広報活動の効果測定とは?8段階の具体的な方法とプロセスをわかりやすく解説!
PR戦略とは
3分で分かる「PRの基本」
2020.03.14

広報活動の効果測定とは?8段階の具体的な方法とプロセスをわかりやすく解説!

広報の仕事をする際には、まず「目標」を決める必要があります。さらに、目標に対する効果測定も大切です。

もちろん「いつまでに作業を終わらせる」など、個人的な目標を立てるのも大事です。しかし、ここでは広報を手段として「世間にどう思われたいか」というイメージ戦略や、KPIタイプの効果測定についてお話していきます

「広報の仕事」は究極的に言えば「世間からの印象をコントロールすること」ですからね。では、その目標設定は具体的にどのように進めていくべきなのでしょうか。

 

広報の目標設定では「経営方針」はあまりアテにならない?

引用画像_効果分析の風景

目標を決めるにあたって、社訓や経営方針を見直すことは大事です。広報担当である以上はあえて勉強しなくても知っておくべきですが、改めて確認しておきましょう。

では、社訓や経営方針を理解できたら、それを達成できるような目標を立てればいいのでしょうか。
いいえ、それは違います。

「経営方針」は社長が決めたはずですが、「文章」にするにあたって、実際の気持ちとズレてしまう可能性が高いです。言いにくいことですが社長の文章力が低ければ、本当の想いとはかなり違うものになるかもしれません。

ですから広報目標を決める際は、必ず社長に改めて話を聞いてください。

■社長へのヒアリングのコツは主に2つ

では、社長へのヒアリングをする際のポイントを2つ紹介していきましょう。

○1:「広報目標を決めたいのです」と素直に伝える

いきなり、「ちょっとお話を聞かせてください」などと言っても混乱させてしまうだけです。
それに、必ずしも社長が候補担当の仕事を理解しているとも限りません。
ですから、「なぜ話を聞きたいのか」をハッキリ伝えるためにも、「広報目標を決めたいのです」と明確に言いましょう。

この際、「広報目標ってなに……?」などと、意地悪でなく本当に疑問に感じた上で質問される場合もあるので、分かりやすく説明してあげてください。

このやり取りに限った話ではありませんが、社長とのコミュニケーションにおいて「駆け引き」は交えないでください。
「社長の気持ちを常に聞き出せるだけの信頼関係」がなければ、広報の仕事は成り立ちませんが、その信用を勝ち取るのは「誠意」です。

会社の他のスタッフに対しては、率直に言って駆け引きが必要になる場面もあるかもしれません。
ですが、社長だけは別物だと考えてください。

○2:「経営方針を聞かせてください」とは基本的に言わない

「経営方針を教えてください」とは言わないようにしましょう。
なぜなら、社長としては「経営方針」はもう十分に社員に伝えているつもりだからです。それなのに改めて経営方針に関して質問しようものなら、信頼を失ってしまうことでしょう。

ですから、「消費者にどのような印象を持ってもらいたいのか」「会社をどのように変化させていきたいのか」などと聞くようにしてください。これなら、広報担当者として知りたいことを質問しているだけですから「駆け引き」にはなりませんよね。

しかし、「会社の品格を求めているユーザーがいたら、どう対応しますか」「社風を色に例えると何ですか?」など、社長を品定めするような質問したり、心理テスト染みたことを言ったりするのはNGです。
それらは駆け引きに他なりませんし、「言われる立場」になれば分かりますがイラっとするだけです。

そして、上手い言い方が見つからないのであれば、
「経営方針を改めて熟読しました。広報担当の立場から、この経営方針を深く掘り下げる質問したいのですがよろしいでしょうか?」などと展開していくのも一つの手です。

とにかく「経営方針についてはしっかりと理解しています」という態度を示すのが重要です。

■広報目標が決まったら社長に確認してもらいましょう

広報目標が決定したら必ず社長にチェックしてもらってください。社長の確認を通さずに公にしてしまったら、ヒアリングをした意味がなくなってしまいますよね。

そのとき社長から修正が入るかもしれませんが、「社長の観点」と「広報担当の観点」は違うので、やみくもに受け入れないようにしましょう。

言いにくいかもしれませんが、「いえ、これは広報のイメージ訴求なのでわかりやすさが大事です。変えないほうが良いと思います」だとか「言っていることは双方同じですが、原案のほうが読みやすいです」などときちんと伝えてください。

