テレビ番組や報道局・制作会社にプレスリリースを売り込もう!
広報担当たるもの、そうやって一度はテレビで自社や自社の商品・サービスなどを取り上げてもらいたくなるものですよね。
「テレビなんて夢のまた夢……」と感じるかもしれませんが、テレビ局は案外ネタに飢えているものです。したがって、適切な方法でアプローチすれば「たちまち、我が社がテレビに出る!」ということが十分あり得ます。
そのためにも、まずは「テレビ局にどうネタやプレスリリースを売り込んでいけばいいのか」を考えていきましょう。
なお、今回のコラム著者は「めざましテレビ」「王様のブランチ」元人気放送作家で累計55万部のベストセラー作家である上岡正明氏です。(プロフィールはこちら)
テレビ番組に売り込むときの相手は主に3種類
コネクションがあればどこでも売り込むことができますが、そうでなければ「売り込む相手」は2種類に絞ることをおすすめします。
2022年現在の最新情報をもとに、それぞれ見ていきましょう。
1:テレビ局ディレクター
このディレクターというのは主に「制作企業のディレクター」と「局のディレクター」のことを指しています。
局のディレクターについては、「こういうネタがあります」と売り込んだときに、その人自身が受け持つ番組にマッチしないものであっても、「じゃああの番組のディレクターに教えておくよ」とネタを流してくれる場合が多いです。
このさい、できればその「流し先のディレクター」の連絡先なども獲得しておきたいものですが、失礼にならないように注意してください。
◆局社員はハイクラス
また、局のディレクターというのはそもそも、業界内では地位が高いので、「俺はこのネタを使いたいんだ!」という鶴の一声で、あっさり採用される可能性があります。そして、今後もっとお出世する場合も高いわけです。そうしたポジションですから、コネクションを作っておいて損はありません。
しかし、局のディレクターに関しては「異動が多い」という欠点があります。まるでローテーションのように異動させる局もあります。私の場合も、せっかく飲み友達になったのに、本当にあっさり関西エリアに移ってしまった、などもあります。
◆移動が多い場合も
そうなると「せっかくコネができたのに……」と、広報担当者が感じる精神的なショックもかなり大きなものになることでしょう。
ただ、もちろんその人がクビになるわけではありません。関わりは絶たないようにしましょう。どこからメディア露出に繋がるか分かりませんから。
そうしたケースを想定して、できるだけ多くのディレクターと繋がっておくことをおすすめします。
2:制作会社ディレクター
では、制作企業のプロデューサーやディレクターについてはどうなのでしょうか。
こちらに関してはあまり異動しません。特定の番組に10年を超えて関わり続けている人も少なくありません。
そのため、「そういえば数年前のあのネタ、今なら使えるかもしれないな」と、最初の売り込みから、かなりの時間が経ってから連絡が来ることもあります。
また、色々なテレビ局の番組を受け持っているケースがほとんどですから、「あの番組だと使えないネタだったけれど、この番組なら……」とネタを流してくれるかもしれません。
3:経済部の報道記者
中規模以上のテレビ局であれば、ほとんどの場合「経済部」があります。
この経済部の報道記者が色々なニュースの取材をして、「この情報はあの番組へ」「この情報はそちらの番組へ」という具合に振り分けていきます。
つまり、経済部の記者と関わりを持つことができれば、売り込んだ情報をそれにふさわしい番組で使ってもらえる可能性が高まるわけです。
*参考リンク:ワールドビジネスサテライト元ディレクターが教える!プレスリリースの書き方大全集
どうすればテレビ局の関係者に知り合えるの?方法は主に2つ
では、ディレクターや経済部の記者と知り合うにはどうすれば良いのでしょうか。
方法は主に2つあります。
1:電話
シンプルにテレビ局や制作企業に電話して、「良いネタがあるので、ディレクター(経済部の記者)とお話ししたいのですが」と頼みます。
