政府主導で行われた働き方改革と、新型コロナウィルス感染防止対策の影響で、今はオンラインで仕事をするケースが増え、もはや、リモートワークが主流になりつつあります。そうした状況の中、広報活動においては、「PRムービー」の活用が注目されています。
年々増加するYouTubeの利用者を意識して、多くの企業がYouTube(チャンネル)を立ち上げています。YouTubeに限らず、企業が主催するWebサイト(ホームページやランディングページなど)やSNS、プレスリリースやイベント会場など、ユーザーがPRムービーに接するシーンは確実に増えています。
今回の記事では、広報活動において、今後、ますます利用が増えていくことが予想されるPRムービーの作り方を解説していきたいと思います。
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PRムービーとは
PRムービーとは、企業が広報活動を行う際に活用する動画のことを言います。PRムービーの内容は、企業情報、商品・サービスなどの情報、キャンペーンやイベントの告知、などがあげられます。IT環境の進歩やインターネットの普及で、広報活動においても情報発信の形に変化が生じ、「読んでもらう」形態から「見てもらう」形態への移行が顕著となっています。
プレスリリースを例にあげると、従来は画像と文章だけで作られ、発信されていましたが、最近ではPRムービーを添付して発信するケースが増えています。画像や文章だけでは伝わらない、商品やサービスの世界観や使用感を伝えることができるPRムービーは、広報活動において効果的なツールと言えるでしょう。
また最近では、“Final cut”や“Dreamweaver”など、PRムービーを制作するプログラムソフトも充実してきて、PRムービーを発信するチャネルも増えてきているので、その利用はますます拡大されていくと思われます。ちなみにPRムービーは、広義において「広報動画」と呼ばれることもあります。
PRムービー制作の流れ
PRムービーを制作する際、広報担当者は社内で制作するのか、外注するのかを決めなければなりません。自社内の機材やスタッフ、コストなどを考慮して決定します。ただ、社内制作でも外注でも、PRムービーを作るプロセスは基本的に同じです。ここでは、PRムービーの制作過程を時系列的に見ていきます。
①テーマを設定し、目的を明確化する
まず、「誰に何を伝えたいのか」、「どのような目的で制作するのか」を明確にすることから始めます。企業のブランディングのための会社案内なのか、販売促進のための商品紹介なのか、目的とターゲットに応じて、発信するメディアやチャネルをおおまかに決めておきます。また、制作にかけられるコスト(制作費)を確認しておくことも重要です。
②構成台本を作る
テーマや目的、ターゲットが決まったら、構成台本の作成にかかります。伝えたい情報の全体的な構成を考え、チャプターごとに情報の概略を書き込んでいきます。「起承転結」を意識したストーリー性のあるものとするのか、時系列を意識したドキュメンタリータッチのものにするのか、情報内容とターゲットに合せて構成します。
この時、注意しなければならないのは、制作費との兼ね合いです。使える予算内で制作できる範囲で台本を構成することが重要です。多額の予算を必要とする海外ロケや人気タレントの起用などは、事前に経営陣のチェックを受けておいた方が良いでしょう。
③本番用の台本を作る
構成台本が決まったら、各チャプターごとに具体的なナレーション原稿(コピー)を落とし込んでいきます。この時、それぞれのチャプターでどのような映像が必要なのか、どのような映像が欲しいのかをナレーションと共に、台本に貼付していきます。これを「絵コンテ」と言います。
「絵コンテ」は、ナレーション、撮りたい映像のラフ画、オーディオ(BGMやSE)などを盛り込み、全体の構成に矛盾がないか、目的に合った構成になっているか、などを再確認しながら作成を進めます。
また、尺(ムービーの分数)の設定にも気を配る必要があります。イベント会場などで、人が立ち止まって見てくれるムービーの尺は、約13分が限界と言われています。饒舌になりすぎたり、ダラダラと説明することは避け、要点を簡潔にまとめて構成するようにしましょう。
④撮影の準備
●カメラの準備
撮影に向けて、必要な機材やスタッフを確保(準備)します。内容によっては、カメラが数台必要となる場合も(1カメ、2カメなど)あり、自社内で用意できない時は、レンタルを利用することも考慮に入れます。外注制作では、必要な機材の準備はプロデューサーに任せることができますが、この場合は、コストの管理に気をつけてください。
●場所の準備
撮影場所は、数か所候補をあげ、ロケハンをして決めていきます。オープンロケの場合は、その場所の“陽の周り”や周囲の遠景、撮影できる場所なのか、撮影場所までの交通手段はどうなのか、などを細かくチェックして決めていきます。また、同録の場合は、周囲の音(騒音や雑音、雑踏の音や子供の声)も、チェック項目に入れておきます。
社内(の施設)で撮影する場合は、その場所を管理する部署長に許可をもらい、また、撮影当日の混乱などを防ぐために、社内に撮影内容、日時などをアナウンスしておくことも重要です。
●出演者の準備
出演者が着る衣装の準備も必要です。現場インタビューなど、リアルなシーンは別として、情報内容や演出に応じた衣装が必要になります。自前の洋服で対応する場合は、商標などの問題があるため、服に付いているロゴや文字に注意しましょう。細かいことですが、控室の用意や食事の手配なども、事前に確認しておく必要があります。
⑤撮影
撮影当日は、リハーサルを含め、現場のスタッフと積極的にコミュニケーションを取りながら進めます。収録したシーンは、現場で各カットごとに見直し、ベストカットをマーキングしておきます。ワンカット撮影が終わるたびに、「絵コンテ」の各チャプターを潰していくと、撮り残しや撮り忘れが発生しません。後日再撮という最悪の状況にならないよう、役割ごとにチェックしながら、撮影することが重要です。
⑥編集・MA
編集では、全体の尺に収まるよう、撮影した中からチョイスしたベストカットをつないで行います。映像にスーパーインポーズ(字幕)を挿入したり、カットとカットのつなぎ方に工夫を凝らしたり、分かりやすくインパクトのある編集を心がけましょう。スーパーインポーズは、サイレントで視聴する人にも内容が伝わるため、必要に応じて使用しましょう。
映像の編集が終わったら、セリフやナレーション、BGMといったオーディオ素材をMIXしていきます。この作業をMAと言います。映像にシンクロした音声を入れ込み、音の大きさ(ボリューム)やノイズなどを調整し確認して、完成品に仕上げていきます。ムービー内の特徴的なカットを画像として用意しておけば、バナーやサムネイルとして二次利用することもできます。
PRムービーを広報や採用戦略の武器にしよう
PRムービーは、今後のトレンドやビジネス環境を考えると、ますます活用頻度が拡大していく広報ツールと言えます。今回の記事では、PRムービーの作り方を解説しましたが、広報担当者の方はPRムービーの持つ意味やメリットを理解し、他社との差別化につながる広報活動を展開してください。