会社のトップである社長です。それくらいでヘソを曲げるはずがありません。むしろ、言うべきことはきちんと言ったほうが信頼されます。

この確認作業が完了したら、広報目標が晴れて決定したことになります。最後に「広報目標の使い道」を改めて伝えましょう。

■広報の目標設計は信頼の第一歩

この「広報目標決め」は、あなたが広報担当になってかなり早い段階で行うことになるはずです。そのため、まだ社長との信頼関係ができていない時期に進めていくことになるかもしれません。

しかし、ここを乗り越えることができれば信用を得ることができて、広報の仕事が一気に楽になるかもしれません。
頑張ってくださいね。

 

広報活動の効果測定の具体的な方法とは

情報拡散の効果測定イメージ

広報の効果測定というのは非常に難しいものです。多くの手法がありますが、私が考える代表的な方法は次の3つです。

1)アウトプット
2)リーチとエンゲージメント
3)行動変化指数

具体的に見ていきましょう。

■1)アウトプット

1つはアウトプットです。これはメディア露出の「質」と「量」で判断する方法で、もっともスタンダードなやり方です。

■2)リーチとエンゲージメント

それから影響度で判断する方法があります。記憶にとどめる、関心を示してもらう、好意的なイメージをもってもらう、などの一般的には到達率(リーチ)と関係性(エンゲージメント)の2指数で計測します。正確に把握する場合はインターネットアンケート調査で定点観測します。
ネット調査を利用すれば、比較的安価で調査設計から実施ができるでしょう。代表的な調査会社は次の2社になります。

・マクロミル
・インターネットリサーチ

■3)行動変化指数

あとは、どれだけターゲットの行動を変えることができたのか。たとえばWEBサイトに誘導させて、実際の問合せ(コンバージョン)の向上にどれだけつながったのか、などの行動変変化を指数で判断します。以上の3つが効果測定の主要なポイントになるのではないかなと思います。

 

広報PRの効果測定活動の5段階

広報の効果と再目標を企画する女性

広報PRの効果測定プロレスについて、こちらも5段階にわかれます。

最初のフェーズは「情報の収集」です。PR活動の基盤を固めるために、情報を集めてデータをそろえる。競合を調査して自社軸と比較した強み弱みを調査する。

次に「目標の設定」です。PRの目標をグランドデザインします。

3つ目のフェーズは「戦略とシナリオプランニング」です。どのような時期に、どの程度の予算と人員をさいて戦略の実行をおこなっていくか。この具体的な戦略策定が広報PRの具体的な成果を決めます。

さらには「中間地点での効果測定」も必要です。今実行している計画は間違っていないのか。現行のキャンペーンは有効なのか。どのぐらい露出したのか。先程紹介した効果測定の3軸に照らし合わせながら、リーチ率や質や量、ターゲットの行動変化を基準に評価していきます。

最後に「改善活動(PDCA)」のフェーズに落とし込み、新たな情報を収集して行きます。つまり、また最初のフェーズに戻るわけです。

■効果測定後の評価や改善のコツは?

このときの改善フェーズにもポイントがあります。

まずは、「課題を分析」することです。戦略とシナリオプランニングのフェーズで行った広報戦略のスケジュール策定や、本書でこれまで紹介してきたキャンペーン文脈、メディアキャラバン、プレスリリースの内容や書き方に問題はなかったのかを見直します。

次は、「目標の分析」です。本当にその目標で合っているのか、ということを検証します。今一度、ターゲットや消費者の行動心理を深く掘り下げて、目標に到達する道のりを再定義します。

あとは「ターゲットを分析」しましょう。リーチする、あるいは関係性を構築する、そのターゲット選びを間違ってないのか。ターゲットが変われば、当然メディア露出の優先度やリリースする文脈も変わってきます。ターゲットの改善の重要度は極めて高いわけです。

■創造的な活動ができているか?

