決める

「これらがクリアできれば、大筋の目標をほぼ自動的に達成できる」という目標を3つ決めます。たった3つですから、あまり細かい目標にしないのがポイントです。

ステップ3:3つの目標を達成するための戦略を合計9つ決める

そして、3つの目標をクリアするための戦略を3×3=9つ決めます。
ちなみにこの段階は、「戦略=『何を』宣伝するのか」ということになります。

ステップ4:そのための戦略を3つ決める

「何を宣伝するのか」がここまでで9つ決まりました。あとは、「具体的に『どのような』宣伝を行うのか」を9×3=27個決めます。ステップ3は「何を」で、ステップ4は「どのような」であることを意識しましょう。

 

広報効果測定の1-3-9-27をリストアップしましょう

PR戦略イメージ

では、具体的に

・1個の大筋の目標
・3個の目標
・9個の戦略(何を)
・27個の戦略(どのように)

をリストアップしていきますね。

○「1」個の大筋の目標

「食べライフは外食産業の維持・発展に大いに役立っている企業である」と思ってもらう。

「漠然としている」と言われればその通りではあるのですが、企業が抱く大筋の目標というのはだいたいこのくらいのレベルです。「理想」という言葉に置き換えても良いかもしれません。

○「3」個の目標

1:飲食店に「食べライフによってタダで宣伝できる」と知ってもらう
2:消費者に「食べライフを使えば自分が望むお店が便利に探せる」と知ってもらう
3:社員に「食べライフは働きやすい会社であり、魅力がある」と思ってもらう

飲食店・消費者・社員と、それぞれ別のカテゴリーの話題にしてあるのがポイントです。
この段階では広い視野を持って、3つとも重複しない分野の目標を決めましょう。

また、「社員関連の目標ってそんなに大事?」と感じるかもしれません。
しかし、会社を動かすのは社員ですから、社員を大事にしない企業は発展しません。
外食産業に限らず、どの業種であっても「3つの小目標」の一つに、社員関連のものを入れておくことをおすすめします。

○9個の戦略

「何を」宣伝するのか決めます。

□1:飲食店に「食べライフによってタダで宣伝できる」と知ってもらう

→食べライフの新サービス
→食べライフを利用しての成功事例
→外食産業業界が抱える問題

□2:消費者に「食べライフを使えば自分が望むお店が便利に探せる」と知ってもらう

→食べライフの他の利用者を参考にできるということ
→食べライフとSNSの相乗効果
→有名食べライフユーザー

□3:社員に「食べライフは働きやすい会社であり、魅力がある」と思ってもらう

→社長
→食べライフが発展していく根拠
→職場の魅力

○「27」個の戦略

9つの事柄を「どうやって」PRするか決めます。

□1:食べライフの新サービス
……飲食店の店長などにも新サービスを定期的にPRしてもらう
……日経新聞などに情報を掲載してもらう
……食べライフに採用情報を掲載できるようにする(ハローワークのような)

□2:食べライフを利用しての成功事例
……掲載内容を工夫することで売上アップに繋がった事例を紹介
……ユーザーの口コミによって売上が伸びた事例を紹介
……宣伝媒体を他社から食べライフに変更することで広告料金が激減した事例を宣伝

□3:外食産業業界が抱える問題
……「広告費用の割に売上が伸びていない」ことで悩んでいる企業が多いというデータを紹介
……数値的な評判ばかりを気にして悪循環に嵌った飲食店が復活するまでのドキュメントをテレビ番組で流してもらう(復活劇に食べライフが関わっていたという情報も入れる)
……人員不足を食べライフへの採用情報掲載でカバーした事例を宣伝する

□4:食べライフの他の利用者を参考にできるということ
……食の好みが似ている他の利用者とマッチングできる機能をアピールする
……人気ブロガー番付の掲載
……ユーザーをエリアごとに分類されているので地域グルメに触れやすいということを宣伝する

□5:食べライフとSNSの相乗効果
……「近年はSNSからグルメ関連の情報を得る人が非常に多い」というデータを宣伝する
……「飲食店の食事の写真をSNSにアップすることの利点・欠点」の紹介
……「SNS関係のクーポン・サービスが充実している」ということの宣伝

