企業の危機管理における広報のあり方と対応シミュレーションを実例解説
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2026.01.27

企業の危機管理における広報のあり方と対応シミュレーションを実例解説

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企業の危機管理問題といえば、最近の飲食店(特に外食チェーン店)におけるバイトテロや来店客によるテロ動画がWeb上で拡散され炎上し、企業のイメージが著しく悪化した事例があげられます。代表的なところでは、回転寿司で有名な「スシロー」で来店客が調味料のボトルやレーンを流れて来る寿司にいたずらする動画が拡散され、後日「スシロー」は株価の損失が160億円になったとも伝えられています。さて、

このような時、企業広報はどのように対応するか。緊急時の対応を間違えれば、企業の存続が危ぶまれる事態に陥ってしまうこともあります。トラブル発生時に企業の被害を最小限に抑えるのが広報の役目で「危機管理広報」とも言います。そこで、今回は危機管理における広報の役割とミッション、加えて留意点、注意点などをご紹介します。

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危機管理広報の役割とミッションとは何か

前述した「スシロー」の例を見てもわかるように、企業に降りかかるトラブルは予想がつきません。でも、対応が遅れるとさらなるイメージダウンにつながるだけでなく、間違った情報や経緯が拡散されてしまうことも。スピーディな対応をするためには、日頃からトラブルを想定した対応方針、シミュレーション、対策本部のフォーメーションなども検討しておくことが重要です。

例えば、危機対策本部のトップは社長以外の副社長や危機管理担当役員などが務めるのがベターです。経営のトップが務めると、責任回避に走ろうとしてすべて自分が決めたがり、メンバーの意見を受け付けない場合があります。

これでは、対策本部を作った意味がありません。そして、トラブル発生時は初動が大切です。スピーディに、正確に、誠意を持って対応しましょう。この初動によって、企業のイメージがさらに悪化するか、逆に回復できるかが決まってきます。

そして、記者会見や取材で情報公開をした後は、メディアの記事に事実誤認がないかどうかをチェックしましょう。もしも、間違った情報が発信されている場合には毅然とした態度で修正や謝罪を要求します。風評被害や二次的被害を防ぐために、この事後チェックはとても重要です。それでは、危機管理広報の役割とミッションについて、具体的に3つのポイントからご紹介していきます。

そもそも危機管理広報とはどんな仕事をするのか

トラブル発生前にやっておくこと

まずは、トラブル発生した時の対応方針を決めて、マニュアルを作成しておくことです。実際に危機が訪れたときの混乱を最小限に防ぐために、各部署の責任者や担当者とコミュニケーションを取り、緊急記者会見などを想定するなど定期的にシミュレーションをしておくもよいでしょう。トラブル発生時、広報の対応を間違えるとさらなるダメージを招いてしまい、適切な対応を取れば企業イメージを大きく回復することができるのです。

トラブル発生後の対応は?

一番重要なのは、スピーディーな情報把握と情報開示です。速やかに各担当者や責任者から情報を収集し、事実関係の把握を行いメディアなどへの対応を明確にしておきます。そして、報道用資料や想定問答集の作成を行い、トラブル発生から半日以内にメディア関係者への告知を行います。緊急記者会見を行う場合は2時間前までに各メディアに通知します。記者会見場の選定も大事です。あまり豪華なホテルなどで行うとさらなる批判の対象になりかねません。

トラブル発生後、これだけは知っておきたいこと

情報の開示は迅速に

トラブル発生時、広報の仕事として最も重要なのはスピーディーな情報開示です。さらなるイメージダウンを防ぐため、そして事実と異なる情報がネットなどに拡散されないよう、情報公開の迅速さが重要なポイントになります。