さらに、私の意見としては、ここに「創造的な活動ができているか」の分析をすることもお薦めします。

失敗を恐れるあまり、これまでの延長上の広報PRしかできていないのであれば、もっとイノベーティブな情報で世の中を動かしていけたかもしれません。そうした創造的で視点で、たえず自分たちの活動を振り返りましょう。これまでの延長の活動は、いわば水平展開でしかありません。過去の経験が活用できるため、失敗は少ないかもしれません。しかし、新しい成功体験や顧客創造にはつながりにくいものです。

むしろ、創造的な活動を含めて、すべてを垂直に統合した具体的な改善プランにもう一度現場に落とし込んでいく。
最後にこれらを組織的な活動、組織的な変化に紐付けて「結果の総合的な分析」をおこなってください。

以上が、私が考える「評価と改善」になります。この6軸をすべて最初から完璧におこなえる必要はありません。最初から100%の広報PRの体勢構築など、私たちスペシャリストでも難しいことです。まずはできるところから始めて、気づいた部分から対処していけばいいのではないかと思います。

 

効果測定後の再実行プロセスの4評価

広報の効果測定

広報のプロセスを分析は、「成功」「継続」「失敗」の3段階で評価をして判断します。

また、測定をするときに大事なのが、競合分析も同時におこなうことです。複数の競合をしっかりとベンチマークして、どんなコミュニケーションで広報PRを実施しているのか。どのような文脈でプレスリリースを発信しているのか。どんなメディアに露出をしているのか。どのようにSNS運用をして消費者や生活者の接点を構築しているのか。これらを定点観測でリサーチする必要があります。

・どんなコミュニケーションデザインで広報PRを実施しているか
・どのような文脈でプレスリリースを発信しているか
・どんなメディアに露出をしているか
・どのようにSNS運用をして生活者の接点を構築しているか

どんなに小さな露出でも、競合よりもインパクトが高いのであれば市場での価値が高まって、その後、あなたの会社や商品が選ばれる理由になるかもしれません。
特にB to B企業の場合は、競合としっかりと差別化を図るという「大戦略」がなければ、広報PRを活用してシェア拡大や顧客のスイッチングを狙えません。
また、そうした状況下で戦略的な広報PRを行うために、競合の影響力や発信頻度に合わせながら伝達するべきメッセージ、情報の扱い方、攻めるべきメディアやターゲットというのも変えていく必要があります。

■広報活動の再設計の具体的な設定方法

効果的な評価は適切な目標を設定するところから始まります。

もちろんターゲットや消費者に対しての目標もそうですし、競合に対してどのような差別化を行うかという目標もそうです。社内での意思疎通、活動の効果性や効率性、メディアキャラバンやリリース配信の生産性を高めていくための目標という視点もあります。

そうした目標のグランドデザインの上に、広報PR活動の計画・評価・実行・改善をマッピングするように置いていくのが良いわけです。そうした意味では、広報PRという仕事はマネジメント(管理運営)という機能も備わっている必要があります。とくに広報PRのマネジメントで最も重要なのが優先順位(プライオリティ)を付けるってことです。

■優先順位を決めよう

優先順位は可能な限り数値化して、明確に理由を説明できるように準備しておきます。加えて、それらの現実可能性も十分と検討されていなければなりません。

広報PRというのは広告と違って、本書で紹介した手法をもちいてイノベーティブで奇抜な着眼点やアイデアを考えようすると、いくらでもできてしまうものです。なので、現実性があって、生活者や社会に役に立つ情報という「本軸」をずらさないように、しっかりと実現性や効果性などの優先順位を評価する必要があるのです。

■広報PRの目標設計や効果測定の代表的なフレームワーク

こうしたときに、フレームワークがあると非常に効果分析がしやすくなります。フレームワークというのは、ものごとが抜け漏れなくダブりなく、また経験を問わず誰でもシンプルにおこなえるワークツールのことです。

私が広報PRを初中級者に教える場合は、本書ですでに紹介した「情報開発の8×3のフレームワーク」をレクチャーしています。

■アイデアの実行プロセスではSMART(スマート)を活用

また、アイデアの実行プロセスではSMART(スマート)を活用すると良いでしょう。SMARTは次の英字の頭文字を取った言葉です。具体的であること、測定可能であること、達成可能であること、現実的であること、適切であること、標的を定めること、期限を定めること。これら5つで構成されたアイデアを評価するフレームワークです。

