「みんなの意見」は案外正しい?会議の目的とその貢献を明示せよ
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2020.04.04

「みんなの意見」は案外正しい?会議の目的とその貢献を明示せよ

「みんなの意見」は案外正しい

このタイトルのフレーズは、社会心理学者のジェームズ・スロウィッキー氏の著書のタイトルをそのまま用いたものです。趣旨は、あるテーマに関して、ある程度の意見を持った多様な人間が集まると、そこで生まれてくる平均的な見解は、一人のエキスパートの意見よりも的を射ていることが多いというものです。

これはまさに、集合知の力であり、会議を行うことのメリットそのものでもあります。
かつてコンサルティング業界にいた方曰く、コンサルタントも最初はその業界について知識を持ち合わせていないということが多くあると述べています。

しかし、コンサルタントはクリティカル・シンキングに基づく視点や他業界の交通成功事例や法則、アナロジーなども知っていますから、業界について詳しくなくても、議論をより良い結論に導くことに貢献できるのです。

みんなの意見がそれなりに正しくなるためには、いくつかの条件が揃う必要があります。

・多様性:様々バックグラウンドからの意見が飛び交う
・独立性:他者からの影響を受けない
・分散性:各人がそれぞれの知識をベースに検討を行う
・多様な意見を集約する仕組み

これらが担保されていないコミュニティの意見、例えば極端な思想の持ち主だけが集まるようなネットの場や、特定の思想の人間だけが集まった政治的な集会の意見などは、偏ったものになるので注意が必要です。

ただ、現実を考えると、むしろこの4つが担保されている議論の場の方が稀でしょう。

日本の大企業の典型的な役員会議の場合、多様性は性別や年代、国籍といった意味では必ずしも担保されてはいませんし、参加者に序列がある結果、独立性も普通は実現されていません。また、全ての参加者が発言できるかも疑問です。

集合知のパワーは非常に大きいものですが、それをどのように引き出すか、企業としては様々な試行錯誤が求められる場面と言えるでしょう。

会議の目的とその貢献を明示せよ

会議において、その目的を明らかにすることは基本的なことですが、多くの企業では実行されていないことでもあります。

また、参加者の貢献(期待および実際の貢献)も通常は明らかにされていません。
「会議の目的」については言うまでも無いでしょう。本来であれば、事前にアジェンダを共有し、意思決定すべき事項(更にはその重要度や優先度も含む)、情報共有のみの事項、その他などを明確にしておくべきでしょう。

これらをしないと、会議の時間配分などのバランスが悪くなり、本来決めなければいけないことが決まらない。あるいは、じっくりと時間をかけて討議すべきだった案件に議論の時間を充てることができない、などの不具合が起きます。

情報共有はなるべく事前に済ませ、当日は意思決定と意見交換にフォーカスするというやり方を工夫しているところもあるようです。一方、貢献についてはアジェンダでも明確にされていない企業が多いのではないでしょうか。ここで言う貢献には、「事前準備」と「会議における貢献」の両方が含まれています。

■事前準備が9割

事前準備はまだ意識されている方かも知れません。「この資料は○○部門で準備のこと」といった案内です。
人間は多忙になるほど、ちょっとしたアサインメントは忘れるものですから、前回の会議の議事録、あるいは次回の会議のアジェンダに、そういった準備責任は明確にしておくべきです。

■会議中の貢献

会議中の貢献については、それを文書化する必要性があるケースの方が少ないでしょう。
しかし、重要な会議になれば、誰が何を言ったかということも大事になる場面があります。どこまで外部に発言者をディスクローズするかの判断は微妙なものがありますが、必要に応じて明示することも検討して良いでしょう。

■まとめ

集合知にはパワーがあるということを学びました。また、生産敵な会議は基本を押さえるところからであるということを学びました。


執筆者・監修者
上岡正明
経済記者・経済コメンテーター
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者25万人のYoutuber
上岡正明

MBA(多摩大学院経営情報学修了)
テレビコメンテーター
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者24万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

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