リアルオプションとは?ブランドやプロジェクトを客観的に評価する手法です
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ブランディング
2020.02.22

リアルオプションとは?ブランドやプロジェクトを客観的に評価する手法です

リアルオプションとは、金融工学で用いられます。少し難しい単語となりますが、オプションの価格決定理論を応用したプロジェクト評価の考え方のひとつとなります。

リアルオプションの基本

リアルオプションの原理は不確実性のある将来でも、柔軟性を持つプロジェクトや資産は、そうではないプロジェクトや資産に比べて高く評価できるというものです。

では、柔軟性を持つというのは、どういうことでしょうか。それは、ある状況が明らかになった段階でも、継続か中止かなどの判断が可能な場合を言います。リアルオプションという評価手法が生まれたことでNPV(正味現在価値法)では却下されたプロジェクトでも、「柔軟性」を持つ案件が可能となりました。

一方で、勝算の少ないプロジェクトに対してはどうでしょう。
ここでは将来の柔軟性をこじつけることでプロジェクトの価値を上げ、着手したという既成事実を作る道具になりかねません。そうした批判的な面も忘れずに起きましょう。そうした濫用を避けるためには、戦略と実務の両面から本当に妥当かどうかを検討する必要があるわけです。

 

リアルオプションのメリット

まずは、不確実性への考慮です。

企業を取り巻く環境が大きく変化しています。こうした中で将来の不確実性というリスクに対して、我々はどう行動すればいいのかを考えることが必要です。同時に、投資対象となる事業やプロジェクトのリターンを考えることの重要性が日々増しています。

そうした2つの課題に対して、市場の完全性や現時点での実行判断のみでしか判断できないDCF法(NPV分析)に代わる事業評価方法がリアルオプションになります。

NPV分析と同様に、将来のキャッシュフローを現在の価値に算出できます。他方、リアルオプションはある一定の段階、一定の時点においての事業再評価を行うことっもできます。その結果として、参入タイミングによる機会損失や投資による損失のダメージを最小限に留めることができるわけです。

次に、柔軟性のある事業立案です。

多角化経営や「集中と選択」戦略を中心とした、事業の再編が進むのが昨今の流れです。そうした近代経営において事業に対する柔軟性が非常に重視されます。

そのため、現時点で収益化が難しい事業やプロジェクトだとしても、将来の柔軟性を証明することで、社内における新規事業・プロジェクトの価値を向上させることができます。

そして、環境評価に沿った事業シナリオの修正です。

リアルオプションによって、「将来の柔軟性」という価値を見出した事業やプロジェクトは複数の事業シナリオを持っています。そのため、段階的な投資・拡大、または撤退・縮小といった意思決定、場合によっては複数の組み合わせの選択肢を持つことができる状態となります。複数の事業シナリオを持つことで、事業内容の変更、不動産の使用目的の変更、人員の再配置が可能となり、単一のシナリオがもたらすリスクを最小限に留めつつも、新たな成長戦略の変更を行うことができます。

実務面での有用性

リアルオプションの考え方は、企業の投資意思決定問題において、NPV法への修正として捉えられます。通常のNPV法においては、将来の期待プロジェクト価値は単一のシナリオに基づき、企業も当初の意思決定を維持し続ける硬直的な存在であると仮定します。しかし、現実の企業は、予期せぬ状況の変化に応じて投資方針を柔軟に見直すことで、将来の上方ポテンシャルを伸ばし、下方リスクを避ける行動をとることができます。こうした不確実性を段階的な意思決定による最適化行動を踏まえてリアルオプションを意識した企業にとっては、将来の不確実性は利用すべき「味方」となります。

 

まとめ

PR広報という現場では、こうした戦略起点からPRブランディングを考える機会もアリアス。

リアルオプションは、事業の将来性を見極めて、自社に有利な権利行使を保持しながら、経営を取り巻く環境変化に応じた、最適な事業判断を行うことができる非常に優れた事業評価手法です。
また、NPVとリアルオプションにははっきりとした違いと特徴があります。NPVの限界とリアルオプションの考え方について、理解をしておきましょう。

以上、リアルオプションについての解説でした。


執筆者・監修者
上岡正明
経済記者・経済コメンテーター
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者25万人のYoutuber
上岡正明

MBA(多摩大学院経営情報学修了)
テレビコメンテーター
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者24万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

日経ヴェリタス・東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン・プレジデントの4大経済メディアで専門家として記事連載もおこなっております。お読みになりたい方はこちらからご覧下さい。

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