情報開示が遅れると批判の材料となってしまい、さらなるイメージダウンへ繋がる可能性もあります。また、公式の情報が公開されない限り、事実とは全く異なる憶測がSNSなどを通じて拡散され続けてしまいます。特にネガティブな情報は浸透が早いため、致命的なダメージを負って会社の存続が危ぶまれる事態に発展することも考えられます。情報開示後は、報道に事実誤認がないかどうか各メディアの報道内容をチェック。事実誤認がある場合は、事実誤認であることの根拠を示すとともに担当者へ情報の訂正をお願いします。

事実関係を確認し、的確な情報を発信する

緊急記者会見や取材対応では、自社にとって都合の悪い事実がある場合もある場合でも隠蔽したり嘘をついたりせずに事実関係とその対応を公開します。事実関係とそれに対する対応を明確に伝えるようにしましょう。不祥事や事件・事故の場合には、自社にとって都合の悪い事実がある場合もあるかもしれませんが、隠蔽したり嘘をついたりせずに潔く全て公開します。

また、事実確認のできていない情報は公開してはいけません。未確認情報を憶測で開示するとさらなる混乱を招いてしまいます。

誠実に真摯に、そして臆することなく対応する

記者会見を開く場合には表情や行為、服装など、トラブルの内容以外の部分で不信感を与えないよう、真摯に、そして誠実に対応します。事態を故意に軽く見せようとしたりすると批判の対象となります。記者会見は自社の関係者、取引先、お客様などに心配と迷惑をかけたお詫びのためのものなので、信頼回復のためにも誠意の見える対応が必要となるのです。

想定になかったトラブルを最小限に留める

実際にトラブルが発生すると、社内も動揺や混乱でパニックになることがあります。社内のパニックなどは想定外のものですが、これらの問題にも迅速且つ適切な対応が必要です。そのためには、社員間の速やかな情報共有を行うことです。社員が翌日の報道で危機のことを初めて知るようでは問題ありです。情報収集と集約を行い社員に周知させ、社員がメディアに攻撃されたり誘導尋問されないよう注意を図ることが必要です。危機管理広報は、企業への信頼が崩れるピンチを救うことのできる部門です。想定外のトラブルを最小限に抑え、危機発生時に適切な対応ができるよう、今から準備を進めておきましょう

危機管理広報の対応スケジュール

トラブル発生後の危機管理広報の対応スケジュールを簡単に記しておきます。

① トラブル発生

② 初動対応

・対策本部の設置
・情報の収集・集約・整理
・公表方法の検討
・コメントの準備

③ 電話対応

④ 公表時の資料作成

⑤ 記者会見の開催(準備・実施)

⑥ 記者会見後の事後対応

広報担当者は今起きている事案についてはもちろんのこと、日頃から会社の基本的な情報(決算情報、商品情報、周辺情報など)を把握しておくことが大事です。これらの基本情報を整理し理解していれば、危機対応時でも自社についてすぐに回答できるからです。

「調べます」、「確認します」の繰り返しでは、相手に不安や不信感を与えてしまいます。危機対応に限らず、広報担当者は「誰に向けて説明を行っているのか」、「何のために説明しているのか」を常に考え行動しなければなりません。

先にも述べましたが、瞬時のうちにネットで情報が拡散される現代、広報担当者に求められるものは「誠意のある毅然とした対応」ばかりではなく、スピード感も大事になってきます。そのためには、ネットをはじめとする様々なメディアや社会の変化に常にアンテナを張りめぐらし、いち早い情報収集を心がけ、危機察知能力を高めていかなければなりません。

企業イメージ、それは企業の存続を左右する大きな要因の一つです。そんな企業イメージを高めるのも低くするのも広報の手腕一つです。今、企業広報の持つ意味合いは非常に重要なものになってきているのです。

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執筆者・監修者
上岡正明
経済記者・経済コメンテーター
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者30万人のYoutuber
上岡正明

MBA(経営学博士前期課程修了)
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者30万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

日経ヴェリタス・東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン・プレジデントの4大経済メディアで専門家として記事連載もおこなっております。お読みになりたい方はこちらからご覧下さい。

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