社内広報とは?社外広報との違いや「導入事例」の取材ポイントまで
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2023.02.18

社内広報とは?社外広報との違いや「導入事例」の取材ポイントまで

「広報活動」は社内広報と社外広報の2つがあります。そして、活動としてすぐには思いつきにくいの一つに「導入事例の取材」「ユーザーの声を集める」「採用のための社員インタビュー」があります。

広報担当者になって日が浅い方の場合は「そもそもユーザー取材って?」「なぜ必要なの?」という感覚になると思います。
そこで広報活動の大切な要素である社内広報活動について、今回は詳しく紹介させていただきます。

*こちらも人気:PRと広告の最大の違い知ってる?現役記者が解説

*記事を書いた人:「めざましテレビ」「王様のブランチ」元放送作家

 

社内広報とは?広報活動には社外広報と社内広報がある

社内広報活動をする女性イメージ

私が考える広報活動は、主に2つあります。種類といっても2つは重なり合い、密接に絡み合っています。

◎広報活動① 社内広報

広報の仕事のひとつに、自社商品やユーザー、あるいは社長や社員にスポットを当てて外部に発信する「社内広報」があります。

社内広報のメインの業務は、社員のモチベーション喚起や会社へのロイヤルティ向上にあります。そのために、社内報やSNSを活用して情報の共有をおこないます。
社内報は昔は紙の冊子がメインでした。しかし今では、デジタルで冊子やメールなどで行われる場合もあります。記事は広報みずからが行う場合と外部ライターに委託する場合にわかれます。

◎広報活動② 社外広報

社内のPR会社的な機能として行うのが社外広報です。
社外広報の目的は、メディアを介して商品やサービスを広く世の中に知ってもらうこと。あるいは、広告を使わずに世間でのブランド認知やイメージ向上、マーケティング複合型に連携。そのコミュニケーションデザインをおこないながら売上向上やファンの育成をおこなうことです。

場合によっては記者会見や新商品のイベント、店舗オープンのレセプションなどを企画・運用します。これらをまめて報道メディアや記者クラブにリリースします。PR会社を使わずに自社で行う場合には、そのためのプレスリリース作成やメディアキャラバンも重要な仕事になります。

 

社内広報の目的は「あなたの会社の利用者やファンのこと」

ファンの育成イメージ

結論から言いますが、広報活動はあなたの会社のファンや利用者を増やすことです。
広告を介さず「知っている層を増やす活動」とも言えます。

◎社内広報の必要性

ユーザーというのは「お客さん」「購入者」「利用者」のことです。目線を変えれば、あなたの会社に入りたい学生や転職者も含みます。
また、広報の「ユーザーの声を集める」というのは「取材を受け入れてくれるお客さんを集める作業」のことです(正式名称などではありませんが私はそう呼んでいます)。

最近、広告的な手法はますます信用性が低くなり、ユーザーに対する影響力も低下しています。そうしたなか、広報活動の重要性・効果性がますます注目を集めています。

◎社内広報で「ユーザーの声集め」はなぜ必要なのか

いっぽう、テレビやメディアの視聴者や、新聞などの読者も「商品やサービスを利用した人のリアルな感想」を求めています。
「商品やサービスを開発した人の話」も必要ではありますが、「素人の意見」も好きなんですよね。「好き」でもありますし、第三者の感想のほうが信用できるということもあります。

実際、パブリシティなどで「話を聞くことのできるユーザーはいませんか?」という要望が出る場合があります。

このときに「あ、すぐに確保できますよ」と返答できれば、好感度がかなり上がります。
また、今後似たような機会があった場合も「あの企業の広報担当者なら、確実にユーザーを用意してくれる」と判断して、また声をかけてもらえるかもしれません。

ちなみに「ユーザーが欲しい」という要望が出てから、対応をスタートさせるようでは絶対に間に合いません。何とかしようとしても時間の無駄になるだけなので、素直に「今から探しますので、1週間ください」「見つかりませんでした」と言いましょう。