ちょっと裏技的な方法ですが、番組のエンドロールを見ると、その番組を作っている担当ディレクターやプロデューサー、さらにはADの名前や制作会社まで載っています。また、テレビ局や制作企業でググッてのWikipediaを見れば、個人名も分かりことがあります。
そのうえで、会電話で「***さんを呼んでいただけないでしょうか」とネタを売り込みます。もちろん、個人情報などで、あくまで失礼のないように。
ただ、この「直接電話する」という方法は99パーセント失敗すると考えてください。それほど甘いものではありません。よほどネタに自信があるときだけ、挑戦してみても良いと思います。
2:他の広報に教えてもらう
「先輩の広報が作ってきたコネ」がある場合は、それに乗っかってしまいましょう。
その先輩が異動していたり離職した場合は、早めに動かないと人脈やコネは消滅してしまうかもしれません。
去っていく先輩広報はあえて言わなくても、引き継ぎ作業をしてくれるはず。ですが、急な離職やトラブルによる転職の場合、そうした時間があまりありません。こちらから申し出るようにしてください。
引継ぎが終わったら、すぐにディレクターや記者に挨拶をしておきましょう。
できればそのタイミングで新しいネタも持ち込みたいところですが、無理をする必要はありません。
ですが、あなたが企業ではじめての広報担当の場合は、先輩に頼ることができませんよね。
そのときは、他の企業の広報担当から紹介してもらうことを考えてください。
もちろんこ「ギブアンドテイク」で進めていくことが重要ですから、横のつながりの紹介でメディア人脈とコネができたのであれば、恩返し(その企業の商品を逆に紹介するなど)をしていきましょう。
*参考リンク:プロ直伝!プレスリリースの戦略的活用法を具体的に知る
どんなプレスリリースならテレビ制作の担当者は食いつくのか?
さて、ここからはより具体的なプレスリリースを使ったテレビ露出方法について。このような悩みが解決されます。
- 一生懸命頑張って作ったリリースなのに、各番組からノーリアクション
- 送ったリリースが読まれているかどうかすらも不安で仕方ない
- 他社のリリースに埋もれず、きちんと取材に結びつくリリースを作りたい
リリースを作成する時に、”いい情報を伝えたい!”という思いが先行して、つい文字数やページ数が多くなったりすることはないでしょうか? 残念ながら、それではスルーされるのが現状です。
●テレビ番組の制作ルームには、毎日約500通以上のプレスリリースがFAXで届きます
あまりにも大量のリリースが届くため、FAX機の下には受け専用の段ボールが置かれているぐらいです。
FAXの束をそこから拾い、一気にパラパラ読まれる、というのが現状です。当然ながら1枚1枚を丹念に読む、ということはあり得ません。
大切なのは、この一瞬のチャンスの中で読み飛ばされないための工夫をすることです。ではどのようなことに気を付ければ良いのでしょうか?
●A41枚にまとめる
先ほど述べた大量のFAXの束ですが、番組所属のアルバイトスタッフが、仕分けをする時にミスが起きやすいものです。(複数枚のFAXホチキス止めの際に、誤って違う会社のものが混ざる、等)
リリースを1枚にまとめていれば、このようなトラブルに巻き込まれるリスクを極力減らすことができます。
●タイトルを最重要視する
プレスリリースの中で、最も重要な部分が「タイトル」です。番組企画になりそうな雰囲気が漂っているタイトルならば、内容を読み進めていきます。
とくに番組のテロップやラテ欄(番組予定表)は参考になります。
新聞のテレビ欄や番宣、実際のオンエア録画内容など、普段から意識してチェックする癖付けをすると良いでしょう。
チャンスがあれば、実際に番組制作責任者と面談したり、定期的にメールや電話等で情報交換するのも良いと思います。
●「映画の予告編」を意識して書く
プレスリリースはいわば「映画の予告編」のようなものです。内容をすべて詳細に伝えることができません。
番組ディレクターがリリースに求めているものは、あくまで”番組で取り上げられる可能性の有無”です。プレスリリースに細かい情報まで求めていません。