□6:有名食べライフユーザー
……食べライフを利用している芸能人の紹介・インタビュー
……動画レポートを作っている食べライフユーザーの紹介
……「食べライフ初心者が、中級、上級へとステップアップしていく方法」の紹介

□7:社長
……雑誌や新聞で社長を紹介してもらう
……「外食産業に詳しいコメンテーター」というポジションを確保する
……社長自身の食べライフ活用方法を紹介する

□8:食べライフが発展していく根拠
……飲食店が食べライフが無料で利用できる理由をアピール(新聞など)
……食べライフの一般ユーザーが会員登録をしなくても利用できることを宣伝
……他業種とのコラボレーション企画を行う

□9:職場の魅力
……「飲食費全額負担システム」を宣伝する
……「週休3日制」を宣伝する
……「企業として実践しているエコ活動」を宣伝する

 

3・3・3作戦を立てるときの3つの注意点

数値データ検証

ここまで3・3・3作戦の一例を紹介しました。
これを踏まえて、あなたが作戦を立てるときに気を付けるべきことをいくつか挙げていきます。

1:「目標」を直接達成するようなアクティビティである必要はない

例えば「9:職場の魅力」については、「週休3日制」や「飲食費全額負担システム」など直接的な宣伝をすることになっていますよね。

しかし、「1:食べライフの新サービス」に関しては「採用情報の掲載」など、関係ないような活動もあります。
ですが、これは「そのアクティビティに成功するようであれば、目標も達成できる」という考え方が根拠になっています。

具体的に言えば「食べライフに採用情報がたくさん掲載されるような段階になっているのであれば、『新サービスの浸透』くらいは達成できている」ということですね。

それでも可能であれば「直接的な宣伝」をしたいところですが、全てそのようにすることはできないでしょうから、臨機応変に作戦を立てましょう。

2:マイナス面もある程度表に出す

特に「飲食店の食事の写真をSNSにアップすることの利点・欠点の紹介」があてはまりますが、マイナス面も少しだけ出していくようにしましょう。
100%良いことばかり言っていると、誰しも胡散臭く感じるものだからです。

もちろん、ただ「こういう部分がダメなんです!」と紹介するのではなく、
「こういった欠点がありますが、食べライフであれば○○という方法でカバーできます」などというフォローを必ず入れます。

ちなみに27個のアクションも出すと自然とマイナス面も浮かび上がってきます。だからといって、あえて「ライバルの負の部分を紹介しようか……」などと考える必要はありません。そうした行動は、消費者は意外と冷静に分析しているものです。

3:広報以外の部署の戦略・目標も考慮する

例として「1-3-9-27」を考えましたが、特に低い階層に進むにつれて、ヨソの部署の戦略・目標も考慮したものにするよう心掛けてください。

例えば、今回は「職場の魅力」の紹介として、「飲食費全額負担システム」「週休3日制」「エコ活動」を取り上げてみました。
しかし、例えば人事部がユニークな方針を採っているのであれば「引きこもり・ニートなどの社会復帰支援としての雇用活動」などという宣伝もしていけるはずです。

繰り返しになりますが、広報担当者の仕事はあくまで「会社のイメージを構築すること」ですから、「このアクティビティが良いんです!」とゴリ押しをするのはナンセンスです。

また、極端に独りよがりな広報担当だと、他の部署と活動と矛盾するようなプランを作ってしまうことさえあります。
そうならないように、むしろ「ヨソの部署を積極的に観察して、どんどん27個分のアクティビティを埋めていく」という方針を採ることを推奨します。

 

広報の効果測定を無理なく進めていくための秘訣3つ

データ分析の表

○1:カレンダーを活用しましょう

では、27個のプロジェクトを進めていくためにはどうすれば良いのでしょうか。
もちろん、すべてに一斉に取り組むことはできませんよね。「Aのプロジェクトがある程度進行しないと取り掛かれないプロジェクトB」もあるはずです。