*参考サイト:ギリギリで利用者が見つかりテレビ露出が決まったアルカディア・イーエックス様の事例

◎社内広報の「ユーザーからの口コミ」にはどれくらいの価値があるの

つまり、「利用者の口コミ(感想)を見たい」と考えている人がかなりいるということです。
ただ、「そんなに多くの人が口コミに左右されるのか……?」と、イマイチ「口コミ」というものの存在価値を信じることができていない人もいるのではないでしょうか。

かく言う筆者も、実は他人の口コミを信用することはほとんどありません。「結局、自分が欲しいと思えるかどうか、好き(嫌い)と感じるかどうか」という意識になってしまうんですよね。
私と同じような感覚をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。

◎ユーザーレビューやクチコミの影響力は年々増加

しかし、実際には、口コミというものには一定以上の価値があるのも事実です。某アンケートにおいては、80パーセント程度の人が「商品やサービスを選ぶときに口コミの影響を受ける」と述べています。
さらに、約40パーセントの人が「買うかどうかの最終判断を、口コミをもとにして行う」と語っています。

また、約70パーセントの人が「1回以上口コミを頼りにして、買うかどうかを決めたことがある」と述べているとのこと。さらには、「口コミは基本的に信じる」という人が80パーセントを占めています。

こういった「『口コミ』というものに関する意識調査」は、色々なメディアが何回も行っています。調査方法もありますが、おおよそ上記のような結果になっています。

◎購入前に意外と読んでいる?

また、「口コミも含まれる記事」の場合は、「口コミにそれほど影響を受けることはなくても、他人の口コミを見るのは好き」という人もターゲットにいるでしょう。よって、口コミの存在意義はより上がると言えるわけです。(筆者も口コミを読むこと自体は嫌いではありません)

ですから、「口コミなんて嫌い」と内心で思っている広報担当者が存在しても、「そもそも口コミに意味はない」と考えている広報担当者がいるとすれば、それはマズいです。

 

社内広報でユーザーの声を集めるための方法は主に2つ

広報活動の取材イメージ

「ユーザー集めも広報担当者の仕事である」という事に間違いはありません。
しかし、どちらかと言うと「集まったユーザーの調整」「ユーザー取材の段取りを組む」などこそが、広報担当者がすべきメインの作業であると言えます。
「ユーザー集め自体」については、メディアやSNS運用を行いながら、他部署や一部広告代理店などにも協力してもらい進めていきましょう。

では、具体的な方法を見ていきましょう。

1:販売スタッフや営業員を頼る

販売スタッフや営業員は、ユーザーと実際に関わる機会が多いですから協力者としてピッタリです。
「購入者をメディアに出す」という事ができれば、販売スタッフや営業員の評価も上がるような制度を設けるといいでしょう。そうすれば、現場で拒否されることはあまりありません。

昔ほど「テレビに出演すること」が重要視されない時代になったとは思います。
しかし、それでも「メディアに出るのが嬉しい!」と感じてくれるユーザーは現代になっても案外多いものです。
ですから、案外、苦戦せずにユーザーが集まっていく可能性が高いです。

ただし、メディアが「どんなユーザーでも構いません」と言ってくることは、まずありません。
ほとんどのケースで条件を厳しく指定してきます。
ですから、氏名、住所、職業、年齢、家族構成……などを記入してもらうための「ヒアリングシート」は広報担当者が用意するのが得策です。

ヒアリングシートをきちんと作りこんで、「あとは色々な人に声をかけるだけ」という状態にしておけば、販売スタッフや営業員にも喜ばれるはずです。
また、言うまでもありませんが、販売スタッフや営業員に個人情報保護の徹底をお願いしてください。

2:購入者が集まるイベントを作る

あとは、業種にもよりますが「試食会」「試乗会」「新作発表イベント」など、ユーザーが大勢に集まるようなイベントを行いましょう。

そして、その場でアンケートに答えてもらいつつ、「今後、取材に協力してもらえるでしょうか」などを聞いてしまえばいいのです。
名刺も渡しておけば、後で取材の申し込みをしたときも受け入れてもらいやすくなります。

もちろん、他の部署が主催するイベントに参加することのほうが多くなるでしょうが、
場合によっては広報担当者がみずからコミュニティ・イベントの発案をすることも視野に入れてください。

