あなたが新設された広報部に転属になったら、どうしますか。しかも、部員はあなたひとり。自分に広報の知識がないだけでなく、新設の部署なので、先輩もいない、活動実績もない、当然、申し送り書もない…。
もう、どうしていいか分からなくなってしまいますね。でも、大丈夫です。まず、「広報とは何か」を書籍などで学習してください。世の中にはたくさんの文献がありますので、そこから知識を得てください。そして、今回は、そんな「ひとり広報」でもできる大事な業務「ヒアリング」について解説したいと思います。広報活動を始める時、その出発点として、「ヒアリング」は非常に重要な業務となるのです。
当記事は、広報担当者が就任したばかりで、最初に何を行うべきか。経験をもとに手順と心得を解説します。
未経験から社内広報になったら?
広報活動の最終目的は、会社が目指す目的と一致していなくてはなりません。会社が目指す目的や方向性を決めるのは、社長であり経営陣です。となれば、広報活動は社長や経営陣のビジョンに沿ったものでなければなりません。
日々の業務の中で、何となく会社の目指す方向性や目的を理解しているつもりでも、実はそれが微妙に間違っている場合もあります。そうした危惧をなくすためにも、会社の目的や方向性について、改めて、社長や経営陣に詳しくヒアリングし、再確認し、言葉にして整理することが広報の最初の任務となります。社長や経営陣へのヒアリングなくして広報業務は始められないと言っても過言ではありません。
広報の初仕事は社長・経営陣へのヒアリングから!
ヒアリングは、直接、社長や経営陣とマン・ツー・マンで会って話を聞くのが一番です。が、その前に、予備知識を得るために、次のことをやっておくことをお薦めします。
●経営会議に同席させてもらう
経営会議では、会社の今後の方針や課題、問題点が話し合われます。良いところも悪いところも含めて、会社の現状を理解することができるのです。そして、そこでは当然、社長や経営陣の思い描くビジョンが明快に示されます。経営会議で出た情報を例に出しながらヒアリングをすれば、より具体的な話を聞くことができ、話がスムーズに進みます。会社の目指す方向性や目標を知ることは、今後の広報活動の基本中の基本です。まず、それを理解しないと、広報活動は始められません。
ただ、経営会議に参加させてもらえないケースもままあります。そんな時は上司の方にお願いして議事録を見せてもらうのもいいでしょう。
●事業計画書を見せてもらう
新年度や決算期など、キリのいい時期に出されるのが事業計画書です。事業計画書には、現在の市場状況から、売上・利益の数字、会社が抱えている課題や問題点、そして短期、長期に渡る会社のビジョンが反映されています。
ちなみに、短期の達成目標と長期の達成目標を把握していれば、広報活動の頻度やタイミングなどを計画的に作成したり、調整することができます。経営会議と同じく、これらの情報を事前に取得しておけば、社長や経営陣へのヒアリングも、より効果的で内容の濃いものになるでしょう。
では、社長や経営陣へのヒアリングでは何を聞けばいいのでしょうか。以下、重要と思われる項目を5つあげてみました。
ヒヤリングでは何を聞けばいいのか
①「何を目的として」広報活動をするのかを聞く
今後、会社が力を入れたいことや解決したい課題などを聞きます。具体的には、売上を〇〇まで伸ばしたい、とか、技術系の社員を〇〇人まで増やしたい、とか、〇〇に新工場を設立したい、とか具体的な目的を聞き出します。また、会社の認知度を上げたい、とか、イメージアップを通じてブランディングをやりたい、など大いなる夢や希望も聞ければいいでしょう。
②会社の現状と次年度の方針を聞く
目的が明解になったら、次は会社の現状が、目的地までどのくらいの距離にあるのか聞きます。現在、売上目標の半分の地点なのか、あと少しで到達するのか、技術系の社員は今何人いるのか、目標まであと何人なのか、などを確認します。目標までの現在地が分かれば、それに即した広報計画を組むことができ、短期では達成できない目標は長いスパンで考えることができます。そして、これらの目的達成のために、次年度はどんな施策を考えているのか具体的に聞いておくことも重要です。
③期間を設定して、広報活動のゴールを決める
1年後なら1年後と一定の期間を定めて、その時、どのような成果が達成できたら広報活動がうまくいったと評価するか、を決めておきます。新製品の売上数字が達成できていない時、プレスリリースは十分に配信できたか、新卒採用で応募者数が達成できなかった時、どのようなイメージ戦略を行ったか、など、1年後のゴールが決まっていれば、広報活動の優先順位やバランス配分の検証が可能となるのです。
④ターゲット層を明確に設定する
これは、当然のことかも知れませんが、広報活動をする場合、どの層に向けて情報発信をするか、ターゲットを設定しなければなりません。イメージアップやブランディングなどの場合はオール・ターゲットになりますが、販路を拡大したいと思えば、ターゲットは卸売り業や流通業の担当者(責任者)となります。ここで重要なのは、これらターゲットの選定を社長や経営陣としっかり共有することです。ターゲットが違えば広報手段も違ってきます。使用媒体も含めて、ここは確認しておきましょう。
⑤時代に即したインターネットの提案も
もちろん、ヒアリングは相手にインタビューして話を聞き出すのが目的ですが、社長や経営陣の方が年配の方だった場合は、最近の社会情勢(トレンド)などを説明してあげることも大事なことです。例えば、最近、主流になりつつあるインターネットを利用した広報活動はターゲットを絞りやすく、また、あまりコストもかからないので、非常に効果的な施策と言えます。
社長や経営陣は、自分の知らないものにはなかなか理解を示しません。インターネットの仕組みや効力を知ってもらい、社長や経営陣と情報共有することで、幅広い広報活動が展開でき、適切なメディアミックスが行えるのです。
広報担当者の初仕事の注意点
なお、ヒアリングには、社長や経営陣に聞くものだけでなく、社内の現場の担当者などに聞くものがあります。現場の担当者や責任者にヒアリングするケースは、訴求内容が商品やサービス、キャンペーンの場合が多いのですが、こちらは現場のナマの声がヒントとなって、思いもよらないキーワードやエピソードを聞き出すことができ、それを情報発信の際に活かせることがあります。こうした現場の声はユーザーたちに共感や親近感をもたらし、ひいては会社のイメージアップにつながります。
まとめ
キーパーソンにしっかりヒアリングすれば、ひとりで広報担当者になっても大丈夫。情報発信する業務は、まず情報収集から。広報の第一歩は情報収集です。とりわけ、会社のビジョンやコンセプトを作り上げた社長や経営陣へのヒアリング(情報収集)はとても重要な業務と言えます。
こうしたプロセスを踏んでおけば、広報活動にブレがなくなり、広報として行うべきことや方向性もハッキリ見えてくるのです。こうしたヒアリングで得た情報を基に、自分のクリエイティビティやアイディアを活かすことができる「ひとり広報」は、非常にやりがいのある仕事だと言えるのではないでしょうか。