ですから、まずはカレンダーを使って27個のプロジェクトをそれぞれどのように進めていくのか具体的に考えていきましょう。

ただし、あまり細かく決めるとかえって臨機応変に動けなくなるので、月単位くらいで大雑把に考えるのがおすすめです。そうでなくても、月の前半15日・後半15日程度の単位でプランを練りましょう。

大きな紙があるとして、上から順に「1月~12月」と記載してそれぞれに線を引きます。
そして、27個のプロジェクトを書き入れていきましょう。2か月以上かかるプロジェクトについては「開始する月」にプロジェクト名を書いて、「終了する月」まで「↓」を伸ばします。

もちろん、実際には紙ではなくパソコン上に計画を立てることになるはずです。
便利なのでエクセルを使ってプラン表を作成することをおすすめします。

○2:計画表にこだわり過ぎない

一度計画表を作ったら、安易に「やっぱりこうしたほうがいいかな」などと考えず、信じて進めていきましょう。

ただし、本当にマーケット事情や経営状況などが変わってきたら、そんなことも言っていられません。ケースバイケースで計画を軌道修正していく必要があります。
だからこそ、1か月単位くらいでプランを作っておくのが良いのです。日付まできっちり決めてあると修正がしにくくなってしまいますよね。

特に設立してから間もない会社の場合は、期の途中で当初の計画とは正反対の方向に動き出す場合もあるということを知っておくべきです。

ですからベンチャー企業の場合は、3-3-3作戦を3か月単位で使っていくということも、場合によっては必要になってくるかもしれません。
27個のプロジェクトを進める期間が非常に短いですから、それぞれを細かなものにします。
または、「2-2-2作戦」などに変えるべきかもしれませんね。

逆に大企業の場合は、5~6年単位で経営方針や戦略があまり変わらないということもあるかもしれません。ですから、数年単位で3-3-3作戦を進めていくのも良いでしょうし、「3-3-3-3作戦」くらいにすることもできそうです。

○3:定期的に社長と3-3-3作戦の見直しをする

食べライフの広報における大筋の目標は「食べライフは外食産業の維持・発展に大いに役立っている企業であると思ってもらう」ことでした。

しかし、社長の考えが突然変わることもないとは言い切れません。
例えば、とりあえず飲食店側のことは後回しにして「消費者に『飲食店を探すときは食べライフ』を使うのが当然であると思ってもらう」などに変更したいと社長が思う可能性もあるかもしれないわけです。

そうなったら、3-3-3作戦はほぼゼロから練り直すことになりますよね。
しかし、「社長の心変わり」にすぐに気づくことができればほぼ大丈夫です。

ですが、普段社長とコミュニケーションを取る機会が少なすぎると「2~3か月経ってからようやく違和感を覚える」などということもあり得ます。

ですから、最低でも月1回は社長とじっくり話し合う機会を作るようにしてください。
(それとは別に、毎日数分でも社長を会話するべきでもありますが)

また、3つの小目標、9つの戦略、27個の戦略についても同じことが言えます。
これらに関しては、各部署のトップなどと相談しつつ「本当にこのまま進めて良いのか」ということを確認してください。
ただし、27個のプロジェクトについて全て見せてしまうと、相手が混乱するかもしれませんし、「よく知らない部署のことでも何となく気になって口をはさんでしまう」ということにもなりかねません。

ですから、基本的には「その人に関係する戦略」についてだけ話を聞くことをおすすめします。

●あとは1つ1つのプロジェクトに集中を!

また、「3-3-3作戦を成功させる!」という意識が強すぎると、1つ1つのプロジェクトに対する集中力が下がる恐れもあります。「全体を俯瞰で見る」ということも大事ですが、1つのことに取り組み始めたらそれに全力を尽くしましょう。

「計画を立てる」ときはマクロに、「行動する」ときはミクロにというメリハリを大事にしていただければと思います。


執筆者・監修者
上岡正明
経済記者・経済コメンテーター
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者25万人のYoutuber
上岡正明

MBA(多摩大学院経営情報学修了)
テレビコメンテーター
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者24万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

日経ヴェリタス・東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン・プレジデントの4大経済メディアで専門家として記事連載もおこなっております。お読みになりたい方はこちらからご覧下さい。

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