*参考リンク:イベントを企画したらリリースを!戦略的プレスリリースのすべて

 

社内広報で広報担当者がすべき3つのこと

広報活動の効果検証イメージ

1:取材OK・NGのラインをきちんと把握しておく

年齢、氏名、家族構成……などの基本的な情報だけを聞けばいいわけではありません。
取材を受けてもらうわけですから、

  • 実名公開はOKか
  • 顔出しはOKか
  • 家族構成や他の家族も一緒に取材を受ける(顔を出す)のはOKか
  • 取材に応じられない曜日や時間帯はあるか

などのこともきちんと聞いておきましょう。
これも、先ほど紹介したヒアリングシートの項目に入れておくと良いでしょう。

「ユーザーを紹介することができない」ことよりも「条件を満たさないユーザーを紹介してしまう」ことのほうがよほどマズいので気を付けてください。一回でもこの手の間違いをしてしまうと、そのメディアから縁を切られてしまうかもしれません。

また、場合によっては「条件的な余裕をもってユーザーを紹介する」ということも考えましょう。

ただし、「30代のユーザーが5人ほしいのですが」などと聞かれたのであれば、今度は「ギリギリの年齢」の人もいないと不自然かもしれません。そして、可能であれば例えば「31歳、33歳、34歳、37歳、39歳」という感じでバラつきを持たせましょう。

2:ユーザーの個性をある程度把握しておく

特にテレビや大手雑誌などに出てもらう場合は、そのユーザーの個性も大事になります。
本当に元も子もないことを言ってしまえば、テレビなどは、やはり美男美女を優先して取材したがります。そのほうが興味を引きやすくなりますからね。

また、「話下手な人」や「不誠実な人」も避けるべきです。
直接話す機会があれば、話下手かどうか、不誠実かどうかもある程度分かると思います。
ですが、必ずしも顔を合わせて話ができるわけではありませんよね。ですから、ヒアリングシートの中に「○○字以内で商品の感想を自由にお書きください」などの欄を設けておくことをおすすめします。

例えば「300字以内で~」と指定しているのに、一言二言しか書かないような人は取材にもあまり真剣に応じてくれない恐れがあります。また、取材の約束などをすっぽかされてしまう危険性もあります。

そして、「文字数としては申し分ないが、話があまりにもまとまっていない」という人は、先ほど言った「話下手な人」かもしれませんので、取材を受けてもらう優先順位を下げましょう。

ただし、少しくらい話が飛んでいたり、単純に「てにをは」がおかしかったりするくらいであれば問題ありません。取材をする側もプロですから、どうにでもなります。
それに、「文章作成が上手い人」というのも実はなかなかいないものです。選り好みをし過ぎると、紹介できるユーザーが残らなくなってしまいます。

3:謝礼や公平性の維持

あとは企業の規模にもよりますが、「(メディア露出的な意味での)お得意様ユーザー」をできるだけ作らないようにしましょう。

同じ人に何回も頼んでいるようだと「こういう言い方が求められているな」「できるだけ褒めたほうが良いんだろうか」などと、余計なバイアスがかかってしまう恐れがあります。

撮影や取材は時間も工数もかかります。協力してくれた方には、せめてご家族含めた拘束時間を時給換算した謝礼や、試供品や最新製品を無償提供するなどとすると、次も協力してもらいやすくなります。とうぜん、交通費もお支払いします。

ただ、これも公平性を保つことが目的ですが、謝礼が少なくても純粋に「面白いから」「商品・サービス・企業を愛してくれているから」「目立てることが嬉しいから」というユーザーを探しておきましょう。


執筆者・監修者
上岡正明
経済記者・経済コメンテーター
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者25万人のYoutuber
上岡正明

MBA(多摩大学院経営情報学修了)
テレビコメンテーター
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者24万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

日経ヴェリタス・東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン・プレジデントの4大経済メディアで専門家として記事連載もおこなっております。お読みになりたい方はこちらからご覧下さい。

①:東洋経済オンラインでの連載記事
②:ダイヤモンドオンラインでの連載記事
③:プレジデントでの連載記事
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