書き手としてはつい、伝えたいことを余すことなく書いてしまいがちですが、それでは重要な情報が埋もれたり、読み手の興味が薄れる原因となります。
プレスリリースはタイトル、リード、詳細と伝えるレベルのステージを分けて、あくまでテレビオンエアの事前取材を呼び込むためのツール、と割り切った方が良いでしょう。
●会社紹介は200字程度でOK
こちらは簡単な会社紹介と担当者の連絡先だけでも十分な場合があります。
大企業の場合であれば、プレスリリースを読む側が会社の基本事項を把握しており、
あまり細かく気を配る必要はありません。
対して中小企業の場合は、大企業に比べ知名度が低いため、知ってもらうためには少し工夫が必要です。
中小企業はテレビ番組の事前取材誘致を狙うべし
「番組でオンエアされる」のは、あくまで最終目的地です。いきなりオンエアを決定する、ということはありません。
テレビの取材誘致という目的達成のために必要なことは、プレスリリースを見た”ディレクターが、取材先の決定に至るまで、どのようなプロセスをたどっているか?”を知ることです。
●テレビ取材までの主なプロセス
プレスリリースの束をめくりながら、番組企画にできそうなネタを見つける
「番組企画にできそう」という感触を確かめる程度
↓
・リリース発行元の社名検索、サイト等をチェック
↓
・発行元に事前取材のため電話問い合わせ
それを経て取材可否を判断
●何故、事前取材が入るのか?2つの大きな理由
ところでなぜ、実際の撮影に入る前に、ディレクターは電話で取材するのでしょうか?
その理由は、主に2点あります。
◎その1:「リリースが事実を的確に伝えているかどうかを確認するため」
特にテレビは、新聞や雑誌以上に事前取材が重要です。
例)
・番組で1日取材する場合、テレビ局社員の人件費以外にも、10万円以上の出費(カメラマンの報酬、撮影機材運搬用の車レンタル代等)がかさみます。
これはリリースを発行する側の人たちも肝に銘じる必要がありますが、万が一、いざ取材が決定した場合に、「リリースとはどうも話が違う」という事態になった場合、取材費用が全て無駄になるだけでなく、オンエア当日予定されていた放送枠に空きが出来てしまうことになり、現場では絶対にあってはならないことです。
特に、芸能人が登壇するイベント等では、より一層注意が必要となります。
イベントの目玉となるゲストである芸能人の情報をリリースに記載する場合は、リリース公開前に、芸能人が所属している事務所・関係者に、テレビ取材に関する注意事項の有無(例:撮影NGな場面、囲み取材NG等)を確認しておくべきです。
クライアントや代理店から、イベントへのマスコミ誘致依頼があった際、ごく稀に、依頼者が芸能人の事務所側に、ゲスト目当てにテレビ取材で動画撮影が入ることを事前に了承を得ていなかった、というようなケースもあります。
”芸能人が登場するイベントなのだから、当然動画撮影が入る可能性があることは事務所側からも了解を得ているはず”と決めつけず、必ず事前確認をしておくべきです。
◎その2:「プレスリリースには書かれていない情報を、直接会話することによって引き出したい」
ディレクターは番組を少しでも良いものにすべく、何気ない会話の中から、
リリースに書かれていない要素まで探ろうとします。
リリースに書かれていることは極めて限られた情報に過ぎないからです。
実際に話してみると、もっと興味深いエピソードが潜んでいるかも知れません。
事前取材の手段がメール等ではなく、会話ができる電話である理由は、ここにあります。
取材誘致のチャンスを逃さないためにも、事前取材で色々質問される、ということは最初から想定し、普段から受け答えに慣れておくと良いでしょう。
余談ですが私自身、今回のコラムを通じ、改めて映画の予告編をPR視点で研究してみたくなりました。
ジャンルや内容問わず、人を上手に引き付ける予告編には、続きを見たくなる見せ方が随所にちりばめられていると思います。少しまとまった時間が取れる方は、この機会に色々研究してみるのも良いのではないでしょうか。