取材記事とは?ひとり広報担当になったら取材記事を上手に使おう!
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2023.04.09

取材記事とは?ひとり広報担当になったら取材記事を上手に使おう!

たったひとりで広報担当者になってしまったら、広報の基本知識の学習や社内のコミュニケーションの再構築はとりあえず自力で行うことができます。

しかし、次に待っているのは外部との折衝や交渉です。とりわけ、メディア関連の人たちとの関係は非常に重要で、今後の広報活動に大きく関係してきます。

そこで今回の記事では、メディアの記者やジャーナリストから取材を受け、自社の情報を記事にしてもらう「取材記事」について解説してみたいと思います。

取材記事って何?

記事

取材記事とは、メディアの記者やジャーナリスト、ライターなどが企業や団体、もしくは特定の人物に取材し、それを記事にしたものです。記者やジャーナリストは、企業や団体が発信するプレスリリースなどを見て、関心を持った事案について取材を行います。こうして書かれた取材記事はメディアに掲載され、広く告知されるため、広報担当者にとっては非常にありがたい広報ツールとなります。

そして、記者やジャーナリストからの取材やメディアへの掲載は無料となるため、コスト的にも嬉しい広報手段と言えるでしょう。ただし、取材記事には、いくつかの特徴と注意点がありますので、まずはそこから見て行きましょう。

 

取材記事を扱う場合の注意点

①記者やジャーナリストは社会にとって価値があるものだけ取材対象に選ぶ

記者やジャーナリストが取材対象として選ぶのは、社会にとって価値があると判断した事案です。企業がプレスリリースを発信したからといって、何でも取材してくれるわけではありません。今、社会で話題になっているものや、生活を一変させる画期的な発明など、社会性があり、なお且つインパクトの強いものが取材対象として選ばれるのです。

従って、広報担当者は、記者やジャーナリストが関心を持つようなプレスリリースを作成し、発信する必要があります。伝えたい情報は変えられないので、プレスリリースの「書き方」が重要になってきます。

②事前に記事のチェックはできない

取材記事は、企業の広報担当者が事前に記事の内容をチェックすることはできません。また、記事が掲載される日時やスペース、レイアウトなども指定することはできません。ごく稀に、記事の掲載後、広報担当者が書いて欲しいことが書かれていなかったというケースも存在しますが、これは、取材時にしっかりと双方でコンセンサスを取ることで解決できます。

また、取材時に広報担当者が話したことと全く違った記事が書かれた場合以外は、掲載記事に訂正や修正を申し出ることはできません。これは、メディア側の編集権を侵害すものとしてみなされます。広報担当者はそこをしっかりと認識しておく必要があるでしょう。

③ユーザーからの注目度が高く、信ぴょう性が感じられる

取材記事は広告と違いメディア本体からの発信となるため、ユーザーからの注目度が高いと言えます。つまり、そのメディアの“お墨付き”を得た情報だと認識されるからです。広告にありがちな「自画自賛」や「手前みそ」がないと考えられているのです。そうした理由から、ユーザーは取材記事には信頼性と信ぴょう性を感じ取ります。「〇〇新聞が言うのだから間違いない」、「〇〇テレビが放送するのだから本当だろう」という具合に、メディア本体のロイヤリティが記事の信ぴょう性を促してくれるのです。

 

取材記事とタイアップ記事の違い

新聞や雑誌を見ていると、一見、普通の記事に見えて、実は、そうではない記事があります。これは、「タイアップ記事」と呼ばれるもので広告の一種です。タイアップ記事は、企業側がメディアにお金を払って、自社の商品やサービスについて書いてもらう記事のことで、「記事広告(記事広)」と呼ばれています。

広告戦略として見た場合、このタイアップ広告は、「ペイパブ」、「ペイドパブ」(paid publicity)のジャンルに属し、通常の記事を装うことで記事情報の信ぴょう性を高めるという狙いがあります。新聞や雑誌の場合、タイアップ記事の場合は、記事周辺に「広告」とか「PR」といった表示が書かれていますが、これらは、なかなか気づかない場所に表示されているので注意が必要です。

 

違法なステマには要注意

タイアップ記事と似たようなものに、「ステマ(ステルスマーケティング)」(stealth marketing)というものがあります。ステマは企業がWeb上で人気のあるタレントや著名人にお金を払い、一インフルエンサーとして、ユーザーに広告と明記せず自社の商品やサービスの利点やメリットを書き込んでもらう行為です。

ステマは、その事実が発覚した時点で、ユーザーから非難を受け、仕掛けた企業は社会的信頼を失うことになります。これは、マナーやモラルの問題であると同時に、ユーザーを欺く違法行為としてみなされるので、広報担当者としては細心の注意を払わなければなりません。

 

取材を受ける時の注意点

記者やジャーナリストからの取材を受ける時は、準備・取材中・後日のフォローなど、様々な対応が必要となります。

●取材前

取材依頼が来たからと言って、手放しで喜ぶわけにはいきません。まずは、取材依頼の主旨が自社にとって有益となるか、そして、そのメディアが社会的に信頼できるものか、その情報を発信するタイミングが今なのか、などを考慮して取材に応じるかどうかを決定します。取材される人や取材場所は、メディア側からの要望をなるべく取り入れるよう考慮します。(取材対象人物、場所、背景、撮影の有り無し、など)

●取材時

取材当日は、準備した書類やデータなどを用意し、自分の服装チェックをして、取材に臨みます。記者やジャーナリストの質問に制限をかけてはいけませんが、分からないことは分からないとハッキリ言いましょう。また、答えられない質問に対しては、なぜ答えられないかをしっかり説明することが大事です。取材の様子は、こちらでも録音、録画などを行い、記録をとっておくのも忘れてはいけません。

●取材後

メールや電話などで、取材のお礼とご挨拶をします。そして、取材があったことを社内に告知し、取材の様子なども伝えます。また、記事が掲載されたら、記事の内容が間違っていないか、手元の取材記録と違っていないか、などをチェックします。もし、記事の内容に間違いがあった場合は、速やかに連絡を取り、双方で解決策を相談します。

 

まとめ

「取材記事」は、広報担当者にとってとても重要な広報ツールとなります。記者やジャーナリストと円滑な関係性を築いて、「取材記事」を上手に使えるようになれば、もう、怖いものはありません。

今回は、取材記事について解説してみました。取材記事は信頼できるメディアが発信する情報で、メディアから見た評価や感想も入っているため、比較的客観性の高い情報と言えます。従って、取材記事はユーザーからの信用度も高く、広報ツールとしては非常に効果的なものと言えます。

しかも、無料なので、コストの面においても、願ったり叶ったりのツールです。「ひとり広報」でも落ち込むことなく、記者やジャーナリストの関心を引くようなコンテンツ(商品やサービス)を探し出し、取材記事をツールにして、効果的な広報活動を展開してください。


執筆者・監修者
上岡正明
経済記者・経済コメンテーター
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者25万人のYoutuber
上岡正明

MBA(多摩大学院経営情報学修了)
テレビコメンテーター
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者24万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

日経ヴェリタス・東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン・プレジデントの4大経済メディアで専門家として記事連載もおこなっております。お読みになりたい方はこちらからご覧下さい。

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