最近、経営者の方から「自社の広報活動をもっと活発にやりたい」という声を聞きます。しかしながら、その一方で広報担当者からは「PR関連の企画書がなかなか通らない」、「広告に比べて、PRの提案は社内を通りにくい」という悩みを聞くことがあります。そこでいろいろ調べてみると、「企画は良いのだけれども、それを伝える企画書が・・・」という残念なケースも散見されます。
そこで、今回は採用されやすいPR企画書を作成するために最低限必要な要素と大事なポイントについて、いくつかの視点から考えてみたいと思います。
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広報企画書に最低限必要とされる項目(構成要件)とは
まずは、企画書に必要な項目について見ていきましょう。商品のPR企画書の基本的な構成はほぼ以下の通りです。
① 与件の整理
② 環境調査・分析
③ 課題設定
④ 目標設定/効果測定
⑤ 施策内容
⑥ スケジュール
⑦ 予算
⑧ 体制
これはあくまでも基本的なフォーマットで、既にご存じの方も多いと思います。では、次にこれらの項目について、いくつかのポイントを押さえていきたいと思います。
PR担当者が広報企画書を立てるポイント5選
①与件の整理は社内での情報共有がカギ
与件の整理でまず大切なのは、商品の差別化ポイントの整理と社内での共有です。まずは、商品コンセプトを社内で統一し共有させることが大事です。それを踏まえた上で企画書を作成します。
例えば、新車のPR企画で、セールスポイントはどこかという時に、開発部はエンジンだと言い、マーケティング部はスタイリングだと言い、営業部は燃費だと考えがバラバラではPRの指針が立ちません。商品に対する考え方を事前に統一しておかないと説得力持つ企画書になりません。どのポイントで攻めるかによって、ターゲット層が変わってくるからです。
②市場調査、分析は未来を見ながら行う
企画書作成前に行うマーケティング調査についても重要なポイントがあります。商品の開発者は「どういう製品をつくるべきか」という視点で現在の市場に注目しがちですが、それだけでなく、「この市場が未来に向けて、どう変化していくのか」という視点を取り入れた企画書にすることです。
単に「現状分析」に終始してしまうと、PR戦略の立案に必要な仮説を立てることができません。過去―現在、その時間軸の先にある未来を加えて考察することが仮説を立てる上でとても役に立つのです。
③目的と成果を明確にする
ここで、PR企画書を広告の企画書と比較して考察してみたいと思います。まず、広告は企業がタイムやスペースを購入し、そこに制作した広告をオン・エアまたは掲載するため、予算設定が明確だという点があります。
それに対してPR(広報)の場合はメディア側の都合やスケジュールも関係して、予算がなかなか明確化できないという側面があります。また、多くの予算を投下する広告の場合、成果が明確に記されていないと、まず企画は通りません。従って、広告の企画書には必ず成果を明記することが必要とされています。
これまで、PR(広報)の部門では成果の記述が漠然としたものや曖昧なものだった傾向にありますが、予算を使って活動する以上、PR企画書にも、目的と成果の明確な記述が必要となります。できれば数値化されたものであればなおベターです。
④「何をすれば、何が実現できるのか」を明記する
具体的な施策(何をすれば)と実現できる成果(数値評価)を明確にすることで、初めて経営者はそのPR企画を実施するかどうかの判断が下せます。マーケティングの手法を取り入れ、「目的」-「施策」-「成果」が論理的に紐づく形での企画書ならば、説得力も増し採用される率も向上するのです。
「何をすれば」の指数として、よく使われるのはKPI(の設定)です。KPIとは企業や組織の目標を達成するために行う日々の活動の具体的な行動指標のこと。「Key Performance Indicator」の頭文字を取った言葉で、重要業績評価指標のことを指します。例えば、「自社のWebサイトへのアクセス数がこれだけ上昇すれば、売上にこのくらい貢献できます。」のように具体的な数値でPR効果をアピールできるので、経営者の方も実施かどうか判断しやすいのです。
⑤想定されるリスクを洗い出し、対応策をまとめる
多くの人やモノが動くPR企画では、勘違いや行き違い、そして思いがけない事故が起きる可能性があります。企画書には、それらのリスクを事前に想定し、リスクが発生した場合の対応策も明記しておくことが大事です。
また、リスク管理の中には季節的なもの(積雪などの悪天候や熱中症)なども考慮しておくと良いでしょう。外部要因(天候など)と内部要因(キャンペーン運営など)に分けてできる限りリスクを洗い出し、それぞれの対応策についてまとめておくことで、もしものときの被害を最小限に留めることができ、安全性にまで配慮しているという点で、任せても大丈夫という安心感と評価を得ることができます。
広報企画書には表やグラフも取り入れよう
最後に、企画書全体の見やすさについて触れておきます。プレゼン時には、企画書の不備は口頭でフォローできますが、その後は企画書が社内を一人歩きします。
初めて企画書を手に取った人が、「うわー、見づらいな」と思ったら、もうポジティブな気分で内容は見てもらえません。これはPRの企画書に限ったことではありませんが、やはり企画書は見やすさと分かりやすさが絶対条件。興味を持って見てもらえるよう、必要に応じて表やグラフを使ったり、フォントやQ数の選択にも気を付け、印象的な見出しやキャッチフレーズで関心を誘うことも考慮した方がいいでしょう。
まとめ 広報企画書への質問回答
いかがでしたでしょうか。採用されるPR企画書の書き方、簡単にまとめると、企画書に「目標達成」と「効果検証」が明確に設定されていることが大切だということが分かります。
これにより、広報施策の戦略性が向上し、説得力のある企画書になるのです。その上で、個々の広報施策の立案には、マーケティングのフレームを取り入れることで「目的」と「施策」が論理的に紐づく形での提案ができるのです。ぜひ、参考にしてみてください。