テレビPRと聞くと、なんだか難しく感じてしまう人も多いかもしれません。
インターネットの普及で、若年層を中心にテレビ離れが指摘されることもある昨今。オリンピックやワールドカップの際は、多くの人がテレビの前に釘付けになります。
ブームを巻き起こす力を持つテレビと広報は、どう付き合うべきか?
そこで今回はネット時代の「テレビPR戦略とその付き合い方」について考えてみました。
テレビPRの基本知識
「なぜあの会社ばっかりテレビに取り上げられているの?」と思ったことはないですか。
自社の商品やサービスはすごく良いと思っているのに、、、テレビで取り上げられるなんて夢のまた夢。それなのに何であの会社は、自社とそんなに大きく違わないと思うのに、よくテレビやメディアに出ているの? はい。実は、それには明確な理由があるんです。
◎テレビPRは「視聴者の立場になってみる」が基本
テレビも新聞などのメディアも同じですが、広告と番組や記事で取り上げられるパブリシティは、単純な話で露出に至る構造が全く違います。
広告は極端な話、お金がダイレクトにモノをいいます。広告出稿をする広告主は、メディアから見たら“お客様”のため、広告主の意向が大きく反映されます。
◎その情報は視聴率が取れるか
しかし、パブリシティはテレビであれば視聴者が興味を持つか(=視聴率が獲れるか)が全てです。別にその取り上げて欲しい会社の事をアピールするのが仕事ではありません。
アピールして欲しいならCMや広告を出してね(=お金出してね)ということ。自分も視聴者の立場で見れば簡単ですよね。この商品イイです、これスゴイです、と押しつけがましく言われても「よくあるサービスだ」思います。いっぽう、新しいモノ、珍しいモノ、いま関心あるモノ、へぇーと思えるモノ等が出ていると興味持って見ますものね。
◎なにがユニークなのかを明確にする
また、珍しいモノ、ユニークなモノでも、独りよがりでは広がりが出ません。テレビは広く一般に情報を行き渡らせるものですから、独りよがりでは視聴率が獲れません。だから、誰も気づいていないけど、広がりが出るトピックである必要があります。
どうしても企業目線で考えてしまいがちですが、「プロダクトアウト」ではなく「マーケットイン」の視点、視聴者や顧客の目線で見れば突破口が開けると思います。
◎どんな会社がテレビにでやすいか
先に書きましたように、テレビは広く一般に情報を行き渡らせるものですから、業界を象徴している広くみんなに関係している会社が取り上げられやすいです。
例えばAmazonなどは何をやってもメディアに取り上げられます。それはAmazonの取り組みはネット業界やさらには流通業界全体を変える可能性があるからです。
また、テレビのディレクターと話していても、よく話に出てくる言葉に「なぜ今か?」があります。
時代を先取りするような今どき感があるか、最近で言えば「AI」や「キャッシュレス」なんかも頻出しました。そういう時代に沿った事業を行っている会社は、事業内容をそのまま話すだけでもニュースになる可能性があります。
◎ずらしの視点で情報を組み上げる
「業界を象徴している」「時代を先取りしている」というのは大多数の中小企業では難しいかもしれませんが、最後の「チョッと話したくなるストーリーを持つ」は何とかなるかもしれません。
最先端でなくてもチョッとした新しさや珍しさ、みんなに関係あるモノ、季節などのタイミング、開発秘話、社会にとっての意義、など少しずつでも組み合わさる事で、テレビに取り上げられる確率が上がってきます。
◎それは映像になるか
最後に、テレビの場合は、「映像になるか」が非常に大事です。新聞・雑誌・WEBメディアであれば文字情報なので、これまでに書いたことでOKですがテレビは映像が命です。
「尺が持たない」という言い方をよくしますが、テンポよく映像を流していくために、どういう映像が撮れて、どう場面展開していけるか、そうして映像の尺を確保できるか、などまでセットで提案できれば飛躍的に確率は上がります。
テレビも大変忙しい業界ですので、そこまでお膳立てしてくれると工数もかからず取り上げやすくなりますものね。
ぜひ皆さんも工夫してトライしてみてくださいね!
*参考リンク:こちらも役に立つかも?テレビPRを最大化するプレスリリース活用法
テレビPRは「広がるメディア」。ではネットやアプリは?
