最近、よく耳にする言葉に「コンプライアンス」があります。テレビや新聞、ネットなどでも、「企業のコンプライアンス違反」を報じるニュースが散見され、広報活動を推進していく上でも、「コンプライアンス」は今や重要なキーワードになっています。
コンプライアンス違反は、企業にとって社会的信頼を失う不祥事と捉えられ、企業イメージを損なうばかりか存続の危機に発展するケースもあります。
現代社会において、コンプライアンスは企業の危機管理における重要な指針となっていて、いかなる企業にとっても避けては通れない概念と言えます。今回の記事では、コンプライアンスの意味や具体例、対策などについて解説していきます。
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コンプライアンスとは
「コンプライアンス」(compliance)は、直訳すると「法令遵守」といった意味になります。最近では、略して「コンプラ」などと呼ばれるケースもあります。
コンプライアンスは言葉の示す通り、法律や政令、条例などの「法令」を守るという意味です。もっとも、企業が法令を守って事業活動を行うのは当たり前のことですが、時としてそれが実行されないケースがあり、そうした不祥事が起きないよう、企業が定めた危機管理上の一つの指針がコンプライアンスなのです。
元々、コンプライアンスで遵守するべき範囲は法令や条例でしたが、近年ではその対象範囲が広がり、社会的な規範やルール、モラルなども含まれるようになりました。
たとえ、法令違反はしていなくても、世の中のルールやモラルに反した行いがあると判断されれば、企業は手痛いダメージを負うことになるのです。
CSRとの違い
コンプライアンスとよく似た言葉に「CSR」があります。CSRとは“Corporate Social Responsibility”の略で、「企業の社会的責任」を意味します。企業は法令を遵守した経済活動により利益を得て、雇用を創出しますが、今では、それだけではなく、社会や地域に貢献し、社会や地域が持っている課題や問題点に積極的に取り組む責任がある、とするのがCSRの考え方です。
CSRは、コンプライアンスという概念の中に含まれ、コンプライアンスを着実に遂行することが、CSRの取り組みのベースとなるのです。
コンプライアンスの重要性
近年、コンプライアンスが重要視されるようになった背景の一つに、インターネットの社会的な普及と、内部告白や通報に関する法整備が推進されたことがあげられます。
IT技術の進歩に伴い、インターネット上のSNSにおいて、企業の不正や企業へのクレームが匿名で簡単に発信されるようになりました。また、2022年6月には「改正公益通報者保護法」が施行され、企業は、自社の社員からの内部通報に真摯な姿勢を持って対応するべく社内体制を構築することが義務付けられたことも、コンプライアンスの重要性が再認識される一因となっています。
コンプライアンスに対する違反行為は、多くの場合、「不祥事」として報道されます。不祥事というイメージが付着した企業からは、ユーザーが離れていき、ステークホルダーからの協力も得られなくなるというリスクがあります。もっと言えば、社員の離職率も増えて、企業の存続が叶わないというケースに陥ることもあるのです。
現代社会において、企業がコンプライアンスを維持し徹底させることは、企業の存続に関わる非常に重要なミッションと言えるのです。
近年におけるコンプライアンス違反の具体例
毎日の業務の中で、「これは大丈夫だろう」と思っている行為や言動が、実はコンプライアンス違反になるケースがあります。ここでは、身近で起こりうるコンプライアンス違反の具体的な例を見ていきましょう。
①情報の漏洩
コンプライアンス違反となりやすい一つ目の事例が情報漏洩です。情報の漏洩には次の3つのパターンが想定されます。
●部外者に機密情報が伝わってしまう状況を作る
例えば、ランチタイムなど公共の場で、社員章を付けたまま、社内の機密事項について会話をすることです。直接、部外者に話していない場合でも、機密情報の漏洩につながる状況を作ってしまうことを指します。
●機密データを社外に持ち出す
顧客リストやキャンペーン応募者のリストを家に持ち帰って業務を行うなど、機密情報の持ち出しにも細心の注意を払うべきです。テレワークの普及で在宅勤務が多くなっている現状を踏まえて、十分な配慮と注意が必要です。
●顧客情報などを私的に利用する
前の会社で使用した顧客リストを、転職先の新しい職場で営業活動のデータとして利用する、などもコンプライアンスの違反とみなされます。個人情報は、個人の承諾なしに、他の目的に使用することはできません。
②社員に対する違法労働
労働基準法で定められた時間外労働の上限を大きく超過したり、サービス残業が常態化しているケースは、企業にコンプライアンス違反の疑いありと言えます。
③SNSの不正利用
社員が個人アカウントでSNSを利用する際、社名を名乗って投稿するケースがありますが、そんな場合に、特定の企業や個人に対して誹謗中傷するなどの行為を指します。
④ハラスメント行為
俗に言う「パワハラ」、「セクハラ」の類です。優位的な立場を利用したパワハラや性差別的な言動を行うセクハラは、今の時代、絶対にしてはならない行為です。今では、マタハラ、スメハラ、などという問題もあります。
⑤会社が提供する備品の不正利用
入社する時、支給されるPCや業務用携帯電話など会社の所有物を私的に利用することはできません。文房具などの大量持ち帰りや、社用車の私的利用もコンプライアンスの規範に抵触する恐れがあります。
コンプライアンス違反を防止する4つの対策
コンプライアンス違反が起きてしまう前に、十分な対策を打っておくことも重要な業務です。そのための対策をご紹介します。
①コンプライアンスに関する研修を実施する
社内研修や勉強会を定期的に開催することをお薦めします。グループに分かれて行う研修スタイルなども効果的です。
②情報を管理するためのルールを作る
情報管理のルール作りは、社員の良識に任せるのではなく、詳細まで明文化することが大事です。機密データへのアクセスについては、社内ネットワークのみで可能とするなど、システム的な対策も必要です。
③労務状況を確認しルールを徹底させる
社員一人一人の業務数や業務時間などの労働実態を、労務管理ルールと照らし合わせることで、サービス残業の常態化を防止するなど、コンプライアンス違反を未然に防ぐことができます。
④コンプライアンスの管理体制を作る
コンプライアンス上で問題が起きた時、迅速に対応できる部署を作り、指揮系統と責任の所在を明確にしておきます。外部の弁護士や社会保険労務士など専門家を顧問に置くのも良いでしょう。
コンプライアンスを上手に活用していこう
企業がコンプライアンスに取り組む際に、重要なことは、社会情勢や周辺の状況が日々アップデートされているということを認識することです。以前は許容されていたパワハラやセクハラは、現代社会において違法行為として捉えられています。
広報担当者は、コンプライアンスの意味と役割を正確に理解し、自社におけるコンプライアンス対策を社会に向け広く発信してください。そうした業務が企業の信頼性向上とイメージアップにつながるのです。