危機管理(クライシス)報道の在り方と広報の対応法について考えてみた
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2022.10.22

危機管理(クライシス)報道の在り方と広報の対応法について考えてみた

最近コロナ関連ニュースが連日報道され、様々な場面で制約を受けている広報担当者の方も多いのではないでしょうか?

今回は、危機的な状況下における広報体制の在り方について、過去の事例を挙げながら考えてみたいと思います。

このコラムはこんな人に役に立ちます!

1.通常時とは異なる広報活動を、どう進めればよいか気になる
2.危機的状況を乗り越えた事例を知りたい
3.この時期だからこそ、今後の広報体制の在り方を学びたい

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危機管理におけるコミュニケーションの有効性の4つの評価

かつて起きた9.11同時多発テロ事件は、危機状況におけるコミュニケーションの有効性に焦点を当て、2つの結果をもたらしました。

①企業が分散モデルの危機管理計画を作成
(単独の攻撃で企業が機能不全になるのを防止)

②危機状況下の行動をモニター・測定重要視

その他にも、想定しておくべき危機状況があります。

・製品リコール、敵対的買収、政府との対立、法的争い等
(昨今では、新型コロナの影響、緊急事態宣言等で企業が営業自粛や休業せざるを得ない事態が発生していますが、今後、同様のことが再び起こる可能性も想定しておく必要があると思います。)

そうしたなか、ジェイムズ・グラニグは、危機的状況に対応するための危機管理コミュニケーションの四つの原則を提案しています。

①リレーションシップ(関係)原則

→企業は、主要な利害関係者との間にしっかりしたよい関係を築いていたら危機を乗り越えることができる。

(例:リーバイ・ストラウス社)
業績悪化、11の計画中止ならびに約6400人の一時解雇、同時に解雇で影響を受ける全地域社会に対し補助金を出すと発表、その結果、報道は1週間で収束、地域社会との関係修復。

②アカウンタビリティ(説明責任)の原則

→企業は、たとえその危機が自らの過失によるものでなかったとしても、その危機に対する責任を受け止めるべきである。

(例:オドゥワラ天然果汁団体)
団体が販売したリンゴジュースで、子供が一人死亡、オドゥワラがその責任を引き受け3週間で解決、訴訟を回避。
それ以降は報道ほぼなし。

③ディスクロージャー(情報公開)の原則

→危機においては、企業はその危機や問題について知っているすべてを公表すべきである。
もしただちに答えることができない場合は、新たな情報が手に入り次第、全てを公表することを約束しなければならない。

(例:コダック)
将来の戦略に関するリークに悩まされ、予想される解雇に関し、いくつものリークが続き、解雇発表されたものの、人員削減は十分でなかったため、追加で解雇を発表する事態に発展、その結果、3カ月のうち3度にわたりネガティブなニュースが続いた

④シンメトリカル・コミュニケーション(対称的意思疎通)の原則

→危機においては、大衆の関心は企業の関心と同様に重要であると考えるべきである。
これは、PR実務に関するグラニグの新しい用語法で、基本的には、リレーションシップ、アカウンタビリティ、ディスクロージャーをすべて合わせたもので、市民の安全にためにシナリオに組み込まれているものです。

(例:ジョンソン・エンド・ジョンソン)
鎮痛剤タイレノールに毒物を混入され、消費者と企業と商品の評判を守るため売り場から完全撤去、後に北米から最も尊敬され、人気商品であり続けている潜在的な危機に関し、上記4つの原則から企業がいかに対応できるかを考えるために、従業員、顧客、他のステークホルダーの間で話題にされ、メディアで問題となっている事柄を随時チェックしておく必要があります。

 

危機管理の「3段階モデル」

これに関し、ペインは、リンデンマンの「3段階モデル」を使用し、有効性を測定する三つの要素を提案しています。

①アウトプットとプロセスの有効性の測定
→大切なメッセージが伝わっているか、誰に伝えられているのか、
メディアを絶えずモニタリングする

②インパクトの測定
→発信したメッセージが意図された効果をもたらしているか、
メッセージが信用され、世論に影響を与えているのかを判断

③アウトカムの測定
→危機が企業の評判、売上、離職率、株主の信用など様々な要素に影響を与えたかを測定

上記のどのタイプを選定するかは、より良い意思決定ツールに対する社内ニーズによって決定されます。

きちんとした危機管理のもとで、経営陣が問題に積極的に取り組み、素早く、的確に、明確にメッセージを伝えることで、悪いニュースを素早く片付けることができますが、逆に対応がまずければ、危機はずるずると何カ月間を尾を引きます。

また、危機が終わった後には、評価を実施することにより企業の立場を知り、将来の戦略や危機管理コミュニケーションの在り方についての教訓を得ることが出来ます。

検討すべき問題として、以下のようなものが挙げられます。

・消費者の態度は変化したか?
・従業員の離職率は上がったか?
・株価は下落したか?

これらの要素に、規制官庁、マスコミ、ビジネスパートナー、従業員と家族らの態度に質的・量的変化の判断を追加することが出来ます。

 

まとめ 今こそ危機管理力を向上させる広報戦略について考えよう

危機管理コミュニケーションは、それ自体が重要な課題ですが、メディア分析や、態度・認識に関する測定が、危機進展度や深さをモニタリングするのに重要な役割を果たしています。

コロナ影響により、各企業の広報体制も様々な変化を余儀なくされているステージだと思います。
この状況下だからこそ、危機管理力を向上させる広報戦略について、考え直す良いきっかけにしたいですね。


執筆者・監修者
上岡正明
経済記者・経済コメンテーター
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者25万人のYoutuber
上岡正明

MBA(多摩大学院経営情報学修了)
テレビコメンテーター
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者24万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

日経ヴェリタス・東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン・プレジデントの4大経済メディアで専門家として記事連載もおこなっております。お読みになりたい方はこちらからご覧下さい。

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