テレビPRやテレビを介した広報戦略を考える上でまず押さえておくべきことは、メディアの特性を踏まえて広報すべきということです。
テレビや新聞は、広く知ってもらうために有効な「広がるメディア」です。
一方、インターネットやスマートフォンは、時としてテレビを超える訴求力を持ちます。特に一部の人にとっては、限定して強い影響力を与えることができる「刺さるメディア」です。
●テレビとデジタルの2ラインPRが成功の秘訣
自社の広報戦略には、どちらをどう使うのが効果的なのか、まず検討する必要があります。
例えば、商品について広く知名度を高めたいなら、テレビに取り上げられる努力が有効です。しかし、テレビ番組で紹介されるよりも、ピンポイントなネット配信やスマホアプリ上でおすすめされた方が、ダイレクトに商品の購入につながりやすい場合もあります。
つまり、テレビや新聞などの「広がるメディア」で商品や自社の知名度を向上させつつ、ネットニュースやアプリなどの「刺さるメディア」で売り上げにつなげる方法が最適であると言えるでしょう。
●少ない予算で最大の効果を狙うには「テレビPR」は不可欠
中小企業の多くの悩みは、PR・広報活動を広く展開していきたいものの、予算が少なく思ったように宣伝活動ができていないということ。
そんな宣伝・広告費などほとんどない中小企業が消費者の心をつかむためには、テレビを味方につけるのが一番の近道です。
非常にざっくりですが、視聴率1%に対して、100万人に影響を与えると言われています。
全国放送であれば、おおよその視聴者は約500万人前後は期待できます。メディアでの露出が増えれば、消費者だけでなく取引先の信用を得ることができたり、新しいビジネスチャンスも訪れます。
では、テレビが飛びつくネタとはどのようなものなのでしょうか。
視聴者はライフスタイルに直結した情報を求めている
まず、前提として知っておくべきなのは、テレビに対して、つくり手も、視聴者も自分のライフスタイルに直結することを求めるようになっているということです。
視聴者もテレビ局側も、クオリティの高いコンテンツにこだわらなくなった現代。今、求められるのは、個人のニーズに合ったアウトプットなのです。例えば、通勤・通学中にも視聴しやすいとか、SNSで拡散しやすいとか、それを観ていることで周囲からおしゃれっぽく見られる、といった、自身のニーズに直結するコンテンツが求められています。
*参考サイト:バズる「8×3の法則」について上岡が寄稿したLifeHackerの記事
テレビPRに必要な「絵になること」と「ストーリー」
先述しましたが、大切なのは、大事なことは繰り返してメディアに取り上げられるということです。
そのためには、ドラマ性のある「ストーリー」があるかどうかがカギとなります。
「ストーリー」であれば、同じストーリーがメディアの種類を変えて、何年にもわたって、ニュースとして、話題として、取り上げられることが続きます。弊社のクライアント実績で言うと、土屋鞄のランドセル、表参道のパンケーキブームなどがそれに当たります。では、ドラマ性のある「ストーリー」とはいったいどのようなことをいうのでしょうか? 例を挙げてみましょう。
*参考サイト:帝塚山大学で代表上岡がストーリーを生み出す広報学について講演しました
●負け組から立ち上がったストーリー
日本酒の獺祭で知られるようになった山口県岩国市の旭酒造の事例をご紹介します。
旭酒造は、杜氏の経験と勘に頼らない科学的な酒造りを行っていました。
*参考リンク:世界にSAKEブームを起こせ!旭酒造の挑戦(出典:SUPER SEO)
また純米吟醸酒に特化した商品構成や積極的海外展開など、業界の常識を次々と打ち破って知られるようになりました。こうした取り組みが2005年頃から全国紙の地方版で取り上げられ始めたのです。
当時の旭酒造は従業員7人、売上高3億円ほどの無名の企業でした。1988年に同社の杜氏が「FA宣言」したのをきっかけに変革へのが始まり、旭酒造をめぐる報道は2010年ごろから頻度が増したそうです。
その中で、当時の社長が父親の急逝によりその後酒造を継いだが、規模が小さく販売不振にあえぎ”負け組”だったことが明かされ、そうした逆境からのサクセスストーリーが語られています。
このサクセスストーリーは10年以上にわたってマスコミで語られていきました。ドラマ性があるストーリーにメディアの関心が絶えることなく、報道がPR効果をあげたこともあり、今では売上高100億円を突破し、従業員は200人を超えたのです。
このようにドラマ性がある「ストーリー」を持っているということが、テレビが飛びつきやすい一番のネタであると言えるでしょう。
これからクリスマス、年末年始とバレンタイン、、、季節ネタが連日テレビで多く特集されます。
季節性に関係なくメディアが興味を引くネタという意味では、企業の強みをストーリーとしてPRしていく方法が最適かもしれませんね。
●「絵になる」とはどういうことか?
