CAPMとは、Capital Asset Pricing Modelの略語です。
資本資産価格モデルとも呼ばれます。CAPMとは個別株式が持つβ値から、その株式に投資をしている投資家がどのくらいの収益率を期待するのかを関連付けたフレームワークです。
頭文字を取って「キャップエム」と読むこともあります。
CAPMで何がわかるの?意味と考え方を理解しよう
CAPMにより算出できるのは、株式投資期待収益率E(r)です。
企業側から見れば株主コストと言い換えることができるでしょう。従って、この株主コストと負債コストを加重平均することにより、企業が調達している資本のコスト(WACC、加重平均資本コスト)を計算することができるわけです。
さらに、このWACCで個別案件が生み出す将来のフリーキャッシュフローを割り引きます。すると、個別案件の投資採算性の検証に、その企業に資本投下している投資家の期待値を織り込むことができます。つまりは、資金使途と資金源を一気通貫で関連付けることで、企業は投資家の代わりに投資を行うという企業経営の基本理念とも整合させることができます。
CAPMの算出方法とは?
CAPMの計算式は以下の通りとなります。
・E(r)=rf + β(rM - rf)
※E(r)=任意の株式の期待リターンです。株式投資期待収益率とも表現されます。
rf=リスクフリーレートです。リスクフリーレートとは、無リスク資産から得ることのできる利回りを指します。
β=任意の株式のβ値です。βとは、株式市場が1%変化したときに、任意の株式のリターンが何%変化するかを表す係数です。個別の株式の相対的なリスクを表します。
rM - rf=マーケットリスク・プレミアムです。マーケットリスク・プレミアムとは、マーケット・ポートフォリオの期待リターンから、リスクフレートを差し引いたものを指します。マーケットリスク・プレミアムを推定する際には、過去のマーケット・ポートフォリオに近似のポートフォリオ(日本で言うと例えばTOPIX)の利回り実績と国債の利回り実績との差を使うことが多いです。
■CAPMとROEの関係性
株式投資の指標では、よくROEが使われます。ROEは次の式で表されます。
ROE=当期純利益/株主資本
ROEとは、株主資本に対する当期純利益であることがわかります。株主にとってのリターンを表す、最も基本的な指標です。「資本をどれだけ効率的に純利益に結びつけているのか」がわかるので、非常に便利な指標であるのは間違いありません。
しかし、ROEはリターンとコストのうち、リターンのみなので株主利益の一面にしか過ぎません。
そこで、「利益を得るために投入した資金を調達するためのコスト(=CAPM)」も考えなくてはなりません。原価割れのものはいくら売っても赤字なのと同じように、還元要求が凄まじいのに、わずかなROEでは良い投資先ではありません。
企業価値を高めるには2通りの方法しかありません。それは、リターンを増やすか、コストを抑えるかです。
ROEはリターン側で、CAPMはコスト側ということになります。
つまり、CAPMとROEをセットで扱うというのが、良い経営判断、投資判断となります。
CAPMの3要素とは
■まずは、CAPMとリスクフリーレートです
リスクフリーレートは「ノーリスクで儲けられるようなものに投資した場合、利益率はどれくらいだろうか?」というものです。投資家はわざわざリスクを取って企業に投資をするのに、ノーリスクでの利益率よりも高いリターンが無ければその企業に投資をする意味はありません。
一般的に、最も安全な資産は日本国債と思われています。
これは元本割れもないし、信用リスク(貸し倒れリスク)もないということです。
そこで、10年物国債の利回りがこのリスクフレートにあてがわれます。この値は、約0.055%と言われています。
これだけ安く資金調達できるなんて、企業は有り難いと思います。
■次に、CAPMとβ値です
β値は個別企業のリスクです。リスクとは、企業の株価のデータから、どれだけボラティリティ(値動きの変動幅)があるかによって決まります。
市場全体(TOPIX)のボラティリティ平均は1で、1<βなら高リスクとなり、1>βであれば低リスクとなります。
企業としては、このβ値が低ければ低いほど、資金調達は有利となります。
■最後に、CAPMとマーケットリスク・プレミアムです
マーケットリスク・プレミアムは市場全体(TOPIX)の期待リターンから、リスクフリーレートを引いて求められます。
これが何を意味するかというと、そもそも個別の企業に投資をするのではなく、市場全体投資したときに、最低限これだけは期待したいリターンのことです。
市場へ投資するのにはリスクがあります。リスクフリーレートの目安である10年物国債に投資すればノーリスクで利回りを得られます。つまり、「わざわざリスクを取って株式に投資する以上、リスクフリーレートに比べてこれだけのリターンは欲しい」ということです。
■CAPMのまとめ
以上が、CAPMについての解説でした。有効に活用すれば、経営や事業の採算性をちチェックして、PDCAを回していくことができます。
ぜひ、有効に活用していきましょう。