※参考リンク:3分で理解できる広報とは?きちんと説明するよ

 

まとめ 益々高まる広報の効果測定の重要性

ファンの育成イメージ

情報をつくって、届けて、広げていく。そして、最終的にはターゲットに行動を促して売上向上やブランドとのタッチポイントを創出していく。これが広報PRの最終的なゴールだと思っています。だから、情報の伝わりやすさ、理解のしやすさ、あるいは競合との圧倒的な違い、というのは非常に大事になるわけです。

たとえば、内閣府の発表によるとインターネットそのものの接触時間が急激に伸びています。接触回数を合計すると、私たちは1日に約5時間から6時間もなんらかの情報と接触している計算です。

新聞やテレビなどのオールドメディアだけではありません。スマートフォンを介したネット上のコンテンツ、FacebookやInstagram上のコンテンツや広告。なかでもYouTubeなどの動画コンテンツなどは、中高生を中心に1日平均2時間以上も見られているというデータさえあります。こうした「人」の動きに合わせて、広報PRや広告のあり方そのものも、ものすごいスピードで変わってきています。

■マスクチPRで切り抜けろ

こうした流れをしっかりと受け止めて、メディアがメディアを呼ぶ動線、人が人を呼ぶ動線、そして、メディアが人を呼ぶ動線、この3つの軸を事前にしっかりと考えていくことが大事です。
つまり、究極のところメディアを介して生活者と繋がっていく、ということ。これを、私たちは「マスクチPR」と呼んでいます。マスコミを介してクチコミやタッチポイントを誘発するというイメージです。これが成立したとき、はじめて販売促進やプロモーションをしなくても十分にターゲットにコミュニケーションできる状態をつくりだすことができます。

■個の情報発信力が高まっている

これからの時代、モノ(物質)からは関係性は生まれないと思ってください。情報から関係性が生まれていきます。特に情報をつくり出したプロセスから生まれてくると思ってください。
時代は大きな過渡期を迎えています。ほんの一昔前まではSNS、なかでもTwitterやFacebookをメディアと呼ぶ人はいませんでした。それが今や誰もがSNSはメディアだと言います。それだけ「個人」が持つ情報発信力、「個人」が与える影響力というものが高まっているわけです。

そう考えると、個人である消費者が関わっている全ての情報源がメディア化しているといっても過言ではありません。プロとアマチュアの境界線もどんどんなくなってくると思います。

すでにYouTubeはテレビに次ぐ映像メディアとして台頭をはじめており、そこでは芸能人よりも高い影響力を持つYouTuberが活躍しはじめています。いずれ、YouTubeがテレビタレントよりも上位にくる時代がきてもおかしくはありません。昭和の時代に、銀幕のスターがテレビのお茶の間のタレントに取って代わられたように、です。

■新しい時代の効果測定は複雑化へ!あなたの周囲をメディアに巻き込め

なぜ、そう思えるのか。それはYouTube動画が視聴年齢や男女などのターゲティング、さらには広告のリーチ率などの効果測定をリアルタイムでチェックできるからです。すでに70年以上が経過したテレビは、いまだにそれができません。

当然、テレビディレクターや記者と、個人の情報発信者との境界線もあいまいになっていくでしょう。そうした考えで見ると、もう『お客さまを囲い込む』という考え方そのものが古いと判断したほうがいいでしょう。むしろ、お客さまと手を取り合う、お客さま同士をつなげていく、と考えたほうがしっくりきます。


執筆者・監修者
上岡正明
テレビコメンテーター・経済記者
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者25万人のYoutuber
上岡正明

MBA(多摩大学院経営情報学修了)
テレビコメンテーター
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者24万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

日経ヴェリタス・東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン・プレジデントの4大経済メディアで専門家として記事連載もおこなっております。お読みになりたい方はこちらからご覧下さい。

①:東洋経済オンラインでの連載記事
②:ダイヤモンドオンラインでの連載記事
③:プレジデントでの連載記事
④:日本経済新聞での連載記事