また、テレビPRでは「絵になる」ことを求められます。
表面的な情報ではなく、裏側に潜むストーリーに人間は感情移入します。例えば、単なる商品の情報たまけだと、元の商品に興味がある人しか見ませんが、商品開発の裏話などのストーリーになると、もっと広く刺さる可能性があります。
●テレビPRが求める良い画には2種類ある
1つは絶景など、王道で誰もが美しいと思う画。こういう画は迫力はありますが、インターネットが普及している昨今、あっと驚くほどの美しい画を見つけるのはなかなか難しいものです。
そこで活用できるのが、もうひとつの、違和感のある画です。なぜ?が浮かぶ構成やシチュエーションが面白い画は、視聴者の目を引きます。そういう発見のあるポイントが重要なのです。
●テレビPRのために広報がやるべき3つの対策
ここで、番組制作において広報がやるべき3つのことを挙げてみました。
♡1つ目は、情報感度を上げる
限られた時間の中で、制作側が欲しい情報を的確に理解することが重要です。
♡2つ目のは、社内取材ができていること
ウェブサイトに載ってる情報を把握しているだけでは不十分。事前リサーチの範囲内の広がりのない情報は避けた方がよいと言えます。
♡3つ目は、直接担当者を知っていて、その人とすぐに連絡が取れるか
これは、折り返しに時間がかかれば、返事を待たずに次の候補にあたることもあるからです。
いかがでしたか?
この3つの戦略さえ押さえておけば、テレビ露出はそう難しいことではありませんよ。
次回から参考にしてみてください。
テレビ取材がダブルブッキング!広報担当に求められる対応は?
●取材がブッキングした際に広報は何を考えるべきか
テレビの取材などが重なったときに、「どうしよう……」と思い悩む広報担当もいるようです。
ですが、「ただでさえなかなか難しいテレビ取材の依頼が複数きた」という事をまずは素直に喜びましょう。「一つの目標をクリアしたことに対して、きちんと達成感を覚える」ことをしていかないと、どのような仕事も続きません。
●では、どちらの取材を優先させるべき?
テレビ取材が2つあるとして、どちらを優先すべきなのでしょうか。
答えは簡単です。
「自社にとってメリットが大きいほうの取材」を選んでください。
「先にどちらと取材の約束を取り付けたか」は気にしなくて大丈夫です。
テレビ関係者も「ビジネス」で行っていることです。
広報担当も「ビジネス」で動いてしまって構いません。
「テレビで取り上げられること」のメリットはあまりに大きいです。
「やはり礼儀で言えば、先に約束したほうを……」と考えるのはもったいないのです。
テレビPRの鉄則!「選ばないテレビ局」にすべき対応3つ
では、「選ばないテレビ局」に関してはどう対応すれば良いのでしょうか。
○1:まずは当然謝罪を
「礼儀よりもメリットを優先すべき」とお伝えしましたが、礼儀をかなぐり捨てて良いというわけではありません。
広報の仕事に染まっていくとたまに、
・取材されるかされないかが全て
・メディアは100パーセント仕事相手でしかない
・自分にとってメリットにならない人間と付き合う意味はない
などという極端な思考に陥る人がいますが、この業界はとても狭いものです。すぐに悪い噂は業界内に知れ渡ります。結局テレビ・雑誌・新聞などは人が作っていくものですから、このような危険な考えにハマっていくと何も上手くいかなくなります。
迷惑をかける相手、礼儀を欠いてしまうメディアや記者、ライターさんであっても必ず謝罪をしてください。広報に限らずですが、とくに広報という職業で仕事をするとしたら常識です。
○2:取材を諦める必要はない
また、最初から取材を諦めるのはナンセンスです。
「先に○○社の取材を受けてしまうのですがよろしいでしょうか」
「構成台本を見ると、放送内容が一部被ってしまうのですかよろしいでしょうか」
などと聞いてみましょう(もちろん謝罪しつつ)。
また、本当に放送内容が被るのは基本的にNGですので、「別の視点から取材できるように」あなたからもアイデアを考えて、工夫しましょう。
例えば、ある企業が会社移転をするとして、
- :移転費用を可能な限り削減するために行った工夫とは?
- :移転先の社内にあるユニークな施設(プラネタリウム、ゲームセンターなど)の話
- :24時間営業!1食150円の社員食堂の謎とは?
- :最初は大多数の社員が移転に反対だった……それでも最終的に満場一致で移転する事になるまでのドキュメント!
などなど切り口はいくらでもあります。これらの複数がピックアップされる事もあるでしょう。
もちろん、「最初から複数取材が来ることを見越して、全てのテレビ局に別々の切り口で提案しておく」ということも大事です。
「一つのネタで、できる限り大きなものを得る」というのも、広報担当が持っておくべき発想の一つです。
また、そもそも放送内容が被るのは「基本的に」ダメというだけですから、テレビ局のほうから「違った映り方になるよう工夫しますので是非!」と言ってくる場合もあります。実際、あなたもテレビ番組を観ていて「またこの企業のこの話か……」と感じたことがあるのではないでしょうか。
視聴者は全部の番組を観ているわけではないので問題ありません。
○3:結局取材ができないことに!その場合の対応は?
当然、交渉や日程調整などが上手くいかず、取材してもらえなくなる場合もあるでしょう。
そのときは「ではご縁がなかったという事で」で済ませるのではなく、ぜひ他社を紹介してください。
「ライバルに塩を送ることになんの意味が……」と感じるかもしれませんが、他社がテレビ局とのパイプを作ってくれれば、巡り巡っていつか自社の取材に繋がるかもしれません。
そうでなくても「複数社で協力してネタを作ると企画としてメディアに取り上げられやすくなる」など、他社と関係を構築しておくことのメリットは色々あります。
○4:全番組に全部の情報を伝える
「取材日も重なってしまうようです」「この部分のネタが重なってしまうようです」などなど、各番組に対して情報をできる限り伝えておきましょう。
相手もプロです。特に取材日が重なる場合はトラブルが発生しやすくなりますが、事前に知らせておけば相手も工夫してくれます。
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◎この記事を書いた人:上岡正明
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MBA(多摩大学院経営情報工学修了)
一般社団法人日本脳科学認知協会 理事、一般社団法人小児発達心理学学会 理事
株式会社フロンティアコンサルティング代表取締役
27歳でPR戦略、新事業開発のコンサルティング会社を設立。現在まで約20年間、実業家として3社のグループ会社を経営。
これまで、三井物産、SONY、三菱鉛筆など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。また、大学院にてMBA(情報工学)修了。海外大学外部機関にて認知脳科学と神経心理学を研究、東京都公社や全国の大学で講演。それらは常に人気を博し、2ヶ月先まで予約が取れないこともある。
また、日本を代表するテレビ放送作家、脚本家としても活躍。「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「ワールドビジネスサテライト」「タモリのスーパーボキャブラ天国」など人気番組、脚本家として日本テレビ系列のドラマ「ストーリーランド」を手掛ける。ビジネス作家としてはダイヤモンド社、朝日新聞出版社、総合法令出版、アスコムなどから8冊の著書を上梓。中国、台湾で翻訳本が出版され、シリーズ累計30万部(Amazonの著者紹介ページ)。所属学会として日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、一般社団法人日本脳科学認知学会、一般社団法人小児発達心理学学会などがある。
【この記事を執筆した上岡正明の主なメディア露出実績(外部リンク)】
・上岡正明が特集された東洋経済オンラインの記事
・6000万人にクチコミを広げた事例を紹介する朝日新聞メディアの記事
・戦略PRについて語る戦略経営者の特集記事
・上岡の思考術が連載されたオトナサローネ(主婦の友社)のコンテンツ
・上岡正明の週刊ダイヤモンドの連載記事
・多摩大学院公式サイトでベストセラー作家のMBA卒業生として紹介されました