イノベーションのジレンマとは、業界トップになった企業が顧客の意見に耳を傾け、さらに高品質の製品サービスを提供することがイノベーションに立ち遅れ、失敗を招くという考え方です。
ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン氏が提唱しました。
どのようなものか、さっそく見ていきましょう。
イノベーションのジレンマに陥る3つの罠
成功している企業がイノベーションのジレンマと呼ばれる失敗に陥る理由として、クリステンセン氏は3つの理由を挙げています。
まず第一に、破壊的な技術は、製品の性能を低下させます。そのため、既存技術で成功している大手企業の多くは破壊的な技術に関心が低いという点です。例えば、デジタルカメラが登場した当初は、画質などで銀塩写真に比べて画像の質は低く、フィルムカメラのメーカーは、この技術に関心も注意も払わなかったのです。
しかし、現在では、フィルムカメラはデジタルカメラに主役の座を追われています。
第二に、技術の進歩のペースは、市場の需要を上回ることがあるという点です。技術が市場の需要を上回っているにもかかわらず、トップ企業はハイエンドの技術をさらに持続的に向上することを止められません。そのため、新たに開発した技術に、市場は関心やプレミアムを得ることができません。さらに、比較的に性能が低くても顧客の需要を満たす、新たな技術をもった新規企業に市場を奪われる隙を作ってしまいます。
第三に、成功している企業の顧客構造と財務構造は、新規参入企業と比較して、その企業がどの様な投資を魅力的と考えるかに重大な影響を与えます。破壊的技術が低価格で利益率が低い、あるいは市場規模が小さいなど、既存の技術で成功している企業にとって魅力を感じず、参入のタイミングを見逃してしまうという点です。
上記の理由から、革新的な技術やビジネスモデルで従来の企業を打ち破った企業が、大企業になると革新性を失ってしまう状態や、さらに最先端の技術開発をしても成功に結びつかない状態などを、総じてイノベーションのジレンマと呼びます。
イノベーションのジレンマとは?
イノベーションのジレンマは、ハーバード・ビジネススクールの教授であるクレイトン・クリステンセン氏の著書です。イノベーションのジレンマの中で、クリステンセン氏は、「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」の2種類のイノベーションについて触れています。
◎持続的イノベーションについて
イノベーションのジレンマにおける持続的イノベーションは、所謂一般的な製品やサービス開発や発展の道筋です。既存のお客様のニーズを満たす改良を続けて提供価値を高めることで、自社製品やサービスのイノベーションを実現します。
イノベーションのジレンマにおける持続的イノベーションを長期に渡って繰り返すことで、製品やサービスは、市場に受け入れられ続け、機能豊富で高機能となる傾向があります。持続的イノベーションを繰り返すことによって、自社の市場シェアの維持、もしくは拡大します。
◎破壊的イノベーションについて
イノベーションのジレンマにおける破壊的イノベーションは、提供側の企業も市場の主な顧客も価値を認めなければニーズもない、それどころか、将来の売上も市場規模も小さい新しい技術に持てる経営資源を全て投入した新規参入製品が、当該市場のみならず主要企業製品の市場までを奪ってしまう現象を指しています。
イノベーションのジレンマの破壊的イノベーションは、ハイテク市場によく見受けられる現象です。ハイテク業界では、新しい技術が非常に小さくかつニッチな市場で頻繁に生まれます。この小さな技術は、急速に進歩し、やがて既存の市場を飲み込むことがあります。コンピュータ、ハードディスクなど、数多くの例があります。
ハイテク市場は、技術の成熟のスピードが早いため、プロダクトライフサイクルが短く、イノベーションのジレンマの破壊的イノベーションが発生しやすくなります。
まとめ イノベーションを有効に活用していこう
新たに製品・サービスが登場してきた場合、それら新規製品・サービスの今後の動向を見極める際には、当初の性能や機能の水準によって判断すると、誤った判断に陥ってしまう危険性があります。あくまで、判断の中心は、その製品の新たな技術的特質、およびその戦略的意味に置かれるべきで、その戦略的意味を組織的に見抜く能力こそが重要となります。
以上、イノベーションのジレンマについての解説でした。
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