危機管理広報(クライシス広報)とは、大きな災害やテロ、事件や事故、社内の不祥事など、様々なトラブルが発生した時に、企業の被害を最小限に抑えるために行われる広報活動のことです。特に、トラブル発生直後の対応を誤ると、企業に更なるダメージを与えてしまう結果にもなりかねません。
近年は、SNSに代表されるソーシャルメディアが発展、普及したことで、ユーザー発の投稿やコメントがきっかけで企業のブランドが失墜するケースが増えています。そこで、今回の記事では危機管理広報の重要性、実際行うべき施策などをいくつかのポイントにまとめて解説していきたいと思います。
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危機管理広報の役割
まずは、危機管理広報において、広報担当者が実行するべき重要な3項目についてご紹介します。
①想定外のクライシス(危機)に対する事前準備
社会を騒がせ、企業の根幹を揺るがすようなトラブルでも、その発生は、ある日突然思わぬところから起こるものです。とは言うものの、起きてしまったトラブルを手をこまねいて見ている訳にはいきません。場合によっては、企業が深刻なダメージを被ることになるからです。
そんな時のために、クライシスが突然発生した場合でも、冷静に、且つ迅速に対応できるよう、日頃から様々なトラブルを想定し、万が一そのトラブルが発生した場合の対応策、社長、経営陣、社員の各役割などを明確にしておくことが重要です。社員に対しては、トラブル発生時を想定したシミュレーションを実施するなど、社内における危機感の共有や醸成も大事です。
こうした予期せぬトラブル発生に対する事前の準備や想定される対処法をまとめたものを「危機管理マニュアル」と言いますが、「危機管理マニュアル」を作成しておくこともお薦めです。
②トラブル発生時の速やかな情報開示
トラブルが発生した場合には、できるだけ迅速に正確な情報を開示することが必要です。関係者からいち早く情報を収集して、「今、何が起きているのか?」を掌握し、事実関係と企業としての対応を明確に発信します。危機管理広報においては、初動の対応が非常に重要です。この初動の対応こそが、その後の企業の存続、社会的立ち位置、イメージに直結するからです。
トラブルの発生自体は、正直、防ぎようがありません。「起きてしまったものは仕方がない」と割り切って、極力早い時点での情報開示に向けて全力を注ぎましょう。
③間違った情報による風評被害を防ぐ
そして、情報開示した後は、メディアが発信した報道内容に事実誤認がないかをリサーチします。エゴサーチやクリッピングなどの作業で確認できます。事実誤認があった記事などを発見した場合は、速やかにメディアの担当者に情報訂正を申し入れましょう。
ネガティブな情報や悪評は瞬時に拡散されやすく、事実誤認によって企業のイメージダウンに直結します。開示した情報が正確に伝わることで、企業の風評被害を防ぎ、その後の信頼回復につながります。
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危機管理広報6つの実践プロセス
危機管理広報は実際にどんなことをすればいいのか、ここでは、時系列を追いながら、基本的プロセスを紹介していきます。
手順1.事実関係を確認し掌握する
危機管理広報を行うに当って、まず最も重要なのは事実関係を確定することです。 実際に、どのようなことが起こっているのか、また、その事象に社内の人間がどのように関係しているのか、これらの事実関係を確認し、掌握することが重要です
手順2.ポジションペーパーを作成する
社内調査によって判明し確認した事実関係は、「ポジションペーパー」と呼ばれる書面にまとめます。「ポジションペーパー」には、トラブル発生時から現在に至るまでの経緯、調査で判明した事実、そして、これらをベースとした今後の対応方針などを記載します。
手順3.窓口を一本化する
危機対応の窓口が複数存在すると、メディアからの問い合わせの詳細が集約できず、対応の仕方や回答する内容にバラつきが生じてしまいます。そのため、危機対応時には、単一の広報窓口を設置し、情報を一元的に集約させる必要があります。
手順4.プレスリリースを発信する
トラブル発生時の企業の公式な見解表明は、多くの場合、プレスリリースによる情報発信となります。プレスリリースには、ポジションペーパーの記載を基に、トラブル発生の事実関係や原因、分析、今後の対応方針や再発防止策、被害を受けた方々に対する謝罪などを記載します。
手順5.メディアからの質問に答える
メディアの記者やライターからの質問には、その内容をしっかり確認し、「何が聞きたいのか」を特定してから答えることが重要です。即答できない質問や、現段階では発表できない質問には、その理由を丁寧に説明し、後日回答することを約束することも必要です。
手順6.ステークホルダーに説明する機会を設ける
企業の責務として、関係するステークホルダーに対して、トラブル発生について十分な説明を行う必要があります。これら、各ステークホルダーに対する説明は、全てを広報窓口で行うことはできないので、株主や投資家、関係各所への説明文書、ユーザーからの問い合わせに対応するための資料などを作成、各部署に配付して、対応の整合性を作っておくことも大事です。
危機管理広報の注意点
次に、実際に危機管理広報を実践していく時には、どのような点に注意すればいいのか、2つのポイントに分けて説明します。
誠実な態度で臨む
トラブルが発生した時、情報開示を行う場合は、広報担当者として誠実な態度で臨むことが重要です。この情報開示の意味合いは、突然発生したトラブルによって迷惑をかけたユーザーや株主、投資家などの全てのステークホルダーに対してお詫びするための広報活動であるため、それにふさわしい誠実な態度を心がけましょう。
事態を軽視したり、責任を転嫁するような発言は批判の的になり、情報開示そのものが更なる不信感を煽って、炎上の火種になることもあります。トラブル対処の情報開示は、メディアの厳しい追求を受けることもあり、ストレスが溜まることもあると思いますが、こんな時こそ、冷静で誠実な態度を持ち続けることが事態の収束を速めることになるのです。
専門家と連動して対応する
中小企業やスタートアップ企業など、社内に危機管理広報の知識やノウハウがない場合は、法務の専門家や、PR(パブリック・リレーションズ)の専門家、そして、リスクマネジメントの専門家など、各分野の専門家と連携するのも良いでしょう。
それぞれの専門家からは、未知の解決策や対処法を享受することができます。自社内だけでは対応しきれない場合などにおいては、こうした危機管理の専門家によるサポートが、心強い味方となってくれるはずです。
まとめ
危機管理広報では、実際にトラブルが発生した時の対応と、トラブルの発生に備え、未然に防ぐリスクマネジメント業務を中心として体制を整えておくことが重要です。
トラブル発生時の危機管理広報は、今回、説明したようなプロセスで実践されますが、広報担当者としては気が重い業務となるかも知れません。しかしながら、自らの秩序立った行動や冷静な判断が企業を救うことにつながります。そうした強い使命感と自覚を持って粛々と危機管理広報業務に取り組みましょう。
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