広報・PR研修をスタートするまでの3ステップと研修の質を高める5つのポイント
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2025.09.03

広報・PR研修をスタートするまでの3ステップと研修の質を高める5つのポイント

➡記事を書いた人:Youtube登録者30万人【MBA保有のPRプランナー】上岡正明プロフィール

この記事では広報・PR担当者の皆さんに向けて、広報・PR研修をスタートするまでのステップや研修の質を高めるポイントなどに関して解説していきます。

特に「わざわざ研修まで行う必要はない」とお考えの方や、「研修はしているものの、いまひとつ全体的に手応えがない」とお悩みの広報・PR担当者におすすめの内容となっています。

本記事では、研修をするべき理由、研修をスタートするまでのステップ、そして研修のクオリティーを上げるための方法などについてお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

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あえて広報・PR研修をするべき主な理由3つ

「やりながら覚えさせる」「仕事をしながらその都度教える」ではなく、あえて広報・PR研修をするべき理由は主に以下の通りです。

  • 全体的な技術力の向上や情報拡散速度アップにより商品・サービスの差別化が困難に。広報・PRの力で「自社ならではの魅力」を演出し、伝える必要がある
  • SNS対応など一昔前にはあまりなかった広報・PRスキルも重要な状況になった
  • 上手な伝え方をする、炎上リスクの管理、経営戦略と連携した広報など、広報・PR部署に求められることが多い

端的に言うと「やることが多いので、その都度教えるのが難しい」ということ。そのため、時間を取って広報・PR研修を行って(定期的に)、集中的に広報・PRのノウハウを身に付けていくことを検討するべきなのです。

広報・PR研修を始めるまでの3ステップ

それでは広報・PR研修を始めるまでの大まかな流れをステップ分けして解説しますので、ぜひ参考にしてください。

ステップ①:対象者と目的を決める

まずは広報・PR研修の対象者を決めましょう。「新人の広報・PR社員」「全広報・PR社員」「広報・PR社員と各部署の責任者」など色々あるはずですが、ここを明確にしておかないと進まなくなります。対象者が決まったら研修の目的を設定します。

目的を設定するにあたってのポイントの一つが、「知識を学ぶ」のがメインか、「実践」がメインかという視点。新人などで基礎知識が少ない場合は前者に重点を置くべき場合が多いですが、研修直後から業務に入ってほしいのであれば実践的なプログラムを増やすべきでしょう。

さらに「今回は何をどこまで学ぶか」という視点も必要。多くのケースで基本から応用へと徐々に進んでいくので、対象者が「一つの大きなゴール」へと近付いていくことができるように、「小目標」をいくつか設定しておくことをおすすめします。

ステップ②:カリキュラムの大枠を決める|広報・PR部署の課題を解決していくつもりで

対象者と目的が決まったら、研修のカリキュラムの大枠を具体的に設定しましょう。そのためには、まず「広報・PR部署の現状の課題」を整理することをおすすめします。

そして、その課題を解決できるようなプログラムをメインにすると効率が良いですし、参加者も主催者も「成長できている」と実感でき、モチベーションアップにつながりやすくなります。

「課題」→「プログラム」のつなげ方の例は以下の通り。

  • プレスリリース作成の方法が浸透していない→実際にプレスリリースを作成する
  • SNSを使った広報・PR活動が弱い→企業SNSアカウントの運用方法の見直し、実際の投稿などを行う
  • リスクマネジメントの意識が低い→「リスク」の具体的な洗い出し作業をする、各リスクへの対応方法を考える・決める

ステップ③:実践ワークの企画や「読み合わせをする資料」の準備をする

ステップ2で決めたカリキュラムの大枠を決めたはずなので、さらに詰めるつもりで実践ワークを企画したり、「読み合わせをする資料」の準備をしたりしましょう。例えば以下の通り。

  • プレスリリース作成・配信:基本の構成を習得させつつ、実際に作成も行わせる
  • メディア対応トレーニング:よくある質問リストを作って回答の練習をさせる
  • 危機管理広報:SNSなどで炎上が発生したと仮定して、具体的な対応策を考えさせる

さらにこういったワークの準備・構想以外にも、研修で使う資料の用意なども必要ですので、早めに動き出しましょう。すでにそういった資料がある場合は使い回しても構いませんが、たびたび見直して最新の情報にブラッシュアップすることも大事です。

✅種目や状況に応じて「練習」と「実際に行わせる」を分ける

種目や状況に応じて「練習」と「実際に行わせる」と分けましょう。例えば、最初のうちは練習でプレスリリース作成をしたとしても、上達してきたら実際に配信するための原稿を作るなど。また、タイムリーさを損なっていないのであれば、練習用に作った原稿を手直しさせて、配信するのもいいでしょう。

いずれにせよどこかのタイミングで実践に移る必要がありますし、「練習よりも実践あってこそ」という考えの広報・PR担当者もいるかもしれません。しかし例えばSNS発信をはじめとして、「ミスをすると取り返しがつかない(つきにくい)業務」もあるので、焦らないでください。

広報・PR研修のクオリティーを高めるためのポイント5選

続いては広報・PR研修のクオリティーを高めるためのポイントをいくつか紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。

ポイント①:「研修をする理由」を明確にして全員に納得させる

まずは「研修する理由」を明確にして、参加者全員に納得させましょう。そうでないと「義務だから出席している」という状態の社員が増えて研修の効率が落ちたり、言い訳をしてサボる人が増えたりする可能性があります。

根本的な「研修する理由」は、広報・PR活動の質を高めることのはず。そして、「広報・PR活動をするべき理由」を突き詰めて考えると、「研修をする理由」にも直結することでしょう。じっくり考えてみてください。

ポイント②:「研修のための研修」にしないようにする

つまり、実際の業務につながらないような研修をしても意味がないということです。例えばSNS関連の研修をする場合に、X(Twitter)とInstagramしか使わないにもかかわらず、「研修では網羅するべきだから」と安易に考えて、他の種類のSNSの使い方も学ぶなど。

一応、他のSNSも「情報収集」には使うかもしれませんが、そうでなければ「研修のための研修」でしかなく全くの無駄です。「やっている感」にまどわされず、具体的なメリットのある研修にすることを心掛けてください。

ポイント③:定期的に研修を実施して、フィードバックできる体制にする

1回だけ研修をしても不十分なので定期的に研修を実施できる体制を作りましょう。その上、毎回フィードバックができるシステムにして、カリキュラムもその都度アップデートしていきます(教える側も成長するべき)。

世の中の変化に合わせて行うべき広報・PR活動も変わっていくので、特にPDCAサイクルを回すことが重要な部署であると考えてください。

ポイント④:研修の効果測定を行い、PDCAサイクルを回すルールを作る

上でお伝えした通り、研修もPDCAサイクルを回すことが大事ですが、そのためにも研修の効果を測定するルールを作りましょう。

研修参加者の声などを聞いて、研修の内容がどの程度身に付いているかを測る。それだけでなく、実際にどのくらい業務の効率がアップしたか、例えばどの程度メディア関係者や一般消費者からの反応が増えたかを数値化するなどして、研修の成果を数値化しましょう。

そして「効果が大きかったので、この分野の研修を増やす」、「あまり効果がなかったのでこの研修は減らす・なくす」などして、研修自体の質も高めていくのです。

ポイント⑤:必要に応じて外部のプロフェッショナルも招くことも検討する

特にベンチャー企業などで広報・PRの専門知識を持つ社員がいない場合は、社外の研修サービスを利用することも検討しましょう。

基本的に有料ではあるものの、思い切って招いた方が広報・PR関連の問題点を一気に鮮明化できるため、結果的にコストパフォーマンスは良くなるはずです。なかなか問題点がわからず、質の高い広報・PR活動ができずに月日が流れてしまう場合の損失は計り知れません。

✅可能なら他企業の広報・PR担当者を呼ぶことも検討する

可能なら競合他社の広報・PR担当者を呼ぶことも検討しましょう。企業によって積み上げているノウハウや方法論は異なるはずなので、他企業の社員に教えてもらったり、情報交換をしたりすることには大いに意味があります。場合によっては自社社員が他企業で教えることもあるはずです。

これも一過性のもので終わらせず、定期的に合同勉強会などを開くことをおすすめします。それが難しくてもたびたびコミュニケーションを取って情報共有をしたり、例えば「この資料を読んで気になる点があれば教えてください」と頼んだりするのもいいでしょう(非公開情報には注意)。

「競合他社はライバルなのにそのようなことをしていいのか」と感じるかもしれません。しかし特に近年では合同で広報・PR関係の企画を組んだり、連名でプレスリリースの作成・配信をしたりする企業も少なくありません。情報の扱いなど「線引き」は必要ですが、それさえできていればむしろメリットの方が大きくなることでしょう。

広報研修は社内の課題点を洗い出す場としよう(まとめ)

身に付けるべきことが多い部署ですので、無理のない範囲で定期的に広報・PR研修を行うことをおすすめします。また、社会の動向やトレンドなどによって左右される仕事でもあるので、たとえベテラン広報・PR担当者であっても研修などで学び続ける意識を持つことが大事です。

そして質の高い研修をするためには、主催する側も改めて自社の広報・PR体制を整理して、課題点を洗い出す必要があります。そのための準備は簡単とはいえないので早めに動き出すことをおすすめします。

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執筆者・監修者
上岡正明
経済記者・経済コメンテーター
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者30万人のYoutuber
上岡正明

MBA(経営学博士前期課程修了)
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者30万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

日経ヴェリタス・東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン・プレジデントの4大経済メディアで専門家として記事連載もおこなっております。お読みになりたい方はこちらからご覧下さい。

①:東洋経済オンラインでの連載記事
②:ダイヤモンドオンラインでの連載記事
③:プレジデントでの連載記事
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