新入社員や、新しく配属された社員に対して、企業はさまざまな研修を行います。そんな中で、多くの企業が採用しているシステムが「OJT」と呼ばれるものです。企業における人材育成という分野では、必ずと言っていいほど導入が検討され、実際に経験された方も多いのではないでしょうか。
しかしながら、しっかりとした計画を立てることなく、現場に新人教育を任せっきりにしたり、まだ知識が不十分なのに、新入社員や新しく配属された社員にいきなり実務を行わせているケースも散見されます。効果的なOJTを行うためには、どのような点に注意したら良いのでしょうか。
今回の記事では、広報担当者として知っておきたい「OJT」のやり方やプログラムの作り方、押さえておくべきポイントなどについて解説していきたいと思います。
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OJTとは
OJTとは“On The Job Training”の略称で、新入社員や新しく配属された社員などに対して、豊富な知識や経験を持った上司や先輩社員が、現場での業務を通して教育と育成を行うことです。座学や研修、テキストだけでは伝わらない実践的な知識や技術を学んでもらうことを目的とし、現場のリアルな空気感や周囲とのコミュニケーションを実際に体感できるのが特徴です。
●Off-JTとの違い
Off-JTとは“Off The Job Training”の略称で、座学や研修など、現場の実務を離れて行われる人材教育を言います。会社の事業方針や担当する業務の意義、業務に必要な知識、業務フローなどを学びます。
業務のコンセプトや基本的な知識を学ぶのがOff-JT、実際の業務に必要なスキルや経験を身につけるのがOJT、と考えて良いでしょう。このOJTとOff-JTを上手に使い分け、組み合わせて実施することが、新入社員や新しく配属された社員の教育・育成に大きな効果を発揮します。
OJTを行う目的とメリット
ここでは、OJTを行う目的とメリットについて、3つのポイントに分けて解説していきます。
メリット①業務全体を体系的に把握することを学べる
OJTは、現場の業務全体を体系的に学ぶカリキュラムで、ただ目の前にある業務をこなすことを目的としません。従って、OJTは業務全体を体系的に組んだプログラムが必要となります。また、OJTは高いハードルやゴールを設定することなく、何度もチャレンジする精神や試行錯誤を繰り返す意義などについても学ぶことができます。
メリット②Off-JTで学んだ知識を実践的に身につけることができる
OJTでは、Off-JTで学習した概念や知識が具体的な体験を通して身につき、業務の早期理解につながります。また、OJTでは、現場で行った業務に対して、すぐにフィードバックを得られるので、業務進行の改善や修正を素早く行うことができます。
メリット③教える側も指導することで成長できる
OJTは新入社員や新しく配属された社員の成長だけでなく、教える側の指導力向上なども促します。指導する側の社員も日々の業務知識を再確認することができ、業務内容や手順を分かりやすく説明するためのノウハウなどを、改めて学習することができます。こうした経緯を経て、指導者は自らのステップアップを行い、将来的なポジションで活かすことができるのです。
OJTを行う際のポイント
次に、どのようにすればOJTがうまくいくのか、についてそのポイントを解説します。
①正しい取り組み方について理解する
OJTは業務全体を体系的に捉えて実施するもので、決して場当たり的に行うものではありません。OJTは、「意図的」、「計画的」、「継続的」という3つの原則に則り取り組むことが重要です。
- 「意図的」とは、OJTの意義と目的を担当者がしっかりと理解・把握していること
- 「計画的」とは、OJTが確固たる指針に基いて計画的に実施されること
- 「継続的」とは、OJTが段階を経て、試行錯誤を繰り返し、反復的に実施されること
②担当者がOJTの重要性を再認識し、意識改革を行う
OJT担当者は、自らの業務と並行してOJT業務を行うケースが多く、大きな負担がかかる場合があります。そのような場合、OJTの意義や重要性をしっかり理解しないまま行うと、どうしても、自らの業務を優先してしまったり、場当たり的に指導してしまったり、という弊害を生んでしまう恐れがあります。こうした事態を避けるために、担当者はOJTの役割や重要性を十分に理解し、OJTという大事な業務を担当する自覚と信念を持つ必要があります。
OJTはどのくらいの期間で実施するのか
では、OJTはどのくらいの期間で実施するのが良いかについて解説します。OJTの期間は企業によって設定が変わりますが、新入社員の研修を例に取ると、短くて2週間、1ヵ月、3ヵ月、長くて半年と言うケースが多いようです。また、OJTの期間は自社の規模や社員教育方針、新入社員や新しく配属された社員のスキルやステイタスなどによって決める場合もあります。
OJTを進める時の4つのステップ
続いて、どのようにしてOJTを進めていけば良いのかを、4つのステップで解説します。
ステップ①ゴールを設定する
OJTの対象となる社員を決めた後、OJTのゴール地点を決めます。期間内に、どのくらいの知識、技術を習得すればいいのかというレベルを設定し、人事部や関係部署の責任者、OJTを行う担当者などの間で共通の認識を持ちましょう。ゴールの設定は行うべきOJTの内容に大きく影響します。
ステップ②計画書の立案・作成
設定したゴールに到達できるように、必要な実習項目を検討します。期間内に実施できるよう、無理のないスケジュールを作成します。OJTを実施していく中で、問題点が生じた場合は、フレキシブルに見直しを図ります。計画書の作成ができたら、社内の関係各部署と情報を共有し、調整や修正を行った後、協力体制を作ります。
ステップ③実施する
いよいよ、計画書に基いてOJTの実施に移行します。OJTにおいては、毎日決まった時間に、フィードバック(振り返り)の時間を用意し、新入社員や新しく配属された社員それぞれの成長度を確認し、疑問点や問題点を質疑応答の中で解消していきます。また、OJTの期間中は、日々、実習の内容や進捗状況を整理し把握して、社内の関係各部署間で情報の共有をしておきます。
ステップ④効果を検証し、振り返りを行う
OJTの全ての日程を終了したら、人事部や当該部署の責任者、OJTの担当者など、関係者を招集して、効果の検証を初めとする振り返りを行います。当初、作成した計画書に定めた知識や技術、スキルなどがゴール地点まで身についたかどうかを中心に検証します。また、同時に、当初策定したゴールや実施方法が適正であったか、なども併せて振り返り、今後のOJT実施に役立てましょう。
効果的なOJTで広報人材を育てよう
OJTは、新入社員や若手社員の成長を促すだけでなく、彼らを指導する担当者のスキル向上と人材育成にも大きな効果があります。つまり、OJTは企業全体のリソースのレベルアップと組織力向上に直結する非常に重要な取り組みと言えます。
優秀な人材を育成することは、企業の力を強化することにつながり、社内の活性化にも効果があります。効果的なOJTを実施して、自社の事業活動の主役となれる優秀な人材の育成を目指してください。