広報担当者の中には、IRという言葉を知っている方も多いと思います。でも、言葉は知っていても、その具体的な内容はよく分からない、という方もまた多いのではないでしょうか。特に、ベンチャー企業やスタートアップした企業で広報を担当される方には、耳慣れない言葉かも知れません。
「IRってなに?広報とはどう違うの?」「IRとは決算報告書を書くこと?」「企業にとって、IRって必要なの?」
このような質問に答えるべく、今回の記事では、このような疑問を持っている広報担当者の方に、IRの基本的知識や定義、その目的や種類について解説していきたいと思います。
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IRとは
IRとは、“Investor Relations”(インベスター・リレーションズ)を略したもので、株主や投資家に対して、自社のフィロソフィ(理念)、経営方針、財務状況、などの情報を開示し提供することを言います。
株主総会や決算説明会などで、自社の経営状況を説明することもあれば、年度末に経営戦略や財務状況をまとめた「アニュアルレポート」を配信することもあります。IRの情報開示は任意で行われるもので、義務ではありません。しかしながら、株主や投資家などのステークホルダーと良好な関係性を構築し維持するために、それぞれの企業は主体的にIR活動を行っています。
広報とIRはどう違うのか
広報もIRも、どちらも関係するステークホルダーに向けて必要な情報発信を行い、良好な関係性を作り、維持するための活動だと言えます。でも、両者の持つ役割には違いがあるのです。その違いについて解説します。
●広報:一般ユーザー、メディアに向けて、企業や自社商品・サービスの情報を発信する。
●IR:株主や投資家、アナリストに向けて、投資に必要な情報を発信する。
このように、広報とIRは情報発信先と、それに伴う情報内容が違うのです。広報活動がメディアやライターなどに向けた情報発信だとすれば、IRはステークホルダーとなる株主や投資家が情報発信の相手となります。
IRにおける広報業務とは
では、広報担当者はどのような業務でIRにかかわるのでしょうか。ここでは、5つの事例について見ていきます。
①発信したIR情報に対する問合せの対応
まず最初は、IR情報を発信した後の問合わせに対して準備することです。IRの発信後は、多くのステークホルダーからさまざまな問合わせが来ることが予想されます。この時、迅速で的確な対応ができるように、万全の体制を整えておくことが必要です。
発信した情報内に入っているトピックスなどへの対応は広報担当者の日常業務に近いものですが、財務や決算などの細かい数字に関しては、速やかにIR担当者の方へ引き継ぐなど、社内で対応ルールを作り、スムーズな連携体制を確立しておくことが重要です。
②発信するIR情報の開示可否を確認する
IRとして発信する広報情報が「開示可」なのか、「開示否」なのかを確認し、決定しておきます。上場企業などにおいては、IR情報の開示について、3つのパターンがあります。
●法定開示
年初や年度末など、企業が決まった時期に定期的に財務報告を行うもの
●適時開示
投資や資金協力に影響する事案を速やかに発信するもの
●任意開示
投資や資金協力に役立つ情報を発信するもの
法定開示、適時開示は、法律や規則に則ったもので、IR活動の主体となります。任意開示は、各ステークホルダーが必要としている情報を発信することで、「アニュアルレポート」、「決算報告資料」などは、任意開示として行われます。
③決算発表資料のチェック
上場企業は四半期ごとに決算発表を行います。その中で、自社の企業情報、財務状況、その背景やトピックスなどを、メディアやステークホルダーに向けて発信します。この時に使用されるのが「決算発表資料」です。内容はもちろん、数字や図表に誤りがないか、広報担当者の視点でしっかりチェックを行います。チェック項目の例としては、次のようなものがあげられます。
●既に発信したプレスリリースと、事実関係や文脈が違っていないか
●記載された数字や数値はアップデートされているか
●発表する時期(タイミング)は適切か
④決算発表会を準備する
決算発表会を行うに当って、さまざまな準備を行います。こうした作業も広報担当者の重要な業務となります。決算発表会には、株主や投資家などさまざまなステークホルダーが出席するので、自社にふさわしい会場、受付対応マニュアル、防犯体制、自身の身だしなみ、など、発表する内容以外にもいろいろな準備が必要となります。
⑤社内における情報管理についてアナウンスする
社内の各部署、各担当者との良好なコミュニケーション作りも、広報担当者の大事な業務です。基本的に、IR情報は社内で共有しますが、開示に関する繊細な内容は必要最小限となる役員間での共有にとどめておくのが良いでしょう。IR情報の開示を社内に伝える時は、「発表会の日時までWebなどでの発信を控えてください。」など、具体的なアナウンスを出すことも必要です。
また、社員が株主であるケースもあるため、万が一にも、インサイダー取引が起こらないよう十分に注意しましょう。
IRにおける広報業務の注意点
それでは、広報担当者がIRにかかわる業務をする時、どうような点に注意すれば良いのでしょうか。5つのポイントに分けて解説します。
①常日頃からIR担当者と情報交換を行う
広報担当者とIR担当者が、普段から情報共有できていることが重要です。共有する情報の内容としては、経営状況や決算の数字や数値だけでなく、その数値に至った事情や背景なども共有しておきたいものです。広報担当者からは、企業情報のメディアへの掲載状況を報告することで、世間からの注目度をIR担当者に伝えることができます。
②適時開示は情報を再確認し、且つ時間を厳守する
IR情報の開示が決まったら、開示の時間を厳守するよう行動しましょう。社内で共有される情報の内容や開示の際の流れなどは、IR担当者と再確認して、段取りを組むことが必要です。
③情報開示前のリークを徹底防止する
適時開示で発信する情報を、事前にメディアなどにリークすることは、法令によって禁じられています。重要な案件を発表する場合には、「適時開示を行なう」という事実だけをメディアに発信しましょう。
④分からない質問は、迅速にIR担当者に引き継ぐ
財務諸表や設備投資に関する数字や数値は、経営の根幹に関係した重要なデータです。対応に自信がなかったり、分からない場合は、迅速にIR担当者に質問事項を引き継ぎましょう。
⑤社内のIR体制は広報主導で構築する
IR活動について、社員の理解を促すことも広報担当者の役割です。発表前の情報流出を防ぐためにも、的確な説明を行うなどして、情報管理を徹底しましょう。
IRの役割は企業の基盤作りである
現在は、IR専門の部署や担当者を設け、IR活動に力を入れる企業が増えてきました。株主や投資家などのステークホルダー、そして社会からの期待に自社の経営や財務状況が応えられるよう、企業は経営努力をすることが必要です。実態が伴ってこそ、初めてステークホルダーや社会からの信頼が得ることができ、IRの目的が達成されると言えるのです。
広報担当者は、IR活動に的確に絡むことで企業情報の正しい発信をサポートし、安定した企業基盤作りを目指してください。