コーポレート広報の目的と広報担当者に求められる知識・スキル・経験5選
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2025.08.28

コーポレート広報の目的と広報担当者に求められる知識・スキル・経験5選

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この記事では広報・PR担当者の皆さんに向けて、「コーポレート広報」に求められる知識やスキルについて解説していきます。

「そもそもコーポレート広報とは?」という方から、「コーポレート広報に取り組み始めたのでポイントを知りたい」という広報・PR担当者にまでおすすめの内容となっています。

本記事では、コーポレート広報の概要と目的、コーポレート広報をするべき理由、実践するための必要な知識やスキルなどに関してお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

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コーポレート広報とは?2つの目的

コーポレート広報の主な目的は2つあります。それは「企業のブランドを強くすること」と「企業文化を形成、定着、育成していくこと」です。それぞれについて簡単に解説します。

前者に関しては、例えば「このロゴはこの企業」「この色はこの企業」「安さで選ぶならこの企業」「品質を優先するならこの企業」などのブランドイメージを定着させることを指します。

そして後者に関しては、言い換えると「社内で共通する価値観や考え方」を形成することです。例えば「チャレンジ精神を大事にする」「無謀な挑戦よりも現状維持」「常に新しい顧客を開拓する」「既存の客こそ大切にする」など。

このような共通認識、言わば「社風」を社内に根付かせつつ、わかりやすく言語化して、社内・社外に対して発信するのがコーポレート広報の狙いです。

企業がコーポレート広報に取り組むべき3つの理由

続いては企業がコーポレート広報に取り組むべき理由を簡単に紹介していきますので、広報・PR担当者の皆さんはぜひチェックしてください。

理由①:広告・宣伝以外にも「人々に選ばれる努力」が必要な時代だから

一昔前までは、企業が大量広告・大量宣伝をすれば、多くの一般消費者に訴求できる時代でした。しかし近年ではインターネット、さらにSNSの普及によって、一般消費者でも簡単に情報収集ができるようになりました。

これはつまり人々が自分で「判断材料」を集めて比較検討をするということ。極めて乱暴な言い方ですが広告や宣伝による「人々の支配」が難しくなったので、コーポレート広報によって「選ばれる企業」「愛される企業」を目指す必要があるのです。

理由②:社員に「自社への愛着・信頼感」を持ってもらう努力が必要な時代だから

副業を認める企業が増えましたし、転職さえ珍しい時代ではなくなりました。つまり、一昔前のように「一つの会社に骨を埋めるのが当然」ではないということなので、企業側が努力して社員に「自社への愛着・信頼感」を持ってもらわなければなりません。

そのためには企業ブランドや企業文化を確立して、社員に「この企業で働いていること自体が誇らしい」「自分のためだけでなく会社のためにも働きたい」と思ってもらう必要があります。適切な方法でコーポレート広報を進めていけば、これらを徐々に実現できます。

理由③:採用広報の一環にもなるため

繰り返しになりますがコーポレート広報は、「我が社はこういう会社です」と世間に伝えるための広報・PR活動ともいえます。そして、これは就職活動者・活動者が重視する部分でもあります。

生々しい話ですが、特に給与をはじめとする待遇面で「業界内において明確に優れている」というアピールができない場合は、こういった部分によっても魅力を伝えていくべきでしょう。そうでないと、「若者」が少ないこの時代には選んでもらいにくくなります。

コーポレート広報をするために広報・PR担当者に求められるスキル・知識5つ

それではコーポレート広報をするために広報・担当者に求められるスキルや知識をいくつか紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。もちろんこれらは通常の広報・PR活動をするためにも欠かせないものです。

①:情報整理力・論理的思考力・言語化能力

様々な情報を整理して、「結局我が社はどのようなブランドイメージを定着させたいのか、どのような企業文化があるのか」などを言語化する能力。そして、多くの情報、事実、考え、データなどを論理的に結び付ける能力も欠かせません。

これらの能力がないと、極端にいえば「何かいい雰囲気のある企業にしていきたい」「成長できる企業にしたい」などの抽象的なことしか言えなくなってしまいます。

そして論理的・具体的な話ができない場合、メディア関係者などと話す際にも「話に説得力が出ず、情熱でゴリ押ししようとするだけ」などとなる可能性が高いです。また、当人も常に「自分や会社の考えがいまひとつわからない」という状態になるためストレスを溜めます。

②:コミュニケーション能力

コーポレート広報を進めるにあたって、自社社員に対してブランドイメージや企業文化を伝えていくことはもちろん、他のステークホルダーにも発信していく必要があります。具体的には取引相手、株主、メディア関係者、地域住民など。

相手が自社社員であれば「自社のことなのだから聞こう」「自社のことなのだから理解する必要がある」などと思ってくれる傾向にありますが、他のステークホルダーの場合、それほどスムーズには進まない可能性が高いです。

そもそも各ステークホルダーには、自社社員ほどに諸々を理解する義務がありませんし、企業に関する知識もないはずです。よって、そういった人にも理解・共感してもらえるような「伝え方」を考えなくてはなりません。つまり、コミュニケーション能力が大事なのですね。

✅相手の考えを聞いて立場を尊重する、双方向性のある関係構築が必要

さらに一方的に企業側から発信するだけでなく、相手の考えを聞いて・読み取って、立場を尊重する「双方向性のある関係構築」をしていくことも大事です。そうでないと企業側の自己満足になったり、「伝わっている」「共感を得られている」と勘違いする恐れがあります。

③:自社の経営や事業について理解する能力+一般的なビジネスの知識・スキル

適切なコーポレート広報をするためには、自社の経営や事業について理解する能力と、一般的なビジネスの知識・スキルも必要です。これらの能力がないにもかかわらずコーポレート広報をするのは、他で例えるなら「サッカーの知識がない人が、サッカーの指導する」くらいにズレています。

そのため定期的に経営陣などと話して「自社の最新の状況」を理解する、各部署の責任者からもヒアリングをして情報・状況を拾い上げる、自社に関して自力で勉強できる部分は勉強をして知識を増やす、などの努力も欠かせません。

また、一般的なビジネスの知識・スキルでいえば例えば、業界トレンド、財務関連の知識、法務関係の知識など、幅広い視野が必要となります。

✅一般的なビジネスの知識・スキルを全部習得するのは不可能。ただし必要になったら努力する

ただ、現実的にいえば、一般的なビジネスの知識・スキルをすべて習得するのは不可能ですし、他にリソースを注ぐべきところがたくさんあるはずです。

とはいえ「結局わからない」と開き直るのではなく、知識・スキルが必要になるときがきたら努力して可能な限り身に付けましょう。また、その道のノウハウがある人に話を聞く・指導してもらうのもいいでしょう。

④:危機管理能力とリスクマネジメント能力

まず普段から「自社はどのようなリスクを抱えているか」「トラブルが起きた際にどう対応するか」を把握・想定していることが大事です。例えば、「商品を世に出している以上は不良品をきっかけに炎上する可能性がある」→「炎上の種類ごとに対応方法を決めておく」など。

「トラブル時の対応は広報・PR部署の仕事ではないのでは」と感じるかもしれませんが、そのトラブル時の対応には「なんらかの情報発信」が大いに含まれているため、やはり広報・PR部署の役割と言えます。また、現実的な話として他に担当できる部署がない企業も少なくないのではないでしょうか。

そしてトラブル時の対応の仕方が誠実であれば、それだけ「誠実な企業」という世間のイメージが強くなります。さらに、ある程度企業について知っている人からすれば「さすが○○社だけあってきちんと対応した」となるでしょう。つまり広義では、トラブル時の対応もコーポレート広報に含まれるのです。

⑤:長期的な目線で企業やブランドを育てていく能力

コーポレート広報に取り組む大きな理由として、「長期的な目線で企業やブランドを育てていく」ということがあります。そのためにも短期目線の広報・PR施策だけでリソースを使い切らず、「社会への発信・社会からの受信を通じて徐々に企業の価値を高めていくにはどうすればいいか」という視点から生まれる施策にも取り組んでいく必要があります。

その施策を継続してもすぐには成果が見えないと思いますが、例えば3年後や5年後になると、企業そのものが「力」を付け、他の広報・PR施策の効果も出やすくなっていることでしょう。

例えるならコーポレート広報によって畑の「土」を強くする。土が強くなっていれば、短期的な広報・PR施策というわかりやすい「花」も育ちやすいということです。

目先の利益だけを求める広報で満足していませんか?(まとめ)

特にベンチャー企業の中には、現実として「目の前の売上が必要」という理由で、コーポレート広報に取り組む余裕がないところも少なくないと思います。そもそも広報・PR活動で使うことのできる予算もあまりないかもしれません。

しかし、だからといってコーポレート広報を全くしないようでは企業としての「力」が付きにくく、どれほど月日が流れても「目先の利益を求める広報・活動」しかできない恐れがあります。そのため少しでもリソースの余裕を作って、コーポレート広報に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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執筆者・監修者
上岡正明
経済記者・経済コメンテーター
戦略PRプランナー・著書26冊累計105万部のビジネス作家
登録者30万人のYoutuber
上岡正明

MBA(経営学博士前期課程修了)
多摩大学客員講師(18,19)
帝塚山大学客員講師(19)
登録者30万人のビジネス系YouTube

「スーパーJチャンネル」「めざましテレビ」「王様のブランチ」「クイズミリオネア」等の元放送作家。日本を代表するPR戦略の専門家で、企業広報のスペシャリスト。未上場から上場企業まで戦略PRを手掛けたクライアントは300社以上。

広報ブランディング、新規事業構築、外資系企業の国内イベント、海外プロモーション支援のコンサルティング会社代表。現在まで約20年間、実業家として会社を経営。これまでに三井物産、SONY、三菱鉛筆、日本瓦斯など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。

代表的なコンサルティング案件としては、日本中の女性たちの心を動かした「表参道のパンケーキブーム」、1年で200万台以上を売り上げた「ふとん専用掃除機レイコップ」、世界が注目する食イベント「肉フェス」、1カ月で6000万人(日本の約半分)にバズらせた「ジャポニカ学習帳“昆虫の表紙が変わった?”」がある。

経営と並行してMBA(情報工学博士前期課程)取得。東京都中小企業振興公社講師。成蹊大学、多摩大学、帝塚山大学の客員講師。東洋経済新報社、ダイヤモンド社、朝日新聞出版社、PHP出版、総合法令出版社、アスコム社、大和出版、すばる舎、宝島社から累計21冊80万部の著書を上梓。

日本神経心理学会、日本行動心理学学会、行動経済学学会、一般社団法人日本行動分析学会、日本社会心理学会、一般社団法人日本小児心身医学会、認知神経科学会の各学会員。

日経ヴェリタス・東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン・プレジデントの4大経済メディアで専門家として記事連載もおこなっております。お読みになりたい方はこちらからご覧下さい。

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②:ダイヤモンドオンラインでの連載記事
③:プレジデントでの連載記事
④:日本経済新聞での連載記事