広報の仕事をしていると、たびたび「ブランディング」という言葉が出てきます。普段、何気なく使っているこの言葉ですが、改めて考えてみると「ブランディング」とはいったい何なのか、「PR」との違いは何なのか、今一度、しっかり整理しておきましょう。
今回は、そんな「PR」と「ブランディング」の違い、そして、それぞれを実施する上で押さえておきたいポイントを解説したいと思います。
PRの役割とは
PRは「Public Relations」の略語で、商品やサービス、自社の活動など企業情報を広く社会に発信するための活動全般を指します。そして、その情報発信は「Relations」という言葉の通り、一般消費者や企業や組織にとって重要なステークホルダーとの良好なコミュニケーションづくりを目的として実施されます。PRの領域(仕事範囲)は非常に幅広く、社内のコミュニケーションをはじめ、取引先やメディアなど社外に向けた発信まで多くの業務を担うことになります。
PRと企業ブランディングの違い
一方、ブランディングは、企業や組織のマーケティング戦略を実現する手段のひとつで、自社の「ブランド」を高め、共感や信頼を構築し、それらを通じて社会全体に自社の企業価値を高める活動全般を指します。
ちなみに、ブランドとは、消費者がある企業や商品・サービスに対して持つイメージのことで、それを戦略的に高めたり強化したりするのがブランディングです。ブランディングが成功すると、消費者からの共感と信頼が高まり相互理解が形成されてブランドの成長に繋がり、商品の売上がアップすることになります。
PRとブランディングは連携して動くことが大事
ブランディングの位置づけが疎かになってしまうと、ブランディングを軸にしたマーケティングやPRがあらぬ方向に向かってしまい、企業の差別化どころではなくなってしまいます。
また、ブランディング遂行しようとしている関係各所(マーケティング部やPR部)が密に連携していないと、やはり消費者に自社商品やサービスの魅力を伝えることが難しくなってしまいます。真に自社のブランド力を高めたいのであれば、ブランディングとマーケティングとPRの3つの柱がお互いに密に連携し、目標と情報の共有を行い協力し合って動くことがキーポイントとなります。
PRを軸にした戦略策定手順と必須スキル
① 「伝えたいこと」を明確にする
ブランドを発信する場合、そこで「何を」伝えるのか、具体的な内容を考えなければなりません。一般消費者やステークホルダーに対し「何を」伝えるべきか。もし、この内容が明確になっていない場合は、発信する前に、社内外の声をヒアリングして検証し、まとめましょう。さまざまな角度からの声を聞くことで自社のブランドがより明確になってきます。この場合、発信するメッセージは分かりやすく、且つインパクトがあり、共感を生むようなコピーワークが必要となります。
② 「何で伝えるか」を明確にする
「伝えたいこと」が決まったら、対象ターゲットに、どのようなメディアを使って発信するかを考えます。ターゲットがステークホルダーであれば、企業との接点がどこかを見極め、メディア特性を生かしたPRチャネルを考えます。そして、意外と忘れられがちなのが「人」を介した発信です。特に日々お客様と対面している社員は一人一人がブランドイメージを創っています。社員やスタッフから家族、地域にも伝わっていく…と考えると「人」は重要なメディアであると言えます。
ちなみに、代表的なPR活動のチャネル(メディア)をあげてみると、
●公式サイト(ホームページなど)
●メルマガなどのSNS
●会社案内などのパンフレット
●プレスリリース
●DM(ダイレクトメール)
●各種メディア(TV、ラジオ、新聞、雑誌、他)
●社内報(インナー向け)
などがあります。
③ 社内で協力体制を構築する
社員やスタッフといった「人」が企業ブランディングを推進する上で重要な存在であることを述べましたが、これは「インナーコミュニケーション」の重要性を物語っています。つまり、社内広報もバランスを取りながら推進していく必要があります。そして、広報戦略を行う際に社内の協力を仰ぐための仕組みを考えていきましょう。この協力体制の構築は、まず最初に行っておく必要があります。目的や意義、効果など情報など共有し、全体像を説明できるようにしておきたいものです。その流れを簡単にまとめると、
■社内から情報を集める ⇒ ■訴求ポイントを決定 ⇒ ■情報発信 ⇒ ■効果測定
④ ブランドの認知度を検証する
ブランディングを目的としたPR活動を開始して、一定期間が経過した時点でブランド認知度を検証します。認知度とは、ターゲットがブランドをどの程度、そしてどのように認知しているか調査することです。ブランドは消費者やステークホルダーに認知され、好感と魅力を持ってもらうことで形成されます。
そのため、PR活動の後、ターゲットがブランドに対してどのようなイメージを持っているか、PR活動前に持っていたイメージと比較し検証するのです。検証方法は調査会社やWebサイトを通したアンケート調査で行う方法があります。検証結果によって、コンセプトやキャッチフレーズ、そしてメディア選定の見直しなどを行うことができます。
経済状況が今一つ芳しくない今、企業にとって(企業)イメージはとても重要なものとなっています。多くの商品が相次いで値上げを行う中、消費者の商品を見る目は非常にシビアになっています。商品力に大きな差異がない場合、価格がほとんど変わらない場合、消費者は企業イメージが良い方の商品を購入します。これこそが、ブランディングの本質であり大きな役割で、それを社会に発信するのがPR(活動)ということになります。
まとめ
広報の行うPR活動の目的には、自社商品やサービスの情報発信、事務所の移転や新工場の稼働などの会社情報などがありますが、大きく見れば、これらの情報発信もすべてブランディングであると言っても過言ではありません。広報の最終目的はブランディングであると言われる所以もこうした理由によるものなのです。
ブランディングとは、消費者やステークホルダーなどのターゲットに対して自社のブランドに好感を持ってもらい、より高いイメージで認知してもらうための取り組みです。また、自社ブランドが当該市場において優位なポジションを確立できるのか、事前に調査しておくことも必要です。既に競合他社が同じようなブランディングを展開している場合は自社のブランド価値と戦略を改めて見直すいいチャンスと言